K100.気温観測用の次世代通風筒


著者:近藤純正
現在用いられている気温観測用の通風筒では、晴天日中は 0.3~0.4℃ほど高めに観測され る。より高精度で、誤差0.1℃以内で測るには、放射影響を軽減する必要がある。それには、 通風筒の排気が吸気口から再循環しない構造であること、吸気口を作る部材による地表面 放射(日射の反射と長波放射)の吸収量を小さくすること、吸気口はラッパ構造の流線型と し外気がなめらかに吸引されること、通風筒の外筒と内筒間の通風速度が弱くならないよう に設計することである。通風筒の吸気口の吸気速度が5m/sを超えると、降雨時に微水滴を 吸引しセンサーが濡れて低めの気温が指示されることが時々あるので、通風速度は強過ぎ ないことも重要である。(完成:2015年2月25日)。

本ホームページに掲載の内容は著作物である。 内容(新しい結果や方法、アイデアなど)の参考・利用 に際しては”近藤純正ホームページ”からの引用であることを明記のこと。

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更新の記録
2015年1月15日:素案の作成
2015年1月19日:解り難い各所に加筆
2015年1月20日:気象庁気温観測装置のAD変換方法(備考3)を訂正
2015年1月29日:設計図(図100.5)内筒・外筒間の縦の距離差30mmを20mmに訂正
2015年2月1日:100.3節の(3)に気温上昇の計算例を加筆
2015年2月2日:通風部C型を追加、製作上の注意(9)を追加
2015年2月3日:100.3節の(3)、計算結果0.05℃を0.23℃に訂正
2015年2月9日:要約を各所に加筆
2015年2月16日:図100.3~100.4を最終試験結果に取り換え、放射影響の誤差要因(d)と図100.19を追加、
        100.5節「放射影響の試験」の最後に「その他の試験の結果」を追加
2015年2月25日:図100.4と図100.20を追加


  目次
      100.1 はしがき(時代による観測精度の変遷)
      100.2 放射影響の誤差
      100.3 通風筒製作上の注意
      100.4 用語の定義
      100.5  放射影響の試験
      100.6  通風部の作り方(4例)
     まとめ
     参考文献


100.1 はしがき

温度センサーそれ自体は高精度であっても、戸外の気温観測では気温センサーに及ぼす放射 の影響が大きく、高精度の観測は難しい。

気温計に及ぼす放射の影響を歴史的にみると、100年余以上前には、百葉箱は使わず棒状 温度計(水銀温度計、アルコール温度計)で気温が測られていたと考えられ、晴天日中は 2~3℃高めに観測されていたと想像される。この2~3℃は、直射光のみ防いだ場合の誤差 である。現代でも、このような方法で観測をする人たちがいる。

百葉箱内に棒状温度計を入れて観測された時代(明治時代から~1970年代)の放射誤差は、 晴天日中は1℃程度であり、雨天・曇天も含む最高気温の年平均値は0.2℃の高めであった (近藤、2012、の表2.1を参照、あるいは「K23. 観測法変更による 気温の不連続」の表23.4にも示されている)。

1970年~現在(2010年代)では、強制的に通風させる通風筒内に気温センサーを入れて 観測するようになったが、晴天日中の誤差は0.3~0.4℃程度の高め、夜間は0.1℃程度の 低めである。

以上のように、気温観測に及ぼす放射の影響による誤差は、3℃から1℃に、そして0.3℃程度 と改善されてきた。次世代は0.1℃を目標とするのが時代の流れである。

気象庁では現在、Pt100オームセンサーが使われている。野外観測の場合、100オームでは 誤差は避けられないゆえ、筆者は抵抗値が1桁大きい Pt1000オームを使うことにしており、 さらに放射影響を小さくするために直径2.3mmを用いている。

気温観測用の各種通風筒に及ぼす放射の影響を調べた結果や、改良すれば観測精度を0.1℃ 以内にできることの内容は次に示されている。

「K84. 観測露場内の気温分布ー熊谷」「K88. 江川崎の最高気温は本物か?(2)」「K89.通風筒に及ぼす放射影響-農研用」「K90.通風筒(ノースワン社製)に及ぼす放射影響」「K98.自然通風式シェルターに及ぼす放射影響の誤差」「K99.通風筒の放射誤差(気象庁95型、農環研09S型)」

本章では、これまでに提案した改良点をまとめ、次世代の通風筒の基本的な構造を説明し、 簡単な構造の通風筒の作り方を説明する。

通風筒各部の名称
本章では、おもに高精度の2重通風筒について考察する。その模式図を図100.1に示した。 通風筒は通風部(吸気口からファンモータ部への接続部まで)とファンモータ部からなり、 ファンモータ部の排気は排気部を通して行なわれる。

通風筒各部の名称
図100.1 2重通風筒の各部の名称。

ガイドの役割
吸気口の外筒と内筒の間に「ガイド」を入れる。ガイドは吸気口付近で生成された温風が センサーのほうへ吸引されないように流れを外筒・内筒の間に導く役目をするものである。 「K99.通風筒の放射誤差(気象庁95型、農環研09S型)」で 説明したように、吸気口を作る部材が地面からの放射(日射の反射と高温地面からの長波 放射)を受け、それが顕熱に変換されて内筒内へ吸引されると、気温が高く観測される。

「ガイド」は接着しないで、その羽の弾力によって外筒の内壁に留めておく簡単な構造体で ある。1~2カ月以上使用すると、通風筒内にゴミが付着する。そのときの掃除が楽に できるようガイドは接着しない。

細かな構造をいろいろ変えて試験を繰り返した結果、本章に示した最終的に決定した通風部の構造・ 寸法では、ガイドは不要であることがわかった。つまり、通風口付近の構造・寸法が不適当 な場合、ガイドは有用であるが、適当な構造・寸法となった場合、ガイドは通風に対して 抵抗として働き通風を妨げる作用も持つので、ガイドは無くてよいことになった。


以下では、おもに通風部の構造について説明する。ファンモータ部から排気部については、 ルーチン観測か研究用、長期観測か短期観測用かの目的により、いろいろな構造が考えら れる。気象庁の観測所など長期ルーチン観測用に使われている排気部は、ほぼ現状の形式 でよいと考える。

ただし、100.3節の注意点(1)=排気の下降流成分を吸気口から再循環させないこと= に留意すること。すなわち、微風時にファンモータからの排気が通風筒吸気口から再循環 する現象に気づいていない人々が多い。一般に排気は自然風よりも高温となり、これが 通風筒を再循環すると最大0.4℃ほど高温に記録されることがある。

気象庁観測所などで使われている通風筒では、暴風雨のときも観測しなければならず、 雨除けなど工夫されている。しかし、一般的な研究的観測では、激しい暴風雨時は観測 しないので、雨除けは簡易構造でよい。多少の雨滴が通風筒に入っても温度センサーの 受感部さえ濡れなければ観測には支障はない。本章で紹介する通風筒は、室戸岬などで すでに数か月以上の観測で使用したものである。


要約:通風筒に及ぼす放射影響の誤差
=これまでの試験結果のまとめ=

(1)非通風式(自然通風式)、ヤング社製(クリマテック社CYG-41303)など3種類・・・ 日中微風時+5℃以上、シェルター高度の風速1.5m/sのとき+1.0~1.5℃
(2)農環研ルーチン観測用、プリード社製(東京)PVC-04・・・・日中+0.2~0.5℃
(3)ノースワン社製(札幌)KDC-A01-S001・・・・日中+0.15℃、 微風時の通風再循環で+0.4℃
(4)ヤング社製MODEL43502・・・・日中+0.2℃、多翼ファンの翼間隔が狭くゴミが付着し、 数か月以上の連続観測で通風速度が低下し誤差は+0.2℃以上となる
(5)気象庁95型・・・・日中+0.3~0.4℃
(6)農環研開発NIAES-09S・・・・日中+0.3~0.4℃、微風時の通風再循環で+0.1℃



100.2 放射影響の誤差

不完全な通風筒を用いた気温観測では、晴天日中は太陽直射光(概略1000W/m2 程度)のほか、天空・雲の散乱光、地面反射光(概略1000W/m2程度)、 および加熱された地表面からの長波放射(赤外放射:熱放射)によって、気温は高めに観測 される。地表面が気温より20℃高温のとき、下からの長波放射の正味量は概略100W/m2 である。

夜間は下向き大気放射(目に見えない長波放射:赤外放射)と冷却された地表面からの 長波放射によって気温は低めに観測される。晴天夜間には気温より概略20℃低い温度が出す 黒体放射量に相当する天空からの下向き長波放射があり、通風筒の周囲に入る正味放射量は マイナス100W/m2程度である。

通常用いられている温度センサーの直径は6mm以上のものもある。直径が大きいほど放射 の影響が大きく誤差は大きくなる。放射影響の誤差は4つの要因からなり、日中は、

(a)通風筒吸気口の部材で加熱された空気がセンサーに直接流れてくる影響
(b)加熱された通風筒壁面からの長波放射による影響
(c)センサー受感部が地表面からの放射(反射光と長波放射)を直接受ける影響
(d)センサーの取付固定部から導線を伝わってくる伝導熱の影響

これら要因による誤差と通風速度との理論的関係は次の通りである。

要因(a)について、加熱空気は通風速度に比例して流れ去るので、誤差は風速に逆比例して 小さくなる。この誤差は、センサーの大きさにほとんど依存しない。

要因(b)について、日射によって通風筒外壁が高温になり、その熱伝導で高温になった 内壁がセンサーに及ぼす放射影響は、センサー回りの風速がある程度大きい時、風速の 平方根に逆比例して小さくなる。ごく大まかに、センサーの直径が3倍になれば誤差は約 1.5倍になる(「大気境界層の科学」の図3.4; 「K16.気温の観測方法」の図16.3)。

したがって、本試験で使用するセンサーの直径2.3mmより大きいセンサーを用いた場合、 放射影響の誤差は大きくなる。

要因(c)については(b)と同様で、センサーの直径と通風速度に依存する。

備考1:曲げた構造の通風筒
要因(c)による誤差を無くする目的で通風筒を曲げて、センサーから直接地表面が見えない 構造の通風筒がある。その通風筒を筆者が預かって試験した結果、通風筒内の曲がり部分で 渦が発生し、吸気口~内壁面で昇温した空気がセンサーに当たり、1℃ほど高めとなった。


要因(b)について、誤差を0.1℃以内にするには、通風筒の材料が薄い場合、

4重構造(通風速度=1m/sのとき)
3重構造(通風速度>3m/sのとき)

が必要である(「大気境界層の科学」表3.2参照)。通風筒部材を断熱構造にすれば、 2重構造でもよいことになる。断熱構造の簡単な例として、肉厚2mm程度以上の断熱性 のプラスチック材を用いてもよい。本章では、内筒・外筒に断熱材を用いることとし、 2重通風筒について試験する。

前述のように放射の要因(a)による誤差は、通風筒の多重構造・断熱性と無関係であり、 吸気口付近の形状に大きく関わるもので、設計・製作上とくに注意が必要である。

要因(d)については、本章で用いたセンサーではセンサー先端から50~90mm付近を固定 してあるが、固定部はセンサー直径より構造が大きいため放射の影響が大きく日中は気温より 微少高温、夜間は気温より微少低温になる。そのため、日中を例にすると、固定部の微少 高温が導線(直径2.9mmのキャプタイヤ~直径5mmのシリコン収縮チューブ~ 直径2.3mmのSUS304測温シース)を伝わる熱伝導でセンサー先端の受感部に伝わってくる (詳細構造は後掲の図100.19と図100.20を参照)。

この熱伝導の影響を小さくするには、固定部はセンサー先端より十分な距離があること、 および固定部までの導線は断熱せずに通風筒内筒の通風にさらし、放熱させることが重要と なる。


要約:放射影響の4要因

(a)通風筒吸気口の部材による加熱空気による影響
(b)通風筒壁面からの長波放射の影響
(c)地表面からの放射の直接的影響
(d)センサーの取付固定部からの伝導熱の影響


100.3 通風筒製作上の注意点

(1)排気の下降流成分を吸気口から再循環させない
「K90.通風筒(ノースワン社製)に及ぼす放射影響」の図90.4や 「K99.通風筒の放射誤差(気象庁95型、農環研09S型)」 の図99.1の横軸=24時前後で示したように、通風筒の排気部の構造によって微風時に排気の 下降風成分が吸気口から再循環し気温が高めに観測される。

これを防ぐには、排気部外側の下方に下降風防止用の円板を付けるか、ファンモータからの 排気の流れが吸気口から再循環しない構造としなければならない。

(2)気温用と湿度用の通風筒を分ける
これは放射影響の要因(a)と関連する。すなわち、吸気口付近の部材によって高温に なった空気がよどみ、通風の流れが複雑になると、その高温空気は気温センサーのほうへ 吸引されやすくなる。

1つの通風筒に気温センサーと湿度センサーを入れると通風の流れが複雑になるので、 通風筒は気温センサー用と湿度センサー用に分けることが望ましい。2つの通風筒に分けた 気温・湿度計はすでに存在し、例えば、「K89.通風筒に及ぼす放射 影響-農環研用通風筒」の図89.2に示した通風筒がある(プリード社製、 PVC-04)。

備考2:湿度センサー用の通風筒と相対湿度
本章では、気温センサー用の通風筒について説明している。湿度センサー用通風筒は、気温 センサー用に準じて設計・製作すればよい。ただし、湿度センサーの寸法は気温センサーT に比べて大きいので、放射の影響も大きくなる。湿度センサーには別の温度センサーWも 含まれていて、水蒸気圧(hPa)を観測する。気温センサーTと温度センサーWの大きさに 違いがあるので、センサーWの温度とセンサーTの温度は最大0.1~0.3℃程度異なることが ありうる。したがって、湿度センサーで水蒸気圧のみ観測し、気温用通風筒内の気温セン サーTで測った気温を用いて計算した相対湿度(%)を「正規の観測値」として示すこと。 なお、センサーの大きさとは、受感部を包む保護材を含む大きさのことである。


(3)吸気口部材の受ける放射量を少なくする
通風筒吸気口の先端の水平断面積を小さくし、先端部が吸収する地表面からの放射量を 少なくしなければならない。

3.1 吸気の上流に部材がないこと
気象庁95型の通風筒のように、外筒と内筒からなる2重通風筒の場合(3重構造と見なしても よい)、内筒の吸気の上流に部材があれば、その部材が吸収した地表面からの放射量 (反射光と長波放射量)が顕熱に変換されて吸引空気が加熱され、それが直接気温センサー に流れてきて気温が高めに観測される。

具体的な例として気象庁95型について概算してみよう。 「K99.通風筒の放射誤差(気象庁95型、農環研09S型)」の図99.2で示したように、 吸気口に小漏斗構造とその支え及び大漏斗構造がある。小漏斗構造のみによる気温上昇⊿T は次のように計算される。

小漏斗構造が毎秒ごと受ける放射量は、内筒内通風速度Uによって毎秒ごと顕熱輸送量 (=空気の体積熱容量×風速×気温上昇)として運ばれる、という熱収支式が成り立つ。

小漏斗構造の面積(有効面積):S=2πr2
 同上直径:2r=32mm
内筒の断面積:S=2πr2
 同上内径:2r=15mm
空気の体積熱容量:Cρ=1200 J K-1m-3
内筒内通風速度:U=5m/s
小漏斗が受ける地面からの短波・長波放射量:I=300 W m-2
とすれば、

熱収支式より、
⊿T=I×(S0/S)/(Cρ×U)=0.23℃

となる。大漏斗の内径=82mmであり、より大きな気温上昇となる。ただし、大漏斗構造 は外筒の少し奥にあるので、計算は複雑になるので、ここでは行なわない。

3.2 地面に向く部材の断面積を小さくすること
例えば農環研のNIAES-09S型のように、通風筒の内筒の先端が平らで断面積が大きい部材の 場合、その断面積が吸収した地表面からの放射量によって、上記と同様に気温が高めに 観測される。

外筒も同様に先端の断面積が大きい形状であれば、そこで昇温した空気は外気の風に流され て内筒に吸引される。

(4)外筒と内筒間の通風速度は小さくしない
吸気口付近で昇温した空気が内筒の気温センサーのほうへ吸気され難くするには、 内筒・外筒間の通風速度が小さくならないような構造とし、昇温空気は内筒・外筒間を 逃すようにする。そのために、外筒の奥を狭くせず通風を良くする。

例えば、Young社製の3重構造の通風筒(販売店は英弘精機:形式43502)では、内筒・外筒間 の通風空間が奥のほうで小穴となり風の通り道が狭くなっている。この構造は、要因(a) に対する効果を悪くしている。

悪例と良例
図100.2 外筒・内筒間の構造と、排気部の構造の悪例と良例の模式図。

(5)吸気口をラッパ構造の流線型にする
これも放射影響の要因(a)と関連する。吸気口の形状により吸気が乱流的になると、 吸気口付近で生成された昇温空気がセンサーのある内筒中心へ吸引されやすくなる。 これを抑制するために吸気口はラッパ構造の流線型にして、昇温空気は外筒・内筒の それぞれの内壁に沿って流れ去るようにする。

(6)吸気口内壁に直射光を入れない
研究用の短期間の観測では、通風筒を取り付ける支柱が軽量簡易型で、支柱と通風筒重心間 の距離を短くするために、通風筒は斜めに取り付ける場合がある。

この斜め取り付けでは、太陽の方位と高度によっては、注意を怠ると直射光が吸気口内壁に 入ることがある。直射光は最大の放射エネルギーであり、内壁の先端付近に入れば、気温は 高めに観測されるので注意が必要である。

(7)センサーの吸気口からの適当な距離(センサーから見える地表面の立体角)
センサー回りの通風速度が特に弱い1m/sの場合を想定し、センサー直径=2.3mm、有効入力 放射量70W/m2のとき(直射光のみ防いだようなとき)、放射影響によるセンサー の温度上昇量=1.0℃である(「大気境界層の科学」の図3.4)。温度上昇量は有効入力 放射量に比例するので温度上昇量を例えば0.05℃にするには、有効入力放射量を70W/m2 ×(0.05/1.0)の3.5W/m2(必要条件)にすれば よい。

「K34.通風式標準温度計2号機」の図34.3とQ&A3を参照する。 センサー受感部が内筒先端から距離L(60mm)にあり、 内筒の内径を2r(25mm)とすれば、開口角から見える地表面 の立体角は、

立体角=面積(視線に垂直な面積)/距離の2乗
   =π(r/L)
   =π×(12.5/60)=0.136ステラジアン

ゆえに、センサー受感部の先端から開口角を通して見える地表面の全立体角(4π)に占める 割合は、

0.136/4π=0.0108

日射の地面反射量=200W/m2、地表面温度と気温差による地表面からの長波放射の正味量 =100W/m2(温度差が約20℃の場合)、合計=300W/m2となる。 この300W/m2は晴天時における概略的な最大条件と見なしてよいだろう。

したがって、センサー受感部が地表面から直接受ける有効入力放射量は

300W/m2×0.0108=3.2W/m2

この3.2W/m2は上記の必要条件3.5W/m2 にほぼ等しく、地面放射による直接的な温度上昇量は最大0.05℃となる。 すなわち、直径2.3mmの気温センサーの先端は内径25mmの内筒の先端から奥60mmに なるように組み立てる。実際には余裕をみて、奥100mmとする。

基準通風筒の場合
高精度を必要とする基準通風筒の場合、内筒の先端からの距離L=100mm、内筒の内径2r =25mmとして、センサー受感部直径=2.3mmの場合、

立体角=π(r/L)
   =π×(12.5/100)=0.049ステラジアン

全立体角に占める割合=0.049/4π=0.0039

直径2.3mmセンサー受感部が受ける有効入力放射量=300W/m2×0.0039= 1.1W/m2

したがって、地面放射による直接的な温度上昇量は、

通風速度=1m/sでは最大0.017℃
通風速度=5m/sでは最大0.008℃

となる(「大気境界層の科学」の図3.4を参照)。

注意1:あまり奥に入れ過ぎると、内壁面に沿う内部境界層の高温気流の中に受感部 が入る可能性があるので、むやみに奥へ入れないこと。 内部境界層の厚さに関しては「K34. 通風式標準温度計2号機」の 図34.6とQ&A3の式が参考になる。

注意2:気温観測にはいろいろな誤差が含まれる。各要因による誤差の大きさは、 概略的に揃うようにすることが肝要である。つまり、1つの要因による誤差のみ小さくする ために、例えば上記のセンサーに及ぼす地面放射の直接的影響を極端に小さくする目的で センサーを内筒の奥へ入れ過ぎると、通風筒自体が長くなる。その結果、壁面による摩擦 抵抗が増え通風速度が低下し、また通風筒の重量が増し、堅牢な支柱が必要となる。

(8)ファンモータの種類に注意
本章で説明するファンモータについては、実際に通風筒に用いて良好な結果を得た製品を 紹介している。ワット数(定格入力)がほぼ同じファンモータが手元にあるとか、店で見 かけたとして、試験も行なわずに通風筒に用いてはならない。ファンモータには翼の形状が 異なり十分な風量が出ない種類もあることに注意しよう。

(9)通風速度を過大にしない
通風筒の吸気口付近の吸気速度が大きすぎると、降雨時に微水滴が吸い込まれセンサー に付着し気温は低めに観測される。吸気口付近の通風速度が5m/sを超えないように注意 する。今回の試験では、気温が最大0.2℃と0.6℃低めに観測された例があった (0.94Aのファンモータを使った場合)。

この誤差の大きさはセンサーへの微水滴の付着の模様のほか観測時の相対湿度によって 変ってくると考えられる。

ちなみに、雨滴(半径100μm~数mm)の落下速度は、半径=600μmで5m/sである (浅井・武田・木村、1981:「大気科学講座2」)。

降雨時に吸気口から吸い上げられセンサーに付着した水滴は、おそらく雨滴のもっとも 小さい半径100~200μmの微水滴(落下速度=1~2m/s程度)によるものと考えられる。

(10)分解掃除が容易な構造
高精度観測を行なうために、筆者は4重の通風筒11台を1年間、各地で使用してきた。 ファンモータのワット数を小さくするために通風筒の各部の大きさを小さく作ったため、 ゴミが付着しやすく、接着部分以外はすべて分解して50℃の温水によって掃除した。 つまり手間がかかる。

そこで、今回はセンサー周りの空間を広く、分解掃除が容易な2重構造の通風筒に作り直し、 試験することとした。


要約:誤差0.1℃以内の高精度通風筒の製作上 の注意点
=外筒・内筒の部材が断熱材なら2重通風筒でよい=

(1)排気の再循環防止
(2)気温計・湿度計の通風筒は別々に
(3)吸気口部材の断面積を小さく、風上に部材なし
(4)外筒・内筒間の通風速度を大に
(5)吸気口はラッパ構造の流線型に
(6)吸気口に直射光を入れない
(7)センサーから見える地面の立体角を小さく(内筒の内径=25mmの場合、センサー 先端は内筒先端より100mm奥に)
(8)ファンモータの種類に注意、通風筒に入れた時の通風速度が最適に
(9)通風速度を過大にしない、大きすぎると降雨時に微水滴を吸引する、吸気口付近 での吸気速度=3~5m/sが最適
(10)分解掃除が容易に、数か月の連続使用でゴミや昆虫の卵など付着する



100.4 用語の定義

放射影響の誤差の定義
放射影響の誤差とは、放射(日中は日射、夜間は大気放射)による気温観測の誤差を意味し 次式によって定義する。

放射影響の誤差=(通風筒内気温センサーの指示値)-(基準通風筒による気温)

基準に用いる基準通風筒は放射による影響がほぼ無視できる気温計である。 基準通風筒は試験器と並べて設置する。排気が他の通風筒に影響しないように各通風筒は 1m程度離して設置する。しかし、数m範囲内であっても気温には空間的な違いがある ので、通常は試験器を2台の基準通風筒(k1, K2)で挟んで設置し、K1とK2の平均気温を 基準の気温とする。K1とK2の違いが大きいときのデータは不採用とする。これは、 放射影響の誤差が0.1℃以上の場合、あるいは通風筒の構造が大きく異なる場合に行なう 方法である。

後述の試験で示すように、本章で説明する通風筒(A,B,C型)の放射影響の誤差は 0.02~0.03℃程度の小さいな値であり、晴天日中の数m離れた範囲内における気温の 空間的ムラと同程度またはそれより小さい。今回製作した通風筒は形が似ており、 吸気口から排気口までの通風の流れが同方向、排気は斜め上方に行なわれ、 排気が他に影響することは無い。

それゆえ、試験器と基準通風筒とも、通風部が南向き斜め下になるよう同方向に並べ、 各吸気口の間隔が0.3m(最短の間隔)に近づけて設置して試験した。

基準通風筒
これまでの試験に用いてきたK1とK2は4重の通風筒構造の気温計( 「K92.省電力通風筒」の図92.16)であったが、構造がやや 複雑なうえ、 センサー回りの空間が狭く、3カ月以上使用した場合、ゴミを除去するための分解掃除を 行なわねばならないという欠点があった(「K97.ヤング式通風筒ー ファンモータ交換」の97.3節「分解掃除」を参照)。

それゆえ今後は、精度も高く分解掃除が容易な2重通風筒を「基準通風筒」 として用いることにする。

温度(気温)センサー
通風筒内に取り付ける温度センサーは立山科学工業社製のA級Pt1000オーム、3導線式、 受感部直径=2.3mmである(形式:MODS030-01-PT-02、価格=16,500円)。本試験で用いる 温度センサーは厳密に検定されたものであり、誤差は±0.02℃程度である ( 「K69.気温観測用 Pt センサーの安定性と器差」と、 「K91.Ptセンサーの検定(比較検定)」を参照)。

データロガーはT&D社製の小型データロガーの「おんどとり」TR-55i-Pt (PtモジュールPTM-3010 付き、標準価格=19,000円)と、コミュニケーションポート (TR-50U2、標準価格=15,000円)を利用する。 Ptモジュールは、データロガーとPtセンサー間をつなぐ部品で、0.1℃単位の器差の調整 (アジャストメント)をすることができる。コミュニケーションポートは読取装置であり、 PCと接続して気温データの吸い上げに用いる。

多地点観測する場合、データロガーはセンサーごとに必要であるが、コミュニケーション ポートは共通して使えるので1つあればよい。

備考3:データロガーにおけるAD変換による誤差
T&D社製の小型データロガーの「おんどとり」TR-55i-Pt(PtモジュールPTM-3010 付き) について、AD変換等による誤差を検討した結果は 「K81.市販品を改造した高精度の通風式温度計」の81.2節「部品」の「データロガー」 に示してある。Pt1000抵抗は10℃区間ごとに直線近似式から温度値に変換されるため、 各中間温度の5℃、15℃、35℃、・・・付近で0.004℃の誤差が生じる。また、 AD電圧値は0.01℃分解能相当程度の幅を持った整数値であることから最大0.01℃ほどの 誤差を生む。これら誤差を総合すれば、乱流的気温変動をもつ野外気温では、長時間の 平均気温の誤差(データロガーによる誤差)は最大0.014℃程度と見なしてよい。

参考までに、現在の気象庁観測所で用いられている気温観測装置におけるAD変換では、 抵抗値を-50~50℃範囲で2次の近似曲線で近似している。


気温のサンプリングと平均値
基準に用いる基準通風筒(K1とK2)の気温センサーの検定誤差は±0.02℃である。検定を 行なった温度範囲は3℃~33℃である(「K91.Ptセンサーの検定 (比較検定)」を参照)。

本章での試験はおもに冬期間に行なわれ、低温の-5℃~10℃の範囲が多く、器差補正式は 直線を仮定して-5℃範囲まで外挿したため、気温センサー間の誤差は±0.02℃範囲を超える 可能性があるので、注意して試験する。

気温は20秒間隔でサンプリングし、各1時間の平均気温について比較する。すなわち、 放射影響の誤差は1時間間隔で求めた。各1時間のデータ個数=60×3=180である。晴天日中 において、例えば4m離れた2点間の気温差の時間変動の標準偏差σは0.25℃程度である (「K89.通風筒に及ぼす放射影響-農研用」の図89.5)。 それゆえ、データ個数Nの少なさから生じるばらつきの誤差をσ/√Nによって見積もると、 0.25/√180≒0.02℃程度となる。

後掲の試験結果の図100.3と図100.4において見られるプロットのばらつきは±0.02℃程度 あるが、これはデータ個数180から生じるものであることをあらかじめ理解しておこう。 また、気温センサーの検定誤差も±0.02℃であるので、試験結果にこの程度の違いが生じて も問題にしなくてよい。

100.5 放射影響の試験

ファンモータ
基準通風筒:山洋電気製の型番:9GA0812P6G001(DC12V、 0.3A,定格入力3.6W,最大風量1.72m3/min、価格=3,790円)を用いる。

簡易通風筒用:山洋電気製の型番:9GA0812P6M001(DC12V、 0.06A、定格入力0.72W、最大風量0.84 m3/min、価格=3,610円)を用いる。 製作がやや簡単なこの簡易通風筒は、単1乾電池の交換なしで2週間程度の連続観測が可能 である。

AC電源が使える所では、「ACアダプター」(12V、1Aまたは0.5A、1000円程度)を 利用すれば、乾電池は不要である。

備考4:大出力のファンモータ
試みに、ワット数の大きな型番:9GA0812P1S61(DC12V, 0.94A、定格入力11.28W、最大風量2.6 m3/min)のファンモータを使用して みたが、気温観測に現れる放射影響の違いは見いだせなかったので、この0.94Aの品は 試験以外では用いないことにする。


通風筒の通風速度
後で説明するように、外筒は内径=70mm(排水用塩ビパイプ、VU65、肉厚=2.5mm) の塩ビ管で作ってあり、その吸気口で測った概略の通風速度は、次の通りである。

通風速度≒7m/s(0.94Aのファンモータ)
通風速度≒5m/s(0.3Aのファンモータ)・・・・・基準通風筒用
通風速度≒3.5m/s(0.06Aのファンモータ)・・・・簡易通風筒用

図100.3(A)と図103(C)は簡易通風筒A型とC型の試験結果である(構造・作り方は後述)。 通風速度の影響をみるために、0.06Aのほか0.3Aのファンモータを用いた場合の試験も 行なった。

試験1日~7日
図100.3(A) 簡易型Aについての放射影響の試験の結果。
上:ファンモータの電流=0.3A(A型、S型)
下:ファンモータの電流=0.06A(A型)、0.94A(S型)

ここでは0.1℃以下の微少な誤差を問題にしているので、試験方法を次のように変えることに した。すなわち、基準通風筒と簡易型A(東、0.06A)の吸気口が共に南方向斜め下向きに なるようにして、両通風筒吸気口間の距離が0.3mに接近させて並べる。これらと1.4m離れ て、同様に別の基準通風筒と簡易型A(西、0.3A)も互いの吸気口を0.3m離して並べて 試験した。このように吸気口を南方向斜め下向きに設置すると、通風筒に当たる日射の 直射量は最大の条件となる。つまり、放射影響の最大値に近い誤差をもとめるための 試験である。

注意として、吸気口同士をあまり近づけ過ぎて、例えば0.2m以内にして試験すると、 風向変動によっては、通風筒表面で熱せられた空気が他の通風筒に吸引されて高めの 気温を指示することがあるので、0.3m以内に接近させてはならない。この試験は、 通風筒間の間隔が最小で行なったものである。

図100.3(C)はC型についての試験である。C型はA型、B型、S型と同様に、肉厚2.5mmの 排水用塩ビ管を外筒に用い、外壁にアルミ泊接着断熱シートを巻き、センサーは内筒先端 から100mm奥に固定したものである。

C型は基準通風筒S型にほぼ近い構造である。基準通風筒は内筒の断熱を良くするために、 2層の中空であるのに対し、C型の内筒は1層(肉厚3.5mmの水道用塩ビパイプのみ) であるが、他は同じ構造である。

図100.3(A)と図(C)では、プロットにバラツキがあるのは、気温の空間的ムラとデータ個数 (1時間に180個)の少なさによる分も含まれる。これらを考慮すると、 この試験から、簡易型の放射影響の誤差は最大0.03℃と見積もることができる。

図中に横矢印で示すようにガイドを付けたり外してその効果を調べたが、効果は見 られない。これは、試験を繰り返して行ない通風部の構造・寸法を最終的に決定した場合で ある。つまり、観測時はガイドを取り付けなくてよいことになった。

なお、ガイドの効果を見るための試験のすべては図示していないが、十分な回数を行なって ある。

試験7日~13日
図100.3(C) 簡易型Cの放射影響の試験。
上:基準通風筒(西、0.3A)と簡易型C(西、0.3A)を並べた試験結果
下:基準通風筒(東、0.94A)と簡易型C(東、0.06A)を並べた試験結果



次の問題として、同じように作った通風筒でも作り方、およびセンサーのわずかな 構造・寸法の違いから誤差が生じる可能性がある。そこで同じ作りの基準通風筒について 試験によって確かめた。

これまでの試験を通じて基準通風筒(センサーはK1)と基準通風筒(センサーはK5)の 2台は、晴天日中の誤差が大きくなるように感じられた場合があったので、これらをそれぞれ 両側から基準通風筒(センサーK2)と基準通風筒(センサーはK3)で、および基準通風筒 (センサーはK2)と基準通風筒(センサーはK4)で挟むように設置して試験した。 つまり、設置の位置は東からセンサー4、5、2、1、3の順序、各間隔=0.5m、吸気口の 地上高度=2mとした。通風筒は前記した向きと同様に、吸気口を南方向斜め下向きとし、 太陽の南中時に通風筒に当たる直射光が最大となる取り付け方にした。

なお、最後の6節「通風筒の作り方」で説明するように、センサー1とセンサー5の先端は センサー固定具の下端からの距離を長くして、キャプタイヤ線を通して センサー先端(受感部)に伝わる熱伝導が小さくなるように工夫してある。

図100.4の下段は、センサー間の気温の空間的ムラ(K4-K2:×印)と、空間的ムラ (k2-K3:丸印)の時間変動のグラフである。 気温の空間的ムラは±0.02~0.03℃である。横軸=94~104 時間付近で、空間的ムラが0.05℃程度に大きくなっているのは、降雨中の微水滴が 通風筒内に吸引されてセンサーの一部を濡らしたため低温に記録されたセンサーがあった ことによると考えられる。前記したように、0.94Aのファンモータを使った場合、 微水滴の吸引は多くなる。

以上を考慮して図100.4の上段と中段をみると、縦軸(放射影響の誤差)に見られる変動 は、気温の空間的ムラに起因するもので占められ、同じS型間の構造・寸法のわずかな 違いによる誤差はほとんどゼロに近く、あったとしても0.02℃以下と見なされる。

試験2月17日~25日
図100.4 同型の基準通風筒S型についての比較試験(ファンモータはすべて0.3A)。
上:通風筒(センサーK1)とそれを挟む2つの通風筒(センサーK2,K3)の平均値との差
中:通風筒(センサーK5)とそれを挟む2つの通風筒(センサーK2,K4)の平均値との差
下:通風筒(センサーK4)と通風筒(センサーK2)の差、および通風筒(センサーK2)と 通風筒(センサーK3)の差





その他の試験の結果
(1)降雨時
12V,0.94Aのファンモータを使った場合(吸気口付近の吸気速度≒7m/s)、 微水滴が受感部付近に付着し、気温が0.2℃、あるいは0.6℃も低く観測された。 微水滴が付着したのは降雨時の全試験ではなく、時々であった。このことから、通風速度は 3~5m/sの範囲が適当である。適当なファンモータは、山洋電気製の型番9GA0812P6G001(0.3A:基準通風筒)、または型番9GA0812 P6M001(0.06A:簡易通風筒)である。

(2)ファンモータの出力の違い
ファンモータの出力(0.94A, 0.3A, 0.06A)の違いによる放射影響の誤差は小さく、0.02℃ 程度、またはそれ以下とみなされる。

(3)並べて比較するときの通風筒間の距離を小さくし過ぎないこと
今回製作したS型、A型、B型、C型のように排気が斜め上方に行なわれ、排気が他の通風筒に 影響しない構造での試験において、吸気口間の距離を0.2mとした場合、通風筒吸気部の 外壁で暖まった(日中)、あるいは冷却された(夜間)空気が他の通風筒から吸気されて 影響する。今回の試験では最大+0.07℃(日中)、または-0.04℃(夜間)に見られた。

安全をみて、吸気口間の距離は当初0.3mとしていたが、あとでは0.5mとして試験した。

余り離し過ぎると気温の空間的ムラが大きくなるので、試験場所の条件を考慮して最適距離 で試験するがよい。

以前に行なった試験において、吸気口付近の外筒外壁の昇温を防ぐ目的で、外筒 の外側に半円筒形の日除けを取り付けたとき、日除け材で暖まった空気が内筒内のセンサー に吸引されて、気温が0.3℃以上も高めに観測されたことがある。すなわち、吸気口の 近くには物体が無いことである。


100.6 通風部の作り方(4例)

気象庁観測所など長期のルーチン観測用のファンモータ部~排気部については、現在使われ ている形式のものを使用してよいだろう。ただし、排気の下降風成分は防ぐ必要がある。 例えば、「K90.通風筒(ノースワン社製)に及ぼす放射影響」 の図90.2に示した円板をファンモータ排気部の下方につける方法がある。

ここでは、短期的(延べ数年以下)の研究観測の際に利用できる軽量の通風筒の作り方に ついて説明する。ファンモータ以外の材料はホームセンターで入手でき、費用は5千円程度 である。

部材のほとんどはプラスチックであるため、10年以上の長期のルーチン観測の場合は表面 (特にプラダン)が太陽光で劣化する心配があるので、外側は薄いステンレスの構造とする のも一つの方法であろう。延べ数年以内の研究的な観測では、プラダンの外側に例えば アルミ泊接着の断熱シートを巻いておくがよい。

これまで多種類の通風筒を作ってきたが、名称の混乱を防ぐ意味で、今回の通風筒の通風部 は次の名称で呼ぶことにする。

基準通風筒S:KONDO-15S型(12V,0.3A), 770g
簡易通風筒A:KONDO-15A型(12V,0.06A), 550g
簡易通風筒B:KONDO-15B型(12V,0.06A), 600g
簡易通風筒C:KONDO-15C型(12V,0.06A), 750g

基準通風筒Sと簡易通風筒A,B,Cの違いは、(1)ファンモータのパワー(ワット数) の違いと、(2)内筒の断熱の仕様の違いである。

ただし前節での試験では、ファンモータとしてワット数の異なる3種類について行なった。

簡易通風筒A型とB型の違いは接続部の部品が異なることである。それによって、副次的に 排気部の作りに差異が生じることである。C型はS型にほぼ同じであるが、内筒を水道用塩ビ パイプだけで作る違いがある。

例1:基準通風筒(2重通風筒、ガイド付き、KONDO-15S)
通風部の部材のほとんどは塩ビ材である。主要な材料は次の通りである(品名・規格・名称 はメーカによって異なり、寸法は厳密でない)。

・ 水道配水管の接続具(インクリーザーVN-IN100×65:上側大円筒の内径=114mm、 外径=124mm、下側小円筒の内径=76mm、外径=83mm)・・・接続部
・ 排水用塩ビパイプ(VU65:内径=70mm、外径=75mm)・・・外筒用
・ 水道用塩ビパイプ(VP25:内径=24mm、外径=31mm)・・・内筒用
・ 丸たて樋(KQ5231H, 55MI:内径=53mm、外径=55mm)・・・ガイド用
・ 丸たて樋(42:内径=39mm、外径=41mm)・・・内筒外壁の断熱に使う
・ 低発泡塩ビ板(厚み5mm)・・・センサー固定材
・ 低発泡塩ビ板(厚み2mm)・・・ファンモータの固定枠材
・ 塩ビ板(厚み1.3mm)(雨どいの軒継ぎ手)・・・外筒・内筒を繋ぐ羽ほか
・ ステンレス曲げ(ステン特厚金折SUS304, 75×75)2個・・・ファンモータ固定枠材
・ プラダン(灰色)・・・ファンモータ部・排気部材
・ アルミ泊接着の断熱シート(SANYUのアルミフォーム、あるいは小久保工業所のアルミ 押入れシート:ポリエチレン・PET・アルミ蒸着)・・・外筒断熱、プラダン劣化防止材
・ その他(4mmネジ、硬質塩化ビニル管用接着剤、ウルトラ多用途ボンド、バスボンド、 ほか)

内筒と外筒は別々に作った後、内筒の上端付近に接着した羽を外筒の上端に接着する。 材料は雨どいに使う塩ビのたて樋と、水道用(肉厚の上水用、肉薄の排水用)の塩ビ管で ある。塩ビ用の接着剤を使って固定できる。作り方と写真は 「K99.通風筒の放射影響(気象庁95型、農環研09S型)」の図99.9~99.11に示して ある。

外筒と内筒は、ともに長さは150mm(センサー5の通風筒では180mm)とし、でき 上がりでは内筒先端は外筒先端より20mm奥に固定する。センサー先端の受感部は 内筒先端から奥100mmになるように接続部に化粧ネジで止める。

通風部模式図
図100.5 基準通風筒(KONDO-15S型)の通風部の模式図、数値はmmで表す寸法。
内筒・外筒の長さは150mmであるが、センサーによっては180mmとする(図100.20の場合)。
赤色で示す受感部の横の左右に描いた破線四角形は、内筒の上部と外筒内壁を接着する羽で ある。この羽は内筒にあらかじめ接着しておいて、後で外筒内壁に接着する。

ここでは、通風部とファンモータ部の接続部から排気部までの作り方を説明する。 図100.5は通風部と接続部の模式図である。通風部の上端とファンモータ部を繋ぐ接続部 は水道配水管の接続具を用い、化粧ネジ2個で止める。分解掃除のときは、左右の化粧ネジ 2個をゆるめて通風部を外すことができる。そのときセンサーは接続部にネジ止めしたまま 掃除することができる。

以下の図100.6以後の図で各部分の作り方・組み立て方を説明する。

接続部
図100.6 通風部上端のつなぎの組み立て説明。
左:水道配水管の接続具(インクリーザーVN-IN100×65:上側大円筒の内径=114mm、 外径=124mm、下側小円筒の内径=76mm、外径=83mm)、その下の白色ネジは化粧 ネジ(4×10)とガスの用具に使う小シリンダー、その下の白色板は低発泡塩ビ板(厚み 5mm)。
右:Ptセンサーを固定できるように仕上げた写真、中へ差し込んだ透明のパイプは鉛直に 接着できたかを見るための仮の物。完成後にセンサーの導線を透明パイプ(ABS丸パイプ No224:内径=6mm、外径=8mm、長さは100mm程度)で保護して差し込み、化粧ネジで 固定する。化粧ネジはセンサー先端(受感部)の位置を調節するために使う。仕上がり時の センサー先端は内筒先端から100mmの位置となる。完成後に通風部を外して接続部の下 から手先を入れて化粧ネジを回し、センサー先端の位置をずらすことができる。

センサー差し込み
図100.7 センサーの差し込み具の2種類、シリンダーの内径は透明パイプ(ABS丸パイプ No224:内径=6mm、外径=8mm)が通せる大きさである。
上(その1):前図で使った差し込み口と同じもの。
下(その2):塩ビ板(厚み1.3mm)をコンロで熱しながら丸めて作ったシリンダーを 白色平板(低発泡塩ビ板:厚み5mm)に接着して造る手順、2重シリンダーに作ったのは 化粧ネジのネジ山を開けるために厚みを増すためである。2重は接着してある。 このあと、シリンダーに化粧ネジのネジ穴を開ける。

ファンモータ部外壁の作り方
通風部の断面は円形、ファンモータの枠は80mm×80mmの正方形である。つまり排気の 断面は円から正方形に変化する。通風の流れがなめらかに行なえるようにする一つの方法は、 弾力性のプラスチック薄板を扇形に切り漏斗状の円錐台を作り、ファンモータ側が正方形 になるよう形を整える。この例は、 「K70.気温観測用の電池式通風筒」の図70.3の写真(2)に示した。

ここでは、ホームセンターで入手できるプラダンで作る。図100.8に示すように、 灰色プラダンを362mm×200mmの長方形に切り、でき上がった白色の枠に当てながら 折り曲げてつくる。折り曲げ断面は正方形。このプラダンをビスで白色枠に固定した後、 反対側の断面が円形になるよう折り曲げて通風部上端のつなぎ(内径=114mm)の内壁に ビスで固定する。

枠の作り方
図100.8 ファンモータを固定する白色の枠の作り方(左)と、枠をファンモータ部に固定 した写真。枠は低発泡塩ビ板(厚み2mm)をコンロで熱しながら木枠(80mm×80mm) に当てて折り曲げて作る。80mm×80mm、厚み20mmのファンモータ(12V,0.3A) は右図の白色枠の中へ挿入する。固定ビス(写真ではまだ入れてない)を外せばファン モータは出し入れできる。 枠は低発泡塩ビ板(厚み2mm)をコンロで熱しながら木枠 (80mm×80mm)に当てて折り曲げて作る。80mm×80mm、厚み20mmのファンモータ (12V,0.3A)は右図の白色枠の中へ挿入する。固定ビス(写真ではまだ入れてない) を外せばファンモータは出し入れできる。
右図のファンモータ部は灰色プラダンで作る。通風部のつなぎの断面は円形、ファンモータ が入る所の断面は正方形になる。

排気部展開図
図100.9 排気部の雨除け傘の展開図。数値はmm、赤線は折り曲げる線を示す。材料は プラダンを利用する。

基準通風筒完成写真
図100.10 基準通風筒の完成図、ただしファンモータ部には、まだアルミ泊接着の断熱 シートは巻いていない。短時間で取り付け取り外しが可能なように、支柱には3mmの タコ糸で結ぶ。この取り付け方法は、室戸岬や四万十川流域の数か月間観測で経験済み である。

完成後、外筒の外側にアルミ泊接着の断熱シートを巻く(SANYUのアルミフォーム、あるいは 小久保工業所のアルミ押入れシート:ポリエチレン・PET・アルミ蒸着、0.9m×3mの広い シートはホームセンターで入手、0.9m×1.4mの狭いシートは100円ショップで入手でき る)。長期間使用する場合は、ファンモータ部~排気部に使ってあるプラダンが日射 で劣化するのを防ぐために、これにもアルミ泊接着の断熱シートを巻く。

例2:簡易通風筒A(KONDO‐15A)
上記の基準通風筒の作りを少し簡単化し、少し軽量にする。
・ 水道配水管の接続具(インクリーザーVNIN100×65)(250グラム)の代用品として、 75mmのたて樋材(KQ5251T2H 75:内径=72mm、外径=74mm)を加工して使用する ・・・・・接続部
・ 排水用塩ビパイプ(VU65:内径=70mm、外径=75mm)・・・・・外筒
・ 水道用塩ビパイプ(VP25:内径=24mm、外径=31mm)。S型では、これと 丸たて樋(42:内径=39mm、外径=41mm)で内筒を作ったが、A型では 水道用塩ビパイプ(VP25)だけで作る・・・・・内筒
・ センサー差し込み具は内筒の一番奥の端に接着する。
・ 内筒と外筒材の長さは150mmとし、内筒先端は外筒先端から30mm奥に接着、これら 寸法は基準通風筒と同じである。
・ 排気部の雨除け傘は基準通風筒では3段折りであるが、2段折りとする。

この簡易型Aで示す例は、接続部にヤング社製の改造で不要になったプラスチック製漏斗 構造の廃物(図100.14の黄色丸印)を利用したものである。漏斗構造は、プラスチック製 の茶碗など適当な物があれば底に穴を開けて利用してもよい。

内筒を作る順序
図100.11 A型用の内筒を作る順序。
白色:塩ビ板(厚み1.3mm)(雨どいの軒継ぎ手)から切ってコンロで熱しながら平板や 曲げ材を作る。
円筒:水道用塩ビパイプ(VP25:内径=24mm、外径=31mm)、長さ150mm

センサー差し込み具
図100.12 センサー差し込み具(色のみ図100.11、図100.12の白色と異なる)。
塩ビ板(厚み1.3mm)をコンロで熱しながら、丸みはアルミパイプ(アルミ丸パイプ No.505:外径=5mm)が通せる大きさに仕上げる。

内筒と外筒を作る順序
図100.13 内筒と外筒を作る順序。
この写真は、外筒(褐色)はたて樋で作ったときのものであるが、最終的にはたて樋 より肉厚のある排水用塩ビ管で作った。
左:外筒と内筒、外筒・内筒を作る順序の写真、赤矢印へセンサーを差し込み、センサー 導線部分を白色のシリンダー上端にビニールテープで固定する。
右上:吸気口から見た写真、外筒も内筒も長さ=150mm、仕上がり接着後の内筒先端は 外筒先端から20mm奥になる。
右下:ガイド。

簡易型A完成写真
図100.14 簡易通風筒Aの完成図、ただし、まだアルミ泊接着の断熱シートは巻いていない。 黄色丸印はヤング社製通風筒で使ってあった漏斗構造の部分。
左:外筒に肉厚1mmの薄い75mmのたて樋(KQ5251T2H 75:内径=72mm、外径=74mm) を使った場合の通風筒であるが、最終的には肉厚2.5mmの排水用塩ビ管で作った。 右下の白色ボックスはデータロガーの直射除け(プラダン)、その中にプラスチック製 密閉型弁当箱がありデータロガー「おんどとり」を入れてある。
右:外筒に肉厚2.5mmのやや厚い排水用塩ビパイプ(VU65:内径=70mm、外径= 75mm)を使った場合の通風筒、ただし通風部のみの写真で他は左図に同じ。内筒は外筒 より20mm奥になるように接着してある。中心軸の白色の細シリンダーにセンサーを通し、 センサー先端が内筒先端より奥100mmになるように固定する。


完成後、通風筒の外側にアルミ泊接着の断熱シートを巻く。

例3:簡易通風筒B(KONDO-15B)
前記の簡易通風筒Aでは、ファンモータ部の先端断面は円形、後端付近のファンモータが 固定されている部分の断面は内径80mmの正方形となっており、断面が円形からしだいに 正方形に変化している。簡易通風筒Bでも、この形状は同じである。

通風部上端の接続部(漏斗構造)に水道管の継手を利用する。この継手は基準通風筒に用 いる継手(インクリーザーVNIN100×65)に比べて上側大円筒の直径が少し小さい軽い 次の部品を使う。

・ 水道管の継手(VU継手インクリーザ、VUIN75×65:上側大円筒の内径=90mm、 外径=96mm、下側小円筒の内径=76mm、外径=82mm)

ファンモータ部外壁の作り方
基準通風筒の項で述べた方法とほぼ同じであるが、寸法が異なる。そのため、ファンモータを 挿入する白色の枠は不要である。作り方を図100.15によって説明する。

ファンモータ部外壁を作るためのプラダン(灰色)は200mm(穴の向き)×340mmの 長方形に切る。その一方の端(幅340mm)から30~50mm付近に80mm×80mmの ファンモータが入るように折り曲げる。ファンモータの入る正方形部分が変形しないよう、 金属アングル(75mm)2個をプラダンの端から50mmの位置にネジ止めしておく。

次いで、他の端を継手の外壁に押し付けて結束バンドで縛る。その際にプラダンは部分的 にへこみ、継手外壁に密着できる。プラダンの端の断面は円形となり継手にネジ止めする (図100.15左)。加工に慣れれば、この簡易型Bのファンモータ部の作りかたは楽で、 しっかりした形に仕上がる。

簡易型Bのファンモータ部
図100.15 簡易通風筒Bのファンモータ部
左:接続部側からの写真。結束バンドの上にナイロンクリップ2個をネジ止めしておく。
右:排気側からの写真、木枠はファンモータが入る大きさに折り曲げるときに使ったも ので、完成後はこの端から下50mm付近に金属アングル(ステン曲げ75mm×75mm)を ビス止めしておき、あとでファンモータを30~50mmの位置に挿入する。

簡易型Bの完成写真
図100.16 簡易通風筒Bの完成図、ただしファンモータ部には、まだアルミ泊接着の断熱 シートは巻いていない。
左:横から撮影。雨除けは自由に角度を変えることができ、運搬時は折りたたんで ファンモータ部に重ねる。
右:吸気口側から撮影。ガイドは外径55mm、肉厚1mmのたて樋(KQ523H, 55MI)を切って 長さ40~50mmに作り接着しない。

例3:簡易通風筒C(KONDO-15C)
必要な部品はS型にほとんど同じである。
・ 水道配水管の接続具(インクリーザーVN-IN100×65:上側大円筒の内径=114mm、 外径=124mm、下側小円筒の内径=76mm、外径=83mm)・・・接続部
・ 排水用塩ビパイプ(VU65:内径=70mm、外径=75mm)・・・外筒用
・ 水道用塩ビパイプ(VP25:内径=24mm、外径=31mm)・・・内筒用
・ 低発泡塩ビ板(厚み5mm)・・・センサー固定材
・ 低発泡塩ビ板(厚み2mm)・・・ファンモータの固定枠材
・ 塩ビ板(厚み1.3mm)(雨どいの軒継ぎ手)・・・外筒・内筒を繋ぐ羽
・ ステンレス曲げ(ステン特厚金折SUS304, 75×75)2個・・・ファンモータ固定枠材
・ プラダン(灰色)・・・ファンモータ部・排気部材
・ アルミ接着の断熱シート(SANYUのアルミフォーム、あるいは小久保工業所のアルミ 押入れシート:ポリエチレン・PET・アルミ蒸着)・・・外筒断熱、プラダン劣化防止材
・ その他(4mmネジ、硬質塩化ビニル管用接着剤、ウルトラ多用途ボンド、バスボンド、 ほか)

簡易型Cの接続部
図100.17 簡易通風筒Cの通風部と接続部。
左:通風部を上から見た写真、
右:接続部を上から見た写真(基準通風筒S型と同じ)。

ファンモータ部は、灰色のプラダンを362mm×200mmの長方形に切り、図100.8右図 のように白色枠に当てて折り曲げ、ビスで固定する。そののち、他方を接続部(水道配水管 の接続具)に入れてビスで固定する。

通風部の仕上げは、断熱用のアルミホーム(ポリエチレン・PET・アルミ蒸着シート)を 幅約130mm×長さ900mmに切り、外筒の外側に3回半巻き付けて接着する。アルミホーム の幅は外筒の仕上がり寸法に合わせた幅である。

分解掃除のときは、通風筒は支柱に固定したまま、通風部と接続部を繋いである化粧ネジ2個 をゆるめて通風部のみ取り外す。センサーは接続部に止めた状態で汚れを取り、通風部の 外筒・内筒間と内筒内壁を掃除する。

センサー固定方法・寸法
図100.18 簡易通風筒Cの完成写真、ただし、センサーとファンモータは付けてない。
左:吸気口側からみた写真、
右:全体の写真、下が吸気口、上端に雨除け(1段雨除け)が付いている。

100.2節「放射影響の誤差」の要因(d)で説明したように、センサーの取り付け部から 導線を経て受感部に伝わる微少な伝導熱の影響を防ぐために導線部も内筒内の通風に さらして放熱させる。今回用いたPt1000(立山科学工業製、MOSES030-PT-02)の取り付け 方法の模式図を図100.19に示した。この図は基準通風筒S型と簡易通風筒C型の場合である。

簡易型Cの完成
図100.19 基準通風筒および簡易通風筒Cにおけるセンサーの固定方法の模式図、図中の 数値はmmで表した寸法である。

センサーへの熱伝導を小さくする例
図100.20 センサー固定具からキャップタイ線を伝わってくる熱伝導を小さくする例、 通風筒(センサー5)の場合の寸法と作り方。センサーの先端から40mmの位置から センサー固定具上端付近まで竹ヒゴを半分に割って沿わして15mm間隔でミシン糸で縛り、 キャプタイヤ線が曲がらないように作ってある。


内筒内の通風にさらす導線(直径2.9mmのキャプタイヤ+直径5mm長さ20mmのシリコン 収縮チューブ+直径2.3mm長さ20mmのSUS304測温シース)の距離は50mm以上とした。

透明ABS丸パイプを通したキャプタイヤ線が固定具の下方で曲がるような場合は (センサ-5)、極細の竹ヒゴを沿わしてミシン糸でキャプタイヤ線を竹ヒゴに固定して 真っすぐにする。センサー5については図100.20に示すように、上記の距離は90mm とした。

通風筒が完成した状態で、センサー先端(受感部)は内筒の中心になっているかを確かめる。 もし、内筒内壁に接近していると、内壁にできる内部境界層に入り気温観測の誤差となる ので注意すること。


今回示した各種通風筒は、観測時の支柱への取り付けは簡単にできるように作った。 すなわち、通風筒に付けた丈夫な1.5mmのPE補修糸で支柱から出たL金具に吊り下げたのち、 1.5mmのタコ糸で支柱に2~3重に巻き付けて縛る。台風時などでなければ、この方法で 数か月間の観測を行なった経験がある。


要約:高精度通風筒の1台当たりの予算
=通風筒を手製する場合=

データの吸い上げとデータ整理に必要なパソコンとT&R社のコミュニケーションポート (TR-50U2、標準価格=15,000円)がある場合、その他の必要な予算。

(1)気温センサーA級Pt1000オーム・・・16,500円
立山科学工業社製、3導線式、受感部直径=2.3mm、形式:MODS030-01-PT-02
(2)データロガー・・・標準価格=19,000円
T&D社製の小型データロガー「おんどとり」TR-55i-Pt(PtモジュールPTM-3010 付き
(3)ファンモータ・・・3,610円
山洋電気製、低消費電力ファンSan Ace 80(9GA0812P6M001, 12V, 0.06A)
(4)通風筒部品・・・2000円以下

合計予算(通風式気温計1台当たり)≒41,000円
表記のセンサー、データロガー、ファンモータを使用して設計通りに作った場合、放射影響 の誤差は0.05℃程度またはそれ以下であるが、これら以外を用い、設計を変えた場合の精度 は保証できない。



まとめ

現在、気象庁その他で用いられている気温観測用の通風筒の多くは、晴天日中の放射影響 による誤差は0.3~0.4℃ほどある。次世代の通風筒として誤差が0.1℃以下の高精度のもの を試作・試験した。

放射影響には、
(1)通風筒吸気口付近の部材で加熱された空気が気温センサーに直接流れてくる影響、
(2)加熱された通風筒の内壁からの長波放射による影響、
(3)センサー受感部が吸気口を通して地表面からの放射(反射光と長波放射)を直接受ける 影響、
(4) センサーの取り付け固定具からの熱伝導の影響

がある。これらの影響を小さくすることによって、放射影響の誤差を0.1℃以下にすることが できた。今回行なった延べ約3か月間の試験の結果では、最大誤差は0.05℃程度である。

通風筒の構造は、通風部(センサー受感部を含む)、接続部、ファンモータ部~排気部から なる。ファンモータ部~排気部は気象庁などで現在用いられている構造でもよい。 本章ではおもに通風部について試験し、具体的な作り方の4例を示した。通風筒は2重構造 である。

内筒と外筒はともに、金属より断熱性のよい塩ビ管で作り、内筒の内径=25mmを用いた 場合、センサー先端(受感部)は内筒の吸気側先端から100mmの奥になるように作った。

乾電池を電源とした簡易型の通風筒は省電力(12V、0.06A)のファンモータを用いた ものであるが、放射影響の誤差は概略0.05℃以内に収めることができた。

注意:この章で設計・製作した通風筒は十分な時間をかけて試験を行ない、誤差が 小さいことを確かめたものである。通風筒は構造の微妙な違いによって誤差の大きな通風筒 が出来ることがあるので、自己判断で構造を勝手に変えない。これまで、複数人が真似て 作った通風筒を試験した結果から、念のために注意しておく。疑問などあれば、著者・近藤 純正に問い合わせされたい。

参考文献

浅井富雄・武田喬男・木村竜治、1981:大気科学講座2:雲や降水を伴う大気. 東京大学出版会、pp.249.

近藤純正、1982:大気境界層の科学.東京堂出版、pp.219.

近藤純正、2012:日本の都市における熱汚染量の経年変化.気象研究ノート、224号、25-56.

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