Crossover/Fusion Live盤傑作選 2003/04/19 Update
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 ライブ盤の魅力、それはスタジオ録音には無いグルーブやアーティストと観衆との熱いパフォーマンスの再現があげられるでしょう。特に1980年前後のCrossover / Fusionシーンにおいては、そのシーンの盛上がりとともに魅力的なライブ盤が数多くリリースされています。そんなアルバムをご紹介します。全て私にとっては当時の様々な記憶や感情としっかりと結びついているアルバムばかり。懐かしさとともに甦るエモーション...今聞いてもとっても気持ち良いです。

The Crusaders/Scratch
Recorded Live at The Roxy
(1974年)

■Player :Wayne Henderson(Trombone)、Wilton Felder(T.Sax)、Joe Sample(Key)、Stix Hooper(Drs)、Larry Carlton(G)、Max Bennett(Bs)

気だるい雰囲気のリズムに歪んだローズ・ピアノが重なり曲が始まる。「渋い...」その一言に尽きます。Jazzセットではあるものの決してJazzという言葉では収まらないハートフルでソウルフルな彼らの演奏は、時代のクロスオーバー・サウンドの勢いを感じてしまう。Beatlesの<Eleanor Rigby>も超渋いアレンジに大変身。C.Kingの名作<So Far Away>もイイ感じの和みチューンとして演奏されていて、1分を超えるW.Hendersonのロング・トーンからL.Carltonのギター・ソロへと展開するあたりは、まだ若造だった当時の私ですら痺れた。初期Crusadersの魅力の全てが楽しめる名盤!。
 吉祥寺に同名のCafeがあります。私がこのアルバムを聞き始めた大学生の頃からありました。あの頃から、もう20年以上経つんですね。当時の行き付けの店はどんどん無くなっていくけれど、まるで自分の過去を消されていくようでとても淋しい気持ちになります。こんな名盤とともにあの頃の記憶は永遠に残ってほしいと思います。

Tom Scott/Apple Juice
Recorded Live at The Bottom Line
(1981年)

■Player :Tom Scott(Sax,Lyricon)、Eric Gale(G)、Hugh McCracken(G)、Richard Tee(Key)、Marcus Miller(Bs)、Ralph McDonald(Perc)、Steve Gadd(Drs)、Dr. John(Vo)

E.Galeのカッティグ、Joe Sampleに並ぶローズ・ピアノの名手R.Teeがコードを重ね、そこへS.GaddとM.Millerの強力リズムが入って始まるステージのオープニング。鳥肌が立つなんてもんじゃない。当時30代前半だったTomのプレイも既に円熟の域に達していると言えるほどの抜群のブロウを響かせている。彼の魅力はソロ・パートでもメロディアスで、それでいてエキサイティングなフレーズがビシバシと出てくるところ。さらに親しみやすいテーマとメリハリのついたリズム、そして分かりやすい曲の構成...今のコンテンポラリー・ジャズに欠けているのは、そんな分かりやすさだと思うのだけれど...。Saxをフューチャーした時代のクロスオーバー・サウンドの代表作と言っても過言ではないだろう。Dr. Johnの渋々のボーカルに応える観客と過激なハイトーンから入る抜群のTomのソロワーク。こんなステージをクラブ規模の会場で聞けるなんて、NYのファンはめちゃくちゃ羨ましい。こんな名盤を99年になるまでCD化しなかったSonyの罪は重いゾ(^^;;)。

V.A./Casino Lights
Recorded Live at Montreux
(1982)

■Player : Randy Crawford(Vo)、Al Jarreau(Vo)、Neil Larsen(Key)、Buzz Feiten(G)、David Sanborn(Sax)、Larry Carlton(G)、Marcus Miller(Bs)、Robben Ford(G)、Ricky Lawson(Drs)、Russell Ferrante(Key)、Lenny Castro(Perc)、Mike Mainieri(Vib)、Larry Williams(Sax)、Jerry Hey(Horn)、....

時のクロスオーバー・フュージョン・シーンをリードしていたWarner Bros.レーベル。仕掛け人の一人Tommy Lipumaの総指揮のもとで行われたモントルー・ジャズ・フェスティバルのWBオールスターズ・デイのライブ録音。参加ミュージシャンも上記のように超豪華。Al JarreauとRandy Crawfordの夢の競演<Precious Love>、そんな二人に絡むSaxのD.Sanborn、さらにR.PageとB.Champlinがコーラスで参加する究極の<Who's Right Who's Wrong>、R.CrawfordとYellowJacketsの競演による<Imagine>など、まさにVSOPな夜が堪能できます。LP盤で最初にリリースされた当時は収録時間の都合でカットされたテイクもCD化にともない見事に復活。実に良心的なリリースだったと賛辞の言葉を惜しまない。名盤復活とは、こういうCD化のことを言うのだと、全レコード会社関係者に声を大にして言いたい。

Quincy Jones
/Live at BUDOKAN
Recorded Live at Tokyo
(1981)
■Player : Quincy Jones(Conductor,Key)、Greg Phillinganes(Key)、Rod Temperton(Key)、Carlos Rios(G)、Toots Thelemans(Harmonica)、John Robinson(Drs)、Louis Johnson(Bs)、Patti Austin(Vo)、James Ingram(Vo)、Jerry Hey(Horns)、Hara Nobuo & Sharps and Flats ....

Jazzからブラコン、Big Bandスタイルによる映画音楽まで、まさにクロスオーバーな活躍をしていたQuincy Jonesの3度目の来日公演のライブ盤。後に開催されたD.Fosterらによるスーパー・プロデューサー・ライブ企画の原点ともいえる内容で、音楽家クインシーの魅力が堪能できる内容。オープニングのTVドラマ「ルーツ」〜「アイアン・サイド」のテーマに続いてJ.Ingramの美声が響く<Just Once>、そしてライブ初見参(?)のPatti Austinによる<Razzamatazz>、クインシー自身の代表曲<Stuff Like That>など、時代のQJワールドが楽しめる。公演に同行したメンバーも上記のように超豪華!。さっすが大御所の貫禄であります。最後はお決まりの「愛のコリ〜ダ」の大合唱。良くも悪くも時代でやんす(^^;;)。

Koinonia
/Celebration
Recorded Live at Stockholm?
(1984)

■Player : Abraham Laboriel(Bs)、Harlan Rodgers(Key)、Alex Acuna(Drs&Perc)、Bill Maxwell(Drs&Perc)、Justo Almario(Woodwinds)、Hardly Hockensmith(G)

Abeは言わずと知れたLAを代表するセッション・ベーシスト。そんな彼が80年頃から地元の有名ライブハウス「Baked Potato」を中心に活動していたKoinonia。そのスウェーデン公演?の模様を収めたのがこのライブ盤。三日間で1万4千人も動員したなんてコメントが盤に載っていたけど、ホンマかいな!。裏ジャケットには、どう見ても学校の体育館にしか見えないステージの写真が出ているけれど、曲の途中で聞こえる歓声の響き具合は確かにそれなりのホールのような響きも...。
 さて肝心の内容ですが、彼らの持ち味であるラテン・タッチのフュージョン・サウンドが堪能できます。演奏だって兵揃いのメンバーだけに実に安定していて、さらにはライブならではの抜群のグルーブ感が雰囲気を盛り上げます。こんな演奏を日本でも見たかった....つて、彼らの来日公演ってあったのでしょうかねぇ、クロスオーバーなオジさま方、教えてくださいませ(笑)。


 今の海外フュージョンはスムース・テイストが全盛。例えミュージシャンが当時のテイストのアルバムを制作したくても、ラジオ局がスムースしか流さないので、レコード会社は決してOKしないというのだそうです。間違ってますよね。音楽はミュージシャンとリスナーのものであって、決してレコード会社やラジオ局のものではありません。自社の勝手な思い込みと都合だけで仕切られるなんて許せませんね。私達の愛する音楽をいつかミュージシャンとリスナーの手に取り戻せる日を夢見つつ、あの頃の熱いライブサウンドを語り続けていきましょう。


※このコンテンツは2001年4月3日にreal O2 Website"Soundscape"でアップしたものを加筆・再構成したものです。
■Fusion関連のコンテンツは順次アップしていきますのでお楽しみに(^^)。

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