スノー・トレッキング

 

八ヶ岳高原

第一日

2006年2月17-19日、冬の八ヶ岳高原ロッジ(Hotel Serial No.132)で息子夫婦とスノー・トレッキングを楽しもうとスタッドレスタイヤを装着して出発。

曽我の梅林は満開であった。河口湖で昼食。快晴で御坂峠からは八ヶ岳連峰が真っ白にみえた。須玉ICから佐久甲州街道を清里に向かって登って行くと八ヶ岳は次第に大きな姿を広げる。振り返れば、鳳凰三山と甲斐駒ケ岳が存在感を示している。

15:30チェックインまで時間かせぎしようと2002年9月に訪問したことのある八ヶ岳倶楽部(Botanic Garden Serial No.172)に立ち寄ろうかとも考えたが1998年7月に清里を訪れたとき一泊した清里の牧場の中にあるカントリー・イン・ザ・クラシック(Hotel Serial No.102)を再訪問した。8年間で大きな変化がなかったのはうれしかった。

牧場の上に”ともにこの森”というコンプレックスが出来ていたのが唯一の変化だろう。ミルクプラント、”だいずや”という豆腐店、清里ジャムというジャム・ファクトリー兼カフェ 、アン・グーテ・ア・ラ・カンパーニャ(Cafe Serial No.222)というパティスリーが同一コンプレックス内にある。パティスリーでケーキとコーヒーで一休み。

清里の牧場とカントリー・イン・ザ・クラシック

昨年の暮れかた1月にかけて日本海側には記録的な大雪が降ったが、清里では寒いだけでたいした雪は降らない。それでも例年ならこの牧場も雪で真っ白だというのに数日前に雨が降って消えてしま ったという。

佐久甲州街道の最高地点から左の農道に入って野辺山高原をゆっくりと走る。赤岳、横岳の景観を楽しむ。農道の際には残雪がある。

野辺山高原からみた八ヶ岳の赤岳と横岳

杣添川(そまぞえがわ)を渡って八ヶ岳高原ロッジが建設された40年前に300万本植林したという見事なカラマツ林に入る。霧氷が太陽光を屈折してキラキラと輝いて見事だった。気温が零下の時、霧が発生すると直径5ミリ程の球形の氷が小枝に結氷して出来るのだという。

八ヶ岳高原ロッジのカラマツ並木の霧氷

折角スタッドレスタイヤを履いてきたからと富士見地区(標高1,750m)まで登ってみる。途中から路面が完全に固い氷に覆われているところまで来ると2輪駆動では後輪が空転し尻を振るようになる。4輪駆動(4h)に切り替えれると問題なく走行できた。

チェックイン後。ロッジの周りの林間を散策する。

レストランの窓からは東方に男山(1,851m)や天狗山(1,882m)が見える。その左手には御座山おぐらやま2,112m)が見えるはずだ。

 

第二日

ロッジのロビーからはガラス窓越しに庭に飛来して餌をついばむシジュウカラコガラヒガラを双眼鏡で観察できる。エナガも来るらしい。エナガのメスの浮気の習性について戸隠探鳥会で山階鳥類研究 所の山岸所長から学んだが、その後、同じ山岸所長が「鳥たちの失楽園」という一文を中央公論に書いていることを同期生から教わった。

八ヶ岳高原ロッジまで来れば、林間には雪が残っている。朝食後、登山靴を履き、ホテルのストックを借りて美鈴池まで林間の散策路を散歩した。気温は零下だ。美鈴池はダムを作って小川を堰きとめた人造池である。結氷した美鈴池の向こうに八ヶ岳が更に迫力を持ってそびえる立っているのが見える。美鈴池は別荘とロッジの飲料水確保のために作ったのかと思ったが、ホテルに聞くと野生動物のために作ったのだという。人間用の飲料水は伏流水を利用しているという。ちなみに別荘の下水は浄化槽のみで浄化槽からの排水は自然沁み込み方式とのこと。

帰路、凍結した道路でグリーンウッド夫人が転倒する。手を突いたとき、手首を骨折したようだ。ただひび割れした程度だろう。次第に腫れてきたのでシップ薬を巻いて固定し、鎮痛剤を飲んで日をすごす。

グリーンウッド氏はジープでJR野辺山駅まで息子夫婦を迎えに出向く。JR野辺山駅はJRで一番高度の高い駅(標高1,350m)と表示がある。ロッジの送迎バスも出迎えにきている。

八ヶ岳高原ロッジのカラマツ並木から見通す金峰山(きんぷさん

八ヶ岳高原ロッジが主催するスノー・トレッキングはスノー・シュー、ストック、双眼鏡をセットとして貸与してくれる。通常はホテル周辺の林間をスノー・シューを履いて散策するという。ところが雨で雪が少なくなったため、4輪駆動の小型バスで富士見地区の最高点まで移動し、そこからスノー・シューを装着して歩いた。歩き出す前に足首、手首、首の柔軟体操をする。

杣添尾根の登山道を登り、途中から林間の川筋を歩き、南八ヶ岳林道に出てヘリポートまで往復した。ヘリポートは負傷したと登山者をヘリで病院まで搬送するために建設されたという。ここからは富士山や浅間山は見えるが八ヶ岳本体は前山にさえぎられてみえない。

スノー・トレッキング

ガイドがカモシカ、イノシシ、テン、ウサギの足痕の見分け方を教えてくれる。シカは足が細く、雪のある間はもっと高度の低いところに移動しているとのこと。 動物の足痕などのフィールドサインを探して野山を歩き回ることをアニマル・トラッキングというそうだが、これも探鳥と同じく楽しみの一つとなろう。

標高1,750mの 富士見地区はミズナラ(1,100m以上)、ブナ、白樺の雑木林が、コメツガ、シラビソ、ダケカンバ(1,500m以上)に遷移する場所だ。 ガイドが密生するカラマツの幼木を指して共倒れになるのを心配しているという。40年前に植林し たエントランスのカラマツ林も密植しすぎていて間伐しなければいけないのだが、コストがかかり過ぎてまだ手をつけられないという。

ダケカンバとカラマツの幼木を背にして

天皇ご夫妻が来られた時もガイドを務めたが、お二人はとてもよくご存知なので、案内人としてはよく勉強しておかねばならないという。

バスでロッジに帰り、ロビーでコーヒーをいただきながら、ガイドとの質疑応答が続く、このロッジと別荘地は西武百貨店が資本を出して始めたものだそうで今もその資本関係は継続しているとのこと。平屋建てとレストラン部分が初期のもので、斜面を利用した3階建ての新館はその後の増築分という。グリーンウッド氏は初期の平屋建て部分が好みだ。コストも安いので四季折々に利用させてもらっている。

案内人は紅葉が美しくなる場所は、水分が多い渓谷という。理由は寒くなっても水が蒸発して霧になり、放射冷却を防止して紅葉になる化学変化が生じやすい気温が7oC前後に長く維持されるからという。西沢渓谷の紅葉の素晴らしさのヒミツのようだ。

今年の日本海側の多雪も12月末のまだ日本海の水温の高い時期に-40oCの寒気団が日本海に進出したため、大量の水分が蒸発したために生じたという。その証拠に2月になっての降雪量は減少しているという。

夜はフルボトル1本をあける洋食。お目当ての満天の星空はあいにくの曇り空で断念。

 

第三日

グリーンウッド夫人の怪我で真っ直ぐ帰宅。(翌日骨折と判明、ギブス生活4週間とのこと)息子達は自由行動。

野辺山高原は何度も南下したが、今回初めて南アルプスの主峰にして富士山に次ぐ第二位の高峰である北岳の真っ白な姿をはじめて目撃する。ちょうど鳳凰三山の向こう側である。甲斐駒ケ岳もその右手前に壮絶な姿を見せていた。 いつもは雲の中だ。少しかすみがかかっていたので写真撮影は次回とした。

 

まとめ

スノー・シューは林間の道なきところを歩けるのでなかなかよいものだ。 冬山登山のようにただ高きを求めてガムシャラにのぼるのではなく、自然を観察するという要素があるところが時代の要請にかなった遊びという感じがする。

注意事項としては金属性の爪がついているので滑ることはないが、下りで足を上げて歩かないとつまずく。

2003年夏に登った入笠山にゅうがさやま)でもスノートレッキングを宣伝している。JR富士見駅からのゴンドラリフトを利用するもので東京の住民には便利だろう。一泊すればスキーとスノー・トレッキングの両方が楽しめる。レンタルの道具一式とガイドを用意しているという。

February 27, 2006


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