Going in Style ★★☆

1979 US
監督:マーティン・ブレスト
出演:ジョージ・バーンズ、アート・カーニー、リー・ストラスバーグ

左:ジョージ・バーンズ、中:アート・カーニー、右:リー・ストラスバーグ

ジョージ・バーンズ(1896年生れ)、アート・カーニー(1918年生れ)、リー・ストラスバーグ(1901年生れ)が3人揃って何をするかというと銀行強盗なのですね。まあ言ってみれば、映画史上最高平均年齢のキャストによる銀行強盗映画と言っても良いでしょう。メインキャストの平均年齢が異常に高い映画というと、80年代にはベティ・デイビス、リリアン・ギッシュ、アン・サザーン等が出演した「八月の鯨」(1987)やダグラス・フェアバンクス・ジュニア、フレッド・アステア、メルビン・ダグラス、ジョン・ハウスマン等が出演した「ゴースト・ストーリー」(1981)等を思い出しますが、これはそれに匹敵しますね。しかもただ高齢であるだけでなく、3人とも少し変った経歴を持っていて映画俳優としてメジャーデビュー或いはメジャーカムバックをするのが皆70年代であるという点においても極めてユニークです。ジョージ・バーンズは最初はボードビルパフォーマーであった人で、1930年代には映画にも頻繁に出演していましたが、1940年以後は私目の大好きな映画「純金のキャデラック」(1956)でその独特の皺枯れ声を活かしてナレーターを務めていた以外は映画界から遠ざかっていました。それが、1970年代にニール・サイモンものの「The Sunshine Boys」(1975)で突如復活して、驚くべきことに100才で1996年に亡くなるまでの20年間再び映画やTVにしばしば出演するようになります。アート・カーニーはこの3人の中に入ると若手になってしまいますが、活躍のメインはブロードウエイとTVであった為、映画メジャーデビューは1974年の「ハリーとトント」ということになりこの作品でオスカーを受賞します。他に日本で知られている作品としては「名犬ウォン・トン・トン」(1977)くらいかなという気がしますが、この「Going in Style」やロバート・ベントンが「クレイマー、クレイマー」(1979)以前に撮った映画「The Late Show」(1977)等の興味深い作品に出演しています。後者は40年代のフィルム・ノワール的な雰囲気を持つ探偵映画へのオマージュと言ってもよいような映画で、その系列の作品としては70年代では「さらば愛しき女よ」(1975)とともに出色の出来であると言っても良いのではないでしょうか。リー・ストラスバーグは、勿論アクターズ・スタジオの重鎮であった人ですが、映画に出演するのは実はあの「ゴッドファーザーPARTIII」(1974)が最初で確か麻薬王か何かを演じていたのではなかったでしょうか。他には「カサンドラ・クロス」(1976)でポーランドへ送還されるのを恐れるユダヤ人を演じていました。まあ、アクターズスタジオといえばマーロン・ブランド、モンゴメリー・クリフト、ポール・ニューマン、ジョアン・ウッドワードリー・レミック、ロッド・スタイガーを始めとして錚々たる映画俳優さん達をわんさか輩出しているわけですが、こと映画出演ということになると娘のスーザン・ストラスバーグの方が彼よりも20年近くも先輩であったということになります。というような変った3人が主演していて、しかもこともあろうに銀行強盗を働くわけですが、この映画で興味深いのはこのメンバーであるからこそ可能なその独特なタイミングです。銀行強盗と言えば少なくとも映画中ではスピーディ且つスタイリッシュに描かれるのが普通ですが、そこは何しろ平均年齢が70才台の銀行強盗なので少しオーバーな言い方をするとあらゆるタイミングの腰が折られてしまうところが絶妙です。それは銀行強盗シーンのみではなく3人が公園でベンチに座って鳩にエサを撒いている冒頭のシーン(画像参照)から既に良く現れていて、要するにこの3人であるからこそ許されるような間合いがあるとも言えるでしょう。後半は仲間が一人また一人とあの世へ行って(まあ、70才台の銀行ギャングというのはしんどいのでしょうね)どちらかというとペーソス的な悲哀が前面に現れてきますが、しかしながらこのようなストーリー展開を持つ映画によくありがちな、それまでコメディであったはずが突然センチメンタル調に急転直下するというようなことにはならないところが良いですね。まあそもそも、かくして最後に残ったジョージ・バーンズのパフォーミングスタイルはセンチメンタル調には全くそぐわないということもあるのかもしれません。ということで独特なペースと味のある映画と言っても良いでしょう。


2004/12/04 by 雷小僧
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