Bells Are Ringing ★★☆

1960 US
監督:ビンセント・ミネリ
出演:ジュディ・ホリデイ、ディーン・マーティン、フレッド・クラーク、フランク・ゴルシン

左:ディーン・マーティン、右:ジュディ・ホリデイ

2002年の幕開けを飾る作品として何を取り上げようかと思いあぐねた末、個人的に大のお気に入りであるジュディ・ホリデイが主演している作品を2本取り上げることにしました。もう1本は、「It Shoud Happen to You」(1954)です。まず、「Bells Are Ringing」は貴重な作品であることを強調しておきましょう。というのも、ジュディ・ホリデイが主演格で出演している50年代以降の作品の中では唯一のカラー作品だからです。因みに、端役として出演していた40年代前半の2本の作品は皮肉にもカラーのようであり、また「純金のキャデラック」(1956)は、ラストシーンのみカラーで撮影されているとはいえ、それはほんの一瞬です。ジュディ・ホリデイの主な活躍期間は50年代であり、1960年に公開された「Bells Are Ringing」に出演した後は映画界から去り、癌により60年代半ばに43才という若さで亡くなります。従って彼女の活躍時期は、ほぼマリリン・モンローのそれと重なり、またタイプが異なるとはいえ気のいいアメリカン娘を演じればピカ一であった点もモンローと似ているかもしれません。ゴージャスブロンドであるところも同じです。しかしながら、実生活では恐ろしくわがままであったとする三面記事を散々聞かされていることもあってか、マリリン・モンローが扮する銀幕のキャラクターにはどこか作られたイメージがあるのに対し、ジュディ・ホリデイには脳天気とすらいえるほどの天然の気性のよさが感じられます。「Bells Are Ringing」のビデオプロダクトの裏面の解説に「ecstatically good-natured Holliday」と書かれていますが、まさにその通りであり、彼女ほど天性の気性のよさを感じさせる女優さんは他にいません。だからこそ、たとえ漁夫の利を得たようなところはあったとしても、「Born Yesterday」(1950)のようなコメディ作品でアカデミー主演女優賞を受賞できたのでしょう。殊に最近の女優さんの中に彼女のようなパーソナリティを見出すのは不可能に近く(時々サンドラ・ブロックにはそれが感じられるので少し彼女には期待していますが)、アメリカ映画界は、そのようなパーソナリティを持つ女優さんがかつて活躍した事実をもう一度振返って再評価すべきではないでしょうか。アメリカ映画界はともかくとして、ジュディ・ホリデイ出演作の受容状況に関して日本国内に目を向けると、もともと少ない彼女の出演作の中でも数本しか公開されておらず、恐らく現在ビデオなどで容易に見られるのは「アダム氏とマダム」(1949)と「純金のキャデラック」のみではないかと思われる事態に鑑みると、いったいどうなっているのかと呟かざるを得ません。マリリン・モンローが嫌いなわけではありませんが、モンローの出演作品ばかりをビデオ化するよりもジュディ・ホリデイの作品をあと2本でも3本でもビデオ化してほしいところです(※)。肝心の「Bells Are Ringing」について簡単に述べておくと、実はこの作品はディーン・マーティンが出演するミュージカルです。個人的にミュージカルファンではないことに加えて、ストーリー進行上かなり散漫なところが見出せるところもあり、それほど何度も見ているわけではありませんが、ビンセント・ミネリのミュージカルとしてではなくジュディ・ホリデイの最後の貴重な作品として捉えると、「Bells Are Ringing」は、俄然興味深く見ることができます。ジュディ・ホリデイよりも遥かに知名度の高いディーン・マーティンが必要以上にしゃしゃり出るところがない点にも好感が持てます。また、「純金のキャデラック」と並んでジュディ・ホリデイの天性の気性のよさが最大限に活かされている作品でもあり、この類稀なる「screen gem」を、しかもカラーで鑑賞できるだけでも値千金であると少なくとも個人的には考えています。

※当レビューを書いた後、「Bells Are Ringing」が「ベルズ・アー・リンギング」として、「It Should Happen to You」が「有名になる方法教えます」として、「Born Yesterday」が「ボーン・イエスタディ」として、それぞれ国内でもDVD化されました。(2009/01/25追記)


2002/01/06 by 雷小僧
(2009/01/25 revised by Hiroshi Iruma)
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