楽ちんに見えるウォーキングフォームとはどんなフォームか

背骨のS字がきちんと出来た姿勢で述べましたが、
いわゆる腰高の姿勢を作っておきましょう。その上で
胸を開くというところで、菱形筋を意識して肩甲骨を寄せるということをウォーキングにも応用します。
腰高の姿勢とは背骨のS字がきちんと出来た姿勢のページで述べたのですが、環椎後頭関節(耳たぶに隠れている耳たぶの裏側の陥凹であるところの翳風(えいふう)のツボにほぼ合致)を地面から出来るだけ引き離しますとベルトラインが上がってきますのでそのようにまず姿勢をきちんと整えます。

姿勢を作るときには左右の菱形筋を左右同時に引っ張って肩甲骨を寄せたのですが、
背中のツイスト
歩く時には、姿勢ができた状態でのちゃんと引っ張られている菱形筋を今度は左右交互にさらに引っ張ります。

まず、背骨のS字がきちんとできた姿勢を作ります。
次に右からでも左からでもよいですから片方の菱形筋を意識的に引っ張ってください。(肩甲骨を菱形筋で引っ張って上に引き上げながら内に引っ張る感じです。)
次に反対側の菱形筋を引っ張ってください。
そして、交互に左右の菱形筋を引っ張ります。
これを続けていくと、菱形筋を引っ張った側の腰が前へ送り出されてきます。
真上からちょっとだけ落ちるかたちで真っ直ぐ着地:補足その4:片足の付け根を大腿骨に乗り込ませることについてを参照してください。)
そして交互に、菱形筋を引っ張った側の腰が前へ送り出され、ちょうどツイストを踊っているような動きになります。
そのまま一歩二歩三歩と踏み出して歩き出してください。
そして、歩き出してからも、交互に菱形筋を引っ張るのは続けてください。
腕の振り方はひじを伸ばしてでも、ひじを直角に曲げてでもかまいませんが、ひじの頭が真後ろに向くようにしてください。
この菱形筋を交互に引っ張ることによって、肩甲骨を振っていることになります。
肩甲骨を振ることによって、腕、正確には肘を後方に引くことになります。
そして、肩甲骨の動きによって、腰が前に送り出されます。
股関節から下の脚は意識の外においてください。
腰骨の下(内側)にある股関節がハンドルで足はムチなのでハンドルを動かすことによって受動的に動かされるだけというつもりで膝・足首等は力を抜いておきます。
肩の付け根が後ろに引っ張られて胸の断面が弓状になっていることと、背筋がまっすぐになっていることと、お尻がちょっとだけ後ろ側に引っ張られているがゆえに股関節の真上に背骨の一番へっこんでいるところの奥が乗っていることを意識して、とにかく背中を意識して姿勢を保ってください。
そして、脚を動かすという意識ではなく、菱形筋を交互に引っ張り続けるという意識で背中を原動力に交互に動かしてください。
菱形筋で背中を動かすとちょうど背中に四角形を想定して背中の四角形を消しゴムを捻るように背中の一反木綿がツイスト踊りをやっているような感じが出てきます。
その感じで背中を捻れていれば、あまりほかの事(脚とか足とか手の振りとか)は考えないでもいいです。
シンプルに左右の肩甲骨を菱形筋で動かしましょう。

図1 菱形筋を左右交互に引いて骨盤を含めた上半身全体を動かす。(菱形筋を引いた側の足が勝手に出る感じがするならOK。)
(背中のみぞおちの真裏あたりに四角のプラスチック板の様なしなりやすい薄い板があるようにイメージして、その板を(図1では背中をひねっていることをわかりやすくするために誇張してありますが)メチャクチャ短いストロークでツイストさせるつもりでやるとうまくいきます。)

姿勢を作ることと歩くことにはそんなに難しさの違いはありません、
姿勢がきちんとできていればあとはこれ(菱形筋の左右交互引き)だけで、完璧なウォーキングフォームができます。

あまりに簡単なので、ちょっとこれ以降は補足です。

ウォーキングというのは、交互に脚を前に動かして移動することと思われがちですが、
簡単に言ってしまえば、
1.よい姿勢を作って
2.胴体全体をその良い姿勢を崩さないままで後ろになった脚で全体的に前へ送り出し、
3.合成重心の上に落とす。(歩く速度を計算に入れた重心の位置:立っているときは土踏まずですが歩くと速度に応じて前方に移動します)
この繰り返しです。


まず、背骨のS字がきちんと出来た姿勢でなければなりません。
そして合成重心を感じ取り、
感じ取った合成重心の上に体重(上半身)を乗せる。

※背骨がS字になっていれば、着地の前にあらかじめ腰をクッと前に出し、脚を伸ばした状態で前に上半身と前に出した脚を一体として送り出すことが出来ますので、合成重心の上に体重を乗せることが簡単に出来ます。
しかし、猫背とか、腰が曲がった姿勢では、腰をあらかじめ前にクッと送り出すことが出来ませんので、脚だけが前に出てしまい、合成重心の上に体重を乗せることができません。

合成重心の上に体重を乗せ切ってしまったときの上半身から着地している方の足の形はまったくあらかじめ作ったきれいな姿勢のままになります。
(この点で姿勢を正しくするということが重要になってくるのです。)
その後の局面は上半身と脚が一体化したものが前に倒れるだけです。

歩くという行為は、簡単に言えば一瞬一瞬を切り取ってみれば前に倒れているのです。
前にバッタリと完全に倒れてしまってはしかたないので、倒れる前に前にどちらかの脚を出して支え点にして、前へ倒れないようにして行き続ける必要があります。

腰骨を使う
どちからの脚を出してと書きましたがこの場合出す方の足を遊脚と言い、支える方の脚を支持脚といいますが、ベルトラインの水平を保ったまではなく、腰骨(骨盤)をうまく使うことが必要です。
いいかえれば遊脚側の腰骨を上げながら腰骨で遊脚を上に引っ張る感じで根元から上に上がった遊脚を振り子のように力を抜いて前方向に(腰骨によって)引きずり出すのです。

そのため左右の腰骨は鏡餅のような軌跡を描きます。

足を前に出す側の肘を後ろに引くことがそのまま足を前に出す側のベルトラインを引き上げてベルトラインが斜めに上がるように連動するように動かすとベルトラインが交互にシーソー運動(交互に引きあがる動き)を始めてきます。

左右の腰骨をつなぐ線いわゆるベルトラインが交互に左右に傾いて、上がった側の腰骨が鏡餅の上コース/下がった側の腰骨が鏡餅の下コースを描きます。

股関節をベルトラインを傾けて上に上げ─傾けて引きあがったまま股関節を前に持ってきて─クレーンをおろすように引き上げを解除しながら後ろへ持ってくる過程で着地します。─最後に小趾球が体の真下を通過した直後ぐらいのタイミングで小趾球から拇趾球へ足裏の圧中心(COP)が母趾側に移動して最後に母趾球から(小趾球・拇趾球圧移動での母趾圧増幅により)母趾の腹で地面をグッと押してから母趾の先で離地という一連の流れとなります。

だから遊脚を前に持ってくるときには腰骨は鏡餅の上のコースを通ります。
支持脚を後ろに持っていくときには腰骨は鏡餅の下のコースを通ります。

いわば肩甲骨を股関節を引き上げる取っ手として骨盤のシーソー運動を起こし─シーソー運動を起こしている骨盤・股関節を鞭の取っ手、足を鞭として、足は取っ手である股関節を上げたり前に出したり下げたりすることによって足には力を入れずに足を受動的に動かし使うのです。

(ここで、「どちらかの脚を出して」と考えるところを、「後ろに伸ばした足だけ残して、それ以外の全部(上半身と前に出した脚の一体化したもの)を出して」と考えて、交互にズドンズドンではないですが、上半身の重さ全体をそっと前に出した足の真上に乗せていくのです。乗せていくタイミングは脚を前に出した時にではなく、脚が上半身の下に動いてきたタイミングです。だから前に振り切った遊脚の重力での後方への振り子の振り戻しの過程の中で遊脚を支持脚に入れ替える(体重を乗せる)のです。)

だから、どちらかの足を出して支え点にした後は、こんどはこの局面で左右の脚の役目が入れ替わり、こんどは今まで着地していた脚を後ろに伸ばし、今度は前になった脚を伸ばした状態で上半身と前に出した脚を一体として送り出すのです。
このサイクルが続けば楽に歩けるし、楽ちんに見えます。

時系列で表現すると
1.倒れそう。
2.倒れる目標の場所の上に上半身と前に出した脚を一体として送り出して乗り込む。(倒れないように支える。)
3.支えただけなので、それではピタッと止まれないので、そのまま前に上半身全体が慣性によって送り出される。
で、1.に戻る。
この繰り返しです。

イメージとしては自分の体がカナヅチになったと想像して歩きましょう。
カナヅチの柄が後ろに伸ばした足。
カナヅチの金属部分が上半身と前に出した脚が一体化したものです。
ちょうどカナヅチの重心が槌の真ん中にあるように上半身と前に出した脚が一体化したものの重心も腰のあたりにあります。

あくまでイメージですが、下の図のような感じです。
体をまっすぐにして、カナヅチ(上半身と前に出した脚が一体化したもの)を机の1cm上でつまんで置いて(後ろに伸ばした足で持ち上げて)、つまんだ指を離してストンと机に落とす(そのまま上半身と前に出した脚が一体化したもの全体で出した足の真上に落として前に乗り込む)イメージです。


図1 合成重心の落ちる場所へ上半身と前に出した脚が一体化した体全体を落として体を置く感じ(赤矢印が合成重心の向き。黒矢印が楕円の大きさは誇張して描いていますが腰骨の回る鏡餅軌道の回転方向です。)

シンプルにいえば、楽ちんに見えるウォーキングフォームは、脚を交互に出すという意識から離れ、止まりたければ止まれるけどブレーキがかからないので歩いている感じです。

ここで、ブレーキがかからないというのが重要です。
そのためには、次の一歩に繋がる(足の裏の)場所を合成重心と地面との交点に一致させればよいのです。
では、次の一歩は足の裏のどこに一番力を入れて蹴るでしょうか。
そうです親指の付け根いわゆる母趾球ですね。

だから、母趾球を意識して、靴の外側がダラッと斜めに下がった(いいかえれば足がリラックスした)状態のままで母趾球あたりで合成重心に乗り込んでしまいましょう。

アウトエッジ着地
しかし、ここで重要なことですが、母趾球を最初に着く意識ではなくあくまで足裏の外側から着く意識でいましょう。いいかえれば、母趾球を乗り込ませる寸前に小指とかかとを結ぶ線すなわち小趾の付け根をまず着ける意識で外側縦アーチで乗り込んで上半身が足の真上に来た時以降に反力が外側から内側への流れで母趾球に来るというアウトエッジ着地をずーっと小趾球に圧中心が来るまで維持して最後の最後における小趾球側にかかっていた圧を一気に母趾球にかけて母趾で地面から離れる圧中心の移動がどうしても必要です。

(歩いている時の母趾球に重ねて水平に書いた線と外側縦アーチの線が交わる位置は大体小指と小趾球の境目である小趾の付け根になります。)

接地までは足は完全にリラックス:図3 足底における荷重移動の図にある踵から親指に連なる黒い矢印で示した靴底での一番圧力がかかるところの圧中心軌跡を参照してください。)

母趾球で乗り込めば、すぐ次の一歩に繋がります。
(踵で乗り込めば、ブレーキになる。)
母趾球で乗り込むというのは、足の裏の母趾球でグッと地面との反力を受けるようにして、足の上に乗ってしまうということです。
大丈夫です、足の力を抜いてリラックスさせると自動的に足の外側が下がりますのでそのまま外側縦アーチの上の方の小趾の付け根で乗り込むつもりでいれば(実際には小趾の付け根よりも踵の方がほんの一瞬前に地面に着くので厳密には踵着地なのですが)なんにもしなくてもアウトエッジ着地になり最大荷重になったときに自然に母趾球側に圧中心が移り結果的に最後は母趾球で乗り込んでしまって母趾で押すという結果になります。


変なたとえですが、フィギュアスケートのスケート靴を履いて氷の上を歩くことを考えてください。
踵(スケート靴のブレードの後端)で乗り込もうとしても、後ろに転んでしまいますね。
母趾球(スケート靴のブレードの中央)で乗り込めば転ばない気がするでしょう。
だから、歩くためのシューズがいまスケート靴になっていて、地面が氷になっていると考えて、真上から、全然前向きにも後ろ向きにも滑る力がかからないように、地面(氷)の上に力を加えるのです。
そうすれば、スケート靴なら転ばないで滑ることが出来ますし、歩くためのシューズなら、交互にスケートをするように、スッスッと前に進めるのです。
これが、ブレーキがかからない状態で歩くということです。

母趾球で乗り込む(より正確には小趾球・母趾球ライン:動物でいう肉球で乗り込む)とは言い方を変えればこういうことになります。
歩くということは人の形のように遊脚を前に出して前に出したままの状態で上体が遊脚に追いつかないままで着地するように誤解している方が多くいますが
遊脚が着地するのは遊脚が浮いている間に支持脚が上体を前に押し出しているので、上体が遊脚に追いついた時点です。
相対的には上体が前に押し出されながら遊脚が以前の位置にとどまっているので上体から見れば遊脚を後ろに引いていきながら着地に入ってきて最も下向きの力が加わるのは小趾球・母趾球ラインが遊脚が上体直下に引き込まれることによって上体の鉛直下に来た時点です。
タイヤの接地点のようにタイヤが回るように遊脚が回転していき遊脚の下半分が後方に回りながら、軸(上体)の真下に小趾球・母趾球ラインが合致したちょうどそのタイミングで体重を乗せるようにするとよいのです。
そうすると着地直後はもう回りきったタイヤのように上体が支持脚から降り、抵抗感なく支持脚が後方に勝手に流れていきます。
着地の瞬間には足裏で感じ取れると思うのですが上体の鉛直下で小趾球からすばやく波のように自然に母趾球に足圧が移りながら地面に体全体が乗って降りていくのです。
これがブレーキがかからないように歩くということの正体です。


美しい歩き方の誤解を解く
1.膝を曲げない
2.踵で着地
3.歩く時の体重は、小指側ではなく、親指の付け根側(母指球)にかける
確かにそうなのです。
確かにそうなのですが、足を伸ばすのは足が一番前に行った一瞬だけで十分です。
詳しくは以下のような時系列で体にかかるショックを吸収しながらウォーキングするのが障害予防になるのです。

振り子運動で足が前に行く過程で膝を伸ばし始める

足が最も前に行った瞬間に膝を伸ばす

1.振り子運動で足が後ろに振り戻ると同時に股関節が足の上に移動してきて上半身の直下より少し前寄りに足が来たときに踵の外側で地面に軽く触れ始める
(踵にかかるごく軽い衝撃でも膝が衝撃で曲がり始めるほど膝の力を抜いておくのが条件)

2.足が後ろに振り戻り股関節の真下のほんのわずか前側に移動すると同時に踵とシューズの間の土踏まずの外側が圧中心になり続けるように脛の内側の筋肉で引っ張る

3.足が後ろに振り戻り股関節の真下の少し前に移動すると同時に前足部の小趾球が圧中心になるまで脛の内側の筋肉で引っ張るのを維持する
(この時1で踵への軽い衝撃をきっかけに曲がり始めた膝の曲がり度数が最大化する)

4.足が後ろに振り戻り股関節の真下に移動すると同時に膝が曲がった結果の伸張反射で地面を押すと同時に脛の内側の筋肉で引っ張るのをやめ母趾球に圧中心を移動させはじめる
(この時3で最大限に曲がった膝が急に伸張反射で伸びる加速が開始される)

5.足が股関節の真下の少し後側に移動すると同時(離地の直前)に小趾球から母趾球に圧が移動した結果の反射で拇指にパワーをかけ後ろ方向へ地面を一瞬押して離地させる
(この時3で最大限に曲がった膝が急に伸張反射で伸びる加速が最大化する)

6.足が股関節の真下のだいぶ後側に移動すると同時に後ろ方向へ地面を押した拇指が地面から離れ切る
(この時は膝の伸張反射での伸びのフォロースルー。脚を振り子とすると振り子の後ろ方向への最大振れ)

7.足を前に戻す
(足を振り子とすると振り子の前方向への最大振れ)

8.足が後ろ方向へ振り戻りはじめる
(脚を振り子とすると振り子の前方向へ最大に振れ切ったあと)

1に戻る

だから
1.膝を曲げないで足を一番前に持っていく
2.踵で着地はするが体重はまだそのタイミングでは踵にかけないで地面に触るだけ
3.歩く時の体重は、小指側ではなく、親指の付け根側(母指球)にかけるが靴底は外側が下になるように傾いた状態にしておき体重は内側にかけるがそれとは別に靴底の圧中心は外側を通って最後に内側にかかるようにする
このようにするのです。
膝抜きをしないと膝を痛めますよ!

さらに分解して言えば「体の真下で重心を一本の線上から横ブレさせずに歩いている途上で膝抜きで着地衝撃をいなしながら踏み圧中心を小趾球から母趾球に移しながら着地して、前に倒れ、体の真下で・・・」の無限ループで歩くということです。

一言で言うと切り取られた1フェーズにおいては前に転がるように歩くということです。



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