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今回は50年代末から60年代にかけて製作された邦題に「パリ」が含まれるロマンティック・コメディを3本程取り上げました。他の2本は「パリが恋するとき」(1963)と「幸せはパリで」(1969)です。どうやらおフランスや花の都パリに憧れるのは日本人だけではないようで、アメリカ人も歴史とファッション、すなわち古さと新しさを併せ持つパリに対する憧れを持っているようです。というわけで、トップバッターは「休暇はパリで」ですが、実はこの作品は今回挙げた3本の内では最も平凡な作品で、タイトルからも推測されるように大半の舞台はパリに置かれているにも関わらず、パリの良さが全く伝わってきません。「休暇はニューヨークで」と銘打って、舞台をニューヨークに置いても、何の問題もないでしょう。いずれにせよ、もともと原題には「パリ」の文字は入っていないので、製作者にしても舞台がどこに置かれているかは大した問題ではなかったのかもしれません。「パリが恋するとき」のポール・ニューマンとジョアン・ウッドワード同様、この作品でも実の夫婦であったトニー・カーティスとジャネット・リーがロマコメを演じていますが、それにしては今一つ(いや今百)であり、良く出来たロマンティック・コメディの持つ魅力がほとんど伝わってきません。今回のように3本纏めて取り上げない限り、レビューの対象にはしなかったとすら言えます。「ピンク・パンサー」シリーズのブレイク・エドワーズが、かなり初期の頃に監督した作品ですが、この作品を見た限りでは彼の未来には???が付きそうです。但し、「パリが恋するとき」のポール・ニューマンや「幸せはパリで」のジャック・レモンと違い(ジャック・レモンはこの手の映画が得意そうにも見えますが、彼はソフィスティケートされているというよりも、ナーバスであるイメージの方が強い俳優さんです)、トニー・カーティスはこの手のロマンティック・コメディはお手のものであり、皮肉にも彼が単独で演技している箇所は、彼の独特の物腰が可笑しく、結構笑えるシーンがあります。彼は他の作品でもダーツを投げている姿を見かけますが、この作品でも始終ダーツを投げていて、しかもこれが実にうまく、次々にブルズアイに突き刺さるのには思わず感心しました。「求婚専科」(1964)という小生が三度のメシよりも好きなリチャード・クワイン監督のロマコメがあり、この作品の中で、ヘンリー・フォンダがすぐ傍に立っているにも関わらず、トニー・カーティスがダーツを次々に投げるシーンがあります。手元が狂えば顔面を直撃する可能性もあり、結構危険そうに見えるにもかかわらず、フォンダは平気の平左の顔をしているのは、フォンダは余程肝が据わっているか(或いは鈍感か)、カーティスの腕が余程素晴らしく信頼されているかのどちらかなのでしょう。それ以外に「休暇はパリで」で感心した点は、フランク・スキナーの音楽がいかにも彼らしいことくらいであり、無理に探せば、ブレイク・エドワーズの初期の作品であること、この頃は新鮮さがなくなっていたトニー・カーティスとジャネット・リーのコンビが見られることがコメントとして挙げられるでしょう。