幸せはパリで ★☆☆
(The April Fools)

1969 US
監督:スチュワート・ローゼンバーグ
出演:ジャック・レモン、カトリーヌ・ドヌーブ、ピーター・ローフォード、シャルル・ボワイエ

左:カトリーヌ・ドヌーブ、右:ジャック・レモン

「幸せはパリで」という邦題がつけられているにも関わらず、舞台はニューヨークに置かれ、パリの麗しき街並みを拝むことは残念ながらできません。ジャック・レモンとカトリーヌ・ドヌーブという恐ろしくアンマッチなペアによるロマンティック・コメディであり、二人ともニューヨークでの現状の結婚生活に満足できないので、ドヌーブの故郷である花のパリに二人して駆け落ちして「幸せはパリで満喫しましょうね」という次第で、このような邦題がつけられているのでしょう。しかしそれにしても、いくらドヌーブがあまりにもビューティフルであるとはいえ、昨日出会ったばかりのおねえちゃんと12年の結婚生活を捨ててまで駆け落ちするというのは、これはまた凄まじい話ではあります。と言いつつも、よくよく考えてみると、ドヌーブの旦那を演じているのは、名うてのプレイボーイであったピーター・ローフォードであり、またジャック・レモンの嫁さんを演じているのは、全くもって年齢不詳で若いのか若くないのか全く不明なサリー・ケラーマンなので気持ちは分からないでもありません。いずれにしても、さすがは、離婚王国アメリカと言うべきでしょう。かつては未来の希望を求めてみんなしてヨーロッパから新天地アメリカにやってきたわけですが、今や新天地には未来がないのでヨーロッパに帰りましょうとは、これはまた皮肉な話です。ということで、全体的に非常に騒々しい作品で、殊に最後の30分くらいは完全にスラップスティックギャグのオンパレードになります。しかし、それよりも遥かに気になるのは、このような騒がしい雰囲気になると、やはりコメディアンなどでは全くないドヌーブが一人で浮いてしまうことであり、しかも「私、本当はジャック・レモンなんかに全然興味はないのよ、ウフフ!」という雰囲気が、彼女の体全体から漂ってくるように思われます。喩えると、カトリーヌ・ドヌーブが描かれた高尚な静物(肖像)画と、それ以外の役者さん達によるダサギャグ4コマ漫画が同居しているような不釣り合いな印象を受けます。従って、主人公のジャック・レモンとカトリーヌ・ドヌーブのロマンスよりも、その他の出演者に注目して見ている方が格段に面白いかもしれません。殊にジャック・レモンの上司でドヌーブの旦那を演ずるピーター・ローフォード、ジャック・レモンの同僚を演ずる醜男ジャック・ウエストン、及びシャルル・ボワイエとマーナ・ロイの夫婦が楽しいですね。それに加えて、ジャック・レモンの奥さんを演ずるサリー・ケラーマン、ケネス・マーズ、メリンダ・ディロンと次々に性格俳優が登場します。また、バート・バカラックによる有名な主題歌「エイプリル・フール」が素晴らしく、他にも彼のスタンダード曲「小さな願い」などが作品中で歌われ、サウンドトラックも極めてエンターテイニングであることを付け加えておきましょう。全体的にロマンティック・コメディ総崩れのスラップスティック・コメディという印象を受けざるを得ない作品であり、結局ドヌーブがコメディ向きではないことが実証されただけであったとしても、少なくとも(美しさの)全盛期にあった頃のドヌーブのお姿を存分に拝めるという点を考慮すると、あまりあれこれケチを付けても仕方がないでしょう。何しろ、ドヌーブは小生と誕生日(10月22日)が同じなのです(何のこっちゃ?)。


2003/05/31 by 雷小僧
(2008/11/10 revised by Hiroshi Iruma)
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