【 さ行 】


 最高の恋人  ★★★☆
【1993年 : アメリカ】
 監督:アンソニー・ミンゲラ/音楽:マイケル・ゴア
 出演:マット・ディロン(ガス)、アナベラ・シオラ(リー)、
    メアリー・ルイーズ・パーカー(リタ)
    ウィリアム・ハート(トム)、
    ヴィンセント・ドノフリオ(ドミニク) 他


【現在VHS発売のみ】

“最高の恋人”を見つけたい、という願いを胸に真実の愛を探す5人の男女の姿を描いたロマンティック・ラブストーリー。
最近ではすっかり巨匠の風格漂うアンソニー・ミンゲラ監督の初期の作品ですね。さまざまな大作に取り組む前の、ちょっとした小品です。
若くして結婚したものの、心のすれ違いから離婚したガスとリー。新しい恋人はできたけれど、仲間たちとの儲け話に乗ろうにもリーへの慰謝料で金に余裕がないガスは、 彼女にも新しい恋人を紹介して慰謝料から解放されようとあれこれ手を尽くします。とはいえ、かつて楽しい時間を過ごしていた頃の気持ちをふと話し合ってみたり、実際お互いの恋人を目の前にしてみると、やっぱり本当に愛しているのが誰かということが薄々見えてくるというわけ。
なんといってもマット・ディロンは濃いね!何はさておき濃ゆいです。顔とかオーラとか。
でも電気技師のオーバーオールとか着てるとなんか可愛い。衣裳に訴えるとはこの卑怯め、とか思いつつもアナベラ・シオラとは絵的にお似合いだったのでヨシとしましょう。
あまりべたつくこともない、さっぱりとしたラブストーリー。ハッピーエンド好きには後味の良い作品です。



 サイダーハウス・ルール  ★★★★
【1999年 : アメリカ】
 監督:ラッセ・ハルストレム/音楽:レイチェル・ポートマン
 出演:トビー・マグアイア(ホーマー)、
    シャーリーズ・セロン(キャンディ)
    マイケル・ケイン(Dr.ラーチ) 他

孤児院で生まれ育った青年ホーマーの青春と成長を描くヒューマン・ドラマ。
親代わりのラーチ院長の愛情をありがたく受け止めつつも、患者のためとはいえ堕胎を引き受け続ける彼の選択にどうしても納得できないホーマーの潔癖さ。あるいは、恋人が戦地へ赴いた淋しさからホーマーを遊びに連れ出す奔放な女性、キャンディに対する彼の純朴な愛情など、またしてもラッセ監督の繊細な人物描写が随所に光っております。
施設に暮らす子どもたちにとっては兄にも等しい存在である年長のホーマー。彼を慕う孤児たちの瞳がすごくきらきらしてて可愛い。マコーレー・カルキンの弟であるキーラン・カルキンがちょっと目立つキャラなんですけど、素直な演技がなかなか良いです。
ラーチ院長の不器用な愛情がとてもあたたか。その他の登場人物たちも皆、誰かが誰かをとても大切に思っているのです。しかし時には方法を間違えることだってあるし、愛しているというだけではうまく回っていかない。そんな世の中の複雑さ、切なさ、残された希望や前向きな生き方についてそっと示してくれるような映画です。最後のシーンが大好きだ。 ちょっと泣けるかもしれない。



 サウンド・オブ・ミュージック  ★★★★
【1965年 : アメリカ】
 監督:ロバート・ワイズ/音楽:リチャード・ロジャース
 出演:ジュリー・アンドリュース(マリア)、
    クリストファー・プラマー(トラップ大佐)  他

志願修道女だったマリアがトラップ家の家庭教師となり、7人の子供たちや大佐に音楽の素晴らしさを教えながら心を通い合わせていく物語。
戦争の悲しさを背景にしつつも、それに負けない人々の愛情が描かれています。もはや古典ともいうべき名作なので、こういう解説をしてることがもはや今さらすぎ。
ミュージカルというのは好き嫌いがはっきり分かれるジャンルなので一概にどうとも言いかねますが、ともかくこの作品から生まれた音楽には絶対誰もがお世話になってるはず。
ストーリーがいちいち音楽にぶった切られる点を差し引いても、ジュリー・アンドリュースの歌声には今なお色褪せない魅力が溢れているのでございます。
そもそも私は歌モノに弱いのさ。そして歌がうまけりゃ大抵のことは許す。



 ザ・ウォッチャー  ★★★
【2000年 : アメリカ】
 監督:ジョー・シャーバニック/音楽:マルコ・ベルトラミ
 出演:ジェームズ・スペイダー(ジョエル)、
    キアヌ・リーヴス(グリフィン)、
    マリサ・トメイ(ポリー)  他

非情な殺人鬼とFBI捜査官の駆け引きを描くアクション・スリラー。
FBI捜査官のジョエル・キャンベル(ジェームズ・スペイダー)は、かつて住んでいたLAを逃げるように発ち、今ではここシカゴに移り住んでいた。LAで彼はデイヴィッド・アレン・グリフィン(キアヌ・リーヴス)という名の連続殺人鬼の横行に悩まされ、心に深い傷を負ったのだ。孤独な女性ばかりを狙うグリフィンはわざわざジョエル宛てに予告をし、追いつ追われつのゲームを楽しみながらターゲットを殺していく。そしてついに自分の恋人もグリフィンに殺害されたジョエルは、彼女を救えなかった自分に絶望していたのだった。
しかしグリフィンの挑戦はまだ終わらない。同様にシカゴまでやってきた彼は再び連続殺人に手を染め、さらにジョエルを翻弄する・・・。

なーにをやっちゃってんでしょうかキアヌ・リーヴス・・・。(笑)
噂によると、キアヌは出るつもりなんかさらさらなかった作品なのに、本人の知らないところで友人だか知人だかが勝手に出演サインをしてしまい、そのうえ端役だったはずが気が付いたら準主役扱いでアレレレ〜?てな経緯だったらしいです。そういう時はハッキリ断りなさいリーヴスくん。
主役の刑事を演じるジェームズ・スペイダーに至ってはもういつもの如くとでもいいましょうか、またしてもこんな役なのね、ていうかよくもこれだけ男に好かれる役ばっか集まってくるよなアンタと感心しきりです。
まあ一応色々おっかないことにはなってますが、要はちょっと淋しがりやの殺人鬼青年が友達(だと勝手に思い込んでる)刑事を徹底的に追いかけまくる男ストーカー物語。
こういう思い込みの激しい相手に見込まれると後々たいへんなので気を付けましょう、というお手本です。
もしくは、殺人ダンスを(まったく華麗じゃない感じで)披露してくれるキアヌを軽く笑うための映画。



 ザ・コア  ★★★☆
【2003年 : アメリカ】
 監督:ジョン・アミエル/音楽:クリストファー・ヤング
 出演:アーロン・エッカート(ジョシュ)、
    ヒラリー・スワンク(レベッカ)、
    デルロイ・リンドー(エドワード)、
    スタンリー・トゥッチ(コンラッド)、
    チェッキー・カリョ(サージ)、
    D.J.クオールズ(ラット) 他

核(コア)の回転が停止した地球を舞台に、 人類滅亡の危機を描いたSFパニック。
ボストンではある日、ペースメーカーを装着していた32名の人々が一斉に突然死を遂げた。翌日、英ロンドンのトラファルガー広場では鳩の大群が突然方向感覚を失って暴れ始める。その2日後、スペースシャトル・エンデバーが地球へ帰還途中、突如として制御不能に陥った。
シカゴ大学の地球物理学者ジョシュ(アーロン・エッカート)は、一連の不可解な異常現象を分析し、その一連の不可解な事件の原因が地球の核(コア)停止にあることを突き止める。それは磁場を失った地球が太陽光線をまともに受け、1年以内に焼き尽くされることを意味していた。
人類に残された手段は、 地中に核爆発の衝撃を送って 再び核を回転させることだけ。こうして地下1800マイルへの潜行任務が、 6人のスペシャリストに託されたのだが…。

いやー、主人公のアーロン・エッカートって「エリン・ブロコビッチ」のバイク野郎をやってたあの人だったのですねー。今はじめて知りました。びっくりびっくり。別人だよまったく・・・。
宇宙を冒険したり宇宙人と戦ったりするパニック映画は多いですが、地球の真ん中に突っ込んでいくSFってちょっと珍しいかなと思います。へー、地球の中身ってこんなんなってんだあ、と素直に感心。
任務を遂行するメンバーが次々と脱落していくのはまあお約束です。誰が生き残るのかもわかりきってる。
こういうパターンだけはいつまでたっても一緒だナーというあたりが少々残念ですが、あまり普段パニック映画を見ないこともあってか新鮮な感じで結構楽しめました。任務遂行の前後が劇場版では少々端折られてるらしいので、機会が有れば未公開シーンでどんなやり取りがあったのかも見てみたいところです。



 ザ・メキシカン  ★★★☆
【2001年 : アメリカ】
 監督:ゴア・ヴァービンスキー/音楽:アラン・シルヴェストリ
 出演:ブラッド・ピット(ジュリー)、
    ジュリア・ロバーツ(サマンサ)、
    ジェームズ・ガンドルフィーニ(リロイ) 他

一丁の拳銃をめぐって巻き起こる騒動を描いた、アクション風ロマンティック・ラブストーリー。
ロスに暮らすジェリー(ブラッド・ピット)は、以前マリファナを積んだ組織のボスの車に追突して以来彼らの手先として働かされているが、仕事ぶりはドジばかり。そんな彼の生活にうんざりしている恋人サマンサ(ジュリア・ロバーツ)の脅しにより、これが最後と決めた仕事に向かったジェリー。しかしまたもブツを運びそこねてしまい、ミスをつぐなうため今度はメキシコへ行ってメキシカンという伝説の拳銃を運ぶよう命じられる。一方、とうとう恋人に愛想を尽かして一人ラスベガスに車を飛ばしたサマンサは、リロイ(ジェームズ・ガンドルフィーニ)という男に拉致され、ジェリーが無事に仕事をやり遂げるまでの人質となった。だが殺し屋にしてはどこか憎めないリロイとの間には、いつしか奇妙な友情も生まれ始める。果たして離ればなれになったジェリーとサマンサの運命は・・・?

どこの映画評に行っても7割以上の確率でこき下ろされている哀れなラブコメ。(笑)
やはりキャスティングによる期待が大きすぎたのでしょうか。これがテレビの洋画劇場で放送されなければ私も見たかどうか・・・。
相変わらずまっとうな青年とも言いきれないキャラを演じているブラピですが、ヘタレ具合バロメータでいうとまずまず好印象。暴力症や小汚さのレベルも今回は健全の範囲内です。
ジュリア・ロバーツはどうだったかな。うーん、今となってはあんまり覚えてないかも・・・ブラピと並んでうだうだやってるさまはそれなりにかわいかったような。それよか殺し屋リロイのキャラが面白くて、彼の方がよほど作品に色を添えてました。最後はなんかちょっと切なくなっちゃった・・・。
何が悪かったというよりも、取り立てて見所がなかったことがまずかったであろう一本。金のかかったキャスティングは一瞬忘れて、普通のラブコメだと思って見れば普通に普通です。



 さらば友よ  ★★★★
【1968年 : フランス】
 監督:ジャン・エルマン/音楽:フランソワ・ド・ルーベ
 出演:アラン・ドロン(ディノ・バラン)、
    チャールズ・ブロンソン(フランツ・プロップ)、
    ブリジット・フォッセー(ドミニク)、
    オルガ・ジョルジュ=ピコ(イザベル)  他

成り行きで金庫破りに挑むことになった二人の男が、事件の裏に隠された真相に翻弄されながらも奇妙な友情で結ばれていくさまを描く犯罪ドラマ。
アルジェリアの外人部隊から帰還した軍医ディノ・バラン(アラン・ドロン)は、イザベル(オルガ・ジョルジュ=ピコ)と名乗る女から奇妙な依頼を受ける。パリの広告会社に勤めるイサベルは会社の債券を人知れず持ち出して利用していたのだが、年末の決算も近づいたため、それを金庫に返さなければならない。地下の医務室の隣りに金庫があるので、医者として潜り込んだバランに書類をこっそり戻してほしいというのだ。また週末には、その金庫に社員の給料二億フランがしまわれるという。それを聞いた彼は、債券を戻す代わりに二億フランを頂戴することを密かに企むのだった。
一方、バランと同じ船で帰還したアメリカ人軍曹のフランツ・プロップ(チャールズ・ブロンソン) は、次はコンゴに出かけて一稼ぎしようと目論んでおり、それには軍医が必要だとバランをつけ回していた。そして地下に潜入したバランがいよいよ作業を開始した時、ふらりとプロップが現れ、二人は成り行きから交代で金庫に挑む事となる。しかし苦心の末とうとう開いた金庫に金はなく、そのうえ二人は警備員から身を隠したはずみで金庫に閉じ込められてしまった・・・。

古今東西にわたるエエ男の世界基準、アラン・ドロンを初めてじっくり鑑賞した作品です。
ううむ、確かに並々ならぬ男前・・・。しかしこの映画の真の醍醐味はといいますと、やはり主役二人が巻き込まれるハプニングと、事件の真相が明らかになるまでの謎解きにあるわけです。
そしてなんだかヤバそうな仕事を頼まれちゃった軍医のドロン氏が、妙に構ってくる粗野なおっさんチャールズ・ブロンソンを鬱陶しがりつつ、取っ組み合いの喧嘩もしつつ、しかし共に窮地を乗り越えようとするうちに妙な友情を育み、やがて迎えるあの男くッさーいラストシーン。もーたまりません。オシャレで格好よくて最高に渋い。この作品をきっかけにブレイクしたというブロンソン、ありゃ確かに人気も出るでしょう、例の「イェー!!」も流行るだろうさ。ある意味、男前ドロンを上回る男前と言っても過言ではありませんな。
昔からロマンス映画では、女が男の煙草に火をつけてやるシーンというのは情愛のシンボルと言われてるんだそうです。それが男同士の場合でも、やはり深い友情や、もしくはそれ以上のメッセージが込められた場面として扱われることが多いようですね。私がこれまでに見た数少ない映画を思い返してさえ、新旧さまざまな作品にそんな仕草が印象的に使われてました。そのあたりを踏まえても、この作品のラストはまさに男惚れを誘う名シーンと言えることでしょう。ドロンが無言で差し出すマッチの火、それに同じく無言で煙草を寄せるブロンソン。あれにシビレないわけがない。くああ、かっこええー!
昔の映画はヨカッタ、などと言えるほど年も食ってませんし映画に詳しくもないですが、この作品における沈黙の価値、黙って語る空気感というのはやはり心惹かれるものがあります。別れを前にちょっとせつなそうなドロンの瞳、ニヤリと笑うブロンソンの不遜な笑みが、台詞もないのに何かを伝えてくるんですね。
ああいう、見てる側の心理をキュッと掴んでしまう芝居とか演出ってのは、やはり名作と呼ばれる映画が今でも人気を呼ぶ理由じゃないかなあと思います。



 さらば、わが愛 覇王別姫  ★★★★
【1993年 : 香港】
 監督:陳凱歌/音楽:趙季平
 出演:レスリー・チャン(程蝶衣)、
    チャン・フォンイー(段小樓)、コン・リー(菊仙)、
    フェイ・カン(老師爺)、
    チー・イートン(青木三郎) 他

京劇の古典『覇王別姫』を演じる二人の男の波乱に満ちた生涯を、50年に及ぶ中国の激動の時代を背景に描いた文芸大作。
1925年、北京。9歳の少年・小豆は彼を持て余した遊廓の母に捨てられ、孤児や貧民の子供たちが集まる京劇の養成所に入れられる。淫売の子といじめられる小豆を弟のようにかばい、辛い修行の中で常に強い助けとなってくれたのは小石頭だった。二人は血を吐くような努力を重ね、女性的な小豆子は女役に、男性的な小石頭は男役に決められる。
やがて成長した彼らはそれぞれ“程蝶衣”(張國栄)、“段小樓”(張豊毅)と名を変え、京劇界きってのスターとなった。だが、やがて小樓は娼婦の菊仙(鞏俐)と結婚、少年時代から彼にほのかな恋情を覚えていた蝶衣は失望し、絶ちがたい思いと現実の狭間で悶え苦しむ。折しも日本軍に占領されつつある北京では京劇の世界にも暗い影が落ち始め、彼らは否応なく戦乱の波に呑み込まれていくのだった・・・。

暗い重い痛いの三重苦。京劇の華やかな世界と、その裏で繰り広げられる絶望に満ちた人間関係は毒々しいほどなのに、どういうわけか孤高の美しさも醸しています。
この映画でやっとレスリー・チャン(正しくはチョンらしい)を覚えました。遅すぎたけど・・・。
彼の渾身の演技も素晴らしかったですが、少年時代の小豆を演じた子(名前わかんない)は驚くほど女性そのものです。顔立ちはもちろんのこと、たおやかな仕草の隅々に至るまで女役の最骨頂。あれはほんとに凄かった。でもそれだけに痛々しさも倍増・・・。
蝶衣と小樓、そして菊仙という三人がそれぞれ抱く胸の内の複雑さはなかなか言葉では言い表せません。蝶衣は小樓を奪った菊仙を憎んでいるけれども、本当の女である彼女には母性に対する憧憬のようなものも持っています。小樓は菊仙を妻として大事にしたいけれど、兄弟以上の絆で結ばれた蝶衣を手放してしまうこともできない。菊仙は夫をたぶらかす蝶衣が憎い反面、子どものように不安定で愛情に飢えた彼を心の奥深いところで気に掛けているのです。
もし彼らが戦中戦後という混乱の時代を生きたのでなかったら、辿った結末は違うものになっていたのでしょうか。そんなことを考えたくなるくらい、悲しくてやるせない作品。しかしその奥深い人間模様と透徹した世界観は、ほかに類を見ないほどの鮮やかな印象をいつまでも残します。



 サルサ!  ★★★★
【1999年 :フランス・スペイン】
 監督:ジョイス・シャルマン・ブニュエル
 音楽:シエラ・マエストラ、ジャン・マリ・セニア
 出演:ヴァンサン・ルクール(レミ)、
    クリスティアンヌ・グゥ(ナタリー)
    カトリーヌ・サミー(レティ)、
    ローラン・ブランシュ(ヘンリー) 他

キューバ音楽に惚れ込んだとあるフランス人青年がサルサを通して見つけた愛を描く、本格ラテン系ラブストーリー。
音楽院を首席で卒業、将来を嘱望されたピアニストのレミ(ヴァンサン・ルクール)はクラシックを捨て、愛してやまないキューバ音楽の道で生きていこうと決意する。
キューバ人の友人から訛りを教わり、肌も褐色に塗った彼は往年のキューバ人作曲家の店に居候し、閉鎖寸前の店を改装してサルサダンスを教えることに。そこへやってきた箱入り娘のナタリー(クリスティアンヌ・グゥ)に出会い、二人は急速に接近するが、レミの正体はニセモノのキューバ人。そしてついに彼の身元が明るみに出る時が。真実を知って失望したナタリーは・・・?

ラブストーリーとしてはシンプルな筋書きですが、全編にわたって満ちあふれるサルサのリズムと楽しそうな人々のダンスにおなかいっぱいになれます。雰囲気としてはとても好きな感じ。
レミを演じるヴァンサン・ルクールが、これまたべっぴんでねー奥さん!(握り拳)
フランス人ピアニストでしかなかった頃の彼は、坊ちゃんな感じのただの綺麗な青年なんですが、いざキューバ人の変装をするとたちまちワイルドな男っぷり。こんなに違っちゃうもんなのー!とビックリでした。ピアノはある程度本人が弾いているのだろうか。音は吹き替えだとしてもあの指さばきは相当なものです。
それから、ヒロインのクリスティアンヌ・グゥのダンスシーンはこれまた頑張ってる。アメリカではダンスの勉強もしていたとのことですが、やっぱりああいうリズムは身体に染み込んでナンボって感じなんだろうね。
彼らのラブストーリーを主軸にしてはいますけど、背景には人種の壁の問題があったり、キューバ革命に翻弄されたかつての恋物語が絡んできたりでなかなか凝っています。陽気なラテンのリズムの中に、彼らはいろんな苦しみを昇華させてきたのですね。「キューバ人になりたけりゃ悲しみは笑顔に隠せ」という台詞が印象的でした。



 三銃士  ★★★
【1993年 : アメリカ】
 監督:スティーブン・ヘレク/音楽:マイケル・ケイメン
 出演:キーファー・サザーランド(アトス)、
    チャーリー・シーン(アラミス)、
    オリヴァー・プラット(ポルトス)、
    クリス・オドネル(ダルタニアン)、
    ティム・カリー(リシュリュー枢機卿)、
    マイケル・ウィンコット(ロシュフォール伯爵)  他

若き冒険家ダルタニアンが、国王に使える近衛銃士隊“三銃士”と共に繰り広げる剣劇冒険ロマン。
もともとよく知られてる物語なんであらすじは割愛。
いかにもアレです。でずにー印です。子どもが見ても大喜びなわかりやすさ。大人が見てもネズミー王国好きの人なら楽しめるかもしれない。正統派勧善懲悪冒険活劇。(漢字多いな。)
今やジャック・バウアーなあの人も、24時間といわず頑張っております。恰幅のいいチャーリー・シーンてのはちょっと微妙ですが悪くはない。オリヴァー・プラットは愉快でクリス・オドネルは可愛い。
というあたりを楽しみました。私はね。
他はなー、なんだろうなー。エンディングを歌ってるのがブライアン・アダムスとロッド・スチュワートとスティングのコラボってことで話題になったみたいです。これの主題歌だって知らないで聴いてたのであんまり意味ないけど・・・。
実写のわりにアニメっぽい映画です。ストーリーもコマ割りも。深いドラマを期待せず気楽に見るのがよいでしょう。



 ジェヴォーダンの獣  ★★★☆
【2001年 : フランス】
 監督:クリストフ・ガンズ
 出演:サミュエル・ル・ビアン(フロンサック)、
    マーク・ダカスコス(マニ)、
    ヴァンサン・カッセル(フランソワ)、
    エミリエ・デュケンヌ(マリアンヌ)、
    ジェレミー・レニエ(トマ)、
    モニカ・ベルッチ (シルヴィア) 他

18世紀フランスで実際に起こった“ジェヴォーダンの野獣”事件の伝説を基に、正体不明の謎の獣に立ち向かう自然科学者と政治的陰謀に渦巻く人々の姿を描くサスペンス・アクション。
ルイ15世統治下のフランス。女と子供ばかり100人以上が忽然と姿を消し、無惨な噛み跡が残された死体が次々と発見されるジェヴォーダン地方の奇妙な事件の噂は、今やパリまで届いていた。
1764年、ルイ15世は謎の野獣の正体を突き止めるため、ジェヴォーダン地方に若き自然科学者グレゴワール・デ・フロンサック(サミュエル・ル・ビアン)を送り込む。兄弟の誓いを立てた親友であり、自然や狼たちと心を通わせることが出来るアメリカ先住民モホーク族のマニ(マーク・ダカスコス)を伴ったフロンサックはジェヴォーダンへと赴くが、二人の懸命な捜索にもかかわらず、野獣の正体は杳として知れぬまま惨劇は続いていた。誠実な貴族の子息トマ(ジェレミー・レニエ)、気高く美しい令嬢マリアンヌ(エミリエ・デュケンヌ)、冷徹なその兄フランソワ(ヴァンサン・カッセル)、謎の情婦シルヴィア(モニカ・ベルッチ)という面々を巻き込みながら、事件はやがて思わぬ真実を明かし始める・・・。

フランス純正のゴシックアクションなんてどんなものやらと思っていたのですが、フタを開けてみれば意外なほど頑張ってました。鮮やかな色彩といい思い切ったアクションといい、なんかぽや〜んとしたイメージのあるフランス映画っぽくない感じ。頑張りすぎたせいかやたらスローショットを多用していたのにはちょっと笑えましたけど、そこらへんを差し引いても画は綺麗でした。
注目すべきはマニ役、マーク・ダカスコスの肉体美とそこから繰り出されるアクションです。ドコ見てんだよと怒られたってこれだけは譲れません。思わず目を奪われる完璧な肢体は誰がなんと言おうとこの映画の華でございます。イヤイヤ、疑うんなら見てみなって!ほんと凄いから!(誰に対する熱弁なのかな)
この作品では、現代でもなお謎とされている獣の正体をある解釈のもとに描いています。どこかのレビューで「結局獣ってなんだったの?」というような書き込みがあってガックリきたのですけど、そのへんは中盤のフランソワ&フロンサックの会話をよく聞いておきましょう。ま、獣のCGだけはちょっと頑張り足りなかったかなと思ったりもするので、わかったから何というもんでもないですが。
ヨーロッパを代表する若手スター豪華共演ということで、登場するキャラたちもなかなか強烈です。サミュエル・ル・ビアンは科学者のくせに途中からアホほど強くなり、ヴァンサン・カッセルは究極のヘビ顔のうえメンタル的にヤバイ人で、彼とは夫婦共演となったモニカ・ベルッチは美人で妖しい必殺仕事人。
それはそれで結構面白いんですけど、途中で「あの人」がいなくなってからはすっかり見栄えが曇りました。私の友人もそう言っていたので、多分客観的に見ても彼の存在感はすごかったのでしょう。
つっこみどころも色々ありつつ、派手なアクションに中世ヨーロッパ独特の暗さや湿気をうまく織り交ぜたところはいい雰囲気だった思います。ところでフランス人なら誰もが知ってるというほど有名らしいこの事件、果たして当時の本当の野獣の正体とは何だったのでしょうね・・・。



 シェフと素顔と、おいしい時間  ★★★☆
【2003年 : フランス】
 監督:ダニエル・トンプソン/音楽:エリック・セラ
 出演:ジャン・レノ(フェリックス)、
    ジュリエット・ビノシュ(ローズ)、
    セルジ・ロペス(セルジオ)  他

恋人から逃げる女と恋人を追いかける男が、図らずも一夜を共にする羽目となり、反目し合いながらも次第に惹かれ合っていくまでを描くロマンティック・ラブストーリー。
人々がさざめくパリ、シャルル・ド・ゴール空港。突然のストでメキシコ行きの飛行機が飛ばないことを知り、ローズ(ジュリエット・ビノシュ)は愕然とする。完璧なメイクと派手なファッションに身を包んだ彼女はトップ・メーキャップアーティストで、暴力的でしつこい恋人セルジオ(セルジ・ロペス)から一刻も早く逃げようと慌てふためいていた。一方、別れた恋人に会うためアメリカからミュンヘンへ向かう途中、悪天候でこの空港に足止めを喰らった男、フェリックス(ジャン・レノ)。彼は元有名シェフだったが、今はアメリカで冷凍食品の会社を経営する少々理屈屋なビジネスマンだ。
ローズはセルジオへの置き手紙を親友に処分してもらおうと携帯で説得していたところ、あやまって携帯をトイレに落としてしまう。急ぐ彼女は携帯を持っていたフェリックスを見つけると、それを借りようと声を掛けるのだが・・・。

フランスを代表する映画スター、ジャン・レノとジュリエット・ビノシュが初共演を果たしたラブ・コメディということで、本国では人気の作品だったようです。さすがに大人の映画ですよ。オシャレだしセンスいい。
ジュリエット・ビノシュはメーキャップアーティストという役柄ですが、ご本人の化け具合も見物です。登場から暫くはこれでもかというほどの厚化粧美人。それがホテルで化粧を落とすとびっくりするほど地味〜な顔に。そしてラストにかけて、ナチュラル(にしてはちょっときつめの)メイクを施すとこれまたとっても美人なのです。化粧映えとはこのことよ。個人的にはナチュラルメイクが一番キレイに見えたけどね。
ジャン・レノはダメ親父です。うだうだグダグダ理屈をこねる頑固者。でも劇中では彼の内面での変化があちこちに散りばめられていて、おっさん今ごろ成長期か?というような微笑ましさがありました。
舞台はほとんどが空港とホテルで、登場人物も主人公の二人で8割を占めているであろうミニマムな構成です。それが退屈といえば退屈かもしれないし、箱庭ラブコメが好きな人には気持ちよくはまれるサイズかも。
図々しくて多弁で気の強い女がよく似合うジュリエット・ビノシュ。彼女のそういうところが嫌いという方はご注意下さい。本作はストライクゾーンです。 ジャン・レノと絡むとすでに空気が濃ゆい。
しかし物語半ばまでは胸一杯な感じのその空気も、ラストシーンのオシャレ加減に霧散いたします。ありがちだしクサイしやりすぎだぜ・・・とか思いつつ、収まるところに収まった満足感にまんまと機嫌を直す自分がおりましたとさ。



 シーズ・オール・ザット  ★★★☆
【1999年 : アメリカ】
 監督:ロバート・イスコーヴ/音楽:スチュワート・コープランド
 出演:レイチェル・リー・クック(レイニー・ボグス)、
    フレディ・プリンゼJr.(ザック・シラー)
    ケヴィン・ポラック(ウエイン・ボグス)、
    マシュー・リラード(ブロック・ハドスン)、
    アンナ・パキン(マッケンジー・シラー)、
    キーラン・カルキン(サイモン・ボグス)、
    ポール・ウォーカー(ディーン・サンプソン)  他

生徒会長でスポーツ万能、頭脳明晰で家も金持ちという何不自由ないモテ男の青年が、学園一冴えない女の子をダンスクイーンにできるか賭けをするうち、だんだん彼女に惹かれていって・・・というコテコテ学園ラブコメディ。
先が読めるだけになーんにも考えずにのんびり見られます。
主人公レイニーを演じるレイチェル・リー・クックは欧米人にしてはびっくりするほど小柄で華奢な子。ブスを演じようったって最初からムリ!というお人形のような美貌が、ストーリーに沿って磨かれていく様子はなかなか見応えあるかも。
キャスティングは今見るとなかなか豪華なんですよ。レイニーの弟役にはキーラン・カルキン、ザックの妹役には「ピアノ・レッスン」の娘役や「X-MEN」でおなじみアンナ・パキン。下心アリアリでレイニーに迫るちょっとアホな同級生に「ワイルド・スピード」シリーズの主役ポール・ウォーカー。(泣けますなあ!)
その他にも、チョイ役ではありますが「パラサイト」からクレア・デュバルとアッシャー・レイモンドなどが共演していて、そちらを見たことがある人にはちょっと楽しい顔ぶれです。