アポロ11号による月着陸からちょうど100年後の2069年。人類はP2と呼ばれるウィルスの感染者、また健全な血液の持ち主と2階層に大きく分けられた。血液は黄金並みの希少価値を持ち、厳重な血液銀行にたくわえられる。主人公は、血液銀行などの防犯設備の設計者デーナ・ダラス。幼い一人娘が重病になった事から、会社に追われる身となり、仲間を集め復讐を始める…。
サイバーパンク時代の中の傑作の一つ「ブラッド・ミュージック」を連想させる。面白いのだけど、かなり異色。語り手の正体を隠す所なんか面白いけど、SFとしてもちょっと突飛過ぎるところもあるかもしれない。
フリップ・カーと言えば、ナチス統治下のベルリンを舞台にした「偽りの街」「砕かれた夜」「ベルリン・レクイエム」の三部作に感動したものだけど、今回のは余りに違うので驚いた。まず硬派から一転、映画的なスペクタクルというのが驚く。「ネアンデルタール」を思いださせるけど、物語としてはこちらの方が上手い。
ヒマヤラの秘峰マチャプチャレで雪崩に巻込まれたジャック・ファーニスが発見した原人の頭蓋骨。旧約聖書の人物からエサウと名づけられる。世界的登山家ジャック・ファーニス、古人類学者ステラ・スウィフトたちは、人類の起源の謎のカギとなる幻の雪男イェティを求めて、再びヒマラヤに向かう。
インド・パキスタンの紛争激化、核戦争勃発の緊張感、謎の工作員など背景も面白い。マイケル・クライトンみたいな展開で読ませるのだけど、やはりフィリップ・カーには、もっと硬派な話を書いて欲しかった。
クーンツがリー・ニコルズ名義で出した三作目。
物理学者スーザンは休暇中に交通事故に遇い、見知らぬ場所で目ざめる。オレゴン州の病院で三週間も意識を失っていた彼女は、事故の記憶も仕事の記憶も失っていた。さらに大学時代にボーイフレンドを殺した男たちが病院に現れる…。
超自然的な話なのか、捕らえ所が無いままに展開するけどストーリテーリングとしては十分に面白い。 メアリ・ヒギンズ・クラークっぽい、ラブ・ロマンスの入れ込み方がクーンツっぽくないけど、まあ、楽しめる。
舞台は米国東部ハートフォード、一人の男の投身自殺に疑問を抱く主人公の刑事ジョー・ダルッテリ(ダート)。続く犠牲者に、みな同じ血液異常が見つかる…。尊敬する元上司ゼラー、同僚の性犯罪課アビー、元恋人のハッカーなどなど、魅力的な人物が上手く描けているし、遺伝子治療、性犯罪、幼児虐待など新鮮なネタを上手く入れている。なかなか面白かった。
まのとのま、とは真野匡、野間修の二人の事で共著。
全体がイラスト仕立てで読んでいて面白い。食、買い物、ガムランやオダラン、ケチャなどの観光などなど。初めてのバリ島旅行で、ガイドとしては深い所は無い、どちらかというと初心者の新鮮な視点が多い。まとまりに欠ける所はあるけど、読み物として、基礎知識としては面白いと思う。
華人社会とその経済、世界に広がるネットワークの中心となっている世界中のチャイナタウンを、おのおののチャイナタウンの成り立ち、また総括的にまとめている。元々学術的な視点で研究されているので、固い部分はあるけれど、中華料理好きとしては勉強になる。
横浜中華街、神戸南京街、長崎新地中華街。シンガポール、クアラルンプール、ジャカルタ、マニラ、バンコク、ホーチミンの東南アジアのチャイナタウン。カリフォルニア、サンフランシスコ、ニューヨーク、ホノルル、カナダ、ロンドン、パリ、オーストラリアなどのチャイナタウン…。
→ 横浜中華街 -
横浜中華街発展会共同組合による
→ 神戸南京街
- 神戸・南京街商店街振興組合による
→ New York Chinatown
(紐約中華街) - ニューヨーク・チャイナタウン
→ San Francisco China Town
(旧金山中国城) - サンフランシスコ・チャイナタウン
→ Leo Club
of Okaland Chinatown - オークランド・チャイナタウン
→ Old Chinatown,Los Angeles
- ロサンゼルス・チャイナタウン
→ Chicago Cihnatown
芝城華埠 - シカゴ・チャイナタウン
→ Honolulu's Chinatown -
ホノルル・チャイナタウン
→ Chinatown
Melbourne 墨爾本唐人街 - メルボルン・チャイナタウン
→ Chinese heritage Centre
(華裔館) - シンガポール旧南洋大学華人関係資料
→ 著者・山下清海のホームページ
→ チャイナタウン
- 丸善内
映画「プライベート・ライアン」のノベライズ。ノルマンディ上陸のオハマ・ビーチ、レインジャー舞台のミラー大尉は精鋭の部隊と共に兵士ライアンを救出しに向かう…。
ノベライズという事で余り期待は無かったが、面白かった。文章的に軽い部分が多いが、映像の追体験としては非常に上手いものがあった。まあ、元の映画、がよく出来ているからだと思うけど。
→ 映画「プライベート・ライアン」感想
最初は離婚の報告から始まる。さくらプロダクション、息子、父ひろしなどの話。さくらももこの突き抜けたバカさ加減が面白い。
余計なお世話かもしれないが、「コントロール・ドラマ」で信田さよ子が言うように、さくらももこのアダルトチルドレンが気になる。息子の将来が心配だ。
大学のキャンパスで起ったレイプ事件。容疑者の無実を信じ、一卵生双生児の真犯人を追う心理学科助教授ジニー。遺伝子操作、科学捜査、インターネット、社会生物学(ソシオバイオロジー)と面白いネタを使っている。展開も、登場人物の描き方も見事。
他の双生児がどうにもならない悪人なのに、自分は自分が作るというなんとも性善説的というか建設的な展開は能天気ではあるけれど、気分がいい小説ではある。
ところで、一卵性双子であっても指紋が違うはず。ちょっとヘンではないか?
→ kensfans.com - ケン・フォレット日本公式フォンサイト
「ハリー・ポッターと賢者の石」の続き。
11歳、二年生に進級した一年間の話。道化役の「闇の魔術の防衛術」ギルデロイ・ロックハート先生、ポッターのファンのジニーなど新しい登場人物も面白いが、ハグリッドやダンブルドアの過去など新しい事実も盛り沢山。悪役のヴォルデモートも上手い登場の仕方。
この人の話の構成はめちゃくちゃ上手い。複雑な伏線の張り方を見事に奇麗に解いていく後半の展開は特に素晴らしい。それも最後の最後まで、わき役の一人一人にまで気が配られている。
ある種、ミステリーっぽいんですが、理屈臭くは無い。
ところで、この訳者って出版社の社長なんですね。
→ 「ハリー・ポッターと賢者の石」感想
→ 「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」
→ 「ハリーポッター友の会」
「第三双生児」で一卵性双生児の指紋が同じという話が出てきた。違うような気がして、調べるためにこの本を読む。やはり、一卵性双生児であっても指紋は違うようだ。だからクローンでも違うんじゃないの?
タイトル通り、科学捜査について平易に説明したもの。内容は死後硬直、死斑、凶器などの現場検証や、指紋、毛髪などの遺留品について、指紋鑑定、血液鑑定、DNA鑑定などなど。法医学的な話、うそ発見器、モンタージュ、ポリグラフ、プロファイリングなどにも言及する。
小説を読む上での基本的な知識にはなるが、書いているのがジャーナリスト(村野薫、鎌田正文、伍東道生、福光恵)なので、あまり深い知識はない。他の雑誌や本などのまとめに過ぎないかもしれない。上野正彦「死体は語る」などのリアルな現場の雰囲気は無い。
原題は「バリを告訴する」という意味。バリの観光化により失われていくもの、過去の姿を語り、今を語り、失われていくものの記録していく。訳注が多くて読みにくいし、内容が専門的。でも序章は判りやすく、著者の思いが一番こもり面白い。ここだけでも読む価値あり。その他は各論で細かい話になっていく。民族演劇、伝統文学、彫刻工芸、バリ絵画など。
開発により失われる文化という点では、日本も他の国も同じかも。