原決定並びに抗告審決定とは異なり、差戻審の本決定では、平成17年9月5日付けで森本から出された同異議申立てに理由があるものと認められるとした点が特に重要である。※
実質上、平成14年(ワ)第496号事件の被告小林等の行為は違法であり、平成15年4月の自治会総会決議は無効であったとの判断が、本決定の背後にあるものと考えられるからである。
その為、本決定の別紙「計算書」では、「相手方償還分」に記載されているとおり、訴訟費用については伊藤個人の分しか償還を認めていないことが分かるのである。
※平成17年9月5日付け異議申立書の「異議申し立ての理由」
「上記訴訟費用額確定処分の別紙計算書通し番号31に関して、三浦国光殿は、実質上、平成15年(ワ)第573号自治会総会決議無効確認請求事件の証人として出頭を命じられたものであり、また、平成17年8月26日付け回答書の1で述べたとおり、平成14年(ワ)第496号事件の被告小林藤雄は、本来個人的な紛争責任を当時の役員等と口裏を合わせて自治会に転嫁したものである。
とすれば、実質的な事実関係においても、第496号事件被告小林と第573号事件被告中小河原第3自治会とは、本来何らの関係もなく、従って、第573号事件被告中小河原第3自治会に関する証人尋問の費用(3950円)もまた、第496号事件被告伊藤が請求することはできないのである。」
※平成17年11月8日付け抗告状の「抗告の理由 1」
「原決定は、その2頁2行目で「上記自治会総会決議はそもそも496号事件に関連するものであり」としている。
しかし、考えるにその「関連」は、科学的因果関係の有無を問題とするようなものではなく、法的な評価が加えられたものであるはずである。
ところで、平成17年8月26日付け「回答書」で抗告人森本が指摘したとおり、平成17年の初め頃、現在の自治会執行部内で、496号事件被告小林の訴訟費用・弁護士費用を自治会の負担とする旨の平成15年4月の総会決議は再検討の余地があるとの話し合いがなされ、結果として、平成17年4月の自治会総会で496号事件被告小林の訴訟費用・弁護士費用は自治会では負担しないことになったいきさつがある。
これは、森本が提出した平成16年12月3日付け控訴理由書で主張され現れた事実から(同理由書8頁乃至10頁の81.2.3.、同じく上告受理申立理由書3頁乃至6頁のゴシック部分)、条理上からしても森本の言い分に理があるとの判断が、また、当時別紙資料その1・その2が森本によって全自治会員宅に配布された為、地面詐欺という事実関係(控訴理由書4頁乃至5頁の33.参照)を知るに至った地域住民に対して、496号事件被告小林等個人の問題でしか過ぎない事件につき、もはや負担を求めることはできないとの判断が、それぞれ働いたからである。
とすれば、496号事件被告小林の訴訟費用・弁護士費用を自治会の負担とする旨の平成15年4月の総会決議は、公序良俗に反し無効なのだから(民法90条)、496号事件被告小林と573号事件被告中小河原第3自治会とは、法的保護に値する関連にはなく、従って、573号事件被告中小河原第3自治会の訴訟費用を496号事件被告(基本事件申立人であり本抗告事件相手方である)伊藤が請求することは、できないと言わねばならないのである。」