民営化 Privatization
作成者  BON
更新日  2008/12/07

 海外での水道事業の民営化や,PFIの盛り上がり,水道法の改正への動きをきっかけに,水道の民営化に関する機運も高まりを見せ始めています。水道の民営化に関する現状と見通し,検討課題などについて,識者のお話を自分なりに解釈,整理しました。あくまでも,一部技術者の見解としてみてください。なお,民営化と類似の話題として,PFI(民間資本の活用)については別ページに掲載します。

水道の民営化状況
 背景海外の状況事業会社日本の状況公と民の相違制度選択肢法的課題技術的課題
PFI
 民間資本による水道施設などの建設について。

【参考】 2003/06/23 当初,(財)水道技術研究センター,民活委員会での議論や知見などをベースに作成しました。その後も気が付いたらすこしづつ更新していますが,この分野は動きが急でして,全般の情報は古くなっている部分があるのであらかじめご了承ください。


水道の民営化

(1)日本における水道の民営化

1)民営化への動きの背景

 規制緩和の動きは,地方分権により,都道府県の判断や民営に道が開かれたことにそのきっかけがあります。省庁再編の動きとも相まって,従来の行政指導による個別対応から,判断基準の明確化を通じた地方や民間の責任における事業運営がなされるようになってきました。新施設基準,給水装置認証,などは全てこの延長線上にあります。

第2章 民間参入・移管拡大による官製市場の見直し【総合規制改革会議】
 小泉政権下で各種の規制撤廃を審議。上下水道の民営化についても言及。7月23日の中間とりまとめ―経済活性化のために重点的に推進すべき規制改革―にて,水道の民営化についても言及。

 水道事業そのものを民間へ,という形はもともと法的には可能です。しかし,市町村がその責任において水道事業を行う旨が水道法に謳われている現状では,事実上新設で民営の水道を始めるのは非常に困難と考えられてきました。

 第6条の2 水道事業は、原則として市町村が経営するものとし、市町村以外の者は、給水しようとする区域をその区域に含む市町村の同意を得た場合に限り、水道事業を経営することができるものとする。)

 その後,水道法が改正され,現在は,民間への責任の委譲を伴う委託も可能になりました。また,地方公営企業法の改正により,公共財として建設された水道事業の施設を民間に全面的に貸し出すことも可能となりました。これに基づき,水道事業のかなりの部分を民間が請け負うことが可能になっています。

 世界的には,「水は公共財」の考え方から,「民営でできるものは民営に渡さなければならない」との考え方に急速に変化しつつあります。なにより,普及率が96%を超えた現状では,水道は「必要不可欠なインフラ」の段階を過ぎ,「サービスを売る時代」に入りつつあるといえ,技術,管理ともなんでもありの時代になりつつあります。ただ,行き過ぎた民営化により事業再編が進みすぎ,一部には公営に戻ったり,NPOに運営を委託するようになったりした例もあるようです。また,世界水フォーラムなどでは,水道を担う民間企業が毎度槍玉にあがり,水は商品か権利か,といった論争に花が咲くといった光景が繰り返されています。

2)民営の水道の例

 では,現行の民営水道はないのか?いえいえ,全国で10指に余るのですが,実はあるのです。そのうち掲載します。

3)水道の民営化への制度改正

 わが国の水道においては,平成13年3月21日にの水道法が改正され,総括的な責任は以前公共にある点は変更はないものの,責任の分担の下に任せること(権限の委譲)が可能になりました。

水道法
 水道法そのものや,平成13年3月の改正についてここに置いてあります。

 さらに,日経新聞020307で,政府が水道の全面委託について解放の方針を決定との記事が踊り,水道界の注目を集めました。この件については,水道技術研究センターより会員に向けた広報(水道ホットニュース21号)が配信され,(水道法改正によって可能になった技術上の条件にとどまらず,)水道の事実上の公設民営スタイルによる全面委託が可能になる見通し,というのがその内容であることが案内されました。(詳細は水道技術研究センターの会員になって入手してください。)

 新聞報道では海外勢が日本への進出について活動をはじめていることを指摘していましたが,国内でも,維持管理を本業とする大手をはじめ,これまで設備の維持管理を手がけていた大手メーカー系の各社とコンサルタント会社などが協力するスタイルで,いくつかのグループが名乗りを上げており,既に一部では実績も出始めています。

【日本ヘルス工業株式会社】
 下水道分野での民間委託に強かったので,上水道分野でもいまのところ最大手。
【NJS-E&M】
 水道の民間委託を想定して,この手の会社ではもっとも早い時期(1998年)に設立されました。
【ジャパンウォーター】
 三菱商事と日本ヘルスの合弁(2000年)。メディアの注目を一身に集めてます。
【J-TEAM】
 設備系(荏原),コンサル系(E&M),工事系(栗本,積水),水質検査機関のコラボレーションチーム。最近法人格を取得。

 この他にも複数の会社が立ち上がってますが,ちょっと名前を覚えてません。リンクの売り込み歓迎します(^o^)

 ところで,水道技術研究センターの「水道サロン」において,藤原専務が面白いお話をご披露くださいました。あるとき,ニュージーランドから日本に視察団がきて,「電力の民営化について」調査にきたそうです。彼らは「電力のような基本的な財は公的機関が運用しないと安全性が保たれないのではないか,民営化の際に抵抗はなかったのか」と問うたそうですが,日本では電力は始めから民営ですので回答のしようがありません。この寓話は,実際のところ,「公的セクターでなければ安定が保たれない」という発想にまったく根拠がないことを裏付けるものなのかもしれませんね。

4)水道の民営化に関するレポート類

 世界的な水需給の問題などを背景に,水道の民営化が新しいマーケットとして認識されるにつれ,各方面の研究とその結果を示すサイトがネット上で公開されていますので以下に紹介。

地方公営企業における民間的経営手法等の取組事例集【地方公営企業】【総務省】
 総務省のサイトには水道を中心に,民活化された事業に関する情報があります。
上下水道セクターの民営化動向【国際協力銀行】
 開発途上国の経験に関する情報が特徴的。
上下水道の民営化に向けて【野村総合研究所】
 総研さんらしい,シナリオ方式によるプロスペクト。

【備考】


(2)海外の状況

 鉄管やポンプの発明により近代水道が始まりましたが,このころは実は民営が普通だったそうです。これを公共が買収していったのがそもそも水道事業の公営化で,1980年ころまでは,フランスなど一部を除く,多くの国では公営になっていたようです。これは,商品である水が公共財であること,健康に直結する問題であり集団感染を予防するために必要不可欠な機能であることが分かってきたこと,地域独占事業で選択が難しいこと,不採算でも推進する必要があること,建設費が大きく民間の信用力では回収に長期間を要しすぎること,などの理由によるものと考えられます。

 ところが,冷戦が終結して資本主義市場が発達するにつれ,民間の信用力が大きくなり,公の信用力の占める位置が相対的に低くなりました。この時期,特に英国においてこの傾向は顕著となり,施設の維持管理に必要な資本を確保できない状態に陥りました。そこで,当時のサッチャー政権は水道事業の民間への売却という手法に打って出たのです。これをきっかけに,公共事業の民間への移管が注目されるようになりました。

 最近の世界会議,国際会議では,取り扱う内容が急速に変革しつつあり,各国の水道事業が急速に民営化されている状況が明らかです。特に,もともと政府部門の信用力の低い発展途上国などでは,はじめから民間資本による水道の整備が行われるようになってきました。

 主要各国の民活関連法制度の進捗度について、水団連の水道戦略会議で作成した資料を引用しておきます。

項目 水道
普及率
(%)
都市部
普及率
(%)
農村部
普及率
(%)
PPPユニット
(政府のPPP推進部門)
PPP法 導入状況
(上下水道)
インド 84 95 79 -
韓国 92 97 71
中国 75 94 66 ▲▲▲ ■■■ ▲▲▲▲
トルコ 82 81 86 ■■■ ▲▲
アメリカ合衆国 100 100 100 ▲▲▲▲ ■■■ ▲▲
カナダ 100 100 99
メキシコ 88 95 69 ▲▲▲ ■■■ ▲▲▲▲
ブラジル 87 95 53
アイルランド ▲▲▲ ■■■ ▲▲▲
イギリス 100 100 100 ▲▲▲ ▲▲▲▲
イタリア ▲▲
オーストリア 100 100 100 ▲▲▲
オランダ 100 100 100 ▲▲▲ ▲▲
ギリシャ ■■
スウェーデン 100 100 100
スペイン ■■■ ▲▲
チェコ ▲▲ ■■ ▲▲
デンマーク 100 100 100 ▲▲
ドイツ ▲▲ ■■ ▲▲▲
ノルウェー 100 100 100
ハンガリー 99 100 98 ▲▲ ▲▲
フィンランド 100 100 100
フランス ■■ ▲▲▲▲
ブルガリア 100 100 100 ▲▲
ベルギー
ポーランド ▲▲ ■■
ポルトガル ▲▲ ■■■ ▲▲
ルーマニア 58 91 16 ■■ ▲▲
ロシア 99 100 96
オーストラリア 100 100 100
凡例
▲必要性は認識
▲▲検討・審議中
▲▲▲活動中
■法案段階
■■包括的PPP法案あり
■■■包括的PPP法制定済
○検討段階
▲調達中
▲▲工事中
▲▲▲完成段階
▲▲▲▲運営中

 出典)「水道事業を中心とした欧州のPPPとわが国への対応可能性」開発銀行資料をベースに独自調査分を追加

1)英国

 民営化による広域化のお手本といわれ,大部分の水道が完全民営化となっている国は他に例を見ません。その流れは,国財政の悪化,資金調達難,サッチャー政権下で民間に売却,その後統合されて現在に至ります。それまで,老朽化施設の更新などに十分に投資できない状態でしたが,これは改善されました。料金はプライスキャップ制の下ではあるが上昇しました。最近では,プライスキャップの限度が厳しく,水道への投資にうまみが小さくなったことから,ケルダ社の相互会社化などに見られるように,新たな事業再編が起こっています。

民営水道雑誌記事抄訳−ケルダ社の相互会社化
 イギリスで民営水道が公営回帰?(ケルダ社の事例)Water21の記事のうち,特に気になったもの。和訳もどき(自訳)。
【英国における上下水道規制】
 プライスキャップ制度の計算式などディープな情報あり。
海外からの手紙(Kiku)
 英国在住のKikuさんより。アライアンスの実際について。

 完全民営会社ですから,その事業展開は一般の企業と同じく非常に活発に変動します。テムズウォーターなど,一部の会社は旧植民地進出で蓄えたノウハウを応用して海外進出に積極的に打ってでています。

 反面,テムズウォーターが独RWEに買収されたり,米エンロンの破綻の影響が取り沙汰されたり,といった,長期安定が求められる企業としてはあまり好ましくないニュースを聞くこともあります。英国民のなかにも,完全民営化まではやりすぎだったのではないかという意見もあるようです。

2)仏国

 1853年,ジェネラルレゾがリヨン市の委託を受けました。現在人口の約78%が民営水道で,74%の下水も民営です。約20%は公営水道です。民間に委託する目的はサービスと効率,コスト縮減とされています。民営と公営を比較すると,民営の方が基準遵守率が高く,値段が高いのが特徴です。世界で水道事業を含む公営企業の有名な2社,オンデオ(旧スエズ・リヨネーズ)とビベンディ(水道部門はジェネラル・デゾー)とは,いずれもフランス企業です。

 フランスの民間企業が世界的にシェアを拡大しつつある背景には,植民地での水道経営の経験があること,国内での実績と安定収入があること,拡大に積極的な経営者を排出したこと,などのほか,「コンセッション」と呼ばれる,所有リスクとコストを切り離した民営化の方法の優位性も見逃せないのではないかと考えます。

 一部には,積極的に展開する割にはリスクマネジメントが下手な企業もおり,そのせいでいくつかの水道事業から撤退し,現地政府に借金を残した例もあるとか。民営化の失敗例として必ず喧伝される汚点を作ったのも,フランス系企業の一部といわれます。

 さらに,水道部門をお荷物として切り離す動きまで出てきて...この辺はちょっと感覚が違うなぁ...

3)米国

 アメリカの民営化の動向(1990年代以降)は興味深いです。1997年に民間委託基準,海外企業が参入しやすくなったため,英仏企業の進出が激しくなりました。フランス系のリヨネーズがナルコケミカルを買収。ユナイテッドウォーターも(1998−1999)に数千億円の買収額で買収されました。USフィルター(独立系膜処理会社)もビベンディが買収(1999),といったように,民営化は米国で急激に進展しています。フランス系2社への対抗のため,一部の米国企業が買収などによる規模の拡大を目論んでいるとのこと。現在では上水28%,下水35%が民営とのことで,安定化した10兆円規模の市場と見られているそうです。(ちょっと古い情報かも)

 フランス勢の買収攻勢は,1992年のブッシュ政権下のExecutive Order(大統領令)において,インフラの民営化を推進する方針が発布されたことに端を発したといわれています。水については1997−1998年に,税制上の優遇を受けられる契約期間がそれまでの5ヵ年から20年に延長され,財政的な不利が減ったためとのこと。(それまでは5年間までは公的施設として扱ってもらえ,税制上の優遇を受けていたが,これが20年に延長された)

 米国の経営実態を調査した結果でも,民営水道の方が料金は高く,事故リスクも大きく取っている傾向がありますが,これは民営だからという側面以上に,「潜在的な問題を抱えた事業が,その改善のための資金を必要とし,優先的に民営化した」と捕らえるべきでしょう。水質基準の遵守率や施設の更新などでは民営水道の方に歩があるとのことです。

水道民営化報告書抄訳
 米国における民営−公営の現状等の調査結果。NAWCレポート,水道事業分野における公営と民営のパートナーシップの活用に関する調査。ただし作者約につき日本語化下手。

 また,2001年1月,カリフォルニアで電力危機が発生,シリコンバレーで有名な地域でも電力のショートが起こりました。電力事業は水道事業よりも民営化の動きが急ですが,このような経験は他山の石としなければなりません。また,インフラ事業は実際それほど儲からない(投下資本が大きい割りに自由度がない)ため,積極的な海外進出は最近では若干後退しており,米国の水道の中には買い手待ちで売りに出されているのが結構あるんだとか。

 ところで,英国起源のPFI,フランス起源の民活には,いわゆる英米法と大陸法の視点から,その契約スタイルにも大きな違いがあるようです。(この辺については蘊蓄集にも若干取り込んでみました。)

4)その他欧州

 ドイツでは20%が民営化。スペイン,ポルトガルでも取り組み始めているそうです。テムズウォーターを買収したのはドイツ企業RWEで,フランス勢への対抗上の措置とのことでしたが,そのRWEも,本業である電力との相乗効果を見込めない地域からは撤退傾向となってます。

 視察に参加したときに聞いた範囲では,このほかの各国でも民営化は推進の方向にあるようです。イタリアで訪問した浄水場は半分以上が民間に委託されていましたし,ノルウェーでは政府100%所有なれど株式会社でした。

5)発展途上国

 発展途上国では,政府の資金調達力が低いことから,民営が望ましいものとされています。途上国の事業は基準,料金,内乱などリスクが高い特徴があります。東南アジアには日本の技術協力,経済協力(ODAなど)によりインフラ整備がされるケースがあるのですが,民営水道ではODAの対象ではありませんし(BOTやBOO),ODAなどで整備しても,その後の経営を欧州系企業がもっていってしまい,残念ながら,結果として日本の足跡を消されてしまうようです。

 ところで,欧米の水道会社がこれら発展途上国に進出して,どうやって利益を上げるのか?疑問に思われる向きも多いと思います。その戦略は(現在私が知っている範囲では)大きく3つあります。

 第1に,盗水を減らして料金をきちんと徴収すること。第2に,職員を極力減らし現地化して人件費を減らすこと(欧米に留学しているような人材でも十分安く確保可能)。第3に,初期投資を抑制して契約年数にあった耐用年数用の施設とすること,などです。こわれそうになったら国営化して日本の補助で直せばよろしい。逆に日本が補助で直したところはただで使える施設を手に入れる絶好のチャンス,ということだそうです。 (-_-)ゞ

 なお,フィリピンではPFI型の事業がのうち主要な一つが破綻状態との話です。ジャパンウォーターも参加している東地区では非常に低い単価設定をしているにもかかわらず黒字化目前,逆に地元のロペス財閥と欧米の水道会社が組んだ西地区は,主導権争いから事業の迷走が続いていたのですが,とうとう撤退したとか。

【備考】


(3)水道事業会社

 国際的に有名な水道事業会社について,いくつか取り上げます。(まだまだ大手はあるでしょうがとりえず手当たり次第)

【スエズ】
 仏系で120カ国に進出。デグレモンなど傘下,米企業買収の動きなども。(記載内容にミスがありましたので修正しました。関係各位にはお騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。)
【ヴェオリア ジャパン】
 ビベンディユニバーサルが母体であった水道等の部門を分離してして出来た会社。本体はなんの会社かわかんなくなってしまいましたが。HPもヒットしないし。
【RWE】
 旧テムズウォーターは三井物産と提携。英国の民営水道で最大であったが,ドイツのRWEに買収されたあと...今ではオーストラリアのファンドの傘下に。

 ビベンディはページがどっかいっっちゃいました。この辺の合従連衡の激しさは,日本の事業体さんが一番嫌うところなんですが。

 資金力や総合力がある大企業に対抗するため,アメリカでは合併による規模の拡大を模索しています。米国では10兆円規模の売上ですが,これから類推すると日本でも4〜5兆円の売上が考えられるでしょう。これらの企業であれば,日本の水処理メーカーを買収することは全くたやすいことといえますし,水道事業そのものの買収も視野に入っているものと見られます。

 欧米企業の日本進出の動きはこのところ加速しているようです。彼等はオペレーションのノウハウ自体は自前で持っているので,商社などの事業家と手を組んで,日本の現状や商慣行などを調査中であるというのが現状のようです。日本の市場の巨大さもあるでしょうが,水道料金の徴収率が高く世界的にも安定したマーケットに映ること,アジア進出の足がかりとしたいこと,などがその理由のようです。

 このペースで合従連衡が進めば,そう遠くない将来,世界の水マーケットはひとつになる可能性があります。水道産業新聞の02年2月28日号の1面では,01年10月に,EUからの提案に基づいて環境サービス分野がWTOの貿易に関する協定の検討分野に取上げられることになり,2005年1月までに,上下水道を含むサービス提供のルールの枠組みが作られる可能性が高いと出ていました。今のところこれは達成されていませんが,単に,この話題の前に議論している農業分野での交渉が長引いているためで,農業が決着すれば水道,という方針は変わっていないと聞いてます。

 ちなみに,海外では,下水,環境を含め,水循環についてトータルで取り組まないと需要に対応できません。欧米企業はそういう形でのプロポーザルに歩があります。

【備考】


(4)日本の状況

 日本に目を向けると,水道は公営がほとんどであり,水道会社と呼べるような組織はありませんでした。事業体,メーカー,建設会社,コンサル,維持管理会社といった業態の会社が,協力して水道を支えているのが実情です。日本の水道関係企業の弱点は,維持管理部門とファイナンスの弱さとの指摘があり,ここへの対応も一部始まりつつあるようです。

 必ずしも水道だけではないのですが,維持管理会社の業界は,日本ヘルスがガリバー,次にメーカーやコンサル系の子会社,その他ミニ会社が多数,となっています。規模や設立経緯の異なる企業が並存しており,業界としての意思のとりまとめは少し難しい状態です。水道事業体でも,維持管理部門の公社化などの動きはあり,たとえば東京都水道局ではすでに公社(水道総合サービス)を設立しているので,取り掛かるのは容易とみられています。ただ,参入競争がなされるかどうか,職員の雇用をどうするか,などの点が懸念事項とされているようです。

 水道以外の動きについては以下の様子です。

●工水

 現時点で既に許可制です。本質的には民営は可能で,その事例もあるとのこと。ただ,産業振興政策と密接な関係があるため,自治体はどちらかと言えば消極的なようです。ただし,公設民営の工水の例はありますし,工水浄水場へのPFI方式の導入事例,包括委託事例も始まっています。

【株式会社久喜菖蒲工業団地管理センター】
 公設民営の工業用水道事業の例。

●下水

 下水道界では,下水道の整備に伴って不要になりかねないし尿処理組合を維持管理会社とする場合があり,労務の委託契約を中心に,1,000億円程度の市場が成立しているとのこと。水道が委託を進めれば,必ずしも同じ形ではないにせよ,下水道界でも同様の動きが明らかになるでしょう。上水と下水の維持管理業務は作業内容が近く,外国の事例をみても一緒になっていく傾向が強いのではないかといわれていますが,今のところはまだまだ。

●廃棄物

 廃棄物の分野では,建設業者が運転管理を行う形態が成立していますが,水道では同じ方法は違和感があります。有資格業者から無資格業者へ流れ,転がっていくうちに,最終的には不法投棄になるケースがよくあるため,再委託は禁止されています。

●ガス事業

 2001年4月,大分県中津市の市営ガス事業が,伊藤忠燃料に買収される形で供給を開始,同時期に山形県,秋田市などで同じような売却がありました。多くのガス事業が赤字に苦しむなか,事業売却の形で民営化されています。地域独占企業制が既に崩れたガス業界では,すでに東京ガスが拡大の方針を示すなど,業界の再編成が進んでいるようです。

●道路

 小泉政権の英断により日本道路公団が民営化されました。

 日経新聞02年2月27日号によると,道路公団の資金調達が難航しているとのこと。景気低迷に加え,アルゼンチン国債のデフォルトなど信用リスクに敏感にならざるを得ず,さらに投資家が公団の民営化後に不安を募らせていたところに,政治家による圧力で高速道路工事の発注の再開を表明したことが投資家の心理を逆撫でしたと解説されています。吉凶は立場によって分かれるでしょうが,民営化前から民活の特徴が顕在化した例として注目に値します。

 その後あんまりウォッチしてませんが,動き出したからにはもう後には戻れないでしょう。

●郵政

 郵政民営化論は某事件のせいか勢いを得ている様子。当時の石原大臣の見解では,郵政の次は水道を視野にいれているとのことでしたが,ここのところあまり噂は...

 ...とか書いてたのが5年前。郵政民営化が選挙の争点になり,小泉首相の圧勝につながるドラマチックな展開,当時だれが予想できたでしょう...

【備考】


民営化に関する検討事項

(1)公的責任制度と民間資本制度の相違点

 民営化を論ずるには,公営事業と民営事業の相違点を明らかにする必要があります。

  責任制(現状) 公営事業 資本制 民間企業
基本的考え方  水道の公益福祉的側面を重視し,法的責任により事業の継続性を担保する。  水道の経済的側面を重視し,資本的責任により事業の継続性を担保する。
経営体制  法的責任を負える対象として,市町村経営が原則。 法的責任者としての資格制度(水道事業管理者)を有する。  原則として法人格以外には制限はないが,部分受託では公的制度の認める資格を必要とする場合がある。
資本的収支  公益事業であるため資産のみで資本金が存在しない。このため,資本に対する利益は計上はされない。簡易水道では減価償却費を資本算入することができる(はず)  投資家による資本金を基礎にするためリターンが必要。資本調達にコストがかかる。資本的収支の清算が必要で,償却費用などを要する。税金の問題がある。
収益的収支  収益を前提としないので,給水原価を積上げて料金を設定するのが普通。必要最小限の経費しか請求しないが,経営努力はコストの低下ではなく主としてリスクの低減に向かうので,現状に合わせた基準の改訂や検査など,外からの行政的なリスクアセスメントが必要。
 料金設定には行政当局,財政当局,議会の承認が必要だが,承認されればあとは自由で,プライスキャップはない。
 利益の計上が必要で,公営と全く同じ経営をするのであれば利益分料金は高くなる。通常は,リスクアセスメントによってある程度のリスクを許容する(たとえば監視人員を減らすなど)ことで,その分のコストを低減し,利益を計上する。競争が発生すれば,さらに自律的適性化が期待できる。
 料金設定は自由が基本であるが,公益事業的側面を重視し,プライスキャップなどの制度で頭を押さえるのが普通。
リスクテイクの方法  法的処置や議会による訴追により,原因の究明と解決が行われる。危機的状況に陥った場合でも,国や自治体による資本注入が行われ,経営は継続される。  資本価値の減少や起債条件の悪化などにより,事業の継続に直接影響が発生する。最終的には,買収などの形で資産のみが継続され,資本は清算される。

※)公益事業の資本に関してはうろ覚えです。なお,用語の定義については重視しておりません。

 このように,民営化によって確実に得られるのは,リスクを民間が負うことによって得られる行政コストの削減効果です。一般にイメージされる料金やサービスの向上などは,リスクの範囲を適正化することによって得られるコスト削減効果ですが,これは,あくまでも民間サービスが行政サービスよりも効率化できる場合において得られるもので,この効果は初期段階では大きいものの,いずれは小さくなる運命にあると考えるのが妥当でしょう。許容リスクが試行錯誤により明らかになれば,公営セクターが同じレベルまでリスクテイクする可能性が高いためです。

 実際,英国のケルダ社は,資産や資本を切り離して相互会社化し,自身は維持管理専業としてさらなる効率化を図る戦略にでたようです。世界の水道を席捲しているビベンディやリヨネーズは規模の拡大により事業効率を図る戦略でしたが,最近では業態を拡げてきており,メディア産業としての発展を模索しているようです。

【備考】


(2)制度的選択肢

 水道の民営化を想定した場合,資本,経営責任,運営の3つの視点をもって,以下のように分類してみました。2)−4)の違いは分かりにくいと思いますので,違いについて印をいれてあります。

  資本 責任 運営  
0)公設公営  市町村営を原則とする水道事業の形態。現在の普通の水道事業の形態で,英国が民営化するよりも前は世界的にも主流であった。
1)私設公営  団地開発時などに水道施設を開発事業者が建設し,運営を水道局に移管する場合などで広く行われる。黎明期の水道も同様。負担金制度の延長線上にある。
2)部分委託 公(民)  責任,経営,料金徴収は公とし,それ以外の業務の一部を委託する。経営責任は公(通常は議会の同意を必要とする),責任の委譲はないのが現在の形。人員派遣に近い。
3)私設民営 民(公)  民間や公共の出資で施設を建設し,最終的な責任を公がもちつつも,運営も独立法人が行う。いうなれば全面委託で, 部分委託の極端な形といえる。発展途上国など。
4)部分委譲 公(民) 公(民)  責任,経営,料金徴収など「根幹部分を公」としつつ,部分的な資本整備と責任委譲を含めての委託を可能とする。現在審議されている形態。
5)公設民営  資本は相互会社化,運営は民が担当する。公の信用による資本費の低減と,民営の利益創出努力を組み合わせた形。コンセッション(長期契約により整備から運営までを受託,契約期間後は引渡し)を含む。フランス型。英国ケルダの例など。
6)私企業化  民間が資産を買収,あるいは公的部門がスピンオフして独立する。英国型。JRやNTTのようなケース。現在の法制度でも可能ではあるが参入者はない。日本では成立しにくいとの声。
注)「公(民)」は,公がイニシアチブをとりつつ,民が参加する形を示します。

 責任がすべて公にある0)〜3)が従来可能だった形態です。これに対し,PFIなどでは3)〜6)を想定しているケースが多いようです。

 水道の所掌官庁である厚生省の方針については,以下のように聞き及んでいます。

●6)=英国型(公営企業の完全民営化)は考えていない。というより,法的には禁止していないので,特段手を打つ必要はないと考えている。ただし,水道事業は企業会計で黒字法人が多いので,NTTやJRのように,組長が株式会社化して売り出すことはありうる。

●5)=フランス方式(責任の委譲)は考えていない。これは,管理(オペレーション)を委託することは問題ないが,フランス方式のように,受託会社の責任において事業をするのは良くないとの判断である。

●4)=アウトソーシングは現在審議中。水道事業者がやりやすいように委託の選択肢を増やそうという考え方が基本。部分委託の定義は「根幹でない分を委託する」ことで,維持管理の委託が中心だが,設計,建設,維持管理まで一貫発注も可能になる。

●3)=公設民営については,水道事業体の経営基盤の強化のためには,コストダウンとリスク低減のせめぎあいの中でバランスをとることが必要との視点から,PFIとして検討中。

 つまり,将来的に市場が成熟すれば5)や6)も視野に入ってくるでしょうが,現状では,責任は「公」にあるという原則は変えず,3)=公設民営,4)=一部業務のアウトソーシング,が,当面行政的リスクの少ない民営化の手法となると考えられます。

【備考】
 一般に事業形態について解説している表とはあえて違う視点でまとめております。


(3)法制度と規制に関する課題

 いかなる方向に移行しようとも,需要者のメリットになることが大原則です。ただ,これを担保するのが「公=法律」か「民=市場」かで,そのアプローチはかなり異なります。

 「公」的方法でのアプローチでは,発生しうる問題などを検討予測し,法整備などの手法でこの芽を摘む形で確な運営を図ります。ちなみに,「民」的アプローチでは,情報公開と競争により,市場がこれを判断,問題事業に退場を迫る形になります。このためには市場の成熟が絶対条件で,これが時期尚早というのが「公」の判断です。

 「公」的アプローチを図るには,関連法の整備や規定の点検が必要になりますが,この作業は一筋縄ではいきません。関連しそうな制度や法律について,当面の検討課題として列挙します。

水道法

 市町村営の原則など,責任を「公」が負う前提での法体系です。水道法は先ごろ改訂され,運用上のガイドラインは現在検討中ですので,この動きに注目することになります。

●行政の関与

 民間企業を管理監督する部署(英国におけるOFWATやDWIの役割を果たす部署)の新設が必要です。民間に委託したとしても公的監督は受けることになります。むしろ,電気,ガス並の監督権限が必要になり,基準遵守も圧力も強くなるでしょう。(金融監督庁をイメージすればいいかもしれません。)管轄の厚生省が,地方医務局に水道担当を置くなどして人員を配置しなければならないのではないか,との意見もあります。

●議会との関係

 議会などに議決権がある現状では,その権限を手放さないのではない可能性があります。また,仮に民営化されてもプライスキャップなどの方法で料金に制限が加えられると考えられます。この他,水道需要が伸びない現状で経営形態の変更はできるかなど,議会の承認が必要なことがリスクになる可能性は残ります。

●補助制度

 自由な競争という民的アプローチから考えると,補助金行政は「行政コストの削減」という,民営化の最大のメリットに逆行するおそれがありますが,環境対策など政策に合致したものに対して補助をする形も考えられますので,一概に否定するのもよくないでしょう。

●地方自治法

 起債制度も一種補助制度と同じような使われ方ですから,同じような視点で取り扱うべきでしょう。起債などファイナンス的な制限については,自治省管轄の地方自治法の制限に少し引っかかっているようです。これは現在見直し中とのことです。

 同じ文脈から,水道事業の売却など,法的なリスクを研究することが必要でしょう。また,短期間の契約ではリスクを分散できないため,事業体の単年度会計制度との擦り合せについて研究が必要と考えられます。

●税制上の優遇

 補助制度よりはインセンティブという意味で,「民」的アプローチに近くなります。また,税の負担のない公営事業との競争を強いるようでは不当に競争を阻害することになりますので,税制上の優遇は積極的に検討すべきでしょう。米国の民営化が一気に進んだのも,税制上の改正がきっかけでした。具体的には,固定資産税や道路使用料などの減免が考えられます。ちなみに,郵政の方は課税される方向で検討中の様子です。(日経2001/10/21記事,総務大臣談話)

●PL法と性能保証

 PL法の概念を考えますと,「施設の建設」で見ると,建築物の施設は性能基準でメーカーに修正する責任があります。しかし,これまでの水道の場合は土木事業で,製造物そのものの性能に責任を問われておらず,もっぱら基準に適合しているかどうかが問題でした。

 ところが,施設基準が成立したので,相当突き詰めたところまでの仕様の設定が可能になりました。このことにより,性能を満足するために許容できるリスクについても研究できるようになりました。たとえば,(浄水場の運転管理を委託により合理化/省力化したときに)クリプトが出た場合の責任範囲をどうするか,など,具体的なケーススタディが可能となります。さらに,今後,設備投資への自由度を認めた結果の性能発注が採用できるようになれば,自由度が高くなり,面白くなってきます。

 「民」的アプローチを極めると,究極的には,「mあたりいくら」で入札する形が可能になると考えられます。究極的には世界共通のやり方になる可能性が高いでしょう。PL法の理念をベースに検討を進める必要があります。また,同じ視点から,何らかの保険制度があった方がよいかもしれません。

●PFI法

 PFI法の対象範囲に水道が入っていますが,PFI法は基本法であって,水道のPFIを進めるためには個別に立法措置が必要であるとのことです。

●河川法/水利権

 目下,水供給事業を新設する場合の水利権の確保は大きな壁となって立ちはだかると考えられます。これは,河川管理者が民間に営利目的の水利権を与えることはないとみられるためで,水利権に絡む制度については十分な研究が必要と考えられます。

●参入資格と格付け

 下水,し尿の維持管理は既に群雄割拠状態で,技術力や資本力のない会社が受注して破綻を起こした例もあり,無秩序な参入に対しては警戒感があります。参入の秩序についても,「公」的方法と「私」的方法があります。

 「公」的アプローチでは,資格制度や承認,認可,マニュアルや基準などの方法で,何らかの公的な審査と指針の提示を行い,参入資格を設定する方法になります。特に部分委託を考える場合,共同組合のように,公平性が必要なときの調整組織や,責任をもって人材を配置できる組織があると発注しやすくなります。実際,維持管理をしっかり受けてくれる保証があれば,現状でも事業体の需要はあると考えられます。

 「民」的アプローチでは,信頼性や確実性はマーケットが判断すべきことで,そのためのあらゆる情報の公開が必要です。投資家のニーズから,自然発生的に「格付け」がされ,評価が固まらない会社は市場からの退場を迫られます。PFI方式を想定するのであれば,出資者の評価を前提にした,「民」的アプローチが必要でしょう。

●雇用

 現在の維持管理担当者が引き継ぐと移管はスムーズですが,効率化は図れません。NTTの場合では,給与水準の改善などの立場から,むしろ労働組合も民営化に賛成であったそうです。JRの場合はご存知のとおり,労組の活動により二進も三進もいかなくなり,国民合意の下に強制的に民営化されました。現状では,水道では,事業体,国民,の,どちらの側面からも変革圧力は強くないように見えます。現場経験の有る人をいかに効率的に取り込むか,これはどんな業界でも経営的にみて常に大きな課題です。

●規格

 海外などではJISは知名度がなく,ISOは売り込みがうまいために広がっています。規格の設定と拡散は市場に向けた大きなメッセージですが,ISO(というより自分たちの規格を国際規格にしてしまう能力)を前提とした海外勢への対応を考えれば,規格の扱い方について研究しておく必要があると思われます。

【備考】


(4)技術的課題

 最後に民営化について調査や評価が必要な,制度以外の課題について整理します。

●市場規模

 市場規模や需要の予測,適正な事業規模などについては調査が必要です。印象として,日本の維持管理の業界でみると,下水では800−900億円くらいの規模で民営化されているそうです。水道では,法的な位置付けなしに取り組んでいるため100億円程度の市場規模ですが,将来的には水道も下水と同じ程度までいくものと予想されます。

 今後,日本国としての信用力が国際的に頭打ちになれば,資本リスクを民間にゆだねることが必要になると考えられ,マーケット化の流れが一旦出来るような時勢になれば,その流れが加速するものと考えられます。その時期はなんともいえませんが,今後10年くらいの間に方向は定まっていくでしょう。

●ニーズの調査

 民営化によってなにかいいことがありそうな気はするけれど,正に「同床異夢」,民営化に寄せる思いは立場によって大きく異なります。これは実は無視できない点で,「第3セクター」の多くが破綻した原因の一つでもあります。主体ごとに整理してみましょう。

  民営化に対するニーズ 外的要因
大規模事業体  水道事業者自身は民営化する必要はほとんどない。規模の効率もあり,資本費の安い時代に水源開発や投資を行っており,経営的にも安定していることが多い。  経営に不安がなくても,自治体自体の累積赤字が大きいケースがあり,組長が,キャッシュの獲得を目的に,売り出す可能性がある。
中規模事業体  経営規模の大きな事業体に隣接している場合など,行政的都合から料金を適正に決められない場合があり,経営が悪化しているケースがある。  継続的に一般会計からの繰り入れを必要としているケースなどで,事業コストとリスクの切り離しのニーズがある。
小規模事業体  簡易水道などでは資本整備に補助を受けるなどできるが,規模や効率が低く基本的に経営は厳しい。技術者の確保などの問題もある。  規模拡大による効率化を図りたいが,市町村営を原則とする現行法では難しく,委託などの活用で規模効率を求める。
需要者  安全に対する要求が高い。民営では心配という意見と,JRの例などから民営になるとサービスが向上するというイメージがある。  他事業の動きが水道にも波及することは考えられ,廃棄物など他との合同事業などが突破口になる可能性がある。
商社,銀行  投資機会の拡大としての視点から,安定して収益があげられる投資対象として期待をもってとらえている。  海外勢の進出意欲との協力傾向が鮮明。維持管理のアウトソーシングを足がかりに進出機会を窺っている。
水道業界  拡大の時代は終焉しており,機器の納入などは先細りになるため,そのメンテナンスなどを足がかりにしたいと考えている。  資本規模が異なることから,海外勢の動きに神経を尖らせている。

 このように,官や自治体側が民活に期待しているのは,中小の財政基盤の弱い事業体の救済です。しかし,こういう事業は民営だからといってうまくいくものではないし,民間側もあまり参入したがらないものです。

 水道事業者の意識を見ると,海外と異なり,大規模事業では民営化して獲得しなければならないような資金不足は現時点ではあまり表に出ていません。また,通信や電気,ガスなどと比べ,水道料金が高過ぎるという認識は少ないことが多く,その低減への要求はあまり強くなく,むしろ,安全確保への投資要求の方が強いと思われています。

●リスクに関する研究

 管理,水質,施設,ファイナンス,契約,調達,広域化,非常時対応,住民対応,官民責任分担,競争激化など,民営化を想定した場合の様々なリスクについて洗いなおすことが必要です。従来型の「基準に適合しているからOK」から,「OKの度合いの測定」へと進化しないといけません。

●コストを低減するための技術の開発

 リスクの評価に平行して,コストを低減するための技術についても,大胆に研究する余地があります。

 技術の標準化,民間保有技術の活用,技術者養成,運転管理技術の向上,上下水道の連携,広域的整備,複数事業の維持管理業務一括化,窓口業務の省力化,入札や契約の簡素化や方法の工夫など,様々なメニューに研究余地があります。また,技術的な「セールスポイント」が不足しているという指摘もあります。

【備考】


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