(株)新評論から

schoolforlife

1,『生のための学校』

 デンマークに150年前に生まれた世界最初の社会教育の学校、試験もなく資格も問わないフォルケホイスコーレの全貌を、その創始者グルントヴィ、あるいは近代デンマークの社会と文化など含めて、総合的に解き明かしたわが国最初の包括的な書。93年に旧版が出て、新版には、読者から要望の多かった義務教育段階のデンマークのフリースクール運動の解説を付した。これもフォルケホイスコーレ運動から生まれた学校である。
 また、わが国のフォルケホイスコーレ運動も紹介している。

生活クラブ生協書評紙「本の花束」(4月号)での紹介(画像)

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2、『ドイツ自由学校事情』- 子どもと教師で作る学校

germanschool

 ドイツといえばシュタイナー学校が有名であるが、これは独自の思想のもとにつくられた学校であり、いわゆる日本人がイメージする「フリースクール」ではない。ドイツにも「フリースクール」はあり、とくに68年世代以後、自由で権威的でない手づくりの教育を模索する動きが活発になった。現在ドイツに存在するフリースクール(自由学校)を訪ねて取材して書いたこの書は、これからフリースクールをつくろうと考えている人には、カリキュラム、教育方法、行政との対応など、多いにためになる本だろう。ドイツも日本と同じく、権威主義で、行政の力が強く、状況がよく似ているからだ。シュタイナー学校以外のフリースクールを初めて紹介したものとしても、貴重な書物である。
 著者の栗山次郎さんは九州工業大学のドイツ語の先生。ほかにも有名なスペインの「ペンポスタ共和国」の本も訳している(『子ども共和国 - 自由への壮大な試み』風媒社)。もちろん当会の会員でもある。

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3、『身体文化のイマジネーション』- デンマークにおける「身体の知」

bodyculture

 身体文化が社会や民族のアイデンティティと深くつながっていることを前提に、デンマークや北欧、あるいはフォルケホイスコーレ運動の身体文化観のもつ今日的意味を、哲学、人類学、社会学、心理学などの知見をもとに、解き明かしたもの。これを読めば、フォルケホイスコーレ運動やデンマーク体操がいかにポスト近代の身体観をもって、デンマークの近代を作り上げたか、そしてそうした地域の独自性が世界的規模の産業社会の一律的な身体文化によって侵食されているかがわかるだろう。フーコー的な規律概念の見事な応用例としても面白い内容になっている。スポーツを見るのは好きだが、するのはどうも、とか、あの体育会のノリがついていけなかったという方にとくにお勧め。デンマークの身体文化はあなたたちこそが新しいスポーツをつくりだしうるのだということを示してくれる。
 著者のヘニングは、デンマークのホイスコーレ付属の「身体文化研究所」研究員でコペンハーゲン大学などでも教鞭をとる。ヨーロッパでも注目のスポーツ社会学者。協会のこともちゃんと知ってます。訳者の清水 諭さんは筑波大学の体育の先生で、ヘニングのところで一年間研究された。もちろん会員です。

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4、『共感する心、表現する身体』

ausdruck

 私(清水 満)は、ドイツ思想を専攻で、この方いろいろ勉強してきたが、これとデンマークの教育や身体文化の共通点が、人間を表現する者と捉えることだとわかった。そうした表現的人間論を展開したもの。この本を読めば、神戸の少年殺害事件や相次ぐナイフ殺傷事件が起きるのは、現代の日本人に「表現」という見地が欠け、身体観の貧困に一因があるということがわかるだろう。また、毎日の暮らしで疲れ切って自分の生きる意味を見失いがちな人にも、日常の再発見として、有益ですよ。
 ライブラリに以下の章の抜粋を掲載しています。

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