パリが恋するとき ★★☆
(A New Kind of Love)

1963 US
監督:メルビル・シェイベルソン
出演:ポール・ニューマン、ジョアン・ウッドワード、セルマ・リッター、エバ・ガボール

左:ジョアン・ウッドワード、中:セルマ・リッター、右:エバ・ガボール

ポール・ニューマンは決して口数が多い役者ではありませんが、彼独自のチャームがあるのでロマンティック・コメディに出演してもそれほどおかしくはないように思われるにも関わらず、彼が出演している作品でロマンティック・コメディと呼べるものはここに取り上げる「パリが恋するとき」くらいです。彼にはどこか反抗的なムードが漂っているので、やはりロマコメ向きではないと一般的には考えられていたのだろうかとふと思ったりもします。では、本当に彼がロマコメに出演すれば結果はどうなのでしょうか?その貴重な回答が「パリが恋するとき」に見出せるのです。彼の相手を務めているのが、実の嫁さんのジョアン・ウッドワードであることもあってか、これがなかなか悪くはありません。確かに、彼にケーリー・グラントのようなソフィスティケートされた会話廻しを期待しても無理であろうし、ロック・ハドソンのようなマッチョ的なチャームを期待しても無理であることは最初から明らかですが、ケーリー・グラントやロック・ハドソンに比べれば遥かに少ない会話量の中で彼らしい魅力がうまく引き出されているように見えます。というのも、この作品でアクティブに振舞うのは、彼ではなく相手役のジョアン・ウッドワードの方であり、コミカルな役回りは彼女が受け持ち、彼はどちらかというと引き立て役に廻っているからです。つまり、無理をしていないのです。このような軽い作品では、ポール・ニューマンはサポート的な役廻りの方が合うことを、「パリが恋するとき」は見事に証明しているとすら云えるかもしれません。あまり、アグレッシブに喋りまくっては駄目なのですね。要するに、いつもの彼のイメージが決定的に損なわれない範囲で、彼のコミカルな側面が引き出されているのです。そのことは、飛行機の中で彼がスチュワーデスをからかう冒頭近くのシーンから明瞭になります。また、舞台がパリに設定されていることも、かなりプラスになっているのではないでしょうか。ニューヨークに舞台が設定されるポール・ニューマンのロマコメというのはなかなか想像が付きませんが、それがパリだと自然に思われるところがあります。というのも、花の都パリという華やかなイメージがあるというだけではなく、本来のテリトリーが舞台ではないという脱日常性のイメージがそこにはあるからです。但し、何度か白昼妄想に耽るシーンで、あのポール・ニューマンが珍妙なスラップスティックパフォーマンスを見せてくれますが、これは頂けません。実は、個人的に知る限り、ポール・ニューマンは、この作品以外に3作品で、僅かの間とはいえ慣れないはずのスラップスティックパフォーマンスを見せてくれます。それは、「Rally 'Round the Flag Boys!」(1958)、「青年」(1962)、「何という行き方!」(1964)であり、最後のものに関しては彼にこんな才能があったのかと思わせる熱演すら見せてくれます。いずれにしろ、猿のようにシャンデリラに乗ってそれをスイングさせるシーンすらあり、若気の至りで出演したとしか思えない「Rally 'Round the Flag Boys!」以外の2作品は、そもそもカメオ出演に過ぎません。しかし、カメオ出演などではない「パリが恋するとき」での彼のスラップスティックパフォーマンスは、それ以外のパフォーマンスが順当であるだけに完全に場違いな印象があり、はっきり云えばない方が遥かにマシでしょう。監督のメルビル・シェイベルソンはカラフルで素晴らしい作品「ナポリ湾」を手掛けた監督さんであり、「パリが恋するとき」でもところどころ色彩に対する拘りが感じられるところがあります。モーリス・シュバリエが本人役でカメオ出演しているパーティシーン(上掲画像参照)がその1つです。この後すぐに、緑と黄色の風船が乱舞しますが、鮮やかな色彩が目を惹きます(この点に言及したかったこともあり、肝心のポール・ニューマンが写っていない画像を掲載してしまいました、悪しからず)。ということで、あちらでの評価は概して低く、スラップスティックシーンなど確かに余りにも安易過ぎるシーンが散見されるとはいえ、ポール・ニューマンのロマコメが見られるという点では貴重な作品です。


2003/05/31 by 雷小僧
(2008/10/22 revised by Hiroshi Iruma)
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