The Bachelor Party ★★★

1957 US
監督:デルバート・マン
出演:ドン・マレー、ジャック・ウォーデン、E・G・マーシャル、フィリップ・アボット

左から:E・G・マーシャル、ドン・マレー、フィリップ・アボット、
ジャック・ウォーデン、ラリー・ブライデン

デルバート・マンの監督作であり、いかにも彼らしい肌理の細かな作品です。野郎ばかりの5人の仲間達が「バチェラー(独身者)パーティー」(とは言いつつも、メンバーの多くには既に嫁さんがおり、リーダーが独身なのでそのように呼ばれている)と称して、ナイトクラブやバーで深夜まで遊びまくるという極めて単純なストーリーが繰り広げられ、ストーリーそのものよりも会話などにおける細かなニュアンスがウリの作品です。極めてノーマルでありながらも独自の個性を持つ様々な人物の間でのインタラクションが描かれ、雰囲気はやや異なるとはいえ、同じくデルバート・マンの手になる傑作映画「旅路」(1958)と傾向的にはよく似ています。来週結婚するということで戦々恐々しているアーノルド(フィリップ・アボット)、そのアーノルドをわざわざ娼家まで連れて行って宥めるチャーリー(ドン・マレー)、独身を謳歌し夜遅くまで遊びまくりたがるエディー(ジャック・ウォーデン)、いかにも自分の人生の平凡さに嫌気がさしている様子をしたシニカルなウォールター(E・G・マーシャル)、奥さんの陰(とはいえ奥さんはその事実を知っている)で浮気を繰り返すケネス(ラリー・ブライデン)と、言ってみればどこにでもいる極めてありふれた人物ばかりが揃っていながら、そのような人物達の間で発生するインタラクションを通して各人物の個性や特徴が見事に浮き彫りにされます。つまり、極めて高度なハンドリングが監督に要求されるチャレンジングな内容が「The Bachelor Party」には含まれていることになりますが、ものの見事にそれを達成するところは、さすがはデルバート・マンと賞賛すべきでしょう。「The Bachelor Party」はそのデルバート・マンの監督作であるとはいえ、実は脚本はかの有名なパディ・チャイエフスキーが担当しています。パディ・チャイエフスキーといえば、勿論アカデミー賞受賞作「マーティ」(1955)のような初期のマイルドな作品もあるとはいえ、恐ろしいまでにパラノイアックな描写による社会批判が爆発する後期の「ホスピタル」(1971)や「ネットワーク」(1976)の方が、個人的にはどうしても先に頭に浮かびます。この後期の2作品の存在を考えると、パディ・チャイエフスキーの激烈な脚本とデルバート・マンのマイルドな映画はマッチするようにはとても思えないにも関わらず、パディ・チャイエフスキーの初期の2作品、すなわち「マーティ」と当作品はデルバート・マンの監督作でもあるのです。恐らく50年代当時は、前者の辛辣さよりも後者の洗練された肌理の細かさの方が、力関係からしても遥かに勝っていたということかもしれません。「マーティ」(1955)、「The Bachelor Party」(1957)、「卑怯者の勲章」(1964)、「ホスピタル」(1971)、「ネットワーク」(1976)と年代順にパディ・チャイエフスキーの代表作を並べてみると、時代を追う毎にパラノイアックな傾向が強くなるのが分かり、「The Bachelor Party」の脚本を担当した頃は、まだそのような彼一流の傾向が潜在状態にあり、萌芽期にあったと言えるかもしれません。話変わって、「The Bachelor Party」の主演は、ドン・マレーですが、個人的には彼を結構気に入っています。ドン・マレーといえば、オスカーにノミネートされた「バス停留所」(1956)での無骨なテキサスカウボーイの荒っぽいイメージがどうしても脳裏をよぎるとはいえ、実は「The Bachelor Party」のチャーリーのようなごくありふれた人物を、それなりの輪郭を持って演じられるセンシティブで且つソフィスティケートされた面も備えているのです。チャーリーのような極めてノーマルな人物を演じると、下手をするとジャック・ウォーデンやE・G・マーシャルのような個性派に食われてしまう可能性があるにも関わらず実際にはその陥穽に落ちていないのは、ノーマルな人物を演じながらも、センシティブで肌理細かな彼の演技が効いているからこそです。それから、当作品でアカデミー助演女優賞にノミネートされたキャロリン・ジョーンズがボヘミアンガールを演じており、いつもながら彼女には少し変わった独特な印象を受けます。


2003/04/05 by 雷小僧
(2009/01/10 revised by Hiroshi Iruma)
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