松原正樹、Humanなサウンドに酔う。
2003/06/14 Update 
 日本のセッションギタリストとしてスタジオにライブにと膨大なキャリアを残してきた松原正樹。彼のデビュー25周年を記念して2002年10月に行われたSTB139でのステージを収録したライブ盤がリリースされています。"HUMARHYTHM LIVE"と題したこのアルバムでは、彼のキャリアはもちろんのこと、現役のミュージシャンとしてのパフォーマンスをアピールするのに十分な内容となっています。某サイトを見ていたら彼のことを「日本のJay Graydon...」なんて紹介していました。確かに当時彼が参加していたParachuteで聞かせてくれた盟友の今剛とのツイン・ギターはJayサウンドを彷彿とさせていて、そんな音に惹かれて私も聞きだした...と思い出しました。彼がプレイしていた松田聖子の<夏の扉>や<Cherry Blosssom>、Yumingの<Dang Dang>のギター・ソロには熱狂しましたっけ(^^;;)。
 折りしも"Crossover Japan '03"というイベントが行われるなど、当時の日本のクロスオーバー/フュージョン・シーンを見直す動きが見られます。当時のサウンドを懐かしむだけで果たしてシーンが活性化するのでしょうか。当時のアルバムが再発されるだけでシーンが盛り上がるとでもいうのでしょうか。リスナーのニーズは言うに及ばず、時代性すら見失い迷走し続ける日本の音楽業界には背を向けて、「自分のやりたい音楽は自分でやる」と自身の(インディーズ)レーベルを立ち上げた彼の活動は、日本の音楽シーンの一つの在り方として絶対に注目し続けてほしい...そう思います。

Album Review
 Disc1のいきなりシブイ曲からのスタートに驚き!。Parachute(以下「P」)の3作目"Haere Mai"に収められているギター1本だけで聞かす小作<Ne-On>に続いて、彼のサウンド特徴でもある粘っこくてメロディアスなフレーズが堪能できる<True Lines>(98年、"Guitaer Talks"収録)、そしてHumarhythm1(以下「H1」)に収められている<Living in the Music>と続きます。新作Humarhythm2(以下「H2」)のバリエーション豊かなテンポ・チェンジと表情豊かなメロデイが印象的な<Deep Ocean>と<Bourgeon>に続くは、おおっと"Been"(85年)のラストを飾る<DA-BA-DA>じゃないですか!。まさかこの曲をライブで聴く事ができるなんて...シアワセ!。スローで優しい<With Me>に続いては、PのボーカリストMike Dannが登場してのバラード<Sylvia>と、原曲はRitなボーカルEric Taggはまさか呼べないので(笑)代役による<Make it With Me>、"Sniper"収録の<Someday>。そしてPではステージ終盤の盛り上がり曲<The Dealer>とボーカル・チューンが続きます。Humarhythmのテーマ曲?<Humarhythm>に"Sniper"のシットリ曲<You Babe>とインスト曲を続けて前半は終了です。いやいや、ここまででも十分に楽しめる内容です。
 後半(Disc2)はやっぱり(笑)アコースティックでスタートです。Pの1stから<Miura Wind>。スペーシーなキーボードが印象的な<E・D・G・E>、彼の奥さんの南部昌江(Key)とのアット・ホームなアルバム"流宇夢サウンド'95"から<Dolphin>、"H1"に収められている今は亡き名ボーカリストCandee(Triforceというユニットにボーカルで参加)に捧げたドライブ感に溢れた<Over Lap>、そしてソロの代表作とも言える名盤からタイトル曲の<Sniper>に続いて、"H2"からギター・フュージョン好きが泣いて喜ぶカッティングの競演曲<Fliegen>、今剛のソロアルバムから、いくら展開してもギター・ソロしか出てこない<Agatha>、そしてPの、まさかライブテイクを聴けるとは思ってもみなかった<Aresa Koresa>、そしてPのライブでオープニング曲としてよく使われていた<Open Your Freeways>と名曲のオンパレード。そして締めはPの代表曲で、先に行われたCrosover Japan '03のセットでは驚きのオープニングだった<Hercules>!。そしてラストは自身のレーベルに名付けた<Rocking Chair>で終了です。仕事の都合でステージは見に行けなかったけれど、無理してでも見ておけばよかたなと、つくづく思ってしまう実に濃い内容だったんですね...うぅぅ残念。

 こうして聴いてみると彼のキャリアがどれだけ多岐にわたり、しかもバリエーション豊かな楽曲を残してきたかを改めて感じます。今回のライブはあくまでデビュー周年記念ということで敢えて様々なアルバムから選曲がなされたものだと思います。おかげで懐かしさ100倍の感情も湧きあがりますが、一方で今の(特に海外)フュージョン・シーンでは決して聞くことのできないメロディアスでかつエキサイティングなインストゥルメンタル曲が輝いている...そう感じてなりません。この選曲で特徴的なのは(たぶん)aosisレーベルからリリースされている一連のアルバムからは選曲されていないことです。いかに彼の指向と異なったアルバムを作らされているかが分かってしまうということでしょうか。さらに以前の楽曲をコンポーザーとしての立場で新レーベル名で再演することにより、このテイクなら自分で自由にリリースできるし、自分の意志以外では決して廃盤にされない...こうしたネライがあるとと感じるのは穿った見方なのでしょうかね...。いずれにせよ、まだ現役で演る気十分だという姿勢を精一杯アピールしてくれた彼の一連のHumarhythmな活動は、往時の音楽シーンの勢いを知るクロスオーバーなオヤジ達にすれば心強い見方のように思えてなりませんし、既存の勢力が手助けしてくれないのなら自分の手で自分の好きな音楽を演るという、ある意味では自然で本質的なミュージシャン・シップを見せてくれたようにも思えてなりません。ガンバレ松ちゃん!。いつまでも応援してまっせ!!。

※上記コメントの中で<曲名>の曲は残念ながらオリジナル音源を聴いたことがありません(泣)。リアルタイムで聴いていたとはいえ全てを網羅するほど聞くとなると、これはマニアな領域の行動パターンですものね。このコメントを書くにあたって改めてアレコレと調べて<E・D・G・E>などはプロモ・オンリーだったりと入手困難だということも分かって一瞬コレクター魂が目覚めかけましたが(苦笑)、せめて不明な曲が何のアルバムに収められているかくらいは知りたいと思っています。情報お知りの方はぜひぜひお知らせくださいませ。

収録曲
Disc 1
01.Ne-On
02.True Lines
03.Living in the Music
04.Deep Ocean
06.DA-BA-DA
07.With Me
08.Sylvia
09.Make it With Me
10.Someday
11.The Dealer
12.Human Rhythm
13.You Babe

Disc 201.Miura Wind
02.E・D・G・E
03.Dolphin
04.Over Lap
05.Sniper
06.Fliegen
07.Agatha
08.Aresa Koresa
09.Open Your Freeways
10.Herucules
11.Rocking Chair

RCM-1003-4

Official Website
 Matsubara Masaki website

関連サイト(ある意味では↑より詳しい...)
 Parachute Web Site


お薦めの代表アルバム
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/solo
(78年)


Take a Song
/solo
(79年)
6kinds 6sizes
/Parachute
(80年)
Haere Mai
/Parachute
(81年)
Sniper
/solo
(83年)
Painted Woman
/solo
(83年)
Triforce
/Triforce
(90年)
Humaryhythm I
/solo
(00年)
Humarhythm II
/solo
(02年)
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