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  ここでは、ペットボトルロケットの力学について解説する。物体にどのような力がはたらいているかがわかれば、その物体の運動は解析することができる。エクセルを使って数値計算しながら最終的にペットボトルロケットの軌道計算をめざしてみよう。(2020.8.1)
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目次

 
   第1章 
運動方程式を解いてみよう(1次元の運動)
    (1-1)
一定の力が働く物体の運動を考えてみよう
    (1-2)
水ロケットカー(水を噴出して進む車)の原理とその運動方程式
    (1-3)
圧力タンク型水ロケットカーの原理とその運動方程式
    (1-4)
空気ロケットカー(圧縮空気を噴出する勢いで進む車)の原理とその運動方程式
   第2章 
ロケットの軌道計算にチャレンジ(2次元の運動)
    (2-1)
初速度を与えられたロケットの運動(放物運動)
    (2-2)
ペットボトルロケットの軌道計算
   第3章 
参考文献

第1章 運動方程式を解いてみよう(1次元の運動)

(1-1)一定の力が働く物体の運動を考えてみよう

図のように、質量\(m\)の物体に、一定の力\(F\)の力を加えた場合を考えよう。物体の運動方程式は 物体の運動 \begin{equation} ma=F   \end{equation} となる。加速度\(a\)は、\(\frac{F}{m}\)となり、
時刻\(t\)での速度\(v\)および、位置\(x\)は、 \begin{align} v=v_{0}+\frac{F}{m}t,  x=x_0+v_{0}t+\frac{1}{2}\frac{F}{m}t^2 \end{align} となることがわかっている。この運動は、等加速度直線運動と呼ばれている運動である。
ここで、\(v_0\)、\(x_0\)は、時刻0での速度、位置を表している。 これ以降の問題では全て\(v_0=0\)、\(x_0=0\)として計算することにする。
加速度\(a\)は、\(\frac{dv}{dt}\)と表すことができる。(1)式を書き直すと、 \begin{equation} m\frac{dv}{dt}=F \end{equation} となる。このような式を微分方程式という。ここでは、このような微分方程式を数値計算で解いていこう。
\(\frac{dv}{dt} \fallingdotseq \frac{\varDelta v}{\varDelta t}\)として、この式を変形してみると、 \begin{align} \varDelta v=\frac{F}{m} \varDelta t \end{align} 今、時刻\(t\)での速度を\(v(t)\)、位置を\(x(t)\)として、 時刻\(\varDelta t\)後の速度\(v(t+\varDelta t)\)、および 位置\(x(t+\varDelta t)\)を求めるには、 \begin{align} v(t+\varDelta t) =v(t) +F/m・\varDelta t \end{align} \begin{align} x(t+\varDelta t) =x(t) +v(t)・\varDelta t \end{align} とする。このようにして、少しずつ時間を進めて、速度、位置を求めていく。 これはオイラー法と呼ばれる方法である。 つまり、物体の運動方程式をたてることができれば、物体の運動を調べる(速度と位置を調べる)ことができる。 それでは、エクセルを使って数値計算することで、この運動方程式を解いてみよう。
エクセル1

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(1-2)水ロケットカー(水を噴出して進む車)の原理とその運動方程式

物体の運動

 図のように、水槽(水タンク)の底に小さな穴があり、水を噴出しながら進む台車(水ロケットカー)を考えてみよう。 水を噴出するとき、台車(水ロケットカー)は図右向きに力を受ける。この力を推力と呼ぶ。 この水ロケットカーの推力を求めてみよう。 今、水ロケットカーの質量(中に入っている水の質量を含むロケットカー全体の質量)が\(m\)とする。 このロケットカーが毎秒、質量\(\beta\)の水を、ロケットカーに対して、\(u\)の速さで噴出しているとする。 微小な時間\(\varDelta t\)間に、ロケットカーの速さが\(v\) から\(v+\varDelta v\)に変化したとする。 地面に対するの水の速度を\(w\) とすれば、相対速度の関係式より、\(-u=w-v\)であり、\(w=v-u\)となり、また ロケットカーが噴出する水の質量は\(\beta\cdot\varDelta t\)なので、運動量保存の法則より、

\begin{align} mv=( m-\beta\varDelta t)(v+\varDelta v)+ \beta\varDelta t\cdot w \end{align} すなわち、 \begin{align} mv=( m-\beta\varDelta t)(v+\varDelta v)+\beta\varDelta t\cdot (v-u) \end{align} ここで\(\varDelta t×\varDelta v\)の項は無視して整理すると、

\begin{align} m\frac{\varDelta v}{\varDelta t}=\beta u \end{align} となる(文献5)。 微分方程式の形で書けば、 \begin{align} m\frac{dv}{dt}=\beta u \end{align} となる。これは、ロケットの運動方程式を表している。ということは、 右辺はロケットカーにはたらく力なので、これはすなわち推力を表している。 さて、水が噴出している穴(噴出口)の面積を\(a\)、水の密度を\(\rho_w\)とすると、 \begin{align} \beta=\rho_w a u \end{align} と表されるので、(10)式を書き換えると、 \begin{align} m\frac{dv}{dt}=\rho_w a u^2 \end{align} また、この式の中の\(m\)は、時間とともに変化することに注意しよう。この\(m\)の変化は、水が出て行った分だけ減少するので、 \begin{align} \frac{dm}{dt}=-\beta \end{align} \begin{align} \frac{dm}{dt}=-\rho_w a u \end{align} と書くことができる。 また、これまで、噴出する水の速さを\(u\)としてきたが、 これは、水タンクの中の水の水位(噴出口から水面の高さ)を\(h\)として、噴出口が十分小さい場合には、ベルヌーイの定理より、 \begin{align} u=\sqrt{2gh} \end{align} となることがわかっている。(参考文献 6および8) また、この\(h\)は、水が噴出するとともに減少する。 単位時間に、水は\(au\)だけ外に出るので、水タンクの断面積を\(A\)として、 \begin{align} \frac{dh}{dt}=-\frac{1}{A} au \end{align} と表される。 ここまで、時間とともに変化する物理量として、\(v,u,m,h\)が出てきた。
式(12)、(14)、(15)、(16)をまとめてみると、 \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{llll} m\frac{dv}{dt}=\rho_w a u^2\\ \frac{dm}{dt}=-\rho_w a u\\ \frac{dh}{dt}=-\frac{1}{A}au\\ ここで、\\ u=\sqrt{2gh} \end{array} \right. \end{eqnarray} これらの式は、連立の微分方程式の形をしているが、これらを解けば、この物体の運動を調べることができる。 前述したオイラー法の考え方がわかっていれば、数値計算の方法は難しくない。 それでは、エクセルを使ってこの微分方程式を解いてみよう。

エクセル2
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(1-3)圧力タンク型水ロケットカーの原理とその運動方程式

petjet1  図のように、密閉型のタンクに水を入れ、中に圧縮空気を入れた台車(圧力タンク型水ロケットカー)を考えよう。 水が圧力タンク内の圧力により噴出し、その推力によって台車は進む。ここでは、水が全部出てしまう前までの運動を考えてみる。水が出終わってまだ圧縮空気が残っていれば、空気が噴出することでさらにロケットカーは加速されるが、空気の噴出による運動は、次の節(1−4)を参照してほしい。
 水(密度\(\rho_w\))が、断面積\(a\) の噴出口から、ロケットカーに対し速さ \(u\) で噴出するとき、 推力\(F\)は、(9)式の右辺と同様に \begin{align} F=\beta u =\rho_w au^2 \end{align} となる。よって、運動方程式は、(10)式と同様に、 \begin{align} m\frac{dv}{dt}=\rho_w a u^2 \end{align} と表される。ここで水ロケットカーの質量(中に入っている水の質量を含むロケットカー全体の質量)を\(m\)とする。 この\(m\)の変化は、水が出て行った分だけ減少するので、式(14)と同様に、 \begin{align} \frac{dm}{dt}=-\rho_w a u \end{align} さて、ここで水が噴出する速さ\(u\)はどのような式で表されるか考えてみよう。 圧力タンク内の圧力を\(P\)、タンクの断面積を\(A\)、タンク内の水の流速を\(U\)、 また、噴射口の断面積を\(a\)、 噴射口での水の流速を\(u\)、そして大気圧を\(P_a\)とすると、 流体力学の基礎式であるベルヌーイの式および連続の式より、 \begin{align} \frac{1}{2}\rho_w U^2 + P +\rho_w g h=\frac{1}{2}\rho_w u^2 + P_a \end{align} \begin{align} U\cdot A=u\cdot a \end{align} がなりたつ。ここで\(g\)は重力加速度、\(h\)は噴射口から水面までの高さである。この2式から、 \begin{align} u=\frac{1}{\sqrt{1-(a/A)^2}}\sqrt{2(P-P_a)/\rho_w +2gh} \end{align} となる(文献7)。 これを式(18)に代入すれば推力は \begin{align} F=\frac{2a}{1-(a/A)^2}(P-P_a+\rho_w gh) \end{align} となる。 ちなみに、噴出口が十分小さく、 また、中に入れた圧縮空気が大気圧より十分大きく、 \(A \gg a  ,  (P-P_a)\gg \rho_w gh \)が成り立っているとすれば、 近似的には、 \begin{align} u=\sqrt{2(P-P_a)/\rho_w } \end{align} \begin{align} F=2a(P- P_a) \end{align} としても大きな違いはない。後述する数値計算では、この近似を使うことにする。
圧力タンク内の圧力\(P\)は水の噴出に伴い急激に減少するが、この変化は断熱変化とみなし計算してみよう。 今、圧力タンクの中の空気の体積を\(V\)、圧力を\(P\)とし、微小な時間\(dt\)後、それぞれ、\(V+dV\)、\(P+dp\) と変化したとすると、断熱変化の関係式より \begin{align} PV^\gamma=(P+dp)(V+dV)^\gamma \end{align} ここで、\(\gamma\)は、空気の比熱比である。 この式を変形すると、 \begin{align} PV^\gamma=PV^\gamma(1+\frac{dp}{P})(1+\frac{dV}{V})^\gamma \end{align} さらに、 \begin{align} (1+\frac{dV}{V})^\gamma \fallingdotseq 1+\gamma \frac{dV}{V} \end{align} の近似式を用い、また、\(\frac{dP}{P} \times \frac{dV}{V} \)の項を無視して整理すると、 \begin{align} \frac{dP}{P}=-\gamma \frac{dV}{V} \end{align} 圧力タンクの圧縮空気の体積は、水が外に噴出した分だけ増加するので、 \begin{align} dV=au\cdot dt \end{align} となる。これを代入して \begin{align} \frac{dP}{dt}=-\frac{\gamma P}{V} au \end{align} これで、計算の準備ができた。時間とともに変化する物理量として、\(v,u,m,P,V\)が出てきた。
式(19)、(20)、(25)、(31)、(32)をまとめてみると、 \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{llll} m\frac{dv}{dt}=\rho_w a u^2\\ \frac{dm}{dt}=-\rho_w a u\\ \frac{dP}{dt}=-\frac{\gamma P}{V}au\\ \frac{dV}{dt}=au\\ ここで、\\ u=\sqrt{2(P-P_a)/\rho_w } \end{array} \right. \end{eqnarray} これらの連立の微分方程式を解けば、この物体の運動を調べることができる。 それでは、エクセルを使ってこの微分方程式を解いてみよう。

エクセル
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(1-4)空気ロケットカー(圧縮空気を噴出する勢いで進む車)の原理とその運動方程式

petjet3

 図のように、体積\(V_0\)の密閉型のタンクに圧縮空気を入れた台車(空気ロケットカー)を考えよう。 空気が圧力タンク内の圧力により、ノズルから噴出し、その推力によって台車は進む。 圧力タンク内の空気の圧力、空気の密度をそれぞれ、\(P,\rho \)、噴出口での値をそれぞれ、\(P_e,\rho_e \)、外部の大気圧を\(P_a\)とする。 断面積\(a\) の噴出口から、ロケットカーに対し速さ \(u\) で空気が噴出するとき、 運動方程式は、(19)式と同様に、 \begin{align} m\frac{dv}{dt}=\rho_e a u^2 \end{align} と表される。ここで空気ロケットカーの質量(中に入っている空気の質量を含むロケットカー全体の質量)を\(m\)とする。 また、式(20)と同様に、 \begin{align} \frac{dm}{dt}=-\rho_e a u \end{align} さて、ここで空気が噴出する速さ\(u\)はどのような式で表されるか考えてみよう。これは、圧縮性流体についての流体力学の理論により、次式で表される。(文献8) \begin{align} u=\sqrt{\frac{2\gamma}{\gamma-1}\frac{P}{\rho}\left\{1-\left(\frac{P_e}{P}\right)^{\left(\gamma-1\right)/\gamma}\right\}} \end{align} ここで、\(\gamma\)は比熱比である。この式にでてくる\(P_e\)は、外気圧\(P_a\)とは必ずしも同じではないことに注意が必要である。内外の圧力差が大きいほど、単位時間あたりの噴出量が大きくなりそうに思われるが、実際には内部の圧力がある値より大きい時は、気体の噴出は、流れの閉塞(チョーキング)を起こし、\(P_e\)は外気圧まで下がることはない。
その状態では、噴出口での圧力\(P_e\)は、臨界圧力\(P^*\)となる(文献8)。この値は次式で表される。 \begin{align} P^*=\left(\frac{2}{\gamma+1}\right)^\frac{\gamma}{\gamma-1}P \end{align} 空気の比熱比\(\gamma=1.4\)を代入して計算すると、 \begin{align} P^*=0.528P \end{align} となる。
例を上げて説明しょう。
今タンク内の圧力\(P\)が3気圧、外気圧\(P_a\)が1気圧だとしよう。臨界圧力を計算してみると、 \begin{align} P^*=0.528 \times 3=1.58気圧 \end{align} となる。この値は、外気圧の1気圧より大きいので、流れは閉塞状態になっている。 この時の噴出口の圧力\(P_e\)は \begin{align} P_e=P^*=1.58気圧 \end{align} となり、外気の1気圧まで下がらない。 この値を(36)式に代入することで、\(u\)を求めることができる。 では、今タンク内の圧力\(P\)が1.8気圧まで下がったとしよう。臨界圧力は、 \begin{align} P^*=0.528 \times 1.8=0.95気圧 \end{align} となる。この値は、外気圧の1気圧より小さいので、流れは閉塞状態ではない。 この状態では、噴出口の圧力\(P_e\)は外気圧に等しく、 \begin{align} P_e=P_a=1気圧 \end{align} となる。この値を(36)式に代入して、\(u\)を求める。
さて、(34)式の右辺の推力は、運動量推力と呼ばれるが、噴出口での圧力\(P_e\)が外気圧\(P_a\)まで下がらないとき(つまり閉塞状態のとき)、圧力差による推力\(a(P_e - P_a)\)がこれに加わる(文献5)。 よって、(34)式の運動方程式は、次のように書き換えられる。 \begin{align} m\frac{dv}{dt}=\rho_e a u^2+a(P_e - P_a) \end{align} 次に、噴出口での気体の密度\(\rho_e\)の計算の仕方を考えよう。 これは、断熱変化の式 \begin{align} \frac{P}{\rho^\gamma}=\frac{P_e}{\rho_e^\gamma} \end{align} より、 \begin{align} \rho_e=\rho \left(\frac{P_e}{P}\right)^\frac{1}{\gamma} \end{align} として求めることができる。
最後に、気体が噴出するにつれてタンク内部の圧力\(P\)がどのように変化するか、考えてみよう。
式(35)より、時間\(dt\)間にタンクから外へ出る気体の質量\(dm\)は \begin{align} dm=-\rho_e a u\cdot dt \end{align} よって、タンク内の密度の変化は、タンクの体積を\(V_0\)として、 \begin{align} d\rho=\frac{dm}{V_0}=\frac{-\rho_e a u}{V_0}\cdot dt \end{align} 断熱変化の式より、 \begin{align} \frac{P}{\rho^\gamma}=\frac{P+dp}{(\rho+d\rho)^\gamma} \end{align} これを整理して、 \begin{align} 1+\frac{dP}{P}=\left(1+\frac{d\rho}{\rho}\right)^\gamma \end{align} さらに、近似して、 \begin{align} \frac{dP}{P}=\gamma \frac{d\rho}{\rho} \end{align} 式(47)を代入して整理すると、 \begin{align} \frac{dP}{dt}=-\gamma \frac{\rho_e P}{\rho V_0}au \end{align} これで、計算の準備ができた。時間とともに変化する物理量として、\(v,u,m,P,\rho_e,\rho\)が出てきた。
式(43)、(35)、(36)、(45)、(47)、(51)をまとめてみると、 \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{llll} m\frac{dv}{dt}=\rho_e a u^2+a(P_e - P_a)\\ \frac{dm}{dt}=-\rho_e a u\\ \frac{d\rho}{dt}=\frac{-\rho_e a u}{V_0}\\ \frac{dP}{dt}=-\gamma \frac{\rho_e P}{\rho V_0}au\\ ここで、\\ u=\sqrt{\frac{2\gamma}{\gamma-1}\frac{P}{\rho}\left\{1-\left(\frac{P_e}{P} \right)^{\left(\gamma-1\right)/\gamma}\right\}}\\ \rho_e=\rho \left(\frac{P_e}{P}\right)^\frac{1}{\gamma} \end{array} \right. \end{eqnarray} この式で、\(P_e\)の値については、まず臨界圧力 \(P^*=0.528P\) を計算し、 \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{llll} P^*\geqq P_aであれば、P_e=P^* (閉塞状態)\\ P^* < P_aであれば、P_e=P_a (閉塞状態ではない)\\ \end{array} \right. \end{eqnarray} と代入する。 それでは、エクセルを使ってこの微分方程式を解いてみよう。このエクセルの数値計算では空気抵抗の影響を考慮している。これについては第2章の中で触れるのでそれを参照してほしい。

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第2章 ロケットの軌道計算にチャレンジ(2次元の運動)

(2ー1)初速度を与えられたロケットの運動(放物運動)

petjet3 図のように、初速度を与えられたロケットの運動を考えてみよう。 図のように、水平方向をx軸、鉛直方向をy軸とし、それぞれに運動方程式をたてると、 \begin{equation} m\frac{dv_x}{dt}=-R\cos\theta \end{equation} \begin{equation} m\frac{dv_y}{dt}=-R\sin\theta-mg \end{equation} ここで、\(\theta\)は、ロケットの進行方向とx軸のなす角度であり、\(R\)は空気抵抗を表している。 ここで、空気抵抗\(R\)の式は、 \begin{equation} R={1 \over 2}\rho v^{2}SC_D \end{equation} となる。 ここで\(\rho\) は空気の密度、\(v\) は物体の速さ( \(v=\sqrt{v_x^2+v_y^2}) \)、\(S\) は物体の代表面積(ここでは、ペットボトルの断面積)、\(C_D\) は抗力係数である。抗力係数は、物体の形状に依存する。たとえば、頂角30度の円錐の形であれば\(C_D=0.34\)となる(文献6)。
それでは、エクセルで解いてみよう。この計算では、ロケットの位置\( (x,y) \)をもとめ、軌道をグラフで表してみよう。

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(2ー2)ペットボトルロケットの軌道計算

petjet3

 さて、いよいよ最後である。図のように、水を入れたペットボトルロケットを、ある角度\(\theta_0 \)の発射台に設置し、圧縮空気を入れ、水を噴射させロケットを飛ばすことを考える。ロケットにはたらく力は、推力\(F\)、重力\(mg\)、空気抵抗\(R\)である。さらに、発射台に沿って進んでいる間は、発射台から垂直抗力\(N\)を受ける。発射台との間の摩擦力は無視する。ロケットは水を噴出しながら発射台に沿って長さ\(L\)だけ進み、さらに水を噴出しながら飛ぶ。途中で水がなくなると空気を噴出しながら進む。さらに中の空気が大気圧と同じ圧力(1気圧)になったら、あとは慣性飛行(重力と空気抵抗だけがはたらく運動)となる。では、ロケットの運動方程式をたててみよう。
\begin{equation} m\frac{dv_x}{dt}=(F-R)\cos\theta-N\sin\theta \end{equation} \begin{equation} m\frac{dv_y}{dt}=(F-R)\sin\theta-mg+N\cos\theta \end{equation} ここで、\(\theta\)は、ロケットの進行方向と\(x\)軸のなす角度を表している。 ここで、発射台からの垂直抗力\(N\)は、ロケットが長さ\(L\)の発射台の上を進んでいる間は\(N=mg\cos\theta_0 \)、発射台の上を通り過ぎたら、\(N=0\)となる。もちろん、その間は\(\theta =\theta _0\)である。推力\(F\)は、水を噴出している間は、(1−3)節の考え方で、水がなくなり空気を噴出している間は(1−4)節の考え方で求めるものとする。空気が外気圧と同じになった後は\(F=0\)である。

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第3章 参考文献

(1)日本ペットボトルクラフト協会編「ペットボトルロケットを飛ばそう」ダイナミックセラーズ出版
(2)松尾喬 編「ペットボトルロケットのつくりかた」英知出版
(3)愛知、岐阜物理サークル「いきいき物理、わくわく実験」新生出版株式会社
(4)前田弘「飛行力学」養賢堂
(5)原田三夫・新羅一郎「宇宙ロケット」共立出版
(6)加藤宏「流れの力学」丸善株式会社
(7)須藤浩三・長谷川富市・白樫正高「流体の力学」コロナ社
(8)谷田好通「流体の力学」朝倉書店
(9)平田邦男「BASICによる物理ドライラボ入門」共立出版

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