女はそれを我慢できない ★★☆
(The Girl Can't Help It)

1956 US
監督:フランク・タシュリン
出演:ジェーン・マンスフィールド、トム・イーウェル、エドモンド・オブライエン、ヘンリー・ジョーンズ

左:トム・イーウェル、右:ジェーン・マンスフィールド

ジェーン・マンスフィールドが主演であることに加えて、「女はそれを我慢できない」などという恐ろしく怪しげな邦題がつけられていると、何やらあらぬ期待を抱かざるを得ませんが、実はそのようなけしからぬ期待を抱いていると見事に肩透かしを食わされます。というのも、「女はそれを我慢できない」の「それ」とは、どうやら「炊事洗濯などの家事一般をしないでいること」という意味らしいからです。と言っただけでは、この作品を見たことがない人には、さっぱり意味がわからないはずなので、少しストーリーを説明しましょう。因みに、この作品はジュディ・ホリデイがオスカーを受賞したジョージ・キューカーの「Born Yesterday」(1950)の焼直し作品ですといえば、内容が推察できる人も多くいることでしょう。トム・イーウェル演ずるしがない芸能プロモーターは、かつて巷にその名を轟かせた元ギャング(エドモンド・オブライエン)にある日呼び出され、ある若い女性を数週間でスターに仕立ててくれと頼まれます。この若い女性というのが、ジェーン・マンスフィールド演ずる主人公です。彼女は、全くの音痴で、それは声をはりあげただけで電球が砕け散ってしまう程のすさまじさなのです。けれども、後に判明するように、彼女は本当は歌が得意であるにもかかわらず、スターになることよりも結婚して家事一般を切り盛りすることが彼女の大きな夢なので(何しろ男ばかりの所帯で育ったから家事が得意なのです)、その事実を隠しているのです。つまり、彼女は、自分をスターに仕立てようとする元ギャングの目論見を諦めさせる為にわざと音痴を装っているのです。かくしてジェーン・マンスフィールド演ずる主人公は、「スターになるよりも家事一般をしないでいることに我慢がならない」という意味で、そのような紛らわしい邦題がつけられている次第なのですね。恐らく、日本の映画配給会社のおエラ方達は、そのような邦題をつけておけば、鼻の下を伸ばした野郎どもが映画館に続々と押し掛けてくるだろうと期待していたのでしょう。それはそうと、この作品の見所の1つは、当時実際に活躍していたロックミュージシャン達が次々と登場し、歌とパフォーマンスを繰り広げるところにあります。50年代といえば、小生はまだ生れていませんでしたが、当時を知る人は相当に懐かしさを覚えるのではなかろうかと推測されます。主演のジェーン・マンスフィールドとトム・イーウェルについてですが、両人とも出演作はそれ程多くはなく、この映画は両者の代表作の1つであると見なして構わないはずです。勿論、イーウェルには「七年目の浮気」(1955)という決定打が他にあり、この作品はかのモンロちゃんの作品であると思われている節があるとはいえ、その実イーウェルの作品であると見なすべきであることも確かです。それ以外のイーウェルの代表作としては、この「女はそれを我慢できない」が挙げられるくらいではないでしょうか。話は飛びますが、それにしてもマンスフィールドの胸は巨大です。何せ、彼女の胸だけでトム・イーウェルがまるまる一人隠れて見えなくなる程巨大なのです。モンロちゃんとともに50年代を代表するセクシー女優と見なされていますが、胸のサイズだけを見ればモンロちゃんはとてもこのマンスフィールドにはかなわないということがこの映画を見ているとよく分かります。一方のイーウェルですが、個人的には彼のコメディセンスは非常に気に入っています。しかしながら、出演作が多くはないのが残念なところで、その意味においてもこの作品は貴重です。また、忘れてならないのがエドモンド・オブライエンです。必ずしもコメディアンではなく、瞬間湯沸かし器的キャラクターを演ずることが多い俳優さんであり、それだけに一層この作品での彼のコメディパフォーマンスは光っています。いかつい顔をして自作のロックミュージックを飛んだり跳ねたりしながら歌いまくる姿が実にユーモラスです。というわけで、50年代カルチャーの熱気が見事に伝わってくる作品としては、ピカ一ではないかと思われます。尚、歌手&俳優であったジュリー・ロンドンが本人の名前で少しばかり登場します。


2001/07/29 by 雷小僧
(2008/10/08 revised by Hiroshi Iruma)
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