電話に御用心 ★★☆
(If a Man Answers)

1962 US
監督:ヘンリー・レビン
出演:サンドラ・ディー、ボビー・ダーリン、ステファニー・パワーズ、シーザー・ロメロ

左:サンドラ・ディー、右:ボビー・ダーリン

今年(2004年)の夏、ユニバーサルからサンドラ・ディーとボビー・ダーリンが主演したコメディタイトル2本がDVDで発売されましたが、「電話に御用心」はその内の一本です。因みにもう1本は、「おかしな気持」(1965)であり、既にDVDでもかなり以前から発売されていた「九月になれば」(1961)と合わせ、二人が揃って出演した作品はDVDでもこれで全て出揃ったことになります。二人は実の夫婦でもあったこともあってか、この手のロマコメ作品ではなかなか息が合っているように思われます。ボビー・ダーリンの場合には、俳優であるよりはむしろシンガーソングライターであったので、俄か仕立ての俳優であったとは言えないフランク・シナトラやディーン・マーティンのようなケースは別としても、エルビス・プレスリーを典型例として、歌手が歌手としてのネームバリューにものを言わせて映画出演すると、どうも中身がスカスカな作品になる傾向があったことに思い至ると、彼も同様な結果に陥るのではないかという疑いがムクムクと湧上がっても不思議はないはずです。しかしながら、結果から云えば、ボビー・ダーリンの場合には、少なくともコメディキャラクターとしては大きくハズしてはいません。というのも、プレスリーとは異なり、ボビー・ダーリンは、コメディジャンルに限定すれば、俳優としての独自のパーソナリティが感じられる人であり、「電話で御用心」でも彼の持つパーソナリティが十分に活かされているからです。彼は、実はシリアスな作品にも出演実績があり、たとえばグレゴリー・ペック主演の「ニューマンという男」(1964)ではシェルショックに陥ったGIを演じてオスカー候補に挙がっています。但し、「ニューマンという男」は作品そのものが個人的にはイマイチに見え、そのせいもあってかボビー・ダーリンの印象も薄いように思われます。いずれにしても、ボビー・ダーリンの持つパーソナリティはコメディでこそ活きるというところが、個人的に受ける印象です。サンドラ・ディーも同様にコメディ向けのパーソナリティを持っています。勿論彼女にも、ダグラス・サークの「悲しみは空の彼方に」(1959)や「避暑地の出来事」(1959)のようなシリアスな作品への出演実績がありますが、小粒で華奢な印象を活かして小廻りをきかせた小気味良いパフォーマンスはコメディ向きです。何しろ、「Giget」(1959)という日本劇場未公開の作品で彼女がなぜ「Giget」と呼ばれるかというと、彼女が「Giget=girl+midget」であるからであり、どうにもこの印象が抜けないのです。いずれにしても、「電話で御用心」は、ベッドルームファースとも呼べるコメディとしてのスクリプトがなかなか面白く、コメディ仕様の二人が活躍する格好の土壌が提供されており、二人も見事に期待に応えてくれます。「九月になれば」も個人的に好きな60年代初頭のロマコメですが、いかんせんそちらでは、役者としてもストーリー展開の上からも、ロック・ハドソンとジーナ・ロロブリジーダという男女二人のスーパースターが、ボビー・ダーリンとサンドラ・ディーの眼前に大きく立ちはだかっていました。尚、二人が共演したもう一本の「おかしな気持」は、二人に加えてドナルド・オコナー、ニタ・タルボット(有名ではありませんが独特のスピーチパターンを持っているので個人的に非常に好きな女優さんです)、ラリー・ストーチらが演ずるコメディキャラクターは悪くないとはいえ、いかんせんスクリプトが全然面白くありません。


2004/12/25 by 雷小僧
(2008/10/20 revised by Hiroshi Iruma)
ホーム:http://www.asahi-net.or.jp/~hj7h-tkhs/jap_actress.htm
メール::hj7h-tkhs@asahi-net.or.jp