地震と原発

 

最近の社会現象につき、グリーンウッド氏かっての職場仲間をメンバーとする非公開のラウンドテーブル21(一種の掲示板)に投稿した対話録経済産業省の存続の是非についてのつづきです。


皆さん、

地震が迫っています? 2006年11月18日(土)午後、「日本の地震活動」を聞いてみませんか。「地球内部変動研究センター」研究員が講演します。場所は、「海洋研究開発機構」京浜東北線の「新杉田」の近くです。 2年前まで、世界一の性能を誇っていた「地球シミュレータ」のあるところです。                          

http://www.jamstec.go.jp/jamstec-j/EVENT/yes-55/index.html

パイントリー

追伸 ただし、私は別の用事があって参加できません。何方か参加して、感想を聞かせていただければ幸いです。

 

 

パイントリーさん、

今日地球シミュレータのある横浜研究所で石田女史の講演を聞いてきました。

10分遅れて会場に着き、一番前の席に座って聴講し、疑問に思ったことを質問したのですが石田女史の説明が下手で疑念がはれず、講演後直接確認してようやく多少疑念が晴れかかったかなというところです。

わたしの疑問とはなぜ東北地方や北海道にも太平洋プレートがおしよせ大きく沈み込んでいるのに政府がマスコミに発表している地震対策は西南海地震など西日本にばかり集中しているのかということです。

「西には人口が多いせいためなのか」という質問にたいしては「そうではない、地震が大きいためだ」という回答です。最近のモーメントマグニチュードの定義にしたがえば、つい数日前の千島列島での地震でもそのマグニチュード8以上と大きいのです。

「西日本に押し寄せているフィリピンプレートは浅いのでマグニチュードは小さくても距離の減衰が少なく地上の被害は大きくなる」と答えるべきと思った私は演壇に歩み寄ってそうではないかと再確認すると、「フィリピンプレートだって太平洋プレートと同じ角度を持って沈みこんでいる。フィリピンプレートはまだ若いプレートなので地上への影響が大きい。決して政治的なものではない」と答えていました。 彼女のいう「若いプレートなので」という回答の意味は不明でした。でもたしかに地震の被害は東京以西に多いし、津波は東北・北海道に多いですね。

政府やこの研究所がこのあたりをしっかり説明しないと、政治的プロパガンダかと思われてもしかたありなせんね。今日も米国ニュージャージー州在住の作家冷泉彰彦の報告がNHKと気象庁を批判しておりました。

帰りに地球シミュレータを格納した棟を外からみましたが、上空に空中線を4本ばかり張り巡らせています。あれ何の目的なのか興味をもちました。

地球シミュレータ棟

周辺の貧相なアパート群のなかに超豪華な建物がならび、職人をいれて樹木の剪定をしているのも私には税金の無駄使いにみえました。欧米の研究所は剪定などせずに広い敷地に巨木になるまで樹木を茂らせます。しかし日本は狭い敷地に樹木を過密に植えて、毎年人件費を投入してちまちまと盆栽庭を維持しております。そうしなければ近隣のアパートの住民から苦情がくるのでしょうか?鎌倉の津にある図書館もおなじようなことをしています。こういう文化はやめないとこれから少ない人口で国家を維持できなくなるのではと思いました。このような管理に文系事務官は一人予算と業者管理に給料をもらっているのでしょう。 友人の造園業者から聞いた話ですが最近は談合が難しくなって減っているようですが売り上げの60%は地方自治体相手だということです。

そういえば石田女史のビジュアルプレゼンテーションはほとんどこの研究所が作成したものではありませんでした。なかでもスマトラ地震の地震波が日本列島を通過してゆくアニメーションは日本の観測データを使って米国の大学院生が作成したものでした。この研究所の研究者はなにをしているのでしょうね。

グリーンウッド

 

 

パイントリーさん、

彼女は沢山の情報サイトを教えてくれましたが「全国を概観した地震動予測地図」報告書が最も一般的でしょう。

グリーンウッド

 

 

グリーンウッドさん、

早速の手厳しいレポート有難うございました。ところで、石田さんは研究当事者ですか。

パイントリー

 

 

パイントリーさん、

地球内部変動研究センターの特任研究員ということしかわかりません。お歳は60歳を越えているようにみえましたので現役引退した研究者が安い給料で継続して契約している方とお見受けいたしました。おなじような国立研究所のご婦人とヨーロッパに向かう飛行機のなかで話をしたことがありますので多分そうでしょう。スパコンを使うというより政府の地震対策立案の下請けをしているように感じました。

私は原子力学者達と同じで予算獲得しやすいテーマにつっこんでゆく日本の学者の悲しいサガを見てしまったようで、つい真っ先に質問してしまいました。突っ込まれてのらりくらい返答をごまかす気配を感じました。もっと自分の頭使って自分の判断で選んだ独自の研究に突っ込んだらよいと思うのですが。

グリーンウッド



 

グリーンウッドさん、

そうですか。情けないですね。

パイントリー

 

 

グリーンウッドさん/久しぶりのみやすぎです、

「予算獲得しやすいテーマにつっこんでゆく学者の悲しいサガを見てしまった」の枕詞として「原子力学者達」を挙げていますが、グリーンウッドさんにそのような言い方をさせる根拠はどのようなものなのでしょうか。先日私は出身研究室のあった東工大原子炉工学研究所の創立50周年記念講演会に参加して、昔のそして今の「原子力学者達」の話をいろいろ聞いてきましたが グリーンウッドさんのように「悲しいサガ」を見ることはありませんでした。むしろ原子力エネルギーに対する冬の季節を信念を持って乗り越えようとする気概さえ感じました。 グリーンウッドさんのある事象をとらえて断定的に結論に結びつけるところはとても小気味好く感じますが、短絡的なところも時々感じられますので。

 

 

みやすぎさん、

こう書くとみやすぎさんが反論するだろうなと思いながらああ書きました。その根拠は東大東大物理学科の嵯峨根遼吉教授の弟子、森永晴彦氏の持論を引用したものです。

この方は「パーキンソンの法則」の訳者で知っておりました。私がデームス・アンド・ムーアに居るときに岡崎元大使の紹介でNEDOの研究資金を引き出すお手伝いをしてから友人として付き合い、自費でイタリアはドロミテのセラ峠で彼が私的に開催した集まりに出席したこともあります。ドイツの大学教授をしていましたのでドイツ政府の年金で日本とドイツ半々の暮しをしています。もう80才になられていますが、日本の原子核工学者が日本政府のエネルギー枯渇恐怖症を人質に1兆円の国家予算をトカマク方式の核融合に無駄使いしようとしていることに怒りをもっていました。もっとよい金の使い方があるだろうにと常日頃つぶやいておられたからです。先生によると核融合は決してクリーンなエネルギー源ではなく、放射性廃棄物は核分裂と同じくらいに副産する。国家予算はクリーンな太陽エネルギー転換に投じられるべきというのが先生の持論でした。

石油資源枯渇で再び核分裂エネルギーに世界の注目が集まっていますが、プロセスプラントの設計建設に携わった者として事故はゼロにできないと思っています。そして万一そのような事が生じた場合、広い面積が長期間使えなくなり、日本のような国土の狭い国には向かないエネルギー源との思いを先生と共有するものです。

アーノルド・トインビーは「歴史の研究」で

”自然は有機体の機能の90%は自動的に最小のエネルギー消費で行われるようになっている。人間社会もおなじで多数者は少数者の先導に機械的に従うように仕込まれている。このような人間の社会的関係におけるミメシスの能力に破局の危機がひそんでいる。ミメシスの弱点はそれが外からの示唆に対する機械的な反応であり、従って、行われる行為が、行為者の自発的意思によってはけっして行われなかったような行為である、という点にある。慣習などがこの機械的反応の例である”

といっています。核分裂エネルギーに世界の注目が集まっているのも機械的反応の例ではないでしょうか?

グリーンウッド
 

 

 

グリーンウッドさん/みやすぎです、

グリーンウッドさんの主張の根拠はよく分かりました。ありがとうございました。

(1)エネルギー源としての原子力の位置付けについてはグリーンウッドさんの考えに異論はありませんし、太陽エネルギー転換にもっともっと国家予算を投じるべきと思っています。私はエネルギー論争をしようとは全く思っていません。

(2)「日本の原子核工学者が日本政府のエネルギー枯渇恐怖症を人質に1兆円の国家予算をトカマク方式の核融合に無駄使いしようとしている」ことが「原子力学者達と同じで予算獲得しやすいテーマにつっこんでゆく学者の悲しいサガを見てしまった」ことへの結びつけがずいぶんと大雑把で乱暴な物言いだなと感じたのです。

(3)「原子力学者達」の中には核融合でなく、現実に1/3の電気エネルギーを供給している核分裂エネルギーに対する安全性や核拡散抵抗性を高める研究にまじめに、「機械的な反応」ではなく、取組んでいる学者もいるのだということに思いを懸けて欲しいと感じたのです。

(4)千代田化工時代,San DiegoにあったGeneral Atomic社の開発センターで高温ガス炉の研修を受けた時に、講師が今のまま(当時の)で原子力が拡大されるとFISSION→FUSION→CONFUSIONへとつながると述べたのが私の頭に焼き付いています。現実に私たちが毎日使っている電気エネルギーの1/3は原子力エネルギーだということは、私たちはまさに原子力エネルギーを「機械的な反応」で使用していることになります。だからトインビーの引用にあるよう,CONFUSIONの危機にいたらないような研究をしている「原子力学者達」もいるのですから,一括りにして侮らないで欲しいのです。
 

 

 

パイントリーさん、

石田女史の説明が表面的でわかりにくかったので独自に勉強してみました。

糸魚川ー静岡構造線以西のユーラシアプレートの下にはフィリピンプレートが東西の南海トラフを作って北方に沈み込み、その東の北米プレートの下には太平洋プレートが日本海溝を作って西方に沈みこんでいます。ユーラシアプレートと北米プレートは比重がほぼおなじなのでどちらかが沈み込むことはなく、ヒマラヤ山脈のようにユーラシアプレートと押し合いへしあいして褶曲し、凸部が日本アルプスであり、凹部がフォッサマグナ(大きな溝というラテン語)です。いまではこの溝は新生代の洪積層でうまり、この溝のなかに富士山、八ヶ岳、浅間山、妙高、火打という火山が噴火しています。

糸魚川ー静岡構造線の南端、富士川が駿河湾にそそぐあたりにユーラシアプレート、北米プレート、フィリピンプレートの3つのプレートが1ヶ所で交わる三重点(トリプルジャンクション)となっています。学問的に興味のある地点なので、行政は 石橋克彦らの研究者の声にのり、富士川河口から、御前崎にかけては国家予算が投じられて観測網が整備され、東南海地震が政治的に大々的に喧伝されています。しかし学者の予想とは裏腹に地震被害は神戸や新潟など別のところで発生し、御前崎ではなかなか地震は発生しておりません。これはどういうわけか知りたかったのです。

2004年の新潟中越地震は新発田ー小出構造線に代表される逆断層が太平洋プレートに押されて動いたわけです。

兵庫県南部地震もそうですが、断層線上のほうが震源が近いだけに沖合い100km以上で生じる海洋プレート沈み込みによる南海地震より怖いということがわかります。たしかに海溝型の地震はマグニチュードが大きいですが、遠い海上で発生するため津波以外の被害は少ないでしょう。未発見の断層を探してあるくという地味な研究をきらっていることも学者の信用が地に落ちる要因でしょうね。海溝型は地下の構造がわかっていますので遠隔で自動的に取得したデータを解析して論文を発表するのは楽ですよね。



フォッサマグナ全構造の鳥瞰図

上図は御前崎上空230kmから16mm広角レンズで6.3度方向、60度下方に俯瞰したとして作成しました。

石田女史は学者仲間を批判できないので奥歯にものの挟まったような説明しかできなかったのではないかと思います。

グリーンウッド

 

 

パイントリーさん、

こまつさんのご指摘のとおりでしょう。大学を見せかけだけ独立されたところで、文部省は予算は握ってはなしません。

私は石田女史を非難しているのではなく、彼女をしてこうさせている日本の仕組みを嘆いているのです。なにも分からない文部省や科学技術庁の文官が予算の配分権限を持っていることが諸悪の根源ではないでしょうか。なぜそうおもうかというと、千代田のなけなしの研究費の配分権限を持たされてその難しさを骨身にしみて痛感したからです。シラードの証言にあるように「人は聞いたことだけしか知らないとすれば、バランスのとれた決定をするに充分なほど物をしっているとは言えないものである」であるからです。

研究者の方々もこの仕組みの犠牲者で人間の質が低下してゆくのではないでしょうか。

グリーンウッド

 

 

みやすぎさん、

大雑把な論の展開ですみませんでした。みやすぎさんのご指摘のとおりでしょう。いつでも心ある人は少数ながらいるものですね。かれらに原子力を安全に維持してもらうのを期待しましょう。

例えば、いまあるBWR型原子炉は制御棒を水圧で押し上げて核分裂を止める仕組みになっていますよね。水圧系は無論冗長性を持たせているとはいえ、薄い板を十字型にした制御棒が地震で折れたりすれば押し込めなくなり、メルトダウンということは理論的に起こりうることではないでしょうか?それに圧力容器を支えるスカート部が弱いといわれています。ここが座屈すれば制御棒を押し上げる機構が壊れて制御棒が動かなくなることもあるえますよね。

制御棒は壊れる可能性があるので冷却液体の重力移動や自然循環、大気の自然対流のような基本的な物理法則を安全機能に採用した受動的安全炉。すなわち制御棒がいらない固有安全炉とか静的安全炉を開発してもらいたいものです。

浜岡原発などまさに地震学者の予言に従った日本政府が喧伝している東南海地震の真近に立地しています。それもその地下には建設時には知らなかった断層が発見されたというではありませんか。にもかかわらず監督官庁の通産省がダンマリをきめこんでいるのは政府としては自己矛盾というか国民の生命財産をまもる義務違反ではないのでしょうか?

荒っぽい見方ですが、茶のみ話と思ってお聞き流しください。

グリーンウッド

 

 

みやすぎさん、

もすこし根拠をあげましょう。地震学者達が政府のために作成した「全国を概観した地震動予測地図」報告書を先日ご紹介しましたが、先に指摘しました、浜岡原発に加え、四国の伊方原発は中央構造線上にあります。また宮城県の女川原発は太平洋プレート由来の巨大地震の危険性にさらされています。現に2005/8/16のM7.2の宮城県沖地震では原発内に設置した地震計は251.2ガルを記録し、設計用限界地震加速度の250ガルを一寸こえたとか。

関東大震災の時は330ガル、兵庫県南部地震では最大880ガルの加速度が観測されたが、仙台の丘の上にあった地震計は1,000ガルを記録したそうです。そして今回の中越地震では過去の記録としては最大の2,515ガルが記録されています。 我が家は新築時に100万円を追加で支払って全ての窓の無い壁にクロスで筋交いをいれた特別仕様にしていますが、どれくらいの加速度に耐えられるか概算したところ968ガルでした。

これに比べ、女川原発の設計用限界地震加速度が250ガルとはどういうことでしょうか?

も一つ不安なのが柏崎刈羽原発です。柏崎刈羽原発がまさにフォッサマグナの東端の柏崎ー千葉構造線上に位置しているのです。これは首都圏への主要な電力供給源で先日も御座山の山頂から延々250kmの送電線と揚水発電用の真新しいダムを目撃しました。

グリーンウッド

 

 

グリーンウッドさん/みやすぎです、

大変大きな問題ですね。通産省は説明責任がありますね。グリーンウッドさんと議論するといつも新しい情報に触れられて勉強になります。ありがとうございました。

みやすぎ

 


このような議論をしたのち、森永先生の本に加え、5冊の 環境と原発関係の本を読み、ネットで調べたことを「グローバル・ヒーティングと原発」というメモにまとめてみました 。

原子力へ

December 1, 2006

Rev. July 28, 2008

 


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