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梅原猛氏はどちらかといえば西洋哲学者で、宗教を避けた評論をしてこられていたのが、ここにきて一転、母校の東寺の中学生に対して、12回に分けて、仏教をテーマに集中講義をされました。日本の思想史を通覧する意味でも、現在に求められる、倫理観のベースとして、宗教、特に仏教の歴史的役割を子供たちや、世の親にも伝えたいという、穏やかな語り口の中に、強烈な使命感をこの本で表現されています。 その要点として、 (1)仏教伝来以来の政治と日本人の精神世界形成への関わり (2)権力者は宗教を国教化する普遍的事実 (3)神仏習合による日本的土俗性への変質 (4)江戸時代に儒教が武士階級の精神的支柱となるも、庶民は寺子屋で仏教を教えられた。 (5)明治維新で絶対王政即天皇教となり、廃仏毀釈、妻帯許可で仏教は家業として堕落、戦後GHQによる自由化の功罪 (6)なによりも、西洋哲学との比較、いまの倫理観の欠如の歴史的背景が実にわかりやすく分析されており、読後に “あーそうだったのか”という心地よい納得感が得られます。 |
作者は森信三先生、生涯教育者であり、京大の西田門下に学んだ哲学者でもあります。非常に優れた実践的指導者で、晩年実践の家という読書会を中心にした勉強会を主宰し、多くの教育者を指導し、全一学という独特の哲学を提唱した方です。 「修身教授録」は、森先生が42−3才の頃、(昭和12−3年)当時の天王寺師範での修身科の授業で講義をしたものを生徒に筆録させたものです。人生を良く生きる為に必要な様々なテーマについて、生徒達に分かる言葉で、懇切丁寧に先生の考えを述べたものです。古めかしいタイトルにしり込みししましたが、縁あって手に入れて一読し、当時40代初めの私の魂をゆさぶられ、以来座右の書として繰り返し読むと共に、若い職員に対する読書会の教材としても使用したりしています。また、子供たちを始め、友人、後輩達に読んでもらおうとプレゼントしています。若い人たちから、熟年に至るまで是非一度読んでもらいたい講義録です。 巻頭にある小島直記氏の推薦の言葉を転記します。 70代初めに、この書物で心を洗われた幸せを思う。生きるための原理原則を考え直し、晩年にそなえるために、これ以上の出会いはなかった。奥深い真理が、実に平明に、ていねいに語られていて、おのずと心にしみてくる。よほど愛と謙虚さと使命感と責任感がなければ出来ないことだ。「『慎独』とは結局、天が相手だ」 「志と野望はちがう」 「その人の生前における真実の深さに比例して、その人の精神は死後にも残る」こういう言葉は、もはや学生でなく、さまざまな職業の、三十代、四十代、五十代、六十代、七十代と、それぞれの年齢に応じて重く響くものがあるだろう。特に組織のなかに埋没しがちなサラリーマンにすすめたい。 |