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 アリストS300VEに乗るNO.5656のアイエスイーさんが、アリスト純正のオーディオシステムの音質の抜本的な改良のために回路構成の解析から原因究明、そして回路とインターフェイスを自作して良質化に成功されるまでについて紹介してくださいました。


メンテVOL.343 純正JBLオーディオシステム改良記
<作成:'03年4月29日>
1 はじめに

平成12年7月にS300VEの後期型を購入しました。しかしながら、改良されているべき後期型とはいえ、以前から指摘されてきたカーオーディオの『シャー』音、つまり残留雑音が大きくて私には我慢なりませんでした。クラシック音楽をクルマで聞きたい私(オーディオマニアではありませんよ)にとっては、まるで『おんぼろカーラジオ』です。購入から一年半がすでに経っていましたが、当時までめちゃくちゃ多忙だったので、改造どころではありませんでした。しかしそのころから、だいぶ楽になったので、カーオーディオ改造を考えはじめました。 最初はアフターマーケットのカーオーディオで何とかならないかと思い、いろいろ市販品などを調査してみました。しかし書籍には情報は無し、アキバ(秋葉原)のショップにいっても、「数百万かかりますねぇ」(つまり断り)、関東の超有名なインストーラを探し出して直接店に行ってみましたが、最初は良く聞いてくれましたが、最後は「あきらめなさい」でした(つまりこれも断り)。 私の本業は電子回路の設計であり、このノイズが多いシステムで聞く、クラシックの悔しさはあったものではありません。業を煮やして、「自分で解析スタート!」しました。

2 システムの概要

ディーラで入手した配線図および以下にご紹介したような考察により16系アリストのメインアンプがどのような回路構成になっているかがわかりました。まるで迷宮です。とほほ(メンテナンスVOL.282「メインアンプの構成について」で公開済)。


3 まずは音声と『シャー』音を聞いて原因想定

ディーラで配線図を入手する前に、試験により、問題の原因をいろいろ確認・予想しました。

○問題(1)

「VOLを目いっぱい下げた状態から少し(7〜8時の方向)上げると、ある位置で『シャー』ノイズの量が階段的に数倍に増える」

●原因の想定

デジタルプリアンプの制御で、VOLを一番下げたときに出力をカットするとか、DAC[*1]の動作を停止してしまうか、などをしているかでしょう。 このVOLを下げきったときのノイズの量は、JBLメインアンプの入力コネクタを引っこ抜いた時(メイン入力を物理的に切る)に発生する雑音量とほぼ同じなようです。つまりプリからの入力が無くなって、JBLメインだけの雑音が聞こえるということです(JBLメインは入力コネクタを引っこ抜くとミュートが外れるようです)。この「階段的」という状態は単体の不具合とは考えずらいと思います。しかしプリ・メインでどちらにも残留雑音が大きいとは・・・、呆れてモノも言えない・・・。

[*1] デジタル・アナログ・コンバータのこと。リアデジタルプリアンプに入っている電子部品。デジタル音響データをアナログ音響信号に変換する素子。デジタルプリアンプの名前のとおり、内部ではデジタルで音響情報が処理されている。  

○問題(2)

「クラシックを聞くとき、VOLを下げたり、ピアニシモのときに、ザザザーっと音の強弱に合わせてノイズが聞こえる」

●原因の想定

何ビットのADC[*2], DACを使っているか判りませんが、DSP[*3]の演算誤差と1LSB(ビット分解能)に近いところでの動作になっているためかとおもわれます。ビット分解能自体も高いものが使われていないと考えられます。 そのため量子化雑音、演算誤差が出てしまうというのが、一番クサイと思っています。もしくはADC時にAGC(自動ゲインコントロール)をかけているのかも?AGC帰還量をDSP演算に利用しているとか?・・・などが考えられました。[*2]

[*2] アナログ・デジタル・コンバータのこと。デジタルプリアンプではデジタルで音声が処理されるため、一度アナログ音響信号をデジタル音響情報に変換するもの。この時点では「プリアンプにはアナログでCD信号も来ており、一度デジタル化している」との判断でした。

[*3] デジタル・シグナル・プロセッサのこと。デジタルデータの音響情報をいろいろな演算をして、トーン制御処理や音にアコースティックフレーバをつける処理をおこなうもの。

4 信号測定器「オシロスコープ」で測定

以下のことがわかりました。3.を考えるとデジタルプリアンプのノイズが大きいことが一番の原因のようです。以下はちょっと専門的ですが・・・。

1. FM, AMなどアナログ系はフロントのラジオレシーバASSYからR+/-, L+/-より差動アナログ信号で入力されている。CDが鳴っているときにはここからは信号は出ない!

2. VOLコントロールなどはBUS+/-ライン(制御・通信線)の高速データ通信により行われている。これまたTVなどもBUS接続されているらしく、コリジョン(通信線上でのデータの衝突)も起きている。ややこしいぞ・・・。

3. 変な同軸コネクタがデジタルプリアンプに刺さっており、これを抜くとCDの音が停止する!

4. CDデータはこの同軸コネクタから、同軸ケーブルでリアデジタルプリアンプに入力されている。EIAJ/CP1201規格のDAI(Digital Audio Interface)ビットストリーム(らしい)。

DAIは一般的にはS/PDIF (Sony/Philips Digital Interface)として知られています。また、上記に書いたBUS+/-ラインについては、解析・波形観測によると、どうやらNECの開発したIE-BUS (Inter Equipment BUS)というものらしいです。NECのカーオーディオ用DSPでも採用されていますし、トヨタオーディオOEMの富士通テンも採用しています。ICとしては、uPD6708というものがあります。この情報はWEBでサーチしてそれぞれ判りました。
自宅にあるおんぼろオシロスコープ(かなり古い) EIAJ CP1201規格書

5 CP1201規格の根拠

すみません、ここは電気屋さん読んでください(^o^;。

1) 同コネクタの電気特性を調査

2) EIAJ CP-1201規格によると、5章、電気的特性、機械的特性の『不平衡形(2線式)』に酷似 (0.5V+/-20% @75ohm load)

3) 同規格のDAIストリームのビットレートはサンプリングレートの64倍とあり、

4) 3.によりビットレート観測結果とEIAJ CP-1201規格が酷似

5) DAIに対して、その上にトヨタプロトコルをかぶせるのは無駄だし、レートが酷似していることから、プリ・ポストアンブルを付けることは不可能。チャネルコーディング無し(実レート2倍)なら、DCが出てパルストランスAC結合では無理

6) DAIレシーバICの東芝TC9245により今後チェック

7) TC9245でデコードできれば、DACを買ってテストしてみる

 DAIレシーバICの東芝TC9245

6 カプラ(コネクタ)

自動車業界では「カプラ」というようですが、我々は「コネクタ」という方がしっくりきます。アリストのEMVに使われている、そのコネクタの型番などを調べました。 自動車電装では、矢崎などのハーネス専門のメーカが出しているコネクタが主流のようです。自動車メーカによって採用しているコネクタメーカも異なるようです。 コネクタにRとマークがついているものがありました・・・。国内で知っているところでRなんて知らないし、さすがにこれは困りました。インターネットで国内、国外のコネクタメーカをRで始まるキーで片っ端からサーチしましたが全然出てきません。トヨタさんですから、小さいコネクタメーカなんかは使わないだろうと推測してもいました。この回答はあるHPでの質問で解決しました。なんとトヨタの子会社的な電装メーカの東海理化という会社だそうです。うーむ、すごい・・・。何がすごいって、我々電気屋が全然知らないメーカなのに、自動車電装を主に専用に近いコネクタをつくっているんですからね。またこのコネクタは矢崎のものとコンパチなんだそうです。このメーカはカーショップで売っているトヨタオーディオ接続ハーネスのコネクタでも使われています (Rマークが見えます) 。

私の棲んでいる業界とは業界が異なること、さらに一般では無いこと、販売を絞っていることから、矢崎・東海理化のコネクタの情報および現物の入手には相当手こずりました。八方手を尽くして、持つルート、さらにはインターネットを駆使して必要なコネクタの矢崎の型番、および現物をようやくゲットしました。これでハーネスを傷つけずに「カプラオン」で実現できます!

 製作してもらったカプラ

7 DACをどうする?

上記のDAI(S/PDIF)デジタル音響データ信号をアナログ音響信号に変換しなければなりません。カーオーディオ用DACをいろいろ探しましたが、USのSOUND STREAMであると思ったら、なんとWeb Siteが消えて無い(その当時)!。じゃマッキントッシュで有ったなと思って見てみたら高いのしか無い!困ったなあ〜自分で作るんかぁ〜(涙)。ところが、とある休みにふらっと寄ったカーショップで、アルパイン株式会社で、デジタルオーディオプロセッサPXA-H510(現在は生産中止)というのがあることが判りました。外部VOLコントロールもあるし、これは使えそうだ!ということになりました。

 デジタルオーディオプロセッサ PXA-H510

そこで、WEBでPXA-H510の資料(オーナーズマニュアル)をダウンロードしましたが、同社専用通信インターフェイス(Ai-NET)無しでDACとして使用し、RCA(アナログ入力)・DAIが切り替え可能かは判りませんでした。この後に説明するように、無事に使えそうなことが判り一安心しました。これでDACの問題も解決です。

8 ここで休憩・パーキングエリア

ここまで順調に来ているように見えますが、解析は結構大変だったことと、想定とは全く異なる展開も多々あり、かなりがっくりもきていました。「やっぱり無理なのかなあ」という考えが何度も頭をよぎりました。

9. PXA-H510デジタルオーディオプロセッサを選択した理由

このプロセッサは一年近く経った現在では「なんと生産中止」です(涙)。  

上記のDAI出力を音響信号として出力するために、プロセッサALPINE PXA-H510を選定しました。PXA-H510はRCA入力1チャンネル、光入力2チャンネルの信号処理ユニットです。同様な信号処理ユニット(いわゆるDSPイコライザ)は、他のメーカ(ソニー、パイオニア、クラリオン、富士通テン)でも発売されています。しかし大きな違いは、リモコンがついており、単独運転が可能ということでした。つまり、専用バスでのヘッドユニットからのコントロールなしに、このリモコンでVOL, FADE, BAL, EQなどの調整が出来ることです。

しかし、オーナーズマニュアルで判ることはリモコン制御まで。インストールマニュアルでもAi-NETの機器とつなぐことを前提としていました。それを見た時点は「単独運転は出来るのだろうか?」という疑問を持っていました。私の希望としては、デジタルオーディオのビットストリームが入力されたら「自動的に」ソースをそちらにセレクトし、入力が無くなったらRCAに戻るということでした。ここらへんはAi-NETがつかさどるようにするのが非常に自然な発想(設計仕様)で、そうだとすれば、この「自動的に」はできません。最悪単独だとRCA入力しか使えないことになります。アルパインに質問する前は「たぶん自然の発想の方だろう、無理だろうな」と感じていました。某所への出張前夜(日曜日)に以下の質問をインフォメーションセンタにファックスしました。

(1) AI-NET接続機器なしでPXA-H510単体でRCA入力と光デジタル入力(AI-NET非対応CDユニット)を切り替えることは可能ですか

(2) PXA-H510は光デジタルからビットストリームが入力されると自動的に切り替えが出来るようになっていますか(そうであれば一番楽)

(3) なっていないとすれば、そのようにパラメータ切り替え、内部DIPSWなどで設定可能でしょうか

(4) 電源投入時にRCA入力でなく、光デジタル入力固定になるモードでもかまいません

(5) それも出来ないとすればコントローラによるマニュアル切り替えは可能ですか

(6) それらも出来ない、つまりAI-NETにより光デジタル入力に切り替えのリクエストが自動的にされる場合(それしか切り替えることができない場合)、AI-NETによるRCA→光、光→RCAへの切り替えのプロトコル(信号レベル、通信手順など)を是非おしえてください。自分で制御機器を製作してどうしても組み込みをしたく思います。RCA→光、光→RCA切り替えの手順だけ教えてもらえばかまいません。

いわきの工場のご担当者から非常にご丁寧なFAX返信がありました。その回答は「光信号が入れば自動的にRCAから光入力になります、終わればRCAに戻ります」とのこと!!!。おおおー。すごい。考えてみれば単純なことなのですが、大体、単独運転まで考慮していない設計仕様の場合は、こんなことはデザインレビューでも抜け落ちて仕様に反映されません。それは他社のプロセッサを見れば明らかなことで、各社専用バスでの動作しか考えていません。単独運転、さらに光とRCA自動切換えという仕様を入れたことについては、設計したエンジニアの方に、そのシステム先見性に敬意と賞賛を、こころから送りたく思っています(^_^)。結果は単純なことかもしれません。しかしそれが出来るか出来ないかで、私のアリストのオーディオが「生きるか死ぬか」の大問題ですから。

目的の機能はOKということが判りました。私も「迅速かつ丁寧かつ的確かつ目的OK!」のFAXを頂いたことで非常に感激し、改めてお礼のFAXを「あこがれのブランドだった、ご担当の技術者の方にもよろしく」と付け加え、送りました。そしたら数日後、郵便が届いていました。FAXの確認のため原紙送付かな?と思ったら、お礼のお礼!。これまた丁寧なお礼とプレゼント(ALPINEステッカーとQuoカード)まで頂いてしまいました。あらためてまた感激!!!。なんかほのぼのとした交流を感じてしまいました。

ということで、PXA-H510を用いることで、光入力でデジタル信号のままにプロセッサで処理され、VOLなどのレベルコントロールまでなされて、RCA出力されることは、高いSN比を確保でき、要求に対して100%!です。DACも外付け不要であり6CH(5.1CH)仕様であるため、基本的にはあとは6CHメインアンプがあればよいことになります。  6CHがRCAで出るということは、PXAやメインアンプのレベルコントロールを使えば、ウーファレベルを個別に制御できますから、同様に過去から問題となっていた、「低音過多」も解決します(ちなみにPXA本体のウーファレベル制御はマイナス側が出来ません。マイナスゼロでも十分低いレベルでした)。

最終的にはフロントラジオASSYからのリモートが目標でしたが、これを設計するには制御BUS+/-解析とか、それが出来ても結構複雑な回路を作らなければいけませんので、時間がかかります。そこで付属のリモコンをつかってコントロールさせるまでとしました。

なお、a/d/sでもEQ300という光入力のあるDSPモジュールがあり、RS232Cによる制御が出来るようです。しかしUS本社のWEB上のマニュアルには、この制御方式が載っておらず、問い合わせになると思います。今回はPXA-H510をターゲットとして考えていましたので、保留としています。なお同社のFDI(Factory Direct Interface)ユニットについてもマニュアルを良く読んで見ると、そのままだと、論理的(動作モード)に排他になり、つながらないだろうと予測しました。改造+付加回路すれば出来るでしょうが保証も受けられなくなりますので・・・。

10. アリスト側のDAI(S/PDIF)の検証

とある日の出張帰りにアキバでDAIレシーバIC、東芝TC9245、DAI用光通信モジュール(PXA-H510は光入力)TOSLINK TOTX173、その他を購入しました。そして以下の回路を作って動作を確認してみました。よく考えればデジタル入力のあるミニコンポがあれば作らなくてもよかったのですが(自宅にありませんが)。

車両コネクタ(ヒロセGT5-1S) → 75Ωターミネータ → レベル変換(74HCU04, Self biased) → デジタルオーディオレシーバ(TC9245) → DAC(PCM56) → エミッタフォロア → 直流カット → パソコン用ぼろぼろ8ΩSP

アリストの出力につないでみました。「さて・・・・・」。「おお、音が出た!」。デジ・アナGNDの分離もしてない、出力もエミッタフォロアだけ、SPも超ボロという、やっつけ仕事の基板なので音はひどいですが、ホームCD(DCD-1650AL)のデジタル出力を使った場合と同じレベルの音が出ました。

片CHのチェックだけでしたが、L/Rの違いはL/Rを認識するクロックの立ち上がり・立下りエッジの違いだけです。音のクオリティの議論は「音がそれなりに出た」ということから、データフォーマットは標準DAI(S/PDIF)と同じ訳で、音響データビットの下位のみがおかしいとは考えづらいです。ほぼ問題無しと結論づけました。

11. PXA-H510でのテスト

近くのカーショップに注文し、現品を入手しました。最初に単独テストをおこないましたが、机上で安定化電源を用いてテストしました。その後にクルマにつないでテストしてみました。これまた長文失礼します。

【PXA-H510の単体テスト】

最初はホームCDのDCD-1650ALをソースにして、コアキシャル信号をEO変換(電気・光変換)してTOSLINKのトランスミッタでPXA-H510に光入力としてみました。最初はCHANGER-INに入力しましたが、オシロスコープで出力を見ても信号が出ていません・・・。これにはあせりました。「自動切換えじゃないの???」。接続マニュアルをみて、なんとなく書き方で「DVD入力の方が自動切換えか?」と思い(野生のカン)、DVD-INにTOSLINKのケーブルを接続しなおしてみました。そうしたら、オシロスコープにオーディオの波形が出てきました!!!

さすがにDENONのPMA-S10IIにつなぐのは恐ろしいので、20年使っているミニコンポに接続してみました。ソースはラロのスペイン交響曲です。はっきり言って涙が出るほどの音が出ました。安もののミニコンポですが、クルマの音とぜんぜん違いました。この曲は買って数ヶ月ずっとクルマで聴いており、曲自体は、聴けば聴くほどすばらしい曲に感じるようになってきていました。しかし「シャー」と「ジャリジャリ」で、音響的には聴けたものでは無く「興ざめ」そのものでした。この曲は交響曲となっていますが、実際はバイオリン協奏曲で、「泣かせる」バイオリンの演奏です。しかしピアニシモでゆっくり演奏するパートなど音が「ひどすぎて」「泣けて」くる位のものでした。それがミニコンに接続する程度でこれだけになるとは!!!PXA-H510のその後に期待できそうだな!という実感を得られました。

【車両とPXA-H510の結合テスト】

ここで終わりにしようと思いましたが、ここまでくるとどうしても我慢がならず、アリストの例のデジタル出力に接続してみました。同軸ケーブル1.5C-2Vなどを入手し、トランクから自宅内まで引き込んでとおもっていたのですが、結局我慢できず平線が10mくらいあったので、やっつけでやってみました(反射が出てアイが狭くなるのでホントはまずい)。さきのCDをクルマのCDチェンジャに戻して、トランク内のデジタル出力を10mの平線でEO変換基板に接続し、PXA-H510経由でミニコンポにつないでみました。同じ音がしました!!!。

さすがに目頭が熱くなってきました。今までは忙しくて解析はできなかったものの、秋葉原に行っても「数100万かかりますね〜」の断り、インストーラの超老舗に伺っても「諦めなさい」、クラブアリストでも皆さん諦めていた・・・。そんな思いが思い出されて、ホントに目頭が・・・。 子供たちに「どーだ!技術者の意地だぞー!」と言って見せたら、当時中学生の長男は少しわかったみたいで「すげー」といっていました。

12. クルマへのインストール

システムは全てALPINE製で、以下のとおりです。

 自作のインターフェイス回路(蛇の目ユニバーサル基板)

機械的には仮止めでしたが、電気的には全てつなぎました。『シャー』ノイズは、予定通りというか、無事に完全に消えました。静かなところから、クラシックの金管や弦楽器の音が立ち上がります。とても良い感じです。音自体もかなり良い音です。こうなるとスピーカまで交換したくなります。 以降、数日継続して聞いてみました。従来あったノイズは皆無です。オルタネータノイズもありません。本当に無音のところから、楽器の音色が立ち上がります。音については好き嫌いがあるのは重々承知で自分の主観で言いますと、かなりなめらかに聞こえます。

オリジナルのJBLシステムでも、ソースがCDなわけですから、劇的に音が変わることはありませんが、今までの様な安っぽい音ではありません。取り付けた最初は「普通の音ね」という感じでしたが、普段の通勤路などの、いつものシーンでは、少ない雑音、安心できる音だということが実感でき音としては満足できました。当然、前にあった、ピアニシモ時のバイオリンなどのジャリジャリ音も全くありません。本当に運転していて、アリストの官能的な面と音の美しさとで、「イイオンナにお熱」という感じです。しかし機械的には仮設置なので、そちらが心配です。

オーディオオフ時のバッテリからの消費電流は1.5mAです。これはキー位置がACCでもOFFでも、抜いてあってもこのリーク電流が流れます。キーレスエントリやその他の回路も待機電流が大きいはずですから、1.5mAは微少量と言えるでしょう。しかし、この時点でも以下の問題がありました。

(1) TVやラジオの音量が小さくなっている(私は良しとしてしまうつもり)

(2) PXA-H510プロセッサのデジタル雑音でTVの限界感度が低下する

(3) DOLBY DIGITALをオフにするとセンターSPが鳴らない(全然気になりません。クラシックなどではDOLBY OFFのほうが自然で良いと思います)

(4) RCA入力時、イグニッションキーをACCからOFFにするとポップノイズ(ボコ)が聞こえる。CD時は問題なし(Ver.2の回路にて改善)

(5) AM, FMやTVでの選局時にシステム側のMUTE信号が動いてしまうので、PXAがリセットして、再立ち上がりまでに時間がかかる。つまり選局スイッチを押してから音が出るまで数秒かかる(Ver.2の回路にて改善)

(6) ラジオのVOLはフロントラジオのメインVOLで制御可能。オーディオシステムのオンオフも同じVOLのオーディオON/OFFスイッチで制御可能。CDのVOLはPXA-H510のコントローラからのみ

13. FINAL Versionへ!

これから少し月日がたち、多忙やらでそのままにしておきました。2名の方から「システムを作りたい」との申し出があり、上記問題点(4)、(5)を解決したうえで、プリント基板をおこすことにしました。最終回路図は最後のPDFファイルのとおりです。またPCBはアメリカのExpressPCBというところで作ってもらいました(下図)。国内だと10万は軽く超えるでしょうが、両面TH、シルク・レジスト込み5枚で280$(w/ DHL Shipping)でした。以下はその専用PCB-CADです。しかし何とinchスケールのみ(涙)。

 Express PCB CAD

インターネットでデータを送信し、製作を注文。その後2週間でPCBも到着・・・。私のアリストは図のようにPCBを組み付けてみました。仮のインストールで実験現場みたいです。カーオーディオ専門のインストール業者ゼロビットさんに依頼して、きちんと収めてもらうこととしました。
トランクにインストールしたシステム (仮設置)

14. 今回の解析を通じて

今回の解析では国内外の関連サイトをくまなくチェックしました。が、さすがアメリカ。 「残業しろしろ!」の根性だけのお寒い日本の電子機器業界に暮らす私のオーディオ改造も、仕事の合間でやっているので進みも非常に悪いです。そんななかでUSのサイトで知り合った方、どう見ても(どう読んでも!?)、仕事はプロのエンジニアのようですが、すごい本を書いています。個人出版でです。アリスト(Lexus GS)のオーディオ改造について、非常に詳しく、丁寧に、かつ専門的にまとめてあります。改めて日本の状況を鑑みると(涙)、国力の違いすら感じてしまい、すばらしいと心からの賞賛を贈りたい気持ちと、なにやら情けないなあという気持ちが入り混じってしまいます。 この本はページ数 109ページ!の「GS98 Audio Primer」=「入門書」というタイトルですが、内容は入門書なんかでは、ありません。どう見てもプロ中のプロが記載した、情報あふれるカーオーディオ改造、DIY解説本です。さらにカーオーディオのコンペティションがアメリカでも盛んなようで、そのコンペ・エントリー用に車を仕上げる方法も示しています。この本の入手は個人出版ということで、本の代金 $26.00 + 航空郵便代 $14.00で送ってもらいました。写真で内容を少し示します。

GS98 Audio Primer (C) Percy Mui .

15. 最終インストールを終えて

インストール業者に依頼して、仮設置のシステムを図のように収めてもらいました。本解析に関わる資料を全部渡し、実験車両S300VE(私の車両)の1台が終了後に他のお二人とも入庫し、同様なシステムを完成させました。

 最終的にインストールされたシステム

 製作したインターフェイスユニット

 PXA-H510コントローラ

なお、フロントSPだけMACROMというセパレートSP(ツイータが別置き・それぞれ純正にトレードイン)に交換しました。SPを換えたことは大正解で、多数の楽器がフォルテで鳴るとき、いままであったマルチトーンでの相互ひずみが消えて、がさがさ感が全くなくなりました。本当にサントリーホールあたりで聞いているかのような透き通った音になりました。純正では音がひどすぎで聞くことさえいやになっていた、ラフマニノフのピアノソナタNos1&2のCD(グラモフォン)が、かなり緻密に聞こえるようになりました(^_^)。安いSPでも純正と比較して相当の効果ありでした。大満足です。 取り付けも非常に美しくなされており、大変感激しています。今までが実験室状態でひどすぎたのもありますが、これで人にも(オフミでも)自信をもって見せることができそうです。

また、ナビお姉ちゃんの声もセンタSPから出すように変更しましたが、今までのように右の音が切れて定位がめちゃくちゃになることもなく、お姉ちゃんボイスが真中から聞こえるというのもとても普通でGOODです (^_^)。タイヤもクラシックを聞くために事前にレグノGR7000に交換してありました。レグノはやわらかいようで、「ぐにょぐにょ」でぜんぜん曲がりませんし、ハンドリングタッチは浮いたような感じをもっていますが、静かでクラシックにはGOODです。

ということで、カーオーディオとしては満足できるレベルの音になりました(さすがにホームオーディオまでは行きませんが)。毎日の通勤でもストレス無い音響でクラシックが聞けるようになりました。長い期間と手間をかけましたが、結果は本人として大満足です(^_^)。

16. おまけ

ここで私のアリストを紹介しましょう・・・。

 アイエスイー号(?)

おっと、これはミニカーでしたね(^_^;。フルタ製菓というところでRタイプカーチョコのおまけとして売っていました。OEMなんだろうと思いシャーシを見てみると、HONGWELLとロゴがはいっています。WEBでサーチしてみると中国の会社がこのブランドで市販しているようです。ミニカーの趣味・販売サイトも多数あることもわかりました。みんなすきですねえ。  ということで、以前はアクアラインエクスプレス(および出張深夜移動車)、今は単なる通勤車の、

 アイエスイー号(ほんもの、紺アリS300VE)

です。洗車するヒマもなかなかないので、いつもどろどろ。でもって水垢いっぱいです(^_^;。  END
回路図(20kb)
ハーネス・カプラ結線図(16kb)
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