背骨のS字がきちんと出来た姿勢を作る

姿勢のポイントはあごを引いて胸を開いて背骨がゆるやかなS字状になり、ガニマタにも内股にもなっていないことです。

1.あごを引く

頚椎に頭蓋骨が乗っているポイントをアレクサンダーテクニークではAOジョイントと言い、一般的には環椎後頭関節と言いますが、ここが頭を前後左右に傾ける支点となりますが、位置的には耳たぶに隠れている耳たぶの裏側の陥凹であるところの翳風(えいふう)のツボの所です。ためしに翳風を押さえて頭を前後にうなづく動きをしても翳風のツボは動かないことからそこが支点だと分かります。
(翳風のツボでは顎を上げると上に動き顎を下げると下に動きますし、耳の後の後頭骨の出っ張りでは顎を上げると下に動き顎を下げると上に動きます)
この翳風のツボが姿勢を作るうえで非常に大切なポイントとなります。

まず最初に、あごをグッと前に突き出し、あごが出た悪い姿勢を作ってみてください。この時に(ゴリラのあごのように)下あごを出します。
そして、そのまま首の後ろの筋肉(頭板状筋)を使ってあごを引っ込めてください。(頭板状筋は引っ張るのではなくストレッチする感じです。)
(あごだけを引っこめるのではなく、上下の奥歯のさらに奥の噛むときに使う筋肉をしめて下あごを引き込んで歯の根をあわせ、●で強調してある翳風のツボからあごを引いた状態で上に線を引っ張ってその線が突き抜ける後頭部のところを真上から引っ張られながら後ろに引く感じです。)

このとき肩から首にかけてはリラックスさせてください。(まるで横浜ベイブリッジのように肩は首から吊られているだけぐらいに思いましょう。)

うまくあごが引けているかどうか分からない場合は、頭を真上からたたいてみてください。首の骨が倒れそうにならず、ちょうどだるま落としを上からたたいたときのように真下にだけ圧縮される感じがするならOKです。
(まっすぐ積まれただるま落としは真上からたたいただけでは崩れません。そのように首の骨を縦にきれいに重ねる感じです。)

この形ができているとかっこよく見えますし、走るときにも首が楽なので、楽ちんに走れます。

図1 首の後ろの筋肉であごを引く(首の所にある絵はだるま落としのつもりです)

補足:あごの先とおでことの正しい位置関係
あごが引けているようで実際はあごがちゃんと引けていない例として、あごの先とおでこを比較してみて同一面上になってしまっている場合があります。
しかし、あごの先とおでこが同一面上になっていたとしたら、頭は微妙に後に反っています。この場合、頭部の一番重いパーツが首の真上より後にズレているので、頭部の重心線がまっすぐに立たないことになります。(図2の左側の図参照)
頭部の姿勢は、顔の前面が地面に対してまっすぐなのが一番楽なのではなく、首の上に頭部の一番重いパーツがまっすぐ乗って、頭部の重心線が地面に対してまっすぐに立っている状態が一番楽なのです。
顔の前面が地面に対してまっすぐな状態より少しあごを引き込んであごの先をおでこより微妙に引くと同時に首の後(頭板状筋)を伸ばすと「首に頭部の一番重いパーツが”乗ったあ!”」と感じられるポジションがあります。(図2の右側の図参照)
この首に頭部の一番重いパーツが乗った感じの感じられる姿勢こそがちゃんとあごが引けている姿勢です。
(サッカーで地面と平行にヘディングしているようなイメージがオススメです。)

図2 顔の面と頭部の重心線の関係(首の後(頭板状筋)を伸ばし首の後ろから首の付け根の下方(頸板状筋)までがちょうど鯉幟の竿のように機能していて頭部の支えが作られているような感じになればOK。)

2.胸を開く
あばら骨が両方から集まっているところの骨(胸骨)の一番上を両手でギュッと押さえてから、手を離してみてください。
手を離すと肩甲骨の間に緊張が走り両肩が後ろに行って胸の上の方が左右にアーチ状に引っ張られた感じで胸が開きます。
うまくこの(胸を開いた)感じが分からない場合は、脇の下でノートをはさんで同じことをやってみてください。
腕を下ろしたときに左右両方のノートが平行になります

ノートが平行になるということは脇の下が平行になっているということです。これが理想的な程度の胸が開いた状態です。

これは、これから歩く時/走る時の腕振りに関係しています。胸が開いていると腕振りが真後ろに出来て、かっこよくなります。
(本当のことを言うと走っている時の肘の振れる方向はわずかにハの字なのですが、わずかにハの字をイメージすると本当にハの字になってしまう危険性がありますので、イメージとしては進行方向と平行、もともと巻き肩気味の人ならさらに極端にわずかに逆ハの字をイメージしましょう。

また、あくまで感覚的に捉えられる感じですが胸を開くとは図3の猫背でない人用のイメージの上に陸上競技場のトラックの形を重ねておきましたが、このようにまっ平らにした背中の面の延長線上に肩のグリグリが来るように左右両方の肩峰を背中の面とつらいちにすることです。
胸がうまく開けていると肩関節が胴体の影響を受けやすく動きやすく(フリーに)なります。このフリーになった肩関節によって、次項胴体の動きに引っ張られる形で腕を振るに書いていますが、腕を素直に胴体の動きの影響を受けることが可能な状態にセットすることが出来るのです。

←猫背でない人用のイメージ←猫背な人用のイメージ(本当は行き過ぎ)
図3 理想的な形になった胸を開いた姿勢のイメージ
(で示したところが菱形筋(りょうけいきん)。菱形筋は肩甲骨を寄せる働きがあります。)
肩甲骨の間を意識して上の図のような姿勢を作りましょう。これが胸が開いた理想的な姿勢です。
(もともと猫背傾向のある人は、極端に肩甲骨を窪ませるぐらいをイメージしてやっと(実際のところは)左の図のようになるはずですので極端にイメージしましょう。)

(注意:この肩甲骨を窪ませるぐらいをイメージすることを推奨するのはもともと猫背傾向のある人に対してに限ってです。猫背でもない人が極端に肩甲骨を窪ませるイメージをもつことは逆に弊害があります。本当に肩甲骨が窪むほどになってしまうと行き過ぎで、首から肩にかけて変に緊張してしまいますのでやめてください.。)

3.背骨をS字状にする
背骨をS字状にする感覚を得るのには牛乳を飲むポーズが役に立ちます。
牛乳瓶を持ったつもりで、そして、その牛乳を瓶から飲みほすまねをしてください。

そうです。なぜか自然に腰に反対側の手が行きますよね。
手が腰の所にかかってクッと背骨の真ん中より少し下(おへその真後ろ)が前に出ている感じになります。この感じをおぼえておいてください。

でも、これではちょっと骨盤が前傾しすぎなので、反りすぎになってしまいます。(反りすぎでは腰に過大な負担がかかります。)

そのまま肩を下げる感じでフッと力を抜きます。(いかり肩の反対で、肩の力を抜いてまっすぐ立った首から肩甲帯を吊り下げる感じ:肩甲帯とは鎖骨・肩甲骨・上腕骨をひとまとめにしたもの)
フッと力を抜いた瞬間、骨盤の過度の前傾が取れ、骨盤の前の面(左右の腸骨と恥骨を結んだ三角形)が地面と垂直になります

でも、中臀筋(ちゅうでんきん:お尻の上の方)の緊張は解かず、お尻を引き上げてお腹を引っ込め、腰が曲がらないように注意しましょう。
(骨盤の前に手を当ててみて垂直になっているかどうかを確認してみてください。)


図4 理想的な形になった背骨のイメージ
で示したところが中臀筋です(点線のところはテンションがかかっている感じで)

中臀筋(お尻の上の方)を意識して上の図のような姿勢を作りましょう。これが前傾しすぎ(腰が痛い)でもなく後傾しすぎ(体が緩んでいる)でもなく理想的な姿勢です。

補足:胸郭と骨盤を引き離す
この姿勢にするためには、胸郭と骨盤を引き離し、背骨の湾曲をこころもちゆるくして、背骨の縮みしろを大きくする必要があります。
端的にいえば胸郭を上に上げて同時に骨盤を胸郭から見て相対的に下に下げるのですが、「肩先を上げていかり肩を作るんだな」と誤解をされると困ります。
肩先でなく、みぞおちから胸骨まわりを上げる感じです。うまく上げるのは表現が難しいのですが、胸郭を動かすというよりも、背中を動かす意識でやったほうがうまくいきやすいです。背中をみぞおちの真裏に向かって締めて首の骨の真下に背骨というか軸をセットするような感じです。あごを引いてまっすぐ立てた首の骨の一番下の底面からさらにまっすぐ下に根を掘り下げるというか伸ばしていくイメージです。結果として、みぞおちのあたりがほんの少し上がります。その結果としてみぞおちと腰骨をつなぐ二等辺三角形に軽くテンションがかかった感じがすればOKです。ランニングのときもこの三角形のテンションを保ったまま、いいかえれば、おなかを高くしたままで動きましょう。もちろん環椎後頭関節を上げるとおなかも自動的に高くなったままになりますが、環椎後頭関節がちゃんとあがっているかをチェックするためにおなかが高くなったままかどうかというのはチェックポイントとして非常に有効です。ここで注意ですが腰が過剰に反った感じがする場合はいきすぎ(反り腰)ですので、反り腰になる直前に頭の重心が胸郭の重心の真上にピッタリ「乗った」感じがするポイントがありますので、その位置に頭をセットするのがベストです。
誤解して欲しくないのですが、グッと力を入れて胸郭を引き上げるというよりも、余計な力を抜いてリラックスして、「あばら骨のある胸郭が実は風船で、宙に浮こうとしているんだ。」と思い込んでみてください。フワ〜ッと勝手に胸郭が浮いて行って、胸郭の位置ぐらいまで(気持ち上の)重心を上げるようにするのです。胸郭を上げようとするのではなく浮いていかせるイメージができるとうまくいきます。
うまく胸郭を浮かせられると(上げるという表現はあえて使いません。)、走っているときに胴体だけで衝撃を吸収するに近いことが可能になり、頭と胸郭はほぼ固定され、みぞおちの下ぐらいまでが上下に衝撃を受け止めているような感じがしてきます。


第一頚椎(環椎後頭関節:ここが大体翳風のツボの下と同じ位置)



胸郭




ベルトライン(骨盤の上のライン)














一番上の首の骨の第一頚椎(環椎後頭関節)を上げるイメージ
(左の図の点線で囲んだところを拡大)

翳風のツボと翳風のツボをつないだトンネルの中点の真下に
五円玉の様な円盤をイメージして
その円盤の水平を保ったまま
円盤を地面から引き離すイメージで上げる。



図5 胸郭を上げる(より正確には第一頚椎(上☆)を押し上げることによって、背骨の一番上(第一頚椎)から拇趾球までをゴムひものように上下に引き伸ばし胸郭(中☆)もベルトライン(下☆)も引き上げる。詳しくは補足2:胸郭と骨盤を引き離すために一番上の首の骨をふわーっと浮かせる参照)

背中を意識して頚椎のだるま落としの下から根(ゴボウ)を下に伸ばす意識で、胸郭と骨盤を引き離す。
チェックポイントとしてみぞおちと腰骨を頂点とした三角形に軽くテンションがかかった感じがして、で強調した肋骨の上2・3本が上がっているならばOKです。

このお腹にテンションがかかって胸郭が引き上げられた(引きあがった)姿勢を作るには、あらかじめ悪い姿勢を作っておいて、逆をやると良いです。
具体的には、悪い姿勢というので例を挙げると”ボクサーがボディーにパンチを打たれてウッとうめいている姿勢”が典型的なものでしょう。
(首の骨が前に倒れ、巻き肩になり、猫背になって、膝が出るって姿勢ですね。)
だからためしに、”ボクサーがボディーにパンチを打たれてウッ”って自分がなってるんだと思い込んで、「お腹打たれて痛い!」って思ってみてください。・・・あら不思議、必ず悪い姿勢になりますね。
そして次の瞬間に「大丈夫だも〜ん!」とさらに強く思ってください。「大丈夫だも〜ん!」と思った瞬間に・・・あら不思議、必ずお腹にテンションが回復して、まっすぐになります。

補足2:胸郭と骨盤を引き離すために一番上の首の骨をふわーっと浮かせる(図5の右側の図参照)
(図5の左側の□がゴムひも、一番上の☆が一番上の首の骨の位置、二番目の☆が胸郭の位置、三番目の☆がベルトラインの位置として、一番上を上げることによって残りの二点(胸郭・骨盤)をも相対的に地面から引き離す感じです。)

ちょっと上の説明では説明しきれないところがありますので、別の側面から説明します。
それは、上の図5の左側だけでは骨盤は下げて胸郭だけ上げて、首は上下に圧縮するというふうに誤解されかねないからです。
実際は、走ったり歩いたりするときの姿勢は重心が高ければ高いほど走ったり歩いたりするのが楽になります。
そのため、地面を基準にすると骨盤も上がっている方がよく、胸郭も上がっている方がよく、頭も上がっている方が良いのです。
頭といっても漠然と頭という表現ではあいまいなので一番上の首の骨を意識することにしましょう。この骨が後頭骨に接している所をは第一頚椎の上で別名環椎後頭関節(かんつい)と言って、頭を回転させるときに重要な骨なのですが、意外なことに翳風のツボの近く(少し下)にあります。首の骨は本当は首の真ん中ではなく後寄りに通っているのですが、イメージするときには首の真ん中を通っているとのイメージの方がやりやすいので、イメージ上の環椎後頭関節は翳風のツボと翳風のツボをつないだ線上の中点少し下にあるとイメージしてください。(以後環椎後頭関節という言葉が出てきたらわかりやすければ翳風のツボと読みかえてもらってもかまいません。)
その翳風のツボと翳風のツボをつないだトンネルの中点少し下にちょっと大きめの五円玉のような平たいリングがあるとイメージしてみてください。
こんどはそのイメージ上の五円玉を後に傾けてみましょう。するとあごが上がってえらそうな感じになりますね。
次にそのイメージ上の五円玉を前に傾けてみましょう。するとあごが下がりすぎて恨んでやるって感じになりますね。
どっちもよくありません。
水平にするとえらそうでもなく恨んでるって感じでもないちょっとあごを引いた頭の姿勢が出来ます。
手を鼻の頭に当てて鼻をつぶそうとしてみるとおでこにはすぐさわれるんですがおでこに指がついた時にはあごにはさわれないくらいあごがほんの少し引かれた感じでOKです。
この翳風のツボと翳風のツボをつないだトンネルの中点少し下の五円玉の水平を保ったまま五円玉を地面から引き離す感じでフワ〜ッと浮かせると足から腰までと背骨全体が上下に引き伸ばされます。
五円玉だけを上に引き離すつもりではなく、五円玉から下に伸びたゴムひもを引き伸ばす感じでやってみてください。そのゴムひもの途中にはベルトラインと胸郭のラインもあります。ゴムひもに環椎後頭関節と胸郭とベルトラインの位置を示す点が付いているとイメージして上の端についている環椎後頭関節の点を持ってビヨ〜ンと引き伸ばす感じです。
するとベルトラインも胸郭もゴムひもの途中についていますからベルトラインと胸郭もゴムひもが伸びるのにつられるように地面からの相対位置で上に上がります。
このようにするとベルトラインが上がる量より胸郭の上がる量が大きいので結果として胸郭と骨盤が引き離されます。また胸郭の上がる量より環椎後頭関節(翳風のツボと翳風のツボをつないだトンネルの中点少し下の五円玉)の上がる量の方が大きいので、結果として首が伸びます。
全ての結果として、体の重心が上がります。
走ったり・歩いたりするときには、特に走るときには地面から着地衝撃があり、上下への圧縮力が強まりますので、翳風のツボと翳風のツボをつないだトンネルの中点少し下にイメージした五円玉を水平のままフワ〜ッと上げる感じでゆったりと押し上げるようなイメージを持ってみてください。(環椎後頭関節)が上がるということは広い意味での背骨(頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨、股関節、大腿骨、脛骨)の一番上が上がるということなので、ベルトラインも上がり腰高のフォームになり、胸郭も開いて肩のグリグリが背中の面のところまで引かれ、アゴも引けます。
広い意味での背骨全体のたわみが少なくなり、より走りやすく、歩きやすくなるのです。



補足3:走るときの姿勢が環椎後頭関節を押し上げることによってどうなってくるか
走ってみると地面からの着地衝撃があるのでより敏感に感じられるので都合が良いのですが、環椎後頭関節をリラックスしたまま押し上げていくと環椎後頭関節が押しあがっていないときには後に引けてさらに下に下がっていた骨盤が上に引き上げられると同時に進行方向前方に引っ張られてきます。
(胴体の上のほうについても、環椎後頭関節を押し上げると水平方向へ前を向いていた胸の上のほう(肋骨の上側3〜4本)も環椎後頭関節を上げるにしたがって上向きになってきます。(戦車の絵を胸の前に描いておきましたが角度のイメージは大砲を遠くへ飛ばす時の砲身の角度がいいでしょう。上げすぎては緊張してしまうのでいけません。))
紐が両方に付いたボールの紐を両方から引っ張るとボールが紐に両側から引っ張られて内側へ動きますよね。
そのように体全体が上下に引っ張られることによって骨盤が上がると同時に環椎後頭関節と足をつなぐ線の途中のちょうど良いところまで骨盤が前に出てくるのです。そして環椎後頭関節を上げ切るとちょうど環椎後頭関節の真下(走っている時に一番衝撃が通り過ぎて欲しい点)に両方の股関節をつないだ線の中点が来ます。

図6 環椎後頭関節の押し上げ
○が頭部の上半分、が環椎、▽が骨盤、が股関節、がベルトライン、ピンクが骨盤の前の面、が胸郭の上のほう

このように環椎後頭関節が押し上げられた状態で走ってみると、衝撃が下から拇趾球→股関節→腰椎→胸郭→環椎→環椎後頭関節と、環椎後頭関節を上げれば上げるほど衝撃が下から一直線に伝わって来るような感じがしてきます。

補足3の補足:環椎後頭関節を押し上げるのと同時に環椎後頭関節から環椎以下をぶら下げる
横から前から

図7 環椎後頭関節から環椎よりも 下の胴体と脚それに肩先をぶら下げる
押し上げるのは図の黒であらわした頭部の翳風のツボからから上の部分全体で、ぶら下げるのは図の青系の色(水色)であらわした翳風のツボから下の部分全体です。が環椎後頭関節。環椎後頭関節の上の楕円は脳みそだと思ってください。今、自分の脳みそがどこにあるかを意識するのです。そして一番重い脳みそ特に後頭葉を環椎の真上にセットして環椎後頭関節を押し上げることによって結果的に後頭葉を真下から押し上げるイメージを持ってください。
また、環椎後頭関節の下の水色の四角いのはあごです。脳みその前頭葉の真下にあごをぶら下げるイメージを持つと、おでこよりあごがちょっとだけ引かれた理想的なかたちになりやすいようです。水色の縦長の楕円形は肩先。

走る/歩く/立つ時に環椎後頭関節(翳風のツボの位置)から上と環椎から下で体の扱い方を分けると姿勢を作るうえでの考え方がシンプルになります。
・カツオノエボシの海の上に浮かんだ部分のイメージで環椎後頭関節から上の翳風のツボより上は環椎によって押し上げる。
・海面下に垂れているカツオノエボシの触手(足)のイメージで環椎から下の翳風のツボより下は環椎後頭関節からぶら下げる。
ということです。
力をまったく使わないでまっすぐな姿勢を保つためには耳の位置に強力なバンドを巻いてそこを地面からクレーンで持ち上げてもらうならできますね。そんな感じです。
肩先についても言及しておきますが、肩先も、横浜ベイブリッジのような斜張橋のイメージで環椎後頭関節から肩先を離すように環椎後頭関節から斜め下方向に向けぶら下げるとイメージしてください。(肩をすくめた後に急に力を抜くと感じがわかると思います。)
走るときには、環椎後頭関節から環椎より下の体がぶら下がっているとイメージすると背骨の椎間板や膝の軟骨が厚みを増して足首の角度も90度じゃなくて120度ぐらいで足が脛から垂れ下がっているような気がします。(普通青色程度のぶら下がり具合な環椎後頭関節から下(あごも含めて)を水色ぐらいのぶら下がり具合になるまでちゃんとぶら下げる感じです。)
このように環椎後頭関節から下をぶら下げると、背骨の厚くなった椎間板により着地の最大荷重の瞬間に、クッション性がよい背骨によって地面からの衝撃を受け止められるので、地面からの衝撃がより軽く感じられるようになってくるのです。
また補足ですが、ぶら下げるのは環椎後頭関節から踵までではなくて環椎後頭関節から足先までです。人間の体を肉食動物に当てはめると足の指と肉球のところ、足の指と拇趾球と小趾球をひとまとめにしたもの(足底における荷重移動の図の濃いグレーのところ)までを一直線に環椎後頭関節からぶら下げて、下ろされたら足の指が一番最初に地面につくんじゃないかというイメージです。
(それでも着地の時には前脛骨筋が無意識的に働いて、ちゃんと必ず踵が最初に接地しますのでご心配なく。)
この足先までぶら下げてしまうというイメージをより楽に作るために、走っているあいだ「ああ、私には足の指があるんだ」と思い出しておく程度に足の指を軽く意識してください。(畳を手のひらで押す時に指にも神経通ってるでしょ。そんな感じです。足の指を意識するといっても、足の指を単独で意識しすぎると変な緊張感がはしってしまいがちですので、足の指だけ単独で意識するというよりも、足の指と拇趾球と小趾球をひとまとめにして意識し(それに含まれているので)足の指まで意識に入れるという程度の軽い意識にとどめておいてください。)
またこの足の指への意識の副産物として着地・離地の一連の流れの中で足裏の前の部分へより意識が向く結果となるので、足底における荷重移動の図の濃いグレーのところで地面を取り扱う感じになります。そのせいで離地の時に跳ぶ方向がより”低く!前へ!”になるのです。

4.足をまっすぐ前へ向ける
足の向きがまっすぐ前を向いていることが重要です。

これはアキレス腱に過大な負担をかけないためです。
アキレス腱が真後ろに位置していると歩く時/走る時のアキレス腱への負担が一番少ないのです。
ガニマタだと、アキレス腱の外寄りにばかり負担がかかり、内股だとアキレス腱の内寄りにばかり負担がかかります。

足を真っ直ぐにするために、ふとももの間に雑誌程度の薄い本を挟んでみてください。足を真っ直ぐにすると落ちません。
足を真っ直ぐにする時に重要なのが内転筋(ないてんきん:足の内側の付け根)です。
で示したところが内転筋(足の内側の付け根)です。
図8 内転筋
立つ時に内転筋(ももの内側)を意識すると、足がまっすぐ前へ向き、アキレス腱が真後ろに位置するようになります
(アキレス腱を触ってみて、真後ろに来ているかどうかを確認してみてください。)

5.うまくできたかのチェック
片手で大腿四頭筋(ももの前面)を触りながらスッと図4の姿勢を取ってみてください。膝を曲げ気味の時には必ず大腿四頭筋に引っ張られている感じがするものですが、
図4の姿勢を取った時には大腿四頭筋の引っ張られている感じが取れていることでしょう。
図4の姿勢は重心が足の裏の土踏まずの一番くぼんだところ(足の真ん中)にまっすぐかかっています。

姿勢が悪い状態では、頭から胴体にかけての重心が一直線に縦に積まれていません。
だから脚の筋肉の力が必要になってしまいます。
図4の姿勢では頭から胴体にかけての重心が一直線に縦に積まれていますから、姿勢を維持するのに脚の筋肉の力はほとんど必要ありません。
足の筋肉ではなく骨で支えている状態なので大腿四頭筋のテンションが取れるのです。

だから、大腿四頭筋に引っ張られている感じがあるかどうかで姿勢がうまくできたかがチェックできます。
(引っ張られている感じがないほうが良いのです。)

補足:もっと簡単にチェックしたい場合
もっと簡単にチェックしたい場合は、頭を上からたたいてみてください。そして衝撃が首の骨→腰椎→股関節→すね→土踏まずとまっすぐ伝わって土踏まずがちょうどトランポリンのようにたわんだ感じがするかどうかを感じてみてください。

姿勢が決まっていると、内部感覚では、首の骨─腰の骨─股関節─足というラインで一直線が貫いているような気がします。

このように一直線が形成された状態で上下に衝撃が加わると一直線をたわませる方向に力が逃げることなく真っ直ぐ下に衝撃が伝わります。
一直線の形成度合いが少ないと(力が逃げて)より上部にしか伝わらない段階で伝わった感覚がなくなってしまうのですが、一直線の形成度合いが高ければ高いほど下の方まで伝わります。
このようなわけで、姿勢が決まっているときに頭を上からたたくと(微妙な感覚ですが)衝撃が一直線に突き抜けてすねの骨が上下に圧縮されて土踏まずがたわんだ感じがします。

うまく衝撃が突き抜ける感じがしない場合は、まだ一直線の形成度合いが高くありません。そのような時には、サスペンス映画などでよくある天井が降りてくる場面を想像してその降りてくる天井を頭で止めるんだとイメージしてどんな圧が上下に加わっても大丈夫なつっかえ棒を体で作るつもりになるとうまくいきやすいです。

6.姿勢を維持するのは背中で
きれいな姿勢ができたら、その姿勢を維持しなければいけません。)

それで、ちょっとしたコツですが、立つときに背中に意識を行かせてください。

背中を意識する方が、前側のお腹とか胸とかを意識するより意識がずっと継続しやすいのです。
だから、みぞおちの真後ろ辺りを背中の真ん中と見て、肩甲骨を背中の真ん中に向けて引き寄せて、
それと同時にお尻の後ろポケットのちょっと上のあたりを同じように背中の真ん中に向けて引き上げるイメージでやってみてください。
そしてこれはあくまで背中の力を使っての結果としてですが、のどの下、胸骨の一番上と左右の鎖骨のつながる関節のところに出っ張りがありますよね。その鎖骨の出っ張りの間のくぼみから左右の脚が生えているような意識でいてください。そのように鎖骨の出っ張りの間のくぼみから脚が生えているように意識できるということは、背中の使い方がうまくいっている証拠です。
(結果ですから鎖骨の上の方には力を入れないでください。補足:胸郭と骨盤を引き離すに関連しますが力を使うのはあくまで背中側で、背中によって姿勢がととのえられた結果、チェックリストとして鎖骨の出っ張りの間のくぼみから脚が生えているような感覚がするかどうかをチェックするということです。)

     後側           前側
図9 肩甲骨を寄せお尻を引き上げる(前側は胸の上のほう(ちょうどTシャツに良くある胸上のバンド状のデザインの所)がアーチ状に左右に引っ張られている感じがすればOKです。)
背中全体を意識して上の図のように背中全体を真ん中(みぞおち真裏あたり)へ向けて引っ張る感じ。そうすると鎖骨の出っ張りから脚が生えているような感じが出てくる。

以下に姿勢を作るうえで役に立つイメージを列挙しておきます。

付録:姿勢を作るうえで役に立つイメージ
I 骨盤をどっしりとした臼と見てその臼の上の上半身でまっすぐなタワーを建てる。
II 首で作った斜張橋の橋脚タワーから肩の先(肩峰)を斜めワイヤーロープで吊る。
III 降りてくる天井を頭で止める


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