クラブアリストのフレンドディーラーであるネッツトヨタ東京が、エンジンオイルのベースオイルとして最新・最高の素材でありまだ稀少性もある「エステル」をベースオイルに選定し、ハイパフォーマンスカー用に開発した 「クラブバージョン」ブランドの「エステルR」「エステルS」について、開発テスト車両の一台としてその開発状況を見守ってきたNo.1のワタルが開発サイドストーリーをご紹介いたします。
フレンドディーラーとして関東エリアだけでなく関西、東北方面からも多くのアリストオーナーが来店するネッツトヨタ東京(ハブポート若林)から2003年3月末に「Club version」ブランドの「エステルR」と「エステルS」という2つのエンジンオイルがリリースされました。これまで同社を訪れる多くのアリストオーナーや他のハイパフォーマンスカーオーナーの皆さんより、エンジンオイルはどれも似たり寄ったりでエンジンが持つ本当のポテンシャルを引き出してくれるようなエンジンオイルが望まれていることが伝わっていたそうです。
それならオーナーの皆さんの声に応えるために、求められている性能やクオリティを持ったエンジンオイルを最新・最高の素材であるエステルをベースオイルとしてオリジナルで作ってしまおうというところから「エステルR」と「エステルS」の開発がスタートしました。
ここでは約1年間にわたる開発の模様の一部の紹介について「Club version リアスポイラー」開発時と「Club version ブレーキパッド SPORTS」開発時と同様に許可を頂きましたのでレポートさせて頂きます。なお、こうした商品の開発の実際のところはなかなか情報の開示がなされないのが今までの開発だったと思いますがこうした情報の開示がされるのは好ましいことだと思います。ただし、あくまで私の方で関わった範囲内でのレポートでありこれが開発の全てではないことをご了承ください。
ネッツトヨタ東京さんの「クラブバージョン」のウェブサイトにも商品の情報が掲載されておりますが、「クラブバージョン」ブランドの商品コンセプトは以下のように謳われております。このコンセプトに沿いながらも最新・最高の素材であるエステルをベースにしての開発でしたので考え得るベストな品質を実現しながらユーザーフレンドリーな価格で提供することを目標に開発が進められました。 ネッツさんの社内の開発車両アリスト2〜3台を中心にその他の開発車両、そして私の他数台のオーナーのアリストなどのハイパフォーマンスな車両をテスト車両として開発が進められました。 <「クラブバージョン」のコンセプト> (ネッツトヨタ東京さんの「クラブバージョン」のウェブサイトより)
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<開発スタートからエステルを選定するまで>
まずは開発がスタートする際に、どういうポジションのオイルとするかというものがありました。これまでの認識ですと、鉱物油、部分合成油、そして化学合成油というのが大きく分けた時のエンジンオイルの分類で、その中で一番良いのは100%化学合成というものでした。しかしその100%化学合成油の中でも、まだあまり知られてはいませんが「エステル」という素材をベースオイルとしたものが品質的にもパフォーマンス的にも非常に優れている最新・最高のものであるということがわかりました。ただ、エステルをベースとすると非常に高価なエンジンオイルとなってしまうことも同時にわかりました。高価となる理由についての詳しいことはわかりませんが恐らくエステルという素材そのものが高価であることや、分子の配列を綺麗に整える(だから粒子が細かくでき低抵抗と高粘度)といったような製法等によるものだと思われます。 こうしたコスト高になるという状況の中、最初はエステルではなく100%化学合成油1種類としてその中で最高のものにしようかという考えもあったようです。100%化学合成油であればクラブバージョンのコンセプトである「ハイクオリティ」には合致しているでしょうが、それこそ世の中に多くの商品が出回っておりオリジナリティという面や差別化を図ることは非常に難しくなってしまいます。そこでエステルの中でも最高のベースオイルである「コンプレックスエステル」という素材をベースオイルとしてなんとかユーザーフレンドリーな価格を実現しようということで、最終的に「エステルR」となるオイル1種類で開発がスタートしました。 |
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<ベースオイルの特性比較>
ここでベースオイルの特性についてチェックしたみたいと思います。鉱物油、化学合成油とエステルを比較したものがクラブバージョンのウェブサイトに紹介されている以下の表ですが、これまでの認識で一番良いと思っていた化学合成油であってもエステルと比較すると相当に見劣りがしてしまうものなんですね。 エステルだけが持つ最大の特徴としては、分子が極性を持っているためエンジン内のシリンダー壁面等の金属面に電気的に吸着するということだと思います。100%化学合成油までのエンジンオイルはそうした極性を持たないため単に付着しているに過ぎない訳ですね。その他の主な特徴が下表に示されていますが中でも特に優れた赤字で示されていますね。 『極めて強い油膜形成力を持つことから、高負荷な状況だけでなくコールドスタート時にもエンジンを保護』、『低い摩擦係数で高レスポンスと省燃費性を実現』、『優れた低温流動性によって優れた始動性』、『優れた高温安定性によって安定した油圧』と言った他のエンジンオイルには無い優れた特性が見て取れます。これらの優れた特性は全て実際に感じ取ることができるもので、特にその優れたレスポンスとコールドスタート時での潤滑性能ははっきりとした違いとして体感することができるものです。 |
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化学合成油までのオイルだとエンジンを止めている間にオイルパンにオイルが落ちてしまうため、エンジン始動後数十秒〜1分位の間はオイルでの潤滑がされず金属同士が直接こすれ合ってしまうという、エンジンにとって非常に過酷なドライスタートと言われる状況が存在するということですが、エステルでは極性を持っていること、そして追加すると粒子が細かいこと、油膜形成力が強いことから、オイルが介在しないドライという状況にエンジンをさらさない訳で、それが保護性能の高さと実際に滑らかさとして体感できるわけですね。 |
実際の走行シーンというものを想定すると、高速クルージングやワインディングはもちろんのことサーキット走行までを十分にカバーするには「高温安定性」はもちろんですが、やはり「耐荷重性」というものが非常に重要だと思います。このエステルが持つ高い耐荷重性というものは化学合成油までのオイルは持っていなかったということ、そしてエステルには優れた潤滑性がありますが、化学合成油は元は乾燥した物質で潤滑性というものを持ち合わせていないというのは、今回の開発を通じて知った意外な事実でした。 また、エステルの優れた点を語る上で重要な点に粘度指数、動粘度、密度というものがあるそうで手元の資料にもその点が示されておりますが、これについては掲載することができないのはたいへん残念ですが、逆に言いますとそれだけ優れた性能を語る上でのポイントだということなんだろうと思います。 |
<開発過程>
エステルの中でも最高のベースオイルであるコンプレックスエステルをベースにユーザーフレンドリーな価格を実現しようということで開発がスタートしました。開発当初よりわずかしかない他メーカーのエステルベースのオイルや100%化学合成油との比較が行われ、それらと比較してもさらに優れたパフォーマンスを持ったものを目指して開発が進められました。また最高の品質を求める皆さん向けのコンプレックスエステルとは別に、もう一つ100%化学合成油における最高のものをさらに手頃な価格で実現することも目指すこととなりました。 開発を進めていく途中で、ポリオールエステルというコンプレックスエステルに次ぐエステルをベースオイルにして100%化学合成油と同等以下の価格ではるかに優れたパフォーマンスを持ったオイルの開発が実現が可能だということとなり、エステル系で2種類のエンジンオイルをラインナップすることとなったのです。またエステルはこうしたポテンシャルの高さの他に、生分解性や清浄分散性といった環境性能にも非常に優れているという点も選定の上でのポイントだったのではないかと思います。 開発ではエステルだけでも8種類以上のブレンドがテストされました。以下に示してあるのが最終的に「エステルR」となったオイルのテスト評価シートの内容で、これは開発過程で私にも知らされた範囲でのユーザー側の評価シートの内容の一部で、当然ですがネッツさんの開発サイドではもっと過酷で多方面にわたる詳細なテストが実施されていると思います。エステルSでもほぼ同じようなポテンシャルを持っているものと考えて頂いていいと思います。 |
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<エステルの中でも拘って開発>
エステルを大まかに分類すると下の「ベースオイルの性状比較図」のように、最高のベースオイルであるコンプレックスエステル、ポリオールエステル、そしてジエステルとなるようです。最後のジエステルは割と古くからあるそうで、エステルベースと言われるものの中にはジエステルをベースとしているものがあるそうですが、この100%化学合成油の特性を少し伸ばしたレベルのジエステルを「エステルS」のベースオイルに選べばコストの追求も簡単だったと思いますがが、安易に妥協せずにポリオールエステルをベースとしての開発に拘り実現に漕ぎ着けた開発陣には脱帽しました。 |
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<3Lサイズの専用缶まで用意されました>
エンジンオイルというと画一的な4L缶というのが誰もが思い浮かべる姿かと思いますが、ディーラーで純正オイルに交換するような保存用の大きな缶から必要量だけ入れるような場合は別して、お気に入りのオイルに交換しようと思うと、4L缶では量が不足し2缶の8Lだと半分近く余らせてしまってそのまま保存するにしても酸化してしまうのが気になりますよね。 |
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そこでハイクオリティな商品をユーザーフレンドリーな価格で提供するという「クラブバージョン」のコンセプトに拘って専用サイズのオイル缶まで用意することとなったようですが、これは余分がなく適正な容量と価格となるので、全国のユーザーの皆さんも入手しやすくなったことは歓迎すべきことだと思います。 ちなみに1缶で済むように6L缶の検討もされたようですが、あまり大きい缶だと輸送中に破損の可能性があるということで、強度も十分な3L缶とされたそうです。このサイズのほうが梱包もし易そうですね。 実際にリリースされてみるとアリストオーナーに限らず多くの引き合いもあるようですし、何よりもこうしたいろいろな特徴を持つオリジナル商品ですから、ユーザーのニーズやインプレをベースにノウハウとして蓄積して逆にユーザーに色々な形でフィードバックすることも可能になるでしょうし、他社製品を取り扱う場合には差別化も難しく一般の量販店等との価格競争に陥ってしまうというリスクもなくなるのではないでしょうか。 |
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<説明用店内POP>
こちらは店頭での説明用POPでクラブバージョンのウェブサイトには掲載されていませんが、データを戴きましたのでご紹介いたします。他のベースオイルと違い圧力によってシリンダーに付着するのではなく、エステルの持つ分子の極性によって吸着し、強力な油膜を作って潤滑するといった特徴が説明されています。どのようなシチュエーションに適しているかは説明の通りで、とにかく『優れたレスポンスとアクセルを踏む快感を』体感できるものですので、半年に一回はやってくるオイル交換ですから、是非一度試してみてはいかがでしょうか。 なお、適合車種については、ネッツさんの店頭説明用のためネッツ取扱車種が中心に書かれていますが、開発時の資料には「国産外車を問わず」と書かれております。また実際にBMWオーナーやスバルの限定車STIバージョンのオーナーさん他多くの他メーカー車種も発売開始後早速お試しになられているのはインプレが届いている通りですね。 もちろん市街地の渋滞からサーキット走行等の過酷な使用まで広いレンジに耐え得る最先端のオイルですので、アリストやBMWの他にもメルセデスベンツやセルシオあるいはアルファロメオといった高級車やスポーティなエンジン搭載車、そしてポルシェ等のスーパースポーツカーも実際に開発当初より適応車種なっておりピッタリのエンジンオイルだと思います。 |
<最後に>
開発に携わられた皆さんが頑張られた結果この価格でエステルRもエステルSもリリースすることが可能になったのは、より多くの皆さんに実際にお試しいただくことが可能となったことでもあり、開発の一部分をお手伝いさせていただくことができた者としてたいへん嬉しく感じました。 今思い起こすと開発がスタートした1年前はオイルでそんなに違いが体感できるものなのかどうか半信半疑でしたが、エステルSももちろんそうですが特にエステルRは今考えられる最高の部類のエンジンオイルだということは間違いがないでしょうし、素人の私でもその違いをはっきりと体感することができたのは今まで試したオイルの中でも初めてでした。 コストパフォーマンス的にはエステルRも十分優れていますしエステルSとの違いも触っても乗っても分かりますが、エステルSのコストパフォーマンスはさらにたいへん優れたものだと思います。 手頃な価格設定と取り寄せもしやすい適正容量でもあるので、是非一度お試し頂ければ直ぐにその違いがお分かり頂けるのではないかと思います。 最後に開発責任者であるIマネージャーの妥協を許さない献身的な努力の結果としてこのような価格も含めた素晴らしいパフォーマンスを発揮する最新・最高のエステル系エンジンオイルが生み出されたのを垣間見て本当に頭が下がりました。そして同時にクラブアリストが少しでも開発に参加することができたことをたいへん嬉しく思います。 |
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<参考:届いたユーザーインプレ>(掲載のご許可を頂いた方の分)
★カントンさん(アリストV300にエステルR) ハブポートさんでエステルRを入れて1000kmほどになりました。100%化学合成との対比で、まず明らかに違うのが朝一の始動直後、あのかったるい重々しさがほとんどなく、Egスタート直後に走り出しても軽快に吹け上がります。最近(4月)は気温もだいぶ上がってきましたが入れた頃は外気温5度ほどの日もありました。そのような朝はなおさら顕著に感じられました。油温の上がり方、最高油温は私のクルマではあまり変化ないようです。ただ2速高回転で走り回った後、以前は何となく油膜が切れ掛かっているようなガサついたフィーリングがあったのですが、今回それが感じられなくなりました。 総じて感じられるのは濡れたような滑らかさ、静かさ、そして軽快感ですね。最後に、オイルなんぞでパワーアップなんかしないと思っていますが、それでも敢て「そんな気がする」と思わせるフィーリングがあります。 ★AL2ARさん(アリストV300にエステルR) 感想は一言でいうと、「不思議な感覚」ということに尽きます。まず、気がついたのはエンジン音が変わったことです。ターボ音に加えて吸排気音が強まり、スポーツエンジン風の音になってきました。これは、自分だけの判定ではなく、ベースギターを弾く音にうるさい知人も、こちらから言う前に指摘してくれました。これは、開発サイドストーリーの評価シートにも「アイドリング時の音は高周波の音が減り低音の迫力が増したように感じる。中高回転時の音は綺麗に吹けているようで乾いた音」とあるのとも共通するものがあるかもしれません。 エンジンフィーリングについてですがこれについては特に高速での加速感が、エンジン音の変化とともに、かなり良くなったように感じます。別のスポーツ車に乗っているかのようなエンジンに変わったような気がします。 自分では、いわゆるケミカルチューンを何種類か繰りかえしてきた経験から、その効果には懐疑的であり、いわゆるプラセボ効果ではないかと常に自己チェックする習慣が身についているつもりです。しかし、このエステルRに関しては、噂どおり、それを超える効果があると感じています。 ★ティムさん(アリストV300にエステルS) 小生はエステルSにしてみました。交換した直後のひと踏みで、おっと思う事がありました。リニア化の効果がよりリアルに体感できたんです。思わずアクセルを緩めてしまいました(笑)。あと、朝一番のエンジン始動直後のスムーズ感は特筆に値しますね。車が軽く感じました。M社のV300(価格はエステルSの1.5倍)からの入れ替えですが、全く価格差を感じないフィーリングです。 ★よたろうさん(BMWにエステルS) 発売日にネッツ若林さんへ電話でオイル交換の予約をいれたのですが、なんと六台作業待ちとのことで(スゴイですねぇ・笑)、当初予定より 早い時間におじゃましました。 ★フルートSTIさん(スバルのSTI限定車にエステルS) 今までW社の化学合成の一番いいのを入れていたんですが今ひとつ低中速の滑らかさと上での伸びが普通だったんですがそんなときに良さそうなオイルが出たっていう情報をキャッチしたんで都内でもあるのでネッツハブポートさんにスバル車ですが行ってみました。 |
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