フィールズ氏との往復書簡

鄭和の航海、白洲次郎、靖国神社、石油価格上昇

May 27, 2006 5:31

鄭和の航海

グリーンウッドさん、

ビデオ収録していた題記についてのNHK番組を観ました。鄭和あるいは彼の部下がアメリカまで行ったのはほぼ間違いないようですね。米欧は認めたがらないでしょうが。この点の議論は別としても、世界の大航海時代は鄭和によって幕開けされたのは事実のようですね。彼を見出し航海を支えた明の永楽帝の先見性は見事なもの。彼の死後航海を止めさせたばかりか、将来二度と金食い虫の愚行 (と,当時の官僚は信じていた)を繰り返ないように一切の資料を破棄したのなどは真に小賢しい役人のやることで、最近の日本の官僚を見ている思いでした。彼らの浅知恵が多少は当時の民生に貢献したもののその後の中国人の国際性を奪い、1800年代の被殖民地化を招いた大きな要因になったことを思うと、小賢しい役人はいつの時代でも罪が重いものですね。歴史の皮肉というか面白いと思ったのは、国粋主義の権化たる毛沢東に苛められつつも何とか生き抜き、彼の死後返り咲いたケ小平が鄭和を復活させたこと。歴史というのは時々このような面白いことを仕出かす。

それにしても、鄭和が大航海時代の幕開けをし、コロンブスやウ゛ァスコダガマらより70-80年も前にインド航路・アメリカ大陸を発見した、ということが証明された時の欧米人の対応はどんなものでしょうね。直ぐにも歴史の記述を書き変えるほどに成熟しているか、あるいはあれこれとしぶとく反論を試みるか、興味をそそられます。NHK番組み中解説していたヨーロッパ人歴史学者・イギリスの元潜水艦艦長らは、鄭和の業績は歴史上の事実にほぼ間違いないような口振りでしたが-−−。

お陰で、題記の件が面白くなってきました。

フィールズ
 

 

 

 

2006年6月1日 18:28

Re: 鄭和の航海

フィールズさん、

ただいま1週間ぶりで帰宅いたしました。

NHKの番組はギャビン・メンジーズの「1421 中国が新大陸を発見した年」をベースにしておりますがまだ仮説のためか、控えめの紹介で少し物足りなく感じました。

英国人がこれを書いたことに驚きを感じました。航海者の六感ということでしょうか?

グリーンウッド
 

 

July 09, 2006 4:22 PM

白洲次郎

グリーンウッドさん、

暑中お見舞い申し上げます。ご無沙汰しています。

電車通勤の要領も良くなり、通勤読書の量が多くなりました。最近一気に面白く読んだ本に、「プリンシプルのない日本」(白洲次郎著、新潮文庫)というのがあります。1953年頃に「文芸春秋」に寄稿したものを文庫本としてまとめ出版したものですが、当時これだけ”正論”を堂々と述べていることに驚きもし興味を引かれた次第。白洲次郎はGHQに強かった、という程度の事は聞いたことがありましたが、だからといってこの人物にはこれまであまり興味を持っていなかった。が、この本を読んだ事により、彼がなかなかの人物であったことが判ります。何より「葬式無用、戒名不用」という遺言が良い。ご一読することをお奨めします。もし既にお読みでしたらご感想をお聞かせ願います。

フィールズ

 

 

2006年7月9日 17:37

Re:白洲次郎

フィールズさん、

お元気のようでなにより。こちらは庭仕事でハゼの木が原因のカブレで医者通いしてます。どうもハゼには敏感で困っています。

さて白洲次郎の、「プリンシプルのない日本」を読まれたらしいですね。これ今年3月武相荘で購入して読みました。同時に「白洲次郎の流儀」も読みました。


白洲次郎を知ったのは昨年5月で女房の友人が「風の男 白洲次郎」が良かったので読めと貸してくれたからです。ついでに白洲の連れ合いの白洲正子の本も数冊読んでしまいました。たとえば「白洲正子自伝」と「西国巡礼」です。

まあかなり白洲ファミリーには入れ込んだというわけです。

グリーンウッド

 

 

July 15, 2006 10:38 AM

RE: 白洲次郎

グリーンウッドさん、

白洲次郎に関する本を何冊も既にお読みだった、とはご同慶の至り。小生は、「プリンシプルのない日本」に続き「風の男 白洲次郎」を読んだ所です。青柳恵介の著作は、白洲次郎の背景を知るには格好の資料ですが、本人の人となりを知るにはやはり”生の意見を聞くに限り”ます。それにしても、今日出海・河上徹太郎・小林秀雄 と、付き合っている顔ぶれがいいですね。小生は町田市能ヶ谷の直ぐ近くに(歩いて20分余り)住んでいるのに、”武相荘”の所在を知らなかった。早速今日にでも訪ねてみます。我々世代にとっては、第二次大戦あるいは戦後の混乱・復興はじかに体験したことで、歴史の中の一出来事として認識するには未だ早過ぎるように感じています。現在の中国や北朝鮮との問題も後遺症の一つでしょうが、これらに対処するに当たって白洲次郎ならどうしたであろうか、と想像をめぐらすのもまた一興。お会いした時にご高説お聞かせ下さい。

フィールズ

 

 

2006年7月15日 16:21

RE: 白洲次郎

フィールズさん、

メールもらったのがキッカケとなって「白洲次郎のこと」というページを作らせていただきました。


白洲次郎語録もまとめまてみました。


グリーンウッド

 

 

July 17, 2006 10:37 AM

RE: 白洲次郎

グリーンウッドさん、

昨日 「武相荘」に行ってきました。娘達が通っていた中学校が近くにあり、その付近には小生もしょっちゅう行っていました。小生宅から徒歩だと30分余。思っていたのより狭隘な土地、というのが第一印象。都内の便利な所からこんな田舎に引き込んだのは、 「日本はやがてアメリカと戦争を始め、負け方を知らないから‐‐‐‐」 という理由だけだったのかどうか。もっと強い思いがあったのでは? ”政治の悪い流れ”を止めようともしない指導者あるいは国民に対する絶望感プラスそれを如何とも出来ない自分の無力感から何もかも嫌になった、というのが根底にあった、というのは穿ちすぎ?

白洲語録をまとめたのはお見事。こうしてまとめて見ると、彼の物の見方には一本筋が通っていて”成る程”と思わせる物であることがはっきりする。これがプリンシプルを持っていると言う事でしょうが、彼は何事にも思い切りが良かった様ですね。彼の能力を評価し、官の常識を超えたやり方で彼を登用した吉田茂という人物もまた傑物ですね。
 
それにしても、何故今 「白洲次郎」なんですかね? 靖国参拝、中国・韓国との領土問題、北朝鮮問題に対する政府・外務省のやり方に対する苛立ち、あるいはこれらに端を発した憲法改正を含む一連の戦後処理の見直しに当たり、当時の主役達の考え方への強い関心が白洲次郎に向かわせているのでしょうか?それにしても、”外務省役人は お公家さん” というのはぴったりした言葉ですね。

以上取り留めない想いを一言。

フィールズ

 

 

 

2006年7月17日 10:51

Re: 白洲次郎

フィールズさん、

私は千代田にいたとき、「会社のこの状態は日本が第二次大戦に向かってまっしぐらに坂を転げ落ちるようだ」と上司のM専務に言っていながらただずるずると何もできなかった自分に嫌悪感を抱いていたわけです。

白洲氏のスカッとした言動をみてうらやましいという思いが涌いたのですが、多分彼の最近の人気は私のように思っていたサラリーマンが日本に大勢居て、それが彼らの心を揺さぶっているのではと思うものです。

この白洲氏を教えてくれたご婦人も夫は猛烈サラリーマンで銀行員でした。ご多分にもれず不良債権を抱えて吸収合併され、早々と職を失った人です。ゴルフ以外仕事しか趣味のない人だったので、退職後数年ブラブラしてましたが、退屈してしまい、なんでもいいと最近働きに出るようになったそうです。

グリーンウッド
 

 

 

August 15, 2006 12:41 PM

靖国神社詣

グリーンウッドさん、

いつまでも暑さが続きます。今年は梅雨明けが遅かった分暑さのピークが今頃になって来たようですね。
 
小泉が老いの一徹で靖国神社詣でしましたね。彼自身は溜飲を下げた、といところでしょうが、後継者はやりにくいでしょうね。尤も、安倍晋三の勝利は動かないでしょうし、この靖国神社詣でと絡んだ中国との問題はしばらく続くでしょう。最近時節柄、司馬遼太郎対談集および半藤一利対談集で日中事変・第二次大戦に関する項目を読みました。対談中、昭和初期から急速に軍部が力を増して行く流れは日露戦争勝利直後に始まっており、この間の推移についての知識無しには、”いかにして軍部が狂気化して言ったか”・”何故そのような軍部の狂気化を止められなかったか” といったことは理解し難い、ということが言われています。また、鈴木貫太郎首相・東郷茂徳外相が任命された後でも、陸軍は上下を問わず戦争終結に反対し、昭和20年 8月15日当日早朝首相宅が軍部のはねかえっり組みに焼き討ちされた、という事実は終戦後も戦争推進派の力はしぶとく残っており、これらがA級戦犯靖国合祀に繋がった、というように読めます。

司馬遼太郎・山本七平は、軍部特に陸軍は、現実を認識しようとするリアリズムが全くなかった、という点で一致している。お二人によると、陸軍上層部は、信長時代の装備ながら日本兵の強さを持ってすればソ連・アメリカに勝てる、と本気で信じていた。この意味で、彼らの大半は”軍人”ではなく、自分達の信仰を全うするに熱心な”官僚”であった。こういった連中に戦場に送り込まられる兵・国民は哀れだ、とも言っている。
 
毎年この時期になるといろいろなことを学ばされます。戦後はなかなか終わりませんね。
 
Regards,

フィールズ


 

 

2006年8月15日 13:26

Re:靖国神社詣

フィールズさん、

まさにおっしゃる通り。小泉さんの靖国問題に関してはこのHPでもかなり論じましたので、あまりふれません。

カエサルが「多くの人は自分が見たいと欲するものしか見ない」という名言を吐いていますが、人間は感情に支配されていますから、 小泉さんはそうなるのでしょうね。まあ感情がなければ人生も面白くないのでやむをえないところがあるかもしれません。小泉さんの靖国に対するこだわりは親父が戦前に郷里鹿児島の知覧に飛行場を誘致したのだが、そこが特攻隊の基地になって多くの若者に死を強いたことに原点にあるとのことです。しかし彼の行動が日本、中国、韓国国民の相互の憎しみに発展するようだとまた不幸な歴史をくり返すことになり、思慮の足りないことだったと歴史家が後に書くようなことになる可能性もあるわけですよね。戦争など集団の暴走を止めるのは、自分の感情を主張するばかりでなく相手の言いたいことも聞いて、理性的に落とし処を探る気風みたいなところが必要なのでしょう。感情をぶつけ合ってヒートアップしないように感情を受け流すユーモアの気分も案外大切かもしれませんね。  

グリーンウッド

 

 

September 02, 2006 10:30 PM

石油価格上昇

グリーンウッドさん、

Bio-ethanol の Gasoline Blend 等石油代替品の開発の議論が活発ですが、どのようにお考えですか? 石油埋蔵量限界説が覆らない限りCrude Oil Priceは上昇し続け、代替品開発に拍車が掛かるでしょうが、Oil Sand・Shale Oil の開発、またGas to Liquids Plantの更なる増加を含め、何が主流になるのだろうか? USA・China・Indiaでの LNG Demand は相変わらず堅調で、IHI・CBI・Sofregas・Technigas といったLNG Terminal Contractors の受注も順調のようです。

フィールズ

 

 

2006年9月2日 23:29

Re:石油価格上昇

フィールズさん

Bio-ethanol の Gasoline Blend 等石油代替品は短期的には採算に乗るかもいれませんが長期的にはアダ花と思っています。今のところ農業生産物には余剰がありますが、人口がもっと増えれば、食料に回さざるをえません。北朝鮮が飢えているのも外貨不足で化学肥料輸入ができないためです。化学肥料は石油か天然ガスなどの化石燃料から合成するわけで、化石燃料の代替品とするには矛盾があります。農業は太陽エネルギーの固定が目的でそのエネルギー転換効率は高々1%です。一方太陽電池の転換効率は10%ですから将来の人類のエネルギーは太陽電池でまかなわれるのは目に見えております。Bio-ethanolは農水省の省益追及と農業系学者の研究費簒奪の手段に過ぎず、省庁と縦割り行政と学会既得権益維持の弊害と見るのが妥当な見方だろうと思っております。

石油と天然ガスが枯渇する21世紀後半には石炭に頼らざるを得ませんが、消費税率を10%に上げる時石油税などやめて炭素税を新に導入しないと地球温暖化はますます加速されて農業など大変な打撃を受けるでしょう。

Oil Sand・Shale Oil の開発は石炭の開発よりましだとおもいます。しかし天然ガスや石炭の Gas to Liquids Plant は転換効率の点で資源を早く枯渇させ問題だと思います。輸送機関はCNGを使うべきでしょう。そのためにも炭素税の導入が待たれます。

グリーンウッド

September 02, 2006


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