昨年も十分なお知らせが出来ませんでしたが、出前議会を2回開催し、ブログで決算委員会の様子を3回ご報告しました。議員生活3年目、決算委員会や議会運営委員会にも参加資格を得て、やっと議会の全貌が見えてきました。議会をセレモニーにするのではなく、実質的な討議の場にしようと努力した1年でした。例えば、議案に賛成できない理由を述べて賛同者を募る反対討論を本会議で3回。当局の代表者と本会議上程前の議案について協議を行なう会で不明確な点を毎回質問。「人権擁護委員の候補者」について情報提供がされぬまま信認を求められたため、議場を出て棄権など、活性化のためのチャレンジを致しました。最近は同様の議員も登場しはじめ、議会らしくなってきました。石の上にも3年です。
浜松市の税収は、経済危機を反映して前年度対比7.4%(100億円)の減収。法人税は47.5%も減りました。市債残高は5,380億円で、市民一人当たり65万円の借金があります。来年度は、法人・個人市民税とも減り、200億円の財源不足が予想されています。財務部は、市債(借金)に依存しない方針を打ち出し、事業の重点化、職員の減員(149人)、区の再編、補助金の見直しで歳出を抑えることを表明していますが、補助金や区の数の削減については慎重な判断が必要です。
3年間の市税の推移 (単位:百万円)
19年度 | 20年度 | 21年度 | 前年比 | |
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市民税 個人 | 49,146 | 49,979 | 49,216 | -1.5 % |
市民税 法人 | 18,851 | 18,013 | 9,465 | -47.5 % |
固定資産税 | 52,878 | 52,708 | 52,447 | -0.8 % |
市税総額 | 137,428 | 137,200 | 127,000 | -7.4 % |
「国民健康保険からの脱落」「税金滞納者の増加」と、浜松市民の暮らしを直撃。この事態に、政府は緊急経済対策を打ちました。茶の間をにぎわした「国の事業仕分け」で廃止になった補正予算について、既に浜松市議会でも唯一「市民の風」が反対した事業がいくつかありました。
地方議会は、矛盾に満ちたバラマキ予算に抵抗せず「もらえるものはもらわないと」と、900兆円を超えなんとする国の借金に加担しました。
国会で補正予算に反対した政党は、共産党議員を含めて浜松市議会では全員が賛成しました。「国会で反対したのに、なぜ地方では賛成なの?」ですか。
国の指示と縛りによる補助金行政から脱皮して、地方の権限で予算も政策も計画できる仕組みにしない限り、無駄をなくことは困難です。せめて「地方の実態に合わないバラマキ予算は返上する」と、政令市の18市議会が連帯して国の補正予算を否決すれば、少しは健全な財政運営に立ち戻れるのではないでしょうか。
2009年度予算は、1946年以来初めて歳入の半分以上を国債(53兆円の借金)が占めるという異常事態です。国会議員による事業仕分けでも、予算を十分に削減できませんでした。その結果浜松市(自治体)で何が起こったのでしょうか。
浜松市では、昨年12月から国の緊急経済対策170億円が、主に中小企業対策や失業者の緊急雇用に活用されました。今年6月にも113億円追加の政府発表があり、わずか2週間で120事業が立案された為、不要不急の事業や成果の危ぶまれる事業まで予算化されてしまいました。以下は、ほんの2例ですが、私が賛成できなかった予算案です。
当初から疑問だったのは、文科省が使途を特定したICT予算。全国の小中学校の全教室に50インチのTV、各学校に電子黒板、パソコンを十数台増設するものでした。狭い教室に50インチは無理と学校側。パソコンだけ配置されても指導できない。現場の声は「もっと先生が欲しい」でした。1校あたり1100万円にのぼるこの予算を、校長先生が、実態に合わせて自由に活用できたら、学校は創意に満ちた生き生きとした環境になっていたでしょう。補助金行政の限界を示す好例です。
パソコン入札結果は、落札率92.6%(浜松市の予想額の何%か)総額2億6500万円で、遠鉄システムサービスが市内6地域を独占的に落札。他の政令市では、浜松市のような一式入札ではなく、生徒用、教員用、ネットワークなど、入札回数を分割した為、複数の企業が参加し、市民にも理解しやすい落札価格になりました。浜松市の一式入札ではパソコンの価格も解らず、透明性に欠けています。全教室に富士通製が導入されました。
国が緊急雇用基金210億円を県に創設し、市町村に予算配分する事業です。「地域の実情に応じて、市町村の創意工夫にもとづき、求職者を雇い入れて雇用機会を創出する」ことが目的ですが、浜松市には「エネルギーの転換」「森林保全」「遊休農地の活用」「空き店舗対策」など、解決を迫られる課題がありながら、自治体としての努力を最初から放棄し、民間から事業案を公募し、有力事業所に委託しました。外郭団体と多額の財政支援を受ける社会福祉法人への委託はあまりにも安易です。経済危機に当たって、優良企業は税金を活用するまでも無く、一人でも多くの雇用を行なう努力が、社会的責任であると言えますが、企業の本来事業を実施するにも関わらず、25人の雇用を2年3ヶ月継続して、3億円を超える予算が組まれる事になりました。
(社福)聖隷福祉事業団
(社福)天龍厚生会
(株)知久
(株)アルモニコス
(株)ヤタロー
(株)マックスフィールズ
(財)浜松市勤労福祉協会
(財)浜名湖国際頭脳センター
緊急経済対策という名の元に、補正予算を市が活用した例ですが、これでは地域経済への波及効果は限られます。国の債務を900兆円に膨張させた「緊急経済対策」は、次のいずれかの条件を満たす投資であって欲しい。他市町村のように職員に知恵を絞って欲しかったと思いますが、市長は「民間の英知を借りて就労構造を変化させた」と発言しました。
受託した8事業所一覧
1.中長期的に見た新規産業分野への投資
2.中小企業の保全・再生のための投資
3.多数の失業者を救済する雇用
4.地域の課題を解決する仕組みに投資(NPO・産・官・学の連携など)
議会活動3年目ですが、議案は3年間一度も否決されずすいすいと通過しました。しかし今、判断を先送りすることは許されない複数の事業があります。
公営駐車場経営に関する過去5年間の決算資料を請求して驚くべき実態を知りました。6ヶ所の平均稼働率は12%、最低は4%です。収入が不足し、昨年は一般会計から6億円を補填。5年間の累計補填額は28億円に上ります。早急に、廃止の判断をすべきでしたが、結論を先送りしてきました。今年の決算委員会でこの決算を否決したのは私一人でした。自転車道路や、新交通システム・路面電車の整備にまわしていたら、将来が明るかったのですが。
行革審の議論を待たずとも議会で否決できたのです。
平成20年度 市営駐車場の経営実態 (単位千円)
稼働率 | 収入総額 | 給与総額 | 一般会計繰入金 | |
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新川北 | 13.15% | 12,790 | 0 | 0 |
新川南 | 13.75% | 22,629 | 0 | 0 |
万年橋 | 4.09% | 33,340 | 7,114 | 0 |
駅北 | 5.88% | 256,417 | 7,110 | 138,452 |
東田町地下 | 13.23% | 99,433 | 18,241 | 45,076 |
ザザシティ | 23.05% | 717,151 | 37,207 | 410,779 |
合計 | 1,141,762 | 79,673 | 594,307 |
農業振興予算の半分を占める8億3000万円を支出していますが、事業収入は2億6300万円。敷地の54%は借地で借地料もかさむ上、売り上げも伸びていません。用途変更、民営化、廃止かの選択が必要です。事業の優先順位を決めて適格に評価する必要があります。フラワーパークは動物園と統合して再生が図られる予定です。
民間に過度の利益供与 (指定官吏の実態)
浜松市が11億円を投じて建設した当館の運営を民間に委託し、総売り上げのたったの8%を市に納める管理契約の事例です。昨年の総売り上げ3億円余から諸経費を引いた残額の8%は2,200万円。実に 8,000万円の純益が管理者の懐に入りました。8%の合理的な根拠はありません。15年後の大規模修繕に備えての蓄えは一切していません。これが公営の現状です。儲かるのなら市の直営にするか、納入率を上げるべきですが、手をこまねいています。この決算を否決したのは、やはり私一人でした。
―――決算⇒評価⇒予算⇒実行⇒決算――
上記3例は、ほんの一例です。決算委員会で否決できたはずですが、粛々と通過しました。予算は、決算の評価を反映させて編成するのが当然ですが、このサイクルは見られず、過去3年間に決算評価が予算に反映された例を求めたところ、7%のみで、実効性の乏しいセレモニーと化していることがわかります。市民参加の「事業仕分けは」この形式的な関係の一角を破る試みになりますが、それでは議会の役割は何なのと問われても致し方ありません。
本来は高齢者、障害者、傷病者を対象とした扶助制度ですが、失業者の急増で受給者は3年間で1,5倍に増えました。受給家庭のモデル例は、30代の両親に学齢前の子供2人で月額267,640円。子供3人だと299,000円。医療費無料、学費免除ですから、普通の暮らしが保障されています。
費用負担の割合は、国75%・市25%。浜松市は20年度64億円、21年度80億円を支出。22年度90億円を予測。今年9月段階で受給世帯は、市内全世帯の1.2%(3880世帯)。うち外国人受給世帯は296で7.6%ですが、急増しています。
医療給付費(国保加入者の医療機関利用額)の総額は、21年度で9兆8400億円です。うち公費負担は4兆円で残りを加入者が負担するのですが、国保料の値上げ率に加入者がついていけない為、浜松市は一般会計から20年度は21億円、21年度は25億円(予想)を補填。20年度に保険料を払えなかった人は、初めて10%を超え,滞納額は22億円(時効2年)になり、今年は正規の保険制度から7千人が脱落しました。
国保加入世帯の44%が、年収220万円未満の所得階層です。先のグラフの2つの線の差は開くばかりで、保険料の値上げで埋めるのはもう困難です。「国民皆保険」を守るのなら、年金制度の一本化など抜本的な改革は待ったなしです。
―――遠鉄百貨店の新館建設の問題点―――
フォルテがわずか12億円で(渇棟B鉄道に売却され、百貨店新館を建設中です。旧館と新館の間はギャラリーモール(市の都市計画道路)として市民に親しまれてきた公共空間ですが、その頭上に、旧館と新館をつなぐ幅19mの連絡通路が、3階〜6階の4層にわたり設置される事になっています。市の所有する土地は市民の財産ですが、なんと5層(地下通路も)にわたり、民間企業が占有する計画です。新設通路の3階に直登するエスカレーターが、駅から郵便局に向かう橋上から設置される予定です。貴重な駅前の広場を、私企業が占有し公道からエスカレーターまで設置することに疑問があります。
直登エスカレーターの危険もさることながら、公共空間の利用料も未定。都市の景観としても見苦しく、駅前の一等地への巨大百貨店の出現は、次なる出店を不可能にする等、将来に禍根を残します。浜松市が過日講師に招いた安藤忠夫氏の率直なご意見を聞きたいところです。
高島屋出身の社長は「別館は成功しにくいので、旧館とつなぐ通路が必要だった」と率直に述べておられます。私の反対にもかかわらず議会の常任委員会も、都市計画審議会も通過して計画決定されました。このような重大な問題は、構想図や模型を計画地に設置して、早い段階から市民に解りやすく情報公開し、市民の意見を求めるべきではないでしょうか。今までの市長の方針は「結果がよければいい」です。
議会と市民が一体にならなければ、市の方針を変えることは容易ではありません。今からでも遅くはありません。皆さんの声を聞かせてください。私も努力を続けます。
遠鉄百貨店の新館連絡部分の断面図
● 一般質問 21年5月 第2回市議会定例会
● 反対討論
第67号議案21年度浜松市一般会計予算に反対*決算評価と予算のつながりが無く、事業目的を表す「事業シート」の提供が無く事業概要が不明なものに反対
第119号議案「地域自治区及び地域協議会の廃止」に反対
第166号議案21年度一般会計補正予算
「元気回復!ふるさと雇用事業」に反対
第191〜198号議案
「文部科学省ICT予算」に反対
経済危機の下、問題山積の議会活動でした。地方議会は補助金の交付によって、国の方針にがんじがらめに拘束されています。地方の時代どころではありません。政権交代で国会は変わり始めましたが、地方議会にはさざ波も立たず、地方の党員には情報が入っていない様子です。
議員の意識改革から始めることが肝腎です。新人議員候補者を探しています。若い元気な人、特に女性を推薦してくださいませんか。今年は。区の数の削減と議員定数についても、議論が始まります。
www.yuko-yamagucti.net>