縄文岩魚1 縄文岩魚2 縄文岩魚3 縄文岩魚4 縄文岩魚5

 二日目は、急階段のゴーロを抜け、大滝を高巻き源流へ。いつもなら見事な小滝だが、流れる水が少なく、寂しさが漂うような情景だった。滝壷の左には、大量の落ち葉が集まり、深まり行く秋を感じさせる。岩魚は、岩の穴に深く隠れてなかなか姿を見せなかった。
滝の落下は、今まで見たうちで最も細かった。縄文岩魚たちは大丈夫だろうか・・・何となく不安がよぎった。 滝を高巻くと渓は、覆い尽くす森にすっぽり覆われ暗い。流れる水には、いつもの力が感じられなかった。
いつもならサワボタシやナメコが生えているのだが、食えるキノコは皆無だった。一雨こないと生えてきそうになかった。 森から沁み出す流れは冷たく、例え水量が細くても清冽そのものだった。苔岩を滴る美わしい光景に、何度もデジカメのシャッターをきった。ただし、三脚がないと全てブレてしまう。
 真ん中に黒い岩魚が踊っているのが見えますか。こんな水溜りのような流れにも縄文岩魚たちは健在だった。餌をそっと入れると岩陰から現れ、食い付くまでの一部始終を見ながら釣り上げる。キャパシティが小さく餌が少ない源流だけに、無用な殺生はしないよう心掛けたい。
 苔と共に渓全体に白いダイモンジソウが彩りを添えていた。清冽な流れの脇に咲くダイモンジソウは、何度撮影しても飽きない花だ。角度を変え、滝や流れを入れて何枚も撮影した。
 見上げると、色付き始めた縄文の森が谷を覆い尽くしていた。
 捕獲した岩魚は、いつものように網袋に入れて生かしたまま持ち歩く。最後に生け簀を作ってできるだけ美しく撮影したい。もちろん、美味しくいただくためにも・・・ 二日目も快晴、秋晴れの空に森が輝く。森はどこまでも深く、谷まで光が届かず、日中でも薄暗い。
 流れが細いせいか、餌を入れてもすぐに逃げるケースが多かった。これは、頭を隠して尻隠さず、の格言どおり、岩と流木に隠れた岩魚の写真だ。すぐにブレてしまうので、何枚も撮影した中の一枚だ。 こんなに少ない水量なら、生け捕りした方が早い。長谷川副会長は、岩の下に逃げ込んだ岩魚を、虫捕り用の網と棒切れで追い出し捕まえた。
 生け捕りにした縄文岩魚。全身、橙色に染まった体色、腹部の鮮やかな柿色が印象的だ。斑点は小さく、側線の上下に薄っすらと橙色を帯びている。まさに源流岩魚と呼ぶにふさわしい魚体だ。この美魚を撮るために、奥へ奥へと吸い込まれていった。

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