ハイブリッド車 対 ディーゼル車

 
アストンマーチンを愛車とするウェグマン博士は「日本のように街の中を低速で制動をかけたりアイドリングさせながら乗る場合はハイブリッド車は威力を発揮するが、アウトバーンを高速で突っ走るヨーロッパではあまりメリットはない。むしろディーゼル車がよい」と言っていた。

ハイブリッド車」にまとめたようにガソリン・ハイブリッド車の実際の道路条件でのタンク・ツー・ホイール効率は37%であるに対し、ディーゼルエンジンの定格効率は47%だから高速道路を走る分にはベックマン氏のいうとおりディーゼル車がすぐれている 。しかしディーゼル車も渋滞のある道路条件ではタンク・ツー・ホイール効率は20%に低下する。市街地をチマチマ走る分にはハイブリッド車が威力を発揮するが高速道路を飛ばすときはディーゼルしかないのである。ディーゼル・ハイブリッド車を開発すればベストということになる。すでに日本でも川崎市などは地方自治体のバスは公害防止のため信号待ちの時エンジンを自動発停止しているが、これを発展させればよいわけである。

2005年のモーター・ショーにダイムラーはディーゼル・ハイブリッド車の試作車を展示した2006年にはダイムラーがディーゼル乗用車を日本市場に投入プジョー・シトローエン・グループ もディーゼル・ハイブリッド車の試作車を出すという。

車種

ウエル・ツー・タンク効率

タンク・ツー・ホイール効率

ウエル・ツー・ホイール効率

ディーゼル車(市街地) 90 20 18
ディーゼル車(高速道路) 90 47 42
ガソリン・ハイブリッド車(市街地) 88 37 32
ディーゼル・ハイブリッド車(市街地) 90 46 41

日本ではヨーロッパのディーゼル油中の硫黄含有量規制の動きを無視し、通産省がディーゼル油中の硫黄含有量の規制値を下げなかったため、折角開発されたコモンレール技術を採用しても触媒を使うDPF,Diesel Particulate Filterが使えず。パーティキュレートによる公害を深刻化させてしまった。そして地方自治体 は緊急避難的なディーゼル車乗り入れ規制に走ってしまい、トラック業界は別として乗用車からはディーゼルエンジンを駆逐してしまった。これは役所の怠慢のため発生した国家的損失と感じる。 結果として石油業界は増えたガソリン車に対応するためガソリン得率を増す流動接触分解装置を増設しなければならない羽目に陥って最終的に国家的コストを支払うという構図になったというのが私の見方である。

政治家も役所もマスコミが問題視しなければ行動にはおこさない。ディーゼル油中の硫黄分規制も発ガン性ある石綿の利用規制も、醜悪な電柱の地中化もそうだが、マスコミの後ろには国民がいてこの国民が黙っているか無知の場合、役所はだんまりを決め込む。よく朝日新聞が左翼系だといわれる。長野北高校の同期生で朝日新聞記者になったKという男がいる。彼は ながく海外特派員を務めた関係で国際派となり、憲法改正論者のため朝日新聞では冷や飯を食った人間だ。彼は「朝日が左なのも読者がそれを求めたからだ」という。要は国家を構成する個々人のレベルが問題だということに行き着く。

では個々人のレベルとは何か?企業内部に居た個人はだれでも、ディーゼル油中の硫黄分規制も、発ガン性ある石綿の利用規制も、醜悪な電柱の地中化も知っていたのだ。ただ組織に従属する個人としてはそれを公に言わなかっただけのことだ。したがって個々人のレベルが高い社会とは所属する特定の利害団体から独立して発言行動できる自由をより獲得した個人が大勢いる社会と等価ということになる。

October 21, 2005

以上の考えを元三菱自動車の役員をやったK氏に話すと、ディーゼル油販売業者の中には悪がいてディーゼル油にA重油などを混ぜて売るやつがいる。トラック業界も知っていて粗悪でも格安の燃料を使いたがる。そのような油を使われると公害もさることながら、ディーゼルエンジンがトラブルといってクレームが来て困る。メーカーとしてはトラック業界に不人気となるデリケートなエンジンは開発したくないという心理が生じるのだそうだ。

Rev. November 17, 2005


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