俺は長椅子の端に横向になって腰掛ける。
むろん彼女に背を向けたままだ。
濡れたシャツが肌にからみついて何とも気持ち悪い。
不意に俺の背中に何かが当たった。俺は横目で様子を見てみる。
「振り向かないでね。宇佐美君。わたしはちゃんとここにいるから」
うわ!
俺は状況を知って驚いた。
彼女は俺の背中にもたれて座っている。長椅子に足を延ばして俺に寄りかかってるのだ。背中と背中が合わさった感じだ。
「やっぱり男の人の背中って広いんだね」
彼女は頭を俺の肩に押しつけた。
俺の心臓の鼓動が高まる。
暖かさが背中を通して伝わってくる。
彼女の濡れた髪が首筋にかかる。
俺は硬直したまま動けない。
「ずっとこうしていたいな…」
「え?」
「ううん、なんでもない」
沈黙。
雨の音だけがあたりに響いている。
なんとなく気まずいな…。
俺が何か話さなきゃと話題をあれこれ考えてると彼女が不意に口を開いた。
「ねぇ、宇佐美君って……つきあってる娘、いるの?」
突然の質問に俺は少し驚ろく。
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