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作成者  Mr.Kiku
更新日  2003/05/04

 ここは,日本語の分かる海外在住者からいただいたメールを紹介します。日本と制度等が異なる部分もありますので,いろいろ参考になります。

 このぺージは,もともと同僚だった方で,現在英国在住のKikuさんからいただいた情報を紹介しています。(ハンドルネームは本人から正式名称をいただくまで仮称です)

  1. No.1 配水池
  2. No.2 イギリス水道事情(1)
  3. No.3 イギリスにおける託送

配水池

 ご無沙汰です。イギリスからKikuです。アメリカにいらしたようで,お疲れさまでした。狸さんのホームページはよく見さして頂いてます。アメリカの紀行文の中で,高架水槽の話がでてきましたが,世界の配水池の面白いURLがあったので紹介します。

 http://members.tripod.com/~watertowers/index.html

 私もアメリカにはちょくちょく行きますが,高所から街を眺めると,あちらこちら(配水区ごとに)高架タンクがきのこみたいににょきにょき設置されていますね。日本では見ない光景です。経済比較などはわかりませんが,地震等の不安がなければ,フラットな場所では高架タンクの使用も直圧に比べなかなか経済的なネットワークシステムでなないでしょうか。昔,シアトルで100年以上前の古い配水池に上がったことがありますが,とても綺麗な配水池でした。タンク自体は円筒形の鋼製で外部はレンガで囲われていました。池の最上部は展望台になっていて,市民が登れるようになっていました。景観も含めて市民に親しまれる構造物もいいですね。

 イギリスでも,高架タンクか地下式水槽がメインで,PCタンクなんて見たことがありません。こちらでは,日本にくらべまだ土地があるようです。また,イギリスの各家では,屋根裏に水タンクが,またセントラルヒーティング・給湯用のタンクもあるので,あまり時間変動なんて心配しなくても大丈夫なんではないでしょうか(?)。水道システムも国によってまちまちですね。

<中略>

 今後ともよろしく。それでは。


イギリス水道事情(1)

 皆様お元気でしょうか。こちらイギリスでは,長いく暗い冬も終わり,ようやく春めいてきました。ここ連日,イラク戦争といった暗いニュースばかりですが,平和で豊かな生活を一人でも多くの人々がおくれるよう願うばかりです。

 日本では水道事業運営の効率改善に向けて,水道運営の民間委託に対する規制緩和が年内にも行われるようですが,上下水道事業の完全民営化が既に行われているイギリスの動向などについて,何か情報発信ができないものかと考え,今回メールを送ることにしました。できれば定期的に発行できればいいのですが,なにぶん怠惰な人間なもので,何かおもしろいトピックなど見つかった時に送らさせてもらいます(今回が最初で最後になるかもしれませんが)。

 今回は,この半年間でのイギリスにおけるコンサルの経験をベースに,こちらでの水道会社・コンサル・施行会社が結ぶアライアンスにご紹介したいと思います。

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アライアンス(1)

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 アライアンスと聞くと,皆さん何を連想されますでしょうか。スター・アライアンスと聞くと航空会社間で結ぶ共同運行協定,アライド・フォースと書くと同盟関係にある軍隊のことです。アライアンスとは(相互利益のためなどの)同盟または協定とでもいいますでしょうか。現在私が携わっているテームズ・ウォーター社(以下TWと呼ぶ)の下水関連業務もアライアンス形態の中で行われています。

 TWの上下水施設の管理・運営は,全サービスエリアを大きく3つの管理区(West,North,London)に分け,それぞれの管理区内でTreatment(水処理)とNetwork(管渠,ポンプ場も含む)の2部門に分かれていますが,それぞれの管理区のNetwork関連業務については,TW(各管理区の事業所)とコンサル(1社)及び施行会社(1社)がアライアンスを結び,調査・設計・施行を共同で3社が行っています。したがって,各管理区のNetwork業務については,コンサル1社(施行会社も同じ)が独占して業務を行えるようになっています。このような,アライアンス協定はテームズ・ウォーター社に限らず,大規模な水道会社では近年一般的に行われており,昨年訪問したことのあるイギリス北部のユナイテッド・ユーティリティー社でも,水道会社の敷地内にコンサルが同居するといった日本では見られない光景が現実となっています。

 日本の水道業界(または官公庁に係る建設業界)における従来の入札・契約方式から見ますと,このようなアライアンスは少し変わった感じがしますが,こちらの水道会社は完全民営化されていますので,アライアンスは民民提携となり,効率的な事業経営を目的とした民営水道会社の施策の1つとして定着しつつあるようです。民間会社同士の業務提携方法は,日本でも他の業界や電気やガスといった他の公益的な事業において,広く行われていると思います。ただし,このアライアンスをこれまでの業務提携方式の一種または延長と考えるよりは,新しいタイプのマネジメント方式として捉えたほうが正しく,その概念もこれまでの業務提携方式とは異なるものです。また,このアライアンスにより業務が効率よく進むよう,支払い方式などにおいても各参加者のインセンティブが働くような工夫が盛り込まれています。

 アライアンスの成立時には,提携会社間でチャーター(設立係る協定書)を結びますが,そこには中でアライアンスの目的や行動指針が定められています。具体的な項目を挙げますと,

1)Innovationやchallengeを伴って,費用対効果のあるsolutionを追求する。
2)Teamとして行動し,協力し合う。
3)オープンで信頼し合う。
4)責任の転嫁や相手への非難を行わない。
5)共に利益を得る

 などがあり,こららの行動指針に基づいて,協定会社または個人が業務を遂行するよう求められています。このような行動指針を見ますと,あいまいなような感じがしますが,コンサル及び施行会社の業務実績は水道会社により定期的に評価され,コンサル及び施行会社ともアライアンスを更新契約できるよう努力しているわけです。また,アライアンスの概念の背景には,従来の競争(入札)だけがVFM(Value formoney)を達成する方法ではなく,各参加者が共通の目的のもと協力しあうことで,より高い成果を得,共に得をしようという考えがあるようです。

 では,具体的にはアライアンスによりどのようなその他のメリットがあるのでしょうか。まず,アライアンスの成立に対し,各会社が多くの人員または技術・資材の提供を約束しますので,いろいろな業務の遂行において,各会社の保有する人的(物的)資源が最大限活用されること。調査・設計の段階から施行業者が参加しますので,設計段階で施行業者からの意見が反映される,調査・設計中に必要な測量やサーベイなどは,簡単ね手続きで施行業者が行ってくれる,事業や工事変更に対し柔軟性があること。また,従来の方式ですと,設計が終わらないと工事に入れない,または,入札等により時間が取られるといったことがありますが,アライアンス業務だと工事の種類によりますが,設計が終わったところから順次工事に入ることができ,工期の短縮ができること。各参加者でリスクを分担し,事業の開始時からリスクの軽減について,各参加者が対応できること。などがあると思います。

 ここまでお話すると,皆さんたぶん,お金のことが気になるかと思います。基本的には,コンサル及び施行会社はコストベースにマネージメント・フィーが支払われますが,各業務開始前には費用見積もりからターゲットコストを設定し,実際に係った費用がそれよりも安かった場合にはその差額を各参加社で配分,また,費用が高くかかった場合には,費用を分担するように,インセンティプが働くようになっているようです(Gainshare & Painshare)。また,各業務について費用上限が定められており,それ以上の費用が支払われることはありません。コンサル・施行会社共に,うまみのある支払い方法ではありませんが,その分を継続した業務量でカバーしているといったところでしょうか。

 以上,ざっとアライアンスについて紹介しましたが,皆さんピンときましたでしょうか。こうお話するとアライアンスもあまり悪くないような感じもしますが,実際にはデメリットや日々の業務を遂行する上での問題もいろいろでてきます。そして,そのデメリット等は,イギリスを始め海外では多く採用されつつある,JV,Design &Build,BOOT等においても共通な部分が多々あり,従来とちがった役割もコンサルに求められるようになってきています。そこで,次回は,実際のTWの業務を通じて,アライアンスに対する雑感やデメリット等についてお話したいと思います。


イギリスにおける託送について

 この件は,持続可能な水道システム研究会でこういう例があるので調べてみては,というご案内をいただいた件です。英国といえばKiku氏,ということで,早速メールを入れてみました。

 先日,ある勉強会で,イギリスの託送の話が出ました。水道の供給会社を自分で選ぶことができるというアレです。で,実際のところ,託送で選べるサービスにはどのようなものがあるのでしょうか。単に料金が違うだけなのでしょうか。また,どのような範囲や体制でどんな会社がやってるのか,など,もし情報があったらお教えくださいませ。

 回答(030711)をいただいた内容は以下のとおりでした。

 OFWATのHPを見てみましたが,2000年3月に施行されたThe Competition Actに従い,水道でも競争原理の導入と受益者の選択を広げるということで,昨年,OFWATがガイドラインを作成し,現在,各水道会社が託送に係る暫定的な料金体系の公表をし始めているようです。法的には問題なく,こちらでも既に事例はあるようです。ただ,対象は大口がメインではないでしょうか。

 また,テームズウォーターの同僚(?)に聞いたところ,まだ実施例はないとのこと。やはり難しいのではないのかと言っていました。

 私の理解では,新規に給水を受ける場合,新規受益者としては1)従来どうおり,既存の水道会社から給水を受ける,2)給水区域外の水道会社からラインをひっぱり,そこから給水を受ける 2)託送という考えで,給水区域内の導水・送水管から給水区域外の水道会社(または準じる会社)が管を布設し,受水料金を給水区域内の水道会社に払う代わりに,客から料金を徴収する,という選択があり,その選択の1つとして託送が議論されているのではないでしょうか。また,既存のサービス管からの託送については,把握していません。イギリスの場合,大口は別として,半数程度の一般家庭では,定額で料金をはらっているため(メーターがない),その辺の料金体系を考慮して,議論する必要があるでしょう。

 上記については,ざっとOFWATのHPを斜め読みしただけなので,実態は違うのかもしれません。イギリスの託送について,日本ではどの程度把握されまたは報告されているのでしょうか?(恥ずかしながら,まったく私は知りませんでした)。結構,おもしろい題材なので,すこしつっこんで調べてみてもいいかなーと思っています(レポートが書ける程度の)。

取り急ぎ,御報告まで。

 ということで,この件は続報をいただき次第また掲載します。

【備考】


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