これまでの話題(99年10月前半)

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1999年10月 15日(金)

「一人当たりGDPの日米逆転と消費行動」

日本の一人当たり名目GDPは1987年以降97年まで米国を上回っていましたが、98年は米国に再逆転されたそうです。これは円安と日本経済のマイナス成長とに起因しますが、米国経済の堅調さを象徴している出来事ですね。

ちょうど日米の地位が逆転した87、8年頃から90年代初頭にかけて、海外での日本人の買物フィーバーを見ると、日本人はなんと金持ちかと 驚嘆したものでした。ニューヨークのロックフェラービルや欧米のホテル、ブランド物まで企業から個人まで、買いまくっていたという印象でした。

それで今はどうか。企業の財布は傷みきっているので、海外の資産はほとんどが売却済みのようです。逆に日本国内の資産が外国企業に買収されています。消費者はどうかというと、ブランド物の人気は根強く、少しでも安い海外での買物熱は衰えを知りません(実は私も、特に靴などはバーリーやアテストーニなどアウトレットを含めて海外のショップで購入します)。表面的には消費は以前と比べて隔世の感があります。だが、現状は不況下でも歯止効果があって、消費性向を押し上げる形で低迷している消費水準を一定レベルに保っています。

しかしながら、今後日本企業に能力主義、成果主義がとり入れられた場合どうなるでしょう。日本もアメリカのように、高所得層と低所得層とに二極分化するのでしょうか。そうなれば日本の平均的な消費行動を支えてきた中間層、いわゆる大多数の中流層はどのような行動をとるのでしょうか。

上記の問いに対する答えは、経済学あるいは消費行動研究においてもまだ見出されていないはずです。仮説はあっても検証できないですからね。そこで、私の仮説を紹介しましょう。

先ず、“横にらみ消費仮説”です。隣の人が持っているから私も欲しい、という行動パターンです。現在でも消費者の嗜好が同一化し、売れ筋商品が集中していますが、所得階層が明確になってくると、一層その中に同化しようという行動に出るのではないでしょうか。

次に、“個性化消費仮設“です。この仮説は上記の嗜好の同一化、横にらみ消費と対極にあります。自分だけの商品、オリジナルな商品・サービスを手に入れて他者と差異化したいという欲求は、横にらみの一方で更に高まるものと思われます。

また、“一点豪華消費仮説”というのもあるでしょう。たまには豪華に食事や旅行をしたり遊んだり、あるいはお気に入りの高級ブランド品を購入したりする傾向が、より高まるのではないでしょうか。

更に、“超合理的消費仮説”は、日常の必需品を中心に一層リーズナブルに消費するようになるというものです。インターネットによる情報収集によってより安い店で買い物しやすくなる上に、結局一物一価が実現するようになるでしょう。情報感度の高い人ほど超合理的に行動すると思われます。

最後に、“消費しない症候群仮説”です。金持ちも相対的に貧しい人も生活するための物品に不自由しているわけではないですから、一頃流行った清貧ではないですが、反消費といった考えを持つ人達が増えるかもしれません。

さて、上記の仮説が数年後にどう検証されるか、私は真剣にフォローしたいと思っています(傍で冗談ではないのですか、との声がありましたが、asktakaは無視しました)。皆さんはどんな仮説をお持ちでしょうか。よろしければゲストブックに書き込んでいただけませんか?


1999年10月 14日(木)

「近未来の組織イメージ」

先日(12日夜)ゲストブックに、くれはさんという方の書き込みがありました。このページや「今月の提言」を閲覧して激励の言葉をいただいたわけですが、(感謝感激です!)その中に面白い指摘がありました。

つまり(以下は引用)、

「経営は経営者だけではできない。社員の協力(労働力)が必要だ」とひしひしと感じていました。あたりまえのようで、なかなか理解していな い経営者はまだまだ多いのではないでしょうか?労働者がみずから生産性をあげようと努力すれば、命令で動いているそれより余程効率化がはかれると思うのです。(引用終り)

ご指摘のように、この点を理解していない経営者あるいは理解していてもどのように具体化するかが明確でない経営者が多いことは事実だと思います。私は贔屓目に見て、後者の方が多いとは思いますが・・・。

このインターネット時代を迎えて、あらゆる意味で情報が縦横無尽に手に入るようになりました。これまで、トップや管理職が独り占めしてきた情報も、今後は会社側の隠そうとする明確な意思がなければ、誰でも自由に入手できるようになるでしょう(トップの人的ネットワークによる良質の口コミ情報は、何時の時代でも重要で、他者が自由に共有できませんが)。

こうなってくると、各人が入手した情報を解釈してどのように対応するかが重要です。そしてスピーディに対処することが求められます。つまり、いかに迅速に対応できるか、いかに早く生産できるか、いかに早くデリバリーできるかなど、時間やスピードの概念が企業の盛衰を決めるようになるからです。なぜならば、時間はコストに等しいからです。

このように考えると、社員一人一人が戦略眼をもって自律的に動けるような組織体、これが近未来の組織のあるべき姿だと思います。そのためには会社はトップは何をすべきか、社員は何をすべきなのか、現時点ではまだ試行錯誤の段階です。しかし、今言えることは、トップのリーダーシップがなければ、決してそのような組織は実現しないということです。

いずれにしても、変化が激しくかつ大きい時代を乗り切るには、経営トップの先を見た舵取りとリーダーシップが重要です。小学校の学芸会以来、猫の首に鈴をつけるのが私の役回りのようですから、トップの首にも鈴をつけちゃえ、と思っている今日この頃です。


1999年10月 13日(水)

「マネジメントのスピード感覚」

最近米国流の経営手法を導入する話をよく聞きます。一方、日本企業に見習えということで、熱心に研究している国(企業)も存在します。

韓国のある財閥グループでは、日本企業の戦略に注目して情報収集と戦略分析を行っています。もっとも分析の対象はインターネットなどの先端分野ではなく、重厚長大型の伝統産業に属する分野です。

このような動きをみると、マネジメントの世界でも、製品ライフサイクルあるいは雁行形態理論(雁の飛ぶ姿のように主力産業が変化する)が支配しているように思えます。日本はマネジメント先進国の米国企業から学び、 日本企業はキャッチアップしようとしている国の企業から学ばれる。この当たり前と思えることが、実は日本企業にとって大きな危険をはらんでいるとは思いませんか。

先ず、キャッチアップを目指す企業の変化のスピードが日本企業より速ければどうなると思いますか。次に、勘違い、未消化、横並び意識によって日本企業の変化が遅れればどうなるでしょうか。答えは明快ですね。

金融の世界では、今やマーケットは一つですから、変革のスピードアップが進んでいます。しかしながら、メーカーや流通、サービスなどでは、相変わらず国内スピードで走っているようです。今必要なのは、変化への加速、スピードアップだとは思いませんか。


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1999年10月12日(火)

「経営者の使命」

10月7日、8日の両日、第一回日経フォーラム「世界経営者会議」が開催されました。初日の午前中に、ウェルチGE会長と奥田トヨタ会長が基調講演を行いましたが、奥田会長の話は私が以前から述べていた点と合致していて興味深く思いました。

日経本紙によると、奥田会長は「経営者の使命は短期的収益と長期的成長のバランスをとること」と指摘したと報道されています。この指摘は、私が93年のセミナーで“遠近法経営”と呼んでいる内容とほぼ同じです。

93年はバブル経済が崩壊して、企業の業績に暗い影を落とし始めた時期でした。まさかその後も長いトンネルに入るとは、誰も予想していなかった時期でもあります。この時に上場企業のコンサルティングを行っていて痛感したのは、目先の対策に右往左往するトップや経営企画幹部の姿でした。

そこで、私は目先の対策と中長期的施策をバランスよく実行する“遠近法経営”を提唱したのです。

無論、この時期に、ぜい肉落しと将来に向けた体力づくりに真剣に注力した企業も皆無ではありません。しかも、その後の景気回復後も手を緩めずに、継続して手を打ってきた企業も存在します。具体名は出せませんが、そうした企業が今元気なのです。

だが、大部分の企業は目先の対策に追われ、景気が回復し、のど元を過ぎれば抜本的な対策を先送りしてきました。私のクライアントの何社かも同様で、遠近法経営を行っていればな、と思う企業があります。こうした企業は、今になって慌てて手を打とうとしていますが、もはや勝負がついているケースも多いのです。

こうした差は経営トップが、遠近法経営の実践こそ自分の使命であると認識しているかどうかにあります。奥田会長の言葉を真摯に受け止めて、大変身を遂げれば、まだ間に合いますよ。


1999年10月10日(日)〜11日(月)

「今、米国で最もパワフルなビジネスウーマン」

フォチューン誌の最新号(10月25日号)では、『米国のビジネス社会で最もパワフルな50人の女性達』をテーマに特集を組んでいます。日本とは大分様子が異なりますので、さわりをご紹介します。なお、パワーの評価基準は、管理下にある事業の規模、社内での影響力、グローバル経済におけるビジネスの影響力、社会・文化に与える影響などです。

先ず、トップ10は次の10人です。

1位、カリー・フィオリナ(45歳、ヒューレット・パッカード、CEO&社長)
2位、ヘイディ・ミラー(46歳、シティコープ、CFO)
3位、マリー・ミーカー(40歳、モーガン・スタンレー・ディーン・ウイッタ―、マネージング・ディレクター)
4位、シェリー・ラザラス(52歳、オギルビー・マーサー/広告代理店、会長&CEO)
5位、メグ・ウィトマン(43歳、イーベイ(eBAY)/オンライン・フリーマーケット、CEO&社長)
6位、デビー・ホプキンズ(44歳、ボーイング、上級副社長&CFO)
7位、マジョリエ・スカディーノ(52歳、ピアソン/出版・新聞等、CEO)
8位、マーサ・スティワート(58歳、マーサ・スティワート・リビング・オムニメディア/メディア全般、会長&CEO)
9位、ナンシー・ペレッツマン(45歳、アレン・アンド・コー/投資銀行、執行副社長 &マネージング・ディレクター)
10位、パット・ルッソ(47歳、ルーセント・テクノロジー、執行副社長)

トップのカリー・フィオリナは、今年の7月に米国の大企業20に入る企業で初めてCEOになった方です。3位のマリー・ミーカーは、インターネット・アナリストとして最もハイテク株フィーバーを煽った人物として評価されました。5位のメグ・ウィトマンは市場価値で180億ドル(約2兆円)のオンライン・オークションを立ち上げました。9位のナンシー・ペレッツマンはインベストメント・バンカーとして、メディアワンやCDナウを顧客に持ち、今年最も成功した公開企業といわれるプライスライン・ドット・コムのファイナンシャル・ブレーンでもあります。

トップ50人のプロフィールを見ると、最年少は36歳のジョイ・コ−ベイ(26位、アマゾン・ドット・コム、チーフ・ストラティジィ・オフィサー)、最年長は68歳のマリオン・シャンドラー(46位、ゴールデン・ウエスト・ファイナンシャル、共同会長、共同CEO)です。40代が 31人、50代が14人、60代が3人、30代が2人と圧倒的に40代が多い点が目に付きます。

ところで、フォチューン500企業では、女性CEOは3人しかいません。上で述べたフィオリナさんやシャンドラーさんがそうですが、米国でも大企業の女性のトップは1%にも満たないのです。ただ、上級役員まで入れると女性が11%を占めるそうで、日本の大企業とは大違いです。

日本の女性経営者といえば、どちらかといえば創業者型が多いようです。例えば、アート引越センターの寺田千代乃社長、テンプスタッフの篠原欣子社長、ザ・アールの奥谷禮子社長、ダイアル・サービスの今野由梨社長など。 創業者型でないのは、西武百貨店の坂本副社長(通産省出身)、ザ・ボディショップ(イオンフォレスト社)の労働省出身の木全前社長の後任、博報堂出身の蟹瀬さんなど社内から昇進した人達ではないケースが多い。

こうして見ると、米国では社内昇進やキャリアを積んでヘッドハンティングされてトップになった女性が多い。またハイテク・先進分野で活躍している人も比較的多い(とはいえ、米国主要インターネット企業200社の役員中女性は2%に過ぎないようだが)。日本ではいくら雇用均等法ができても、その成果が現れ女性管理職やトップが目に付くようになるには10年はかかりそうです。

しかし、このような環境でも中間管理職として上級管理職を目指して頑張っている人達もいます。その一人 wanwan2号さんは、賑やかなホームページを開設していますので、興味のある方は一度訪問してみてはいかがでしょうか(こちらへ)。きっと元気が出ると思いますよ。

今日は体育の日、“フレー、フレー、女性のトップ・管理職”と運動会のように、日本の働く女性にエールを贈りたい気分です。


1999年10月 9日(土)

「政治の横暴か日銀の怠慢か」

新内閣、自民党の新執行部が誕生して、どうも政治の世界が騒々しいですね。強面の政調会長が登場したからか、早速日銀の金融政策に注文を付け始めました。

欧米では、中央銀行に対するこのような露骨な介入を行うことはめったにありません。もし圧力をかければ、この前(確か今年の始め頃)のドイツの蔵相のように辞任追いこまれることになります。政治の介入が市場のかく乱要因になり、経済にマイナスに働くとの認識があるからです。日本の政治は、地域新興券にみるように、大衆に迎合し理屈よりも人気取りですからね(それから日本の政治家はどうして人相が悪いのでしょうか。かってはインテリジェンスの高い面相だった前大臣の某さんも、長く政治家をやっているとどうも人相が悪くなったような気がします。おっと失礼、これは余談です)。

このゼロ金利時代に、金融の量的緩和が効果薄であることは、少し金融、経済を知る人にとってイロハのイです。にもかかわらず、政府・与党が緩和を求めるのは、景気回復の駄目押しのために10兆円規模の補正予算を組もうとしているからです。国債増発による長期金利の上昇を押さえるには緩和が必要というのが、彼らの言い分です。

では日銀はどのように防戦しているのか。総裁は「ゼロ金利政策の下で金融市場に大量の資金を供給している」といっています。だが、この発言に市場はあまり反応していないようです。なんといっても、このようなゼロ金利が続くのは未曾有の出来事ですから、理論武装も検証も完全でない点は理解できます。だが、今さら「ゼロ金利政策の効果を浸透させる手段の検討を急いでいる」はないでしょう。なにせ、もう95年9月8日以来4年以上も公定歩合が0.5%ですから。

こうして見ると、どうも日銀は専門バカ(実際は友人を含めて、優秀な方が揃っていることは承知しています)が多くて、自らの信じる施策を政治的に上手に実現させる手管に欠けているように思えます。

ルービン前財務長官はグリーンスパンFRB議長と毎週1回は朝食を共にしたそうです。それでは速見総裁、宮沢蔵相と週2回ぐらいランチを一緒にされてはいかがですか。意思の疎通が日銀の独立性を確保する全てではないにしても、政府との連携をアピールできることは確かですから。


1999年10月8日(金)

「新経営手法の導入とさじ加減」

今、日本ではグローバル・スタンダードに基づくマネジメントを取り入れる動きが活発です。しかし、一部では首をかしげざるをえない動きもあります。例えば、株主重視ということで、ROE(株主資本(=自己資本)利益率)を目標に設定するケースが代表例です。

ご存知の方も多いと思いますが、ROEは恣意的に操作できるのです。つまり、ROEは、負債を増やし資本金のウエートを低くしたり、減価償却方法を変更して利益を増加させれば上昇します。そのため、欧米ではROEを経営目標のメインに設定している企業は少なく、むしろキャッシュフローを重視しています。どこで間違えたのか案外こうした例が多いのです。

一方、EVAは税引き後営業利益から資本コストを差し引き、実際に事業が生み出した価値を測るものです。EVAは比率ではなく、額で測られるので、他社との比較がしにくい点に留意すべきです。また、EVAによって各事業の評価をするにしても、これから育成、強化しようとする事業と成熟した事業とでは同じ基準では語れません。これは他の経営指標にも共通する 点です。

EVAは花王での導入事例が有名だし、ソニーや松下電器、オリックスなど導入企業が増えています。いずれも自社流にアレンジして導入していますが、特に、各事業のEVAを担当役員や社員の報酬にリンクさせるやり方が根付いていくものと思われます。

要は、新経営手法の導入にあっては、その目的、趣旨を損なわない範囲で、いかに自社流にアレンジするかがポイントです。ただ、あまり自社流にし過ぎると、導入効果が半減するので要注意です。このへんのさじ加減が導入の成否を分けるマネジメントの綾だと思います。


1999年10月7日(木)

「総理のマネジメント」

自自公連立内閣が発足しました。2000年にちなんで2000円札を発行するというのは、なんとも小渕さんらしい。「早急に経済対策を実施」と総理が会見で述べていましたが、こちらも字句通り迅速に手を打って欲しいですね。

さて、今回組閣にあたって、総理は、各閣僚に何をやるべきかレポートを提出するように求めたとのことです。今後国会答弁は大臣か政務次官が行うことになるようですから、当事者能力が求められるのは当然だと思います。ただ、「何をすべきかのレポート」については、思わず苦笑してしまいました。というのは、政府のトップも、企業のトップと同様なマネジメント手法を取るようになったな、と感じたからです。

現在、トップが各役員に対して業務遂行上のコントロールをするやり方の一つが、「課題と対策レポート」(私はこのように呼んでいます)です。 社長が担当部門の役員に対して、1年間あるいは中期の課題とその対応策の 提示を求めるやり方です。「何をすべきかのレポート」と似ているとは思いませんか?

もう一つのやり方は、経営トップが各役員に課題を与えて、その対応策をレポートさせるものです。こちらは、トップの指示の下に経営企画部門や社長室が中心になって全社的な観点から課題をまとめ、それを各部門に振り分けるやり方です。トップダウン型の手法といえますが、どちらにも一長一短があります。

今日はこの二つの方法の是非を云々致しません。だが、どちらを選ぶにしても、対応策が着実に実行されなければ意味がありません。企業の場合、トップが経営会議などの役員会の場で、進捗や成果を厳しくチェックします。かっては、このへんがルーズな企業も多かったのですが、最近は随分変わっています。

では、各閣僚の施策は誰がチェックするのか。えっ、官僚ですって。もちろん首相ですよね。でも人気取りに追われて、その場の受けを狙った施策を優先するようでは、日本の将来が危ぶまれます。やはり、小渕総理、是非ビジョンをもって日本の舵取りをしていただきたいと思います。


1999年10月6日(水)

「トップの変身について」

10月の提言はご覧いただけましたか?今月のテーマは『新経営手法導入を成功させるには』です。私は複雑系の理論でよくいわれる「経路依存性」(こちらを参照)が、マネジメントにとって重要だと思っています。そのため、安易に新経営手法を導入することには反対です。しかしながら、今回はあえて導入を前提にして、トップの変身こそ成功の鍵を握る、と提言しました。

すると、トップが変身するには10年かかるが会社はそれまでもたない、と50代男性の声あり。俺がやった方が早いかな、とは30代の自信過剰男の別の声。また、推定年齢40歳の女性からは、原始女は太陽であった、女性に社長をやらせなさいよ、との声あり。いやはや、トップの変身の話はタブーですかねぇー。

この点では asktaka も反省しきりです。どうも日頃動きの遅い日本企業にいらいらしているせいか、どこかでトップのリーダーシップに期待しているんですね。でも、私は真剣に、今こそリーダーシップが必要だと思っていますよ。

あの小渕総理も最近変わりましたね。今度の総選挙がどうなるか分かりませんが、大分リーダーシップを発揮しているようです。例えば、加藤派の処遇など立派なものです。何ですって、あれは単なる報復人事ですって。 しかし、人事権を持たないトップじゃしょうがない。え、米国じゃCEOも何時首が飛ぶか分からないって。そりゃ困りましたね。やはり、そんなシステムは日本企業には不向きですね。今は全権を持ったまともなトップが、10年は変革をやる気にならなければね。

このようなダイアローグを続けていると、今朝のミーティングに遅れますので、今日はこの辺で。


10月5日(火)

「マニュアルの功罪」

東海村の放射能漏れ事故の原因がようやく分かってきました。なんと「作業マニュアル」自体が、原子炉等規正法に違反していたというのだから、話にならない。このような事故は今後絶対にあってはならないことです。しかし、私はこの事件は他の産業、業界にとっても決して他人事ではないと思います。

私がいいたいのはマニュアルの功罪です。昨今、マニュアルはいたる所でお目にかかります。工場の現場から本社の管理部門まで、流通・サービスでは店の現場からスーパーバイザーまで、どこにもマニュアルが存在し日常的に利用されています。確かにマニュアルは新人教育や日常業務のチェックリストとしては便利です。ところが、工場でも店舗でも同じマニュアルを使っていながら、各工場、各店舗で業績・成果が異なることはよく知られています。

このような結果を生むのは、工場長や店長などの現場の責任者の運営能力に差があるからです。つまり、マニュアルの前提になる企業あるいは事業の基本的な理念を十分に理解しているか、マニュアルをベースにしながらそれを超える創造的業務を提供できるか、この2点で運営力の差が出ているのです。

外資系企業の現場のオペレーション・マニュアルを見ると、10センチから20センチのファイルにまとめられていることが多く、内容も懇切丁寧です。その出来映えには感心するばかりで、日本企業もそのようなマニュアルを模倣しょうとしています(何せマニュアルづくり専門のコンサルタントもいるくらいですから)。

しかしながら、本質的には、マニュアルの運用責任者の理念、倫理観、顧客に対する考え方が重要です。一度マニュアルを捨てて街に出よう。いや、違った“理念に戻ろう”。


1999年10月4日(月)

「ソニーの盛田氏の訃報を聞いて思うこと」

昨日TVを見ていたら、お昼前にテロップが流れた。ソニーの創業者、盛田昭夫さんの死去を伝えたものでした。

そういえば、私は盛田さんの話を2回聞いたことがあります。1回は日本語で、もう1回は英語でした。いずれも学生時代のことで、たしか英語での講演は赤坂にあったアメリカンセンターで聴いたような気がしますが、定かではありません。話の中身は忘れましたが、はっきりモノを言う方だという印象は鮮明に残っています。日本を代表する国際派トップで、海外での評価も高かっただけに、盛田さんの亡き後を誰が埋めるのか。日本のトップ、頑張れ!そして合掌。

ところで、もう時効だと思いますが、17、8年前にソニーの若手社員とプロジェクトを組んで、一緒に仕事をした時期があります。もちろんプロジェクトの責任者はマネジャーが務めましたが、実質的な仕事はほとんど入社間もないスタッフがこなしていました。当時、他の会社と比べて、こんなに若手に任せていいのかな、と心配したものでした。無論この心配は杞憂に終わって、彼・彼女達は立派にプロジェクトを成し遂げました。

ソニーは戦後生まれの新興企業だからそんな若手に任せられるのだ(固い言葉でいえば、権限委譲ということか)、と言うのは簡単です。だが、井深氏、盛田氏の両創業者の類まれなチャレンジ精神、好奇心、個性を抜きに、そのような企業風土が出来たわけではないと思う。戦後生まれの企業でも、むしろ伝統的な風土を固守している企業も数多いのだから。

今、世界に通用する偉大な経営者を失って、改めてトップの果たす役割の大事さを痛感しました。


1999年10月3日(日)

「相撲取りは社会人?」

秋場所が終わって1週間が過ぎました。この時期は巡業も無く、お相撲さんが一番のんびりできるそうです。そこで、のんびりした日曜日にちなんで、今日は相撲の話題にします。

7、8年前から毎年初場所と秋場所の後に、ある力士を囲んで宴会をやる習慣になっている。一ノ矢のフアンクラブ「一の会」の例会です。この会では昨年から2回に1回は、一ノ矢自らの手料理、つまり、ちゃんこ鍋を賞味できるのでうれしい(実は28日(火)がちゃんこを食べる会だったのですが、所用で参加できなかったのは残念)。

一ノ矢は元大関朝潮の若松部屋(HPはこちらへ、もうすぐ150000人目でちゃんこ鍋に招待されますよ!)に所属する力士だ。1960年生まれで12月に39歳になり、身長は公表170センチです。だが、私と素足で並ぶと私がちょっと見下ろす感じになるので、実際は167センチぐらいの小兵力士です。そのせいか現在現役最古参に近いのですが、序二段と三段目を行ったり来たりして頑張っています。

また、一ノ矢は国立大学(琉球大)卒でしかも理工系出身の変り種だ。1年に何回かはテレビでも紹介されるので、ご存知の方もいらっしゃることと思う。何といっても卒論がアインシュタインというのが面白い。そのうち相対性理論と相撲力学なんて名(迷)論文が誕生するかもね。

若乃花や貴乃花のとかくの噂を耳にすると、若くして上り詰めた人間特有の世間知らずな面を感じます。だが、一ノ矢は若松親方が力士兼マネジャー役を任せているくらいなので、知恵も常識もある社会人です。

スポーツ業界でもトップに立つ人は、なかなか明敏であるし、自然と人物も出来てくるものです。若貴兄弟の場合は何が欠落しているのかな。いわゆる他人の釜の飯を食べていないことによる甘えなのか。一ノ矢と比較しても、番付が違うといわれるかもしれない。しかし、若貴も一ノ矢のように少しは社会人としての視点を持つべきだと思う。えっ、相撲取りは社会人じゃないって。そんなぁー・・・・・。


1999年10月2日(土)

本日の話題は、9月28日付けのゲストブックに書いた原稿に加筆訂正して再掲したものです。


「インターネット時代の近未来」

ビジネスウィーク最新号(10月4日号)では、70周年記念として "The Internet Age"をテーマに 特集を組んでいます。全136頁中77頁を占める力の入った特集 です。ビジネス、政治、社会に分けて近未来のインターネット時代 を展望したものですが、見出しを拾ってみると、次の通りです。

<ビジネス>

経済:世界の次の成長エンジン
戦略:明るい希望と恐ろしい不安
製造:顧客が主導権
マネジメント:若い有能な人材(ブレインパワーをもつ)求む
金融:世界は一つのセリに
上海からの手紙:独裁国家とE革命〜圧制的な上海はネット起業家 達(Netrepreneurs)を阻害するか?

<政治>

政治運動:ボーダレスな活動家達
規制:野生のWebを飼いならす〜 法的規制なしにはネットの成長は弱められる

<社会>

生涯教育:学校は終わらない
インターネットと私:モデムで働く
Eメール:好むと好まざるに関わらず、あなたはメールを受け取る
ブラックスバーグ(VA)からの手紙:小さな町の出来事は米国のデジタル面での不平等を示す
新しいコミュニティ:バーチャル・ホームに夢中

見出しだけですが、インターネット時代のもつ明暗、ビジネスのネタが想像できると思います。個人的には、“学校は終わらない”というフレーズにこの分野の将来性を感じます。皆さんはいかがですか?

今日はこの辺で失礼しますが、近々「独り言」にて取り上げたいと思います。


1999年10月1日(金)

おはようございます。本日からこの「今日の話題」のページで、毎朝簡単なメッセージをお届けしたいと思います。よろしくご愛読のほどお願い申し上げます。


「企業格差の原因は?」

さて、昨日は東海村の放射能漏れ事故や中日の優勝決定など、何かと話題の多い一日でした。放射能漏れも歓迎できないニュースでしたが、巨人フアンにとっては予想できたとはいえ悪夢の一夜だったと思います。両方ともいやな思いを早く水に流せればよいですね。

ところで、今日から下期がスタートします。いろいろな業界の方の話を聞いていると、下期の業績も手放しで喜べるような状況ではないようです。ただ、業績といっても最近業界内の企業格差がとみに拡大する傾向にあるので、同じ業界でも喜びと悲しみが交差しているのが現状です。

実は、私は7、8年前から企業格差時代の到来を指摘してきました。しかし、当時はバブル崩壊後の経営システム改革の度合いと継続性に注目して、そのような見通しを述べていました。だが、現在の企業格差の原因は、私見では、戦略の差、トップのリーダーシップの差にあると考えています。

皆さんの会社の戦略とトップのリーダーシップをみると、将来性をどのように占えますか?(えー、あまり期待できないですって。でも君子(トップ)は豹変するといいますから、分かりませんよ!)


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