◆7月24日<夕方>◆
『二人だけの雨宿り』
「やだ…雨が降ってきちゃった」
雲行きがさっきから怪しいと思っていたらとうとう降ってきた。
しかも夏のにわか雨だ。
あっという間に大降りになる。
俺たちは慌てて駆け出す。
あと10分もあるけばバス停だというのに…
雨宿りのできそうな場所を探すが、なかなか見当たらない。
「宇佐美君、あそこ」
小野寺さんの指さす方向には小さな休憩所があった。もちろん屋根はついている。急いでそこに駆け込む二人。
急いでリュックからタオルを取り出すと、服にしみこんだ水分をふき取る。
「ふは〜!! びっくりしたね。さっきまであんなにいい天気だったのに」
「う、うん」
少し戸惑った反応が俺は少し気になった。
「どうかした? 小野寺さ…」
彼女を見た俺は思わず息を呑んだ。シャツがびっちり透けちゃっている。
下着の形がくっきりと…。
「あ、あんまりこっち見ないでね。恥ずかしいから…」
俺に少し背を向けるようにタオルで胸の辺りを隠す小野寺さん。顔は真っ赤になってる。俺も慌てて視線を逸らした。
気まずい雰囲気が流れる。
俺の中で見たいという気持と、見ちゃ駄目だという気持が交差する。
「雨って…わたし意外と好きだな」
「え?」
「ほら、雨の日ってじめじめしてて、どこにもいけなくて嫌いって人、多いじゃない。でもわたしは好き。ほら、見て。草木が生き生きとしてる。緑が輝いて見えるでしょ?」
俺は改めて周りの景色を見た。
気が付かなかったが、ここはけっこう見晴らしがいい。小さな丘の上みたいで、辺りは芝生で囲まれている。
確かに、しっとりと濡れた草木は雨を歓迎するように生き生きしている気がする。
それにこの雨のおかげで暑さも一休みって所だ。
「雨の日には雨の日にしかない匂いっていうか雰囲気があるわ。それってわたしは好きだな」
「じゃぁ晴れの日は嫌い?」
「ううん。晴れの日ももちろん好き」
「じゃぁ、なんでも好きなんじゃん」
「うん。そうかもね」
そういってくすくす笑う小野寺さん。
「天気の事で気落ちしたってしょうがないじゃない?神様が決める事だもん。そんなことよりその良さをみつけて楽しんじゃえばいいんじゃないかな」
相変わらず楽天家だなぁ、小野寺さんは。
どんな状況も楽しめちゃうんだから一緒にいて嫌な気分にならない。
そういう所も彼女の魅力なんだよなぁ。
|