<千里観音>
毒酒にあたった勇士の小栗判官は湯の峰温泉に入湯して難病が回復した。
そして帰路は海路をとったが、南部沖で暴風雨になり大波にさらわれる。
判官は、我が運命もこれまでと観念して、せめて最後を潔くと決意。
端座して一心に、熊野権現を念じて観音経をとなえ続けた。
このとき馬のいななきが聞こえ、思わず目を開けると、荒波の中を白馬が判官目指して近づいてきた。
判官は白馬の背に乗り移り、陸地に泳ぎ着いた。
泳ぎ着くと同時に馬はいなくなり、あとには一本の流木が残っていた。
あまりの不思議さに、これこそ熊野権現の神助の賜と感涙にむせんだ。
判官はこの木に観音像を刻み、祠に納め帰国したという。
流木が白馬の首に見えた事から、誰言うとなく馬頭観音と称えるようになったという。
ありがたや 導き給へ観世音
千里が浜にみがく我が身を
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