「孔雀の雄はなぜ美しい? / 長谷川真理子」
をやっと読み終えました。読みやすく面白い本でした。
性選択を説明するためのいくつかの理論が紹介されていますが、
これらはすべて1つの現象を部分的に別の視点から説明するもの、
と解釈できます。
どれか1つだけが正しいとか間違っているとかいうものではないように
思います。
「性選択と利他行動 / ヘレナ・クローニン」の内容も踏まえて、
性選択についての僕の考えがまとまったので、ここで書き留めておきます。
R.A.フィッシャーの「ランナウェイ・プロセス」が最も大きな部分を
説明する理論だと僕は考えています。
提案されているモデルのいくつか:
性選択とは関係なく、生存のために必要な感覚器官と行動が発達する。
発達した感覚器によって、相手が
◆3 優良遺伝子効果
何らかの要因(初期には感覚便乗モデル、後には遺伝子の変異による 知覚の変異)により高い頻度でペアを組んだオス・メスの遺伝的形質が、 生き残る上で相対的に有利であるならば、その個体はより高い確率で生き残る。 (不利ならば低い確率で生き残る。中立ならば現状維持で、 ランダム / カオティックに揺れる。)
成長し成熟するころには、その形質を持った個体が多く生き残り、 種の中でより多くの割合を占めるようになる。
その有利な形質は複数の要素が同時にはたらくこともある。 また、別の形質が進化上の別々の時期にはたらくこともある。
◆4 ランナウェイ・プロセス
何らかの要因をきっかけとして集団中の多数派となり始めた遺伝的形質が、 次の世代でも相対的有利さ(生存の有利さ、繁殖の有利さ)を持つならば、 その遺伝的形質を持つ個体割合はさらにより多くなる。
形質がある方向に誇張されつつ遺伝して行く、という現象だけを 見ると、これは「ラマルク進化的」に、獲得形質が発達するように 見えますが、そのプロセスの本質は異なるものです。やがてその形質が生存上の有利さを失ってゆき、中立なものとなる時点で、 個体がその形質によって受ける総利益は最大となる。
しかしそこからも、形質の発達はそのまま進み続ける。
(形質の生存上の有利さは加速度として働く。)
形質が過剰に発達し、個体にとって相対的に生存上不利
(繁殖上の有利さを生存上の不利さが上回る)になり始めると、
生存確率が下がり、形質の発達にブレーキがかかり始める。
生存上の不利さ(コスト)が更に大きくなり、繁殖上の有利さとの 差し引き総合値が致命的な所まで来ると、
◆5 その後
平衡状態での形質は、時間が進むと
(追記)
ザハヴィの「ハンディキャップモデル」は、形質の最利益ポイントを
過ぎてからの、不利な形質が発達していく過程を説明するのに都合が良い
ひとつの理論だと僕は思う。
だから、過剰な発達が停止してすでに平衡状態にある現在の生物の形質を
見た時には、ハンディキャップモデルを適用するとうまく説明できる。
T.Minewaki / minew@post.email.ne.jp