AIRPLAYサウンド徹底分析
2003/03/30 Update
 記念すべきリニューアル第1弾としてご紹介するのは、やはり史上最強のコンテンポラリー・ロックの名盤AIRPLAYで決まりでしょう(^^;;)。当時流行していたAORの王道中の王道と言える作品。1980年にリリースされて既に20年以上が経っているにも関らず、そのサウンドは今でも「エアプレイ・サウンド」として輝きはまるで失っていません。懐古主義全盛の21世紀の初頭において、「昔の懐かしい音」としてでなく、今聞いても新鮮さを失わないサウンド・メイキングは、まさに奇跡といえるでしょう。そんなAIRPLAYを徹底分析してみたいと思います。

Airplayサウンドの魅力
 一過性のユニットによるアルバム制作は山のようにあるけれど、このAirplayの場合は「はい、アルバム1枚の曲が出来ました...お終い。」では済まされないほどの影響を残しました。それは典型的なLAロックを基調としつつもバリエーション豊かなサウンドテイストを織り交ぜているだけでなく、あらゆる意味で完成度の高いアレンジとプレイを聞かせてくれたからだと思います。
 それではこれから、このアルバムに収録されている全べての曲について何が凄いか分析してみましょう。聞き込めば聞き込むほど様々な趣向が凝らされていて、何度聞いても違う音があちらこちらから聞こえる…きっと100回聞いても全ての音は分からないんだろうなと思いつつも、いざ!、音のミラクル・ワールドへ……。

 アルバムのオープニングを飾る@<
Stranded>。TommyとT.Kellyによる印象的なハイトーン・コーラス。力強いリズムを従えたJayのディストーション効果たっぷりのギター・コーラスとリズムをシンクロさせる生ピアノ・パート。その後のリズム・パートの典型的なパターンとして重用されました。2連のバスドラムの踏み込みなどはJeffの得意のバスドラ・パターンですが、Jeffお得意のパターンの揺れがないので、大方の意見とは別で私にはM.Bairdによるプレイだと想像しています。
 A<
Cryin' All Night>ではキーボードのリフを、Fosterお得意の生ピアノによるリズムとともにS.Porcaroコンポーズによるシンセ・オーケストラを重ね合わせることによる華麗な音の広がりを実現しています。もちろんGraydonのギターだって心地よく鳴っています。曲の繋ぎの部分でギターやキーボードのリフをかますアレンジも、Airplay以降のアレンジ・ワークにおいて一つのパターンとして定着していきます。ハイハットのタメやタム回しのニュアンスから、この曲のドラムはJeffでしょう。
  B<
It Will Be Alright>はスローバラード。Tommyがしっとりと歌い上げる後ろでファルセットによる男性コーラス。ノンクレジットながらまさに女性そのもののに聞こえるパートがあったりして、「本当に男性だけ?」って感じもしますが、それほど力強いハーモニーが楽しめます。さらに空間的な広がりを表現するためにシンセだけでなく生のストリングス・オーケストラも重ね合わせていますが、それでもロック・テイストが強く感じられるアレンジはさすがです。そして特筆すべきはここで聞かせてくれるGraydonのギター・ソロ。ブリッジ部分のラスト2小節からスタートさせる大クイの10小節のギター・ソロは必要にして十分な長さだし、全てのフレーズを重ねることによって、その存在感を引き立てる手法は、これ以降の様々なギタリストに弾き継がれていきます。
 ホーン隊のド派手なキメから始まるC<
Nothing You Can Do About It>は、収録曲の中で最も際立つ曲調。Jeffお得意のシャッフル・ビートが何ともお洒落な雰囲気を醸し出します。しかしこんなに格好よくて美味しい曲のボーカルは何とGraydon本人が担当。職人でありながらしっかり目立つところを持って行くあたりは、彼の人柄が偲ばれます(笑)。
 D<
Should We Carry On>はいかにもと言った感じの典型的なFosterバラード。以降彼のプロデュースする様々なアーティストのアルバムには同様の曲が必ず挿入され、金太郎飴状態の作品が連発されていきます。これでもかというほどの歌と絡み合うギター・リフは「私もここにいます」というGraydonの自己主張なのでしょう。おっとリードとっているTommyの影がいくら頑張っても浮かばれないゾ...(^^;;)。
 E<
Leave Me Alone>は4連の生ピアノよるリズムで「私はここにいます」というFosterの存在感が光ります。途中のトーキング・モジュレーターによるソロはちょっといただけませんが、テンポの良いサビは何度聞いても高揚感に溢れ格好良いです。サビで必ずボーカルがハモる...これも以降のアレンジの定番になっていきます。
 珍しくオクターブ低いトーンでリズムを切るFosterの生ピが聞けるF<
Sweet Body>。ここではS.Lukatherによるギター・リフも結構目立ってます。
 G<
Bix>は臭く重たく歌い上げる、まさにB.Champlin向きの曲。美味しい歌い上げパートはしっかりとBillに持って行かれている悲しいTommyの悲哀が感じられます(^^;;)。ホーンを全面に、まるで全盛期のChicagoかTower Of Powerのようなノリの曲です。
 キャッチーなメロディが特徴のH<
She Waits for Me>。ここでもサビのパートがしっかりとボーカルが重ねられていて、このパターンは誰が何といおうとAirplayアレンジの最大の特徴といえるでしょう。
そしてFoster=Graysonの作曲能力を誰もが認めた名曲I<
After the Love is Gone>。この曲作りには「俺もいるんだゾ」と必至に主張するB.Champlinの健気なコーラス・ワークも光ります。もちろんJ.Heyの特徴が顕著に聞けるホーン・アレンジだって負けていません。更にこれでもかと言わんばかりのGraydonのダブル・ノートのソロも凄い。いやいや、こうして改めて聞きなおすと、何とも各人の自己主張の塊みたいなアルバムだったんですね(^^;;)。実力十分なミュージシャンがそれぞれ主張しまくる...これがAirplayの最大の魅力だったりして...。

 良くも悪くもこの音を超えた当時のAORアルバムは無かったように思います。私のロックの分野での音楽的な嗜好はここに至って終了です...(^^;;)。

すべてのアダルト・コンテンポラリーの要素がここに。万人必聴の永久名盤!。
 アダルト・コンテンポラリーなジャンルにおいて、これほど影響力の大きいアルバムは他にありません。ギターの
Jay GraydonとキーボードのDavid Foster、この二人のスタジオ・セッション・ミュージシャンがひょんなキッカケからデモテープ作りを始め、そこからこのユニットは動き出しました。もともと数々のセッションで二人は活動していて、Steely Danの名盤『Aja』収録の<Peg>のソロワークで注目を浴びたJay。SkylarkやAttitudeなどの活動でプレイヤーとして、そしてプロデューサーやコンポーザーとして頭角を現わし出したFoster。ここで聴ける作品の全てが二人の共作かつプロデュース。時代が育てた二つの才能がこの"Airplay Session"でとてつもない成果を残してくれたのです。楽曲だけでなく全てのアレンジ・ワークや各パートのフレーズに至るまで、ロックに限らずその後の様々なジャンルのシーンに与えた影響は計り知れません。
 Airplayユニットのもう一人...ボーカルの
Tommy Funderburkは、残念ながらユニットのメンバーというよりもあくまでボーカル・パートのメイン・アクトという位置付けでしかありません。何故ならばほとんどの楽曲でリード・ボーカルまたはコーラスとして参加しているものの、1曲を通して全てを歌いきることはほとんどなく、曲によってはGraydon本人がボーカルを担当していたり、さらにはコーラス参加のBill ChamplinやTom Kelly、Max Gronenthalらとの絡み無しにボーカル・パートが成立していないからです。Tommyは敬虔なクリスチャンで、LAの教会で顔見知りになった縁でE.W.&Fのリハーサルに参加するようになり、P.Baileyのパートを地声で歌い上げて俄然注目を浴びたという経歴をもっています。彼の独特なハイトーン・ボーカルが無ければ、このアルバムの方向性も違ったものになっていたのは間違いでしょう。

最強無敵の参加ミュージシャン
 Graydonの粘り十分のギター・ワーク、Fosterの華麗なキーボード・プレイ、これがAirplayサウンドの胆になっていることは言うまでもありませんが、それを支えるバック・ミュージシャンがこれまた強力です。まずはTOTO隊のJ.Porcaro、D.Hungate、S.Lukather、S.Porcaro。他にドラムには黒っぽくかつタイトなプレイが特徴のM.Baird、カッティングギターの名手R.Parker,Jr.。ホーン隊にはSeawindのJ.Heyを始めとしてG.Glant、B.Reichenbachなど。そして先に紹介したコーラス隊の面々。当時のL.A.ミユージックシーンを代表するミュージシャンが大挙して参加している。これらの個性的かつ実力十分なメンバーに支えられて、華麗にしてエキサイティングなAirplayサウンドは成り立っているのです。
■永遠の名作。一生聴き続けましょうか(^^;;)。
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