1998年

●2月24日の一言

 この2月16日から21日まで,お隣韓国からツキノワグマの研究者らが,日本に滞在しました.韓国環境部自然保護局の韓尚勲博士,智異山の生態系保存会の会長,会員のチェ氏の3人でした.一行は成田から入国後,神奈川県丹沢山地,徳島県,高知県,広島県などを視察した後,下関からフェリーで帰国しました.今回の目的は,韓国で極めて危機的な状況に陥っているツキノワグマのこれからを検討する上で,(少なくとも)多少の情報蓄積のある日本の事情を視察することがひとつ.また日本ではすでに絶滅が考えられているカワウソですが,韓国ではまだ数千頭のポピュレーションが残っているとされます.そこでカワウソについては,逆に向こうから情報を日本に提供しようということもありました.
 今回の訪日の経緯は,日本ツキノワグマ研究所の米田一彦さんが,数度にわたり韓国の智異山においてツキノワグマ調査の協力を行ってきたことに由来します.昨年11月には,10数名の日本のクマ研究者も協力しての,韓日共同智異山ツキノワグマ調査も実施されています.
 なお今年の12月には,第2回の韓日共同での智異山痕跡調査が予定されています.
 こうした動きが,韓日交流のひとつのきっかけになればおもしろいのではないでしょうか.

●3月4日の一言

 今年は奥多摩でも,例年になく雪が多いようです.冬という厳しい季節を,冬眠という機構で乗りきるツキノワグマたちはともかく,ニホンジカのように積雪に弱い動物の動向が気になるところです.私たちの記憶に新しいところでは,1985年に関東地方を見舞った大雪の際に,栃木県日光や足尾,また神奈川県の丹沢といった地域で,雪による影響でニホンジカの大量死が報告されています.当時,奥多摩で同様にニホンジカの死亡が発生したのかは不明ですが,現在の奥多摩のニホンジカ個体数の増加を聞く限りでは,ほんの少しの外的要因があれば,個体群の崩壊は容易なのではないかという気もします.今後,奥多摩においてシカの個体数管理をどう進めていくべきなのかが,問われることになるかも知れません.
 ところで東京都では,ニホンジカとサルについては,問題対策協議会を設け,行政,地元,研究者らが一体となってそれら野生動物の保護管理策を検討し始めています.ツキノワグマについても,同様の協議会の設置が求められます.ここで定量的なデータを示すことはできませんが,特に奥多摩湖の南側地域一帯では,私たちがクマの調査を始めた当時と比較しても,クマの個体数が随分と減ってきているような印象があります.ツキノワグマの統合的な保護管理案の策定が急がれそうです.

●4月11日の一言

 広島県でツキノワグマの保護管理活動に取り組んでいらっしゃる米田一彦さんより,「日本ツキノワグマ研究所から緊急のお願い」と題したお知らせがまわってきました.興味がある方は連絡をお取りになってみて下さい.

●5月16日の一言

 4月19日から24日までの会期で,IBA(International Association for Bear Research and Management)の第11回国際会議が,アメリカ・テネシー州,グレート・スモーキー国立公園の麓のGatlinburgで開催されました.テネシー大学のペルトン博士が大会長で,世界18ヶ国から363人の参加者が集いました.会議では,数多くのクマ類に関する口頭発表,ポスター発表,ワークショップが持たれたほか,IBAの今後の運営方針や,新役員の決定など,さまざまなプログラムが連日,高密度なスケジュールの中で消化されました.調査研究の部分については,また改めてご紹介したいと思いますが,ここでは新たに決定された大きな部分について要約します.
 まず,これまで定例の国際会議は,3年おきに北米とヨーロッパで会場を分けて同じ年に行われていましたが,今後は18ヶ月間隔で,アメリカ大陸と,ユーラシア大陸の両地域で交替で開催していくことが決議されました.ちなみに第12回会議はルーマニアのPoiana Brashovで,また第13回大会はアメリカ・ワイオミング州のJackson Holeで開催される予定です.また国際会議の成果を公表するものとして,これまではProceedingを発行してきましたが,発行がいつも遅れる問題が指摘されていたことなどから,今後はJournal(URSUSという雑誌名)という形をとり,迅速に論文を公表していくことになりました.
 また会議期間中,アジア地域でクマ類を調査研究している参加者が集まっての,ミーティングが持たれました.参加者は,インド,インドネシア,台湾,中国,韓国,モンゴル,日本などでの調査研究者で,それぞれの紹介や興味などの交換の後,ざっくばらんな歓談が持たれました.これまではどうしてもクマというとアメリカ主体で物事が進められる経緯がありました.それはもちろん,クマ類に関する保護管理施策の歴史の長さを考えたとき仕方のない部分でもあったのですが,クマ類の分布域の広さや種数を考えたときには,むしろこれからはアジア地域がどう踏ん張っていけるかが,ますます重要になってくることが容易に想像できます.そうした背景もあって,今回のミーティングをきっかけに,アジア地域でのクマに関する情報の交換をもっと行っていく必要性が共通意識としてとらえられたように思います.今後,さらに参加者の輪を広げての,情報交換の場の設立が検討されています(当面,メーリングリストの開設など).

●9月5日の一言

 本ホームページの資料のコーナーでも紹介してありますが,カナダのクマ学者であるS.ヘレロ博士の著書「Bear Attacks」をお読みになったことがあるでしょうか? クマ(グリズリーやアメリカクロクマ)と人間が遭遇した際の,いくつもの事例について詳しく解説している本で,私たち人間とクマの間での軋轢を回避する手段を考える上で,ひじょうに参考になるものです.この本が邦訳され,さらにいくつかの新しい内容が付け加えられて,近々北海道大学図書刊行会から出版されるのですが,そのイベントの一環として,ヘレロ博士自身が来日され,講演会を行うことになりました.博士は1999年2月中旬に来日し,まず北海道で数回の講演会を行いますが,その後,東京でも特にアメリカクロクマと人間の軋轢事例にフォーカスを絞っての講演会を,現在お願いしています.ヘレロ博士は,東京での講演にも乗り気で,今のところ日程の関係から平日となってしまいますが,3月の初旬での開催を計画しています.講演会は,WWFJが主催する予定です.
 あまり知られていませんが,奥多摩山地では,過去に何例かのクマによる人への加害事例があり,今年に入ってからは,すでに2件の地域住民の方への加害事例が発生しています.奥多摩でのクマの生息密度が,例えば東北地方などに比較して高いとは考えられないことから,こうした理由のひとつとして,奥多摩の山を利用する側の,そこにクマがいるのだという認識の低さもありそうです.もしそうであれば,ヘレロ博士の講演を東京でも行うことは,クマに関する正しい知識の普及啓蒙の上から,大きな意味のあることでしょう.
 また講演の詳しい日程など決定しましたら,本ホームページでお知らせしたいと思います.


1999年

●1月28日の一言

当ホームページの更新を長い間ほったらかしにしてしまい,申し訳ありませんでした.さて,以前お知らせいたしました,カナダ・カルガリー大学ヘレロ博士夫妻の東京での講演会の日程が固まりました.
 博士らの旅程の関係と,またできるだけ地元の方や行政関係者にも聞いていただきたいという配慮から,3月1日(月)の平日に開催されることになりました.一般の方は参加にかなり不便を感じることとと思いますが,ぜひご都合をつけていただきご参加下されればと思います.

【スティーフィン・ヘレロ博士の略歴】
カルガリー大学環境デザイン学科環境科学名誉教授
1939年生まれ.カナダ国籍.カルガリー大学で学士号,カリフォルニア大学バーグレー校で博士号を取得.専門は,野生動物生態,保全生物学,野生動物とその生息環境の保全計画と管理など.国際自然保護連合(IUCN)のクマ類に関する種保存委員会(SSC)の副議長.これまでに65,000部以上の売り上げがあり,ドイツ語及び日本語(予定)に翻訳されている「Bear Attacks」の著者.100編以上の野生動物や環境保全に関する論文を発表している.現在,イースタンスロープス・グリズリーベア調査研究プロジェクトの代表を務める.

【リンダ・ウィッギンス女史の略歴】
1955年生まれ.カナダ国籍.ヘレロ博士の妻.クイーンズ大学において教育学および保健体育教育学についての学士号を取得.イースタンスロープス・グリズリーベア調査研究プロジェクトの大衆教育コーディネーターを1996年より勤めている.また著作業などの他,教師向けのワークショップ講師を勤めている.私立学校での9年間の教諭経験等がある.

 東京のクマとは関係ないのですが,先だってインドのグジャラート州の国立公園を仕事で訪れる機会があり,グジャラート州東部のナマケグマ保護区(Sloth BearSanctuaries)にも立ち寄りました.詳しくは次回報告させていただこうと思いますが,何より印象に残っているのは,インドの人たちの野生動物に対する自然観が,どうもかなり我々とは異なっているのではないかということでした.宗教的な影響も大きいのかも知れませんが,野生動物は”資源”でもなく,”敵”でもなく,そこに存在することがあたりまえのものとして捉えられているような感じでした.

●4月18日の一言

 報告が遅くなってしまいましたが,東京・奥多摩でのヘレロ夫妻講演会が盛況の内に終了いたしました.簡単な報告をしたいと思います.
 平日の開催だったため,当初参加者が少ないのではと心配していたのですが,いざふたを開けてみると,約330人の参加者があり,会場の福祉会館は立ち見が出るほどの大賑わいでした.奥多摩町と共催としたため,行政や町関係からの参加者も多く,ヘレロさんの言葉を借りれば,「水面に小石を投げて波紋を広げる」という点で意義があったのではないかと思います.また平日の開催がゆえに,リンダさんの小学校での授業が実現したということもいえます.
 NHKテレビ,NHKラジオ,朝日英字新聞,朝日新聞,読売新聞,山と渓谷社等の他,地域情報紙や制服向上委員会なる不思議な団体等が取材してくれ,その内のいくつかはニュースとして流されたようです.
 日程その他の状況は以下の通りでした.

タイトル:クマを知っていますか?
     〜私たちにできること・知らなければいけないこと〜
主 催:(財)世界自然保護基金日本委員会(WWFジャパン)
共 催:奥多摩町、日本クマネットワーク、東京都奥多摩ビジターセンター
後 援:東京の野生動物談話会、奥多摩ツキノワグマ研究グループ
期 日:1999年3月1日(月)
時 間:午後2時〜5時
場 所:東京都西多摩郡奥多摩町 奥多摩町立福祉会館3階集会室
講 師:スティーフィン・ヘレロ博士・リンダ・ウィッギンス女史(ヘレロ氏夫人)

プログラム
13:30 受付開始
14:00 奥多摩町長挨拶
14:05 WWFジャパン挨拶
14:10 奥多摩でのクマと人間の軋轢事例の整理 奥多摩クマ研
14:30 クマとの共存のあり方について,カナダでの事例
   スティーフィン・ヘレロ博士(カルガリー大学環境デザイン学科環境科学名誉教授)
16:00 休憩
16:10 クマとのつきあい方について
   〜カナダでの子供向け教育プログラムの例〜
   リンダ・ウィッギンス女史
16:45 終了

※午前中には,一般には非公開で奥多摩町立氷川小学校でリンダさんの特別授業が行われた.


1.リンダさん特別授業
 氷川小学校のコンピューター室を会場に,同小学校の5年生を対象に,クマに関する特別授業を約1時間半持ちました.スタッフ,学校関係者,報道関係者等などが多数集まり,生徒よりも多いという状況となる中で,リンダさんの授業はスタートしました.
 授業は,ビデオとスライドを使用したイントロから,後半は,ツキノワグマの頭骨,なめし皮,テレメ機器の計3カ所のステーションを設置して,3グループに分かれた生徒たちが回りながら質問や説明を受けるという形式をとりました.最初の部分では,子供たちに親しみやすい訳がなかなか決まらずにもどかしい部分がありましたが,後半部分では子供たちが実にのびのびと動き回り,見ている方も楽しいものでした.各ステーションにはリンダさんの他にスタッフもついたのですが,クマの毛皮をかぶっておどける子供,首に発信機を付けて廊下に走り去る子供,それを八木アンテナで追いかける子供,頭骨をそっと撫でる子供等など,皆興奮に満ちていました.ヘレロさんも,そんな子供達や,またリンダさんの様子を嬉しそうに眺めていたのが印象的でした.
 リンダさんは,クマの生態や,攻撃への防御方法についての詳しい授業をした訳ではありませんでしたが,子供達への最初のレクチャーとしては,知識を押しつけるのではなく,まずクマについて楽しく知ることが大切なのだということを第一のポイントに持ってきた点で正解だったのではないかと思います.また,奥多摩にまだクマが生活していること,つまり生活できる環境が残っていることを誇りに思って欲しいということを,生徒達にくり返し伝えてくれました.

2.ヘレロさん講演
 ヘレロさんの講演は,WWFJ安岡さんの司会により,14:40頃より始められました.会場には,都市部からの参加者の他に,都や市町村の鳥獣担当者,猟友会関係者等々の顔が見えました.
 ヘレロさんはアメリカクロクマに的を絞りながら,北米でのクマ管理の事例を,時々奥多摩での話を交えながら話してくれました.通訳も的確で,一部途中で眠っている人がいた事実はありましたが,それでも多くの人たちが皆熱心に良く聞いていてくれていました.特に,クマに襲われた場合の防御姿勢の話や,カプサイシン・スプレーの話の件では,皆の集中が高まるのが分かりました.今回の講演では,そうした実際的な話よりも,先進事例の紹介として,北米でのクマ管理のあり方を中心とした話をお願いしていたのですが,もっとそうした実際的な話をしても良かったかも知れませんでした.
 講演終了後,北米での人畜被害を防止する目的での電気柵設置の状況や,もし被害が出た場合の補償制度に関して等の質問が出ました.
 なおヘレロさんの講演後,リンダさんが北米での環境プログラムの実践例と,午前のレクチャーの報告を簡単に行い,これまた良い内容だったことを付け加えておきます.

 ヘレロさん講演に関しては,すべてじっくり聞けなかったため,上記のような簡単な報告しかできませんが,近い将来今回の講演会の報告書を,WWFJと共に発行する予定ですので,その際はまたお知らせさせていただきたいと思います.
 最後になりましたが,講演会の細かい手伝いをいただいた,日本大学,東京大学,東京農業大学の学生諸子,山のふるさと村スタッフ,その他有志の方々にこの場を借りてお礼申し上げます.

●6月1日の一言

 5月下旬に,奥多摩町の氷川周辺でクマの目撃が連続しました.これまでの奥多摩でのクマによる人身事故事例からは,初夏のこの時期に事故が集中する傾向が認められます.必要以上に神経質になることは良くありませんが,山にはいるときは,クマが生活する場所にいるのだという認識を常に持つことが求められるでしょう.ところでなぜこの時期なのかという明確な原因は不明ですが,クマにとっての発情期に一致するということも,ひとつの要因かも知れません.
 5月下旬から,学術捕獲のためのトラップを開け始めました.今年は大型のオスに,遠隔操作で自動切り離し可能な,GPS首輪(アメリカ製)を装着する予定です.樹冠のうっぺい度が高い奥多摩の森林内でどの程度の確率で衛星を補足できるかは未知数ですが,首輪に内蔵されているのと同じメーカーのGPSユニットで事前にテストをした感触では,そこそこの補足成功率が得られるのではないかと期待しています.なお,長野や秩父でも同様の試みがなされるようです.
 随分と遅くなってしまいましたが,今年の1月にインドのグジャラート州を訪れた際に,ナマケグマ(Sloth Bear)のサンクチュアリーを訪れる機会がありましたので,その情報をアップしました.ご覧下さい.

●7月1日の一言

 6月は,計2個体のツキノワグマを学術捕獲しましたが,どちらも若齢のオスで(31.5kgと49.5kg),テレメトリー首輪の装着は見送られました.両個体共に採血や体計測などを行った後,マイクロチップや耳票を装着して再放逐しました.本当のことをいえば,こうした若いオスたちがどのように母親の行動圏から分散し,どれくらい広い範囲を放浪するのかについて調べたいところなのですが,首輪の装着は成長にしたがって当該個体の首を締め付ける結果になります.以前は,紫外線劣化で時間がたつと自動的に脱落するラテックスゴム製首輪を若齢個体に装着したこともありますが,こちらが意図したよりも早く脱落してしまうなど,あまり実用的とはいえませんでした.悩ましい問題です.

●9月17日の一言

 9月1日から8日までの約1週間でしたが,北海道の「ヒグマの会」が企画した,”ロシア・ヒグマとシマフクロウ研究交流会”に参加させてもらいました.サハリン州ユージノサハリンスクでは,州野生動物保護局,サハリン州博物館,州狩猟協会,州野生動物保護センターなどを訪問し,担当職員や研究者から話を伺った他,地元のクマ猟師の体験を聞く機会も持ちました.またサハリン南部の保護区内(Moguchi川流域)を実際に野営しながら視察し,ヒグマを初めとする野生動物の生活痕跡の観察を行いました.詳しくは,サハリンのヒグマ情報をご覧下さい.

●10月13日の一言

 9月30日に岐阜大学農学部で,クマに関する公開シンポジウムが坪田先生らの尽力により開催され,またその後,JBNの年次総会が持たれました.シンポジウムでは,北海道,長野,岐阜などでのクマ類の保護管理に関する興味深い話題提供がなされましたが,特別ゲストとして,台湾師範大学教授のYing Wang博士より,台湾のツキノワグマの現況についての講演がなされました.Wang博士は,昨年のテネシーでのIBA国際会議で知り合った方で,もともとはニホンジカの一亜種であるハナジカの野生への再導入に関わっている方です.昨年から大学院生と共同して,台湾でのツキノワグマの個体群動態を本格的に調査研究されています.これまでに,6頭のツキノワグマに電波発信機を装着して土地利用を解析しているとのことです.現在台湾では,ツキノワグマは保護獣として狩猟が禁止されていますが,先住民族については特別に捕獲が許可されているそうです.ただし幸いなことに,先住民族によるクマへの捕獲圧はあまり高くないということで,1960年から1998年の過去32年間の統計によれば,185頭が捕獲されている程度とのことでした(ここ最近3年間では12頭).そうした先住民族の猟法としては,くくり罠がポピュラーとのことです.クマにとっての脅威は,林道などの建設による生息環境の改変や,台湾では特に問題となっているノイヌの影響が間接的にあるのではないかというお話でした.機会があれば,ぜひ台湾のクマの生息環境を見てみたいものです.Wang博士は,2000年2月にまた来日した いとのことでした.
 続くJBN総会では,JBNニュースレターの定期発行と,内容の充実が検討されました.編集長及び編集委員を新たに選出し,年4回の発行を目指して始動することとなりました.その運営方針について,立ち上げ時にはかなり論議をしたJBNですが,何とか「ゆるやかなネットワーク」として機能し始めたのではないでしょうか.
 さて,大変遅くなりましたが,3月に奥多摩で開催されたヘレロさん講演録が,WWFJapanの根気強い編集作業の結果,ついに刊行されました.総ページ数40pのささやかなものですが,単なる講演録にとどまらず,奥多摩のクマを知る上で実用的な内容も盛り込んであります.講演会に協力いただいた方には,講演録をお送りいたしますので今しばらくお待ち下さい.その他の方については,WWFJapanのホームページ上から,pdf形式ファイルで全内容がダウンロード可能です.ぜひアクセスしてみて下さい.また印刷版がどうしてもという方は,実費及び送料で,一部400円で頒布するということです.これについては今しばらくお待ち下さい.

●11月6日の一言

 奥多摩では,クマと人間のエンカウンターが度々起こっていますが,そうした情報に関する収集システムは整備されていませんでした.今後は役場やビジターセンターなどと共同しての,エンカウンター事例の詳細な情報収集作業と,その解析が求められそうです.現状の整理無くして,クマとの不必要なエンカウンターを回避するための適切な対応策は期待できないからです.今回,その実現の一手段として,当HP上にクマの目撃情報の提供コーナーを新設しました.果たしてどの程度の情報が集まるのか,今ひとつ自信はないのですが,ぜひご協力いただければと思います.試行段階ですが,今後はクマの痕跡などの情報収集もしていければとも考えています.

●11月19日の一言

 11月に入ってから,奥多摩町の峰谷から鴨沢にかけての地域で,地元の方たちによるツキノワグマの目撃が連続しました.人家近くのカキの実を食べに来ているところを目撃されたものです.実際に現場にも行ってみましたが,”甘ガキ”の幹にはクマの爪痕がくっきりと残っており,また枝も折られていました.地元の方によると,今年はカキの当たり年だそうで,確かに集落付近のカキの木はみな,たわわに実を付けていました.サルなどもそうですが,こうして利用されないまま放置されているカキの実は,どうしても野生動物たちを引き寄せてしまいます.さりとて,高齢化が進む地元の人たちに,そうしたカキの実をすべてもぎ取って下さいと言うことも,また現実的には難しい側面を持っています.小河内小学校では,校長先生名でクマの出没に注意を呼びかけるプリントが児童に配られました.猟友会の方たちからは,今年はドングリなどの成りが悪いという情報もあり,そうした状況が,クマのカキの利用を招来している可能性も考えられます.いづれにしても,登山などで山を利用する方たちも含め,カキの実が成っている場所に接近する際は,特に薄闇時や夜間は,クマに注意することが 必要です.
 またこの15日からは,狩猟が解禁され,土曜日曜を中心に猟師のグループが奥多摩の山にも多数入山している他,奥多摩町域ではシカの個体数コントロールのための駆除も並行して行われています.ハイカーの方は,原色で目立つ服装をこころがける必要があります.こうしたハンターとハイカーの利用の混在は,早急に改善されなければいけない問題ではないでしょうか.ひとつの方策としては,法定猟区の設置による,猟場の管理を,地元自治体で行うことが考えられます.機会がある毎に,提案していきたいと思います.


2000年

●1月12日の一言

 WWFJapanによると,ヘレロさんの講演録への問い合わせは予想以上なようで,初版500部にプラスして,今回さらに300部を増刷したそうです。ページ数の都合から掲載できなかった情報も多いのですが,必要とする方のお役に少しでも立てれば,こんなに嬉しいことはありません。
 さて,昨年末に東日原の駐在所で,ビデオで撮影されたクマの映像を見せていただく機会がありました。ちょうど駐在所の対面の樹上に,母グマと,当歳と考えられる2個体の子グマが採食をしている風景だったのですが,その映像に対する興味は無論ですが,何より驚いたのは,そのクマたちを対岸から見ている地元の方たちの反応でした。そこには,わいわいとごく普通の光景として捉える雰囲気が漂っていたからです。駐在さんに,「駆除しろとかいう声は聞かれなかったのですか」と尋ねてみたのですが,「年に一回か二回はあることですから」という返事が返ってきただけでした。同じ奥多摩町内でも,例えば奥多摩湖側でクマが目撃された場合の反応と比較して,ちょっと違うのではないかという気がして考えさせられました。この違いは何に起因するのか。もちろん,歴史的な被害の累積に差違があることはそうでしょうが,どうもそれだけではないようにも思えます。地域を取り巻く社会的な要因も含めて,少し考えてみようと思っています。
 これも昨年の話になりますが,11月上旬に,奥多摩町の峰谷地区で,地元の方が登山中に遭難され,ご遺体となって発見されるという事件がありました。その後,亡くなられた方がクマに襲われた,あるいは追いかけられたために死亡したのではないかという風評があちこちで聞こえてきました。しかし,地元警察署,役場などで確認したところ,原因は滑落による全身打撲であるということでした。当時の状況なども教えていただきましたが,二度ほど別の場所で滑落されていること,クマの歯や爪痕がないこと,現場付近にクマの痕跡が発見できなかったこと等から判断して,クマによる可能性はまずないと考えます。亡くなられた方のご冥福を心からお祈りするとともに,クマに関する適切な知識情報の普及がさらに必要なことを痛感しました。

●4月18日の一言

この2月から3月末にかけて,ロサンゼルス郡立自然史博物館に,アメリカ博物館協会の助成で滞在していたため,久しぶりのホームページ更新となりました。LAでは,アメリカクロクマに関しての適切な知識を,特に子供達に普及させるための学校向け貸し出しキット(トランクキット)の開発を行っていました。
 LAというと大都会を想像しますが,郊外の山にはアメリカクロクマが生活しています。カリフォルニア州では歴史的に一時,アメリカクロクマの分布域は北部山地に後退したそうですが,最近はまた分布域が拡大してきており,南部のLA周辺でも,Fish and Game局の再導入や自然な分布拡大により,その姿を見ることができるそうです。しかし都市部の人々はあまりクマについての知識がないため,不用意な軋轢事例も報告されるようになってきています。ちなみにカリフォルニア州のグリズリーは,1922年の1頭を最後に絶滅し,現在は州旗のデザインにその姿を残すのみです。
 カナダやモンタナでは学校向けのクマ類に関する教育キットがいくつかすでに完成しており,そうした先進事例も参考にしながらキットの開発を進めているのですが,なかなか楽しい作業です。キットはまだ完成しておらず,日本のツキノワグマを題材にしたキット開発も含め,この6月までプログラムは引き続き行われます。この件に関してはまた機会を改めてご報告したいと思います。

●5月6日の一言

今年も学術捕獲を開始しました。平地の林ではすでに緑が眩しく,春から初夏の雰囲気に変貌しつつありますが,標高1,000メートルより上の山中では,日差しこそ柔らかいものの,ナラ類などの落葉広葉樹の葉はまだ展開していません。それでもクマたちは活動を開始しているようで,ラジオトラッキングからの様子では,すでにオスグマは越冬位置から移動を開始しており,またメスグマも越冬地の周辺で,もぞもぞと動いてはいるようです。
 奥多摩では,今の時期からクマの発情期である初夏にかけて,人身事故が過去に数件記録されています。必要以上に臆病になる必要はありませんが,クマのいる山に入るのだという認識を持って山での活動を楽しむようにしたいものです。
 奥多摩でクマに遭遇する機会などがありましたら,ぜひ当ホームページにその時の情報をお寄せください。

●5月31日の一言

広葉樹の開葉は標高1,500mほどまでに達し,ハルゼミの声も聞こえるようになりました。先月からかけ始めているトラップですが,1ヶ所がクマによって倒され,中の蜂蜜だけが舐めとられました。昨年も何回かこのような場面に遭遇したのですが,トラップを倒してから蜂蜜を舐めることを学習したクマがいるのでしょうか。

●6月23日の一言

クマの学術捕獲は相変わらず成功していません。前回に引き続き,また2ヶ所のトラップが倒されて,蜜だけが舐めとられました。どうも学習しているクマがいるようです。そろそろ1頭は確保したいところなのですが・・・。

●8月13日の一言

 8月に入り,連続して2個体のオスグマを学術捕獲することに成功しました。1個体目は体重68kgで,夏のため腰のあたりが痩せていましたが,秋には80kgを越えるのではないかという立派な個体でした。年齢についてはこれから査定します。2個体目は再捕獲個体で,1997年に発信器を装着して追跡している個体です。体重は当時とほぼ同じで56kgで,前回の齢査定結果から考え,今回の捕獲時で18歳半という,これまでの奥多摩での最高齢個体です。左脇腹のあたりの体毛が薄くなっており,上皮がふけ状に浮いていました。
 肝心のGPS首輪ですが,なんと衛星捕捉の初期化がうまくいかず,装着できずじまいでした。どうもGPSアンテナの同軸ケーブルの接触不良のようでした。製造元のATSに返送して,機能チェックを行って貰っています。

●11月4日の一言

 ついつい忙しさにかまけてしまい,久しぶりのHPの更新となりました。クマの調査の方は,ひとまずこの10月一杯で学術捕獲用のトラップは閉めました。結局,何たることか今年もGPS発信器の装着は成功しなかったことになります。大型のオスグマが連続してかかり,GPSを装着できるチャンスに,機械の初期化がうまくいかなかったという不運もむろん大きかったのですが,加えてトラップを倒すクマの出現も痛いものでした。数えてみると,都合11回もクマがトラップを引き倒して,蜜だけを舐めていたことになります。残念ですが,今年の哺乳類学会でトラップ改良のヒントを,北海道の事例から得ましたので,来年度もう一度挑戦したいと思います。
 今後の新しい展開ですが,卒論で奥多摩のクマに取り組む学生が,種子散布者としてのクマの役割を評価していくことがあります。
 今秋の奥多摩は,ブナ,イヌブナ,コナラ,ミズナラと堅果類はすべて大豊作です。このようにそれぞれの樹種の結実が同調することは珍しく,クマたちにとってはひじょうに幸運な年といえそうです。


2001年

●2月7日の一言

 仕事が多忙を極め,HPの更新がのびのびとなってしまいました。クマの目撃記録をお寄せいただいた方には,本当に申し訳ありませんでした。
 次回更新時には,韓国でのツキノワグマの生息状況についてを掲載する予定です。少しだけお待ち下さい。

●3月6日の一言

 猟期の終わった2月中旬過ぎに,発信器を装着したクマたちの越冬穴探しに2度ほど入山しました。予想以上に積雪が深く,標高1,000m以上の北向き斜面では,60cmを軽く越えていました。肝心のクマの方ですが,雪に阻まれて探索は難航しています。現時点で1個体の電波をキャッチしていますが,現場までたどり着けていません。ここ最近の暖かさで積雪は急速に融けているでしょうが,今度はクマは穴から出てきてしまいそうで悩ましいところです。
 昨秋,イヌブナにできたクマ棚を何ヶ所か確認することが出来ました。

●7月9日の一言

 久しぶりのHPの更新です。
 7月に入って,トリガーを改良したトラップに,クマが相次いで入りました。その内の1頭は,体重95kgの惚れ惚れとするような体格のオスで,奥多摩でのこれまでの学術捕獲の記録をあっさりと塗り替えました。2年越しであったGPS首輪の装着も,何の心配もなくできました。2〜3ヶ月後にはコマンドを送信して自動落下させ,ログの回収を試みる予定です。果たして位置情報はどの程度蓄積できるでしょうか。
 この5月には,アメリカ・ワイオミング州で開催された国際クマ学会に出席してきました。また最近は奥多摩の調査地内に自動撮影カメラをいくつも設置して,クマをはじめとする野生動物の姿を記録し始めました。次回HP更新時には,それら情報をお伝えしたいと思っています。

●7月19日の一言

 奥多摩で自動撮影した野生動物のフォトコーナーを設置しました。近々さらに,表紙写真を撮影された小川さんのその他の写真や,ビデオからキャプチャーした映像なども掲載していこうと考えています。
 ワイオミング州のクマ情報も今しばらくお待ち下さい。 

●8月15日の一言

 毛根からのDNA採取によるクマの個体識別を目的として,ヘアートラップの試験設置を開始しました。この調査からは,地域のクマの個体数推定が期待できます。クマの誘因エサとして少量の蜂蜜をセットし,その周囲に鉄条網を張り巡らせる構造で,近づいたクマの体毛を鉄条網の針に引っかけます。果たして思惑通りに事が運ぶかはお楽しみです。
 7月に装着したGPS首輪は,正常にVHF電波を発信していますが,ビープ音のモニターからは,GPSフィックスにはあまり成功していない様子です。9月中旬には首輪に自動脱落のコマンドを送信し,GPSログの回収を試みる予定です。
 8月に入り,埼玉県の秩父側で,奥多摩での標識個体が駆除されたとの連絡が入りました。1999年に奥多摩町内で学術捕獲し,若齢(成長途中)のため耳票のみを装着して放逐したオスでした。当時の年令は2.5才,体重は31.5kgでしたので,今回の射殺時は約4.5才ということになります。放逐地点から射殺地点までの直線距離は18kmで,年令から考えて分散の途中,あるいは分散先での事件だったのではないかと思われます。宿泊施設の換気口から台所に侵入し,鍋のカレーを平らげたそうです。詳しくは近々現地に赴いて聞き取りする予定ですが,このオスを現場に執着させたものは何だったのでしょうか? 情報では,このオスだけではなく,他にも複数のクマが現場周辺で相次いで駆除されているそうです。
 話題となった軽井沢の別荘地に出没するクマもそうですが,人間の怖さを知らない新しい世代のクマたちの台頭と,そうしたクマとのつき合い方を知らない(知る機会を持たない)人間との間での軋轢が,今後増加することが予想できないでしょうか。クマは私たちが考えるよりずっと身近に生活している動物です。そうしたクマたちを身近に執着させてしまうような行為,例えば残飯の放置やコンポストの不用意な設置をすることは,不必要なクマとの軋轢を増加させます。

●8月28日の一言

 1999年に奥多摩で標識放逐した若齢のオスグマが,この8月5日に秩父側で,宿泊施設の食堂に侵入して捕殺されたことについて,先日,秩父でクマの研究をされている東大の石田さんらと,埼玉県秩父の大滝村に聞き取り及び現地調査に出かけてきました。
 詳細は以下のようでした。
 夏休みの宿泊客で賑わうその宿泊施設では,通常期より多量の残飯が出ていましたが,折しも残飯を回収する清掃業者が夏期休業しており,そのためそうした残飯は,キッチン裏の壁際に積まれていました。キッチン壁面の対面は石垣になっており,針葉樹と広葉樹が混交する山地に接していました。数日間,それら残飯の入ったバケツが倒されて中身が荒らされることが続きましたが,オーナーはサルによるものだろうと判断し,バケツの上にアルミ製のはしごを載せるなどして対策を講じましたが,さしたる効果はなかったようです。
 そして8月3日の夜,団体客用に大鍋一杯のビーフシチューを調理し,冷蔵庫に入らなかったことから,キッチン台の上に置いて,職員らは管理人室に引き上げました。少なくとも22:00頃までは,職員の一人はキッチンに残っていたようです。
 8月4日の朝,職員がキッチンに入ってみると,大鍋一杯のシチューがきれいに消失していました。最初は何が起きたのか分からなかったそうですが,あたりを調べてみると,何者かがキッチンの換気扇から侵入した様子で,キッチン外側に回ってみると,換気扇のプロペラなどが引き抜かれて地面に落ちており,さらに換気扇下の温水器タンクには,べたべたとした動物の足跡と,また押された凹みが多数認められました。キッチン網戸にも爪が刺さった跡がありました。これら状況から,クマが換気扇を壊してキッチンに侵入し,シチューを平らげたことは明白でした。
 オーナーは警察に通報し,4日の内に,甲種免許を持つ猟友会員によって現場近くに田中式クマオリが設置されました。
 8月5日朝に,オーナーらがオリの方から物音を聞き,現場を確認してみると,クマがかかっていたそうです。この個体が奥多摩での標識個体で,私たちがMB-90と呼んでいた個体でした。
 残念ながらMB-90は捕殺後に,山中に運ばれて埋められたとのことで,今回は標本の回収にまでは至りませんでした。オーナーはMB-90のオリ越しの写真を撮っていたので見せていただきましたが,捕獲時と比べるとかなり大きくなっていたようで,絶対的な数値ではありませんが,オーナーの話によると,大人3人でも持ち上がらないほど太っており,体重は80kgと推定したとのことです。1999年の捕獲時には31.5kgでしたから,推定が当たっていたとすると,3倍近く大きくなっていたことになります。高栄養かつ効率的に摂食できる残飯のためなのでしょうか。
 さて今回のクマ出没ですが,実はこの1件だけではありませんでした。MB-90が捕殺された宿泊施設にはその後も別のクマが出没していますし(MB-90が残飯に餌付いていたことは間違いないとことですが,キッチンに侵入した個体は,あるいはMB-90以外のクマだった可能性も残ります),近辺の他の宿泊施設にも複数個体と考えられるクマたちが,やはり残飯を漁りに出没しているという話を伺い,実際に私も現場を確認してきました。村が補助金を出して普及をはかったというコンポストも,クマたちのターゲットにされているようでした。真相はこれから解明されなければいけませんが,ある宿泊施設が数年前まで大量の残飯を露天で処理していたことがあり,その場に複数のクマが餌付いていた事実があり,一説には,そのことが今回の出没の引き金になっているのではないかということでした。つまり,残飯の味を覚えたクマたちが存在しているということです。
 役場や宿泊施設に対しては,残飯の徹底した処理と,頑強な残飯保管用コンテナーの設置を提案してきましたが,これから問題のクマたちをこれ以上引きつけないために,行政がそうした考えられる対応策をいかに迅速に実施できるかが,ひじょうに重要になってくるでしょう。機会を見て,連絡をとっていきたいと思います。

●11月3日の一言

 奥多摩は,今が紅葉の盛りです。オスジカの発情期の鳴き声(Rutting Call)が山々に響き,運が良ければ,黒々としたたてがみを持つ立派なオスジカそれ自体を目撃することもできます。
 さてクマですが,今秋は人家周辺のカキの木に付いているところが,住民によって度々目撃され,特に峰谷周辺で情報が寄せられています。実際にそうしたカキの木を何ヶ所か回ってみましたが,カキの実ばかりが入った大きなクマフンがぼたぼたと落ちていました。町役場では,クマを誘引する可能性の高い,特に甘柿の実を落とすように町民に呼びかけていますが,高齢の所帯にとってはなかなか難儀なことには違いなく,悩ましい問題となっています。カキの木を伐採するという方法もあるのでしょうが,古くからの町民にとって,ご先祖様が飢饉時の緊急食物として植えた大切な木を切ることはとても出来ない相談のようです。
 もっと頻繁にHPの更新をしたいのですが,なかなか時間がとれません。目撃情報をお寄せいただいた方々にはお詫び申し上げます。

●12月14日の一言

 前回もお伝えしたように,今秋はクマたちが人家周辺のカキの木に執着する事例が続発し,役場には住人の方たちから数多くの通報が寄せられました。緊急的に,東京都から有害駆除の許可も出されましたが,これまでに実際に捕殺されたクマはいなく,また最近はそうした出没もどうやら落ち着いてきたようです。来年の秋に,同様の事態を招かないための対応策の検討が,今から求められそうです。
 GPS首輪を装着した個体からのデータログの回収に成功しました。結果についてはいずれ改めてご紹介したいと考えていますが,約4ヶ月で104点の座標データを得ることができました。回収した首輪はベルト,VHFアンテナ,GPSアンテナがそれぞれ損傷を受けており,おそらく他のクマと争ったときの破損だと想像されましたが,こうしたことがフィックス成功率を下げていた可能性もありました。データログはアメリカの製造元にも送って,GPS衛星捕捉の具合などについて詳しい分析をして貰っています。
 クマが出没した際に,利用者の注意を喚起するための看板10本を作製し,奥多摩町役場に寄贈しました。今後,山中で皆さんも見かけることがあると思います。併せて,クマとの無用なトラブルを避けるためのヒントを記したパンフレットも作製しました。こちらは今後ビジターセンター,交番などにも置かせて貰う予定ですし,またご希望の方には郵送いたします。


2002年

●5月27日の一言

 久々の更新です。先だって,たまっていたクマの齢査定を13個体分,一気に行いました。これまでの奥多摩での最高齢クマは,私たちが”爺さん”と呼んでいる2002年現在で20歳のオスグマ(個体番号MB-88)なのですが,今回の齢査定では,同じく20歳のオスグマ(個体番号MB-94)を確認しました。どちらも現在も生存中で,どこまで年令記録を伸ばすのか楽しみです。なお,昨年GPS首輪を装着した90kg台のオス(個体番号MB-97)は,9歳でした。
 イベント情報欄に,6月16日に茨城県自然博物館で開催される国際学術交流シンポウジム「コリアの自然史は今 −自然史研究の課題と現状−」を掲載しました。韓国,北朝鮮,日本の研究者やNGO関係者から20題の講演があります。クマ関係の発表もありますので,ぜひご参加下さい。同時通訳が付きます。

●9月26日の一言

 ホームページを更新する時間がないままに,季節はすでに秋になってしまいました。この間,情報などをお寄せいただいた方々には申し訳ありませんでした。
 この11月17日に,奥多摩町との共催で,カキもぎイベント「困っています・もいで下さい!」を行います。人に利用されなくなって,クマに限らずサルやイノシシを誘引する人家周辺のカキの実をもいでもらい,干し柿にしてお土産にしようという一石二鳥の計画です。奥多摩での暮らしや,当然クマについての話もあります。ぜひご応募下さい。イベント欄に詳細を掲載いたしました。

●12月6日の一言

忙しくてホームページを更新する時間がなかなか取れません。情報をお寄せ下さっている方々申し訳ありません。
 この11月17日には,カキもぎイベント「困っています・もいで下さい」を奥多摩町で実施しました。詳細を掲載しましたので,ご覧になって下さい。またGPS機器を装着した個体が行方不明のため(おそらく内蔵されたVHF機器の不調によると考えられます),今年は学術捕獲用トラップをまだ開けているのですが,11月19日には,100kg超級のこれまでで最大のオスグマが捕獲されました。バネばかりを振り切ってしまい正確な体重は測れませんでしたが,おそらく120kg以上あったのではないかと思います。トラップの中にはドングリのフンが小山になっていました。脂肪もたっぷり付いていて,まるでハムのようでした。残飯グマでなくとも,秋にはこのような個体が出現することに驚きました。必要な計測やサンプル採取を行い,マイクロチップと耳票を付けて再放逐しました。


2003年

●1月30日の一言

 この2月に,日本クマネットワークの年次総会が開かれますが,連動イベントとして「クマってどんな動物?〜人とクマの関係を探る」が東京都多摩動物公園,(財)東京都動物園協会との共催で,2月9日(日)に多摩動物公園内各所で行われます。ぜひご来園いただければと思います。日本各地のクマ研究者に会える機会でもあります。

●2月20日の一言

 東京都多摩動物公園での日本クマネットワークイベントは,初めてとしては成功裡に幕を閉じました。近々,またHP上でも詳細を報告させていただきます。
 奥多摩ツキノワグマ研究グループのメンバーでもある小川さん(本HPの表紙写真もそうです)が,ホームページ「奥多摩けもの道」を立ち上げました。これまでに自動撮影などで撮りためた,クマを始めとする奥多摩の野生動物の画像や映像がてんこ盛りです。ぜひご覧になってみて下さい。

●5月8日の一言

 久しぶりの更新です。奥多摩のクマたちは,すでに越冬場所から移動をはじめたようです。この4月24日には,今季初めてのクマの学術捕獲に成功しました。昨年,GPS首輪を装着したものの,その行方が分からなくなっていた個体でしたが,残念なことに,GPS首輪は消失していました(両耳に装着した標識も取れており,皮下に埋め込まれたマイクロチップで確認しました)。首輪自体も大変な損失ですが(日本円にして40万円ほどもします!),収集された位置測位データの損失も大きな痛手です。昨年のVHF電波のモニタリングでは,ひじょうに高い測位成功率を記録していると想像されていただけに残念至極です。今回新たにGPS首輪を再装着しましたが,ぜひとも回収に成功したいところです。ところでこのクマは前回の捕獲時(2002年7月22日)には49kgほどしかなかったのですが,今回はなんと72kgになっていました。越冬明けでこの体重は一体何が原因なのでしょう。今後の検討課題を残しました。

今年初めての72kgのオスグマ
計測や標識装着後に再放逐しました

●10月4日の一言

 またしても久々の更新となってしまいました。今年の夏は少し奥多摩から離れて,GPS首輪の測位成功率試験のために,栃木県の足尾山地に集中して入っていました。奥多摩で行っているクマへのGPS首輪装着について,得られた測位結果がどの程度の信頼性を持つものかを検証するための作業です。足尾の開放的環境下で,GPS首輪を装着したクマを直接観察しながら,首輪の向きやクマの行動,利用していた地形などと,測位結果を照らし合わせるという目論見です。7月下旬に,体重50kgほどのメスにGPS首輪を装着して放逐しました。しかし秋に入り,クマの土地利用に変化が生じたせいか,GPS首輪を装着した個体が行方不明になっています。今後,上空からの捜索も含め,首輪の回収を目指す予定です。
 11月23日には,昨年好評だったカキもぎを,今年は奥多摩町と東京都農業事務所が主体となって奥多摩町峰谷で開催する予定です。詳細が決まりましたら,また本HPでもご案内いたします。

●12月27日の一言

 ついに2003年も終わろうとしています。今年は何が出来たのかと振り返れば,しかしいつもながらのドタバタの年で,あまり進捗は良くなかったなあという,これまた例年のような感想に終始してしまいそうです。
 奥多摩では,一昨年と同様に,人家周辺のカキの木へのクマ出没が相次ぎました。おそらくこれも一昨年の状況と同様に,複数のクマが関与していたようですが,何がこうした出没の引き金になっているのか,今後の検討課題といえます。確かに,今年は山の堅果類の結実が良くなかったのですが,どうもそれだけでは説明できないような気がしているからです。また,原因の究明とは別に,もうひとつの検討課題として,こうした事態が起こった際の対応策についての,あらかじめの協議が必要なことも痛感しました。このあたりについては,また報告を当HPで行いたいと思っています。
 情報を提供いただいた方々には遅くなってしまい申し訳ありませんでしたが,クマの目撃情報を4件アップしました(1999年の情報1件を含みます)。
 年明けには,2003年カキもぎの様子と,また中国黒竜江省のクマの話題を掲載したいと思っています。


2004年

●3月24日の一言

 昨年訪問した中国東北部のクマについての記録をアップしました。時間が本当になく,HPの更新がままなりません。昨年末の第2回カキもぎや,この2月にサンディエゴで行われた国際クマ会議の模様,また日本招致が決定した2006年秋の国際クマ会議の話題などは,近日中にアップしたいと思っているのですが・・・・。

●10月17日の一言

 今回の話題は,少々長文ですが,最近連日ニュースを騒がせているクマと人間の間での軋轢についてです。
 これまでの統計値では(2004年10月12日現在),日本の18県で77人が負傷し,1名が死亡しています(NHK報道より)。長野県で8月13日夕方に死亡した1名(61歳男性)は,家の近くでイヌの散歩中にクマに襲われたと推定されたものです。こうした地域的にはクマの生息分布域全体にまたがりますが,特に北陸・中国地方での出没が目立っています。また今年の出没の特徴として,普段はクマがいない場所への出没が顕著であることや,理由は不明ながら人家などへの侵入が目立つことです。その結果,人側の被害だけではなく,すでに北陸地方(富山・石川・福井)だけで有害捕獲で 170頭以上ものクマが捕殺されているとされます。
 マスコミや行政は,その原因究明に血眼になっていますが,原因の特定はもちろん簡単ではありません。以前から指摘され続けているように,クマ管理のための情報蓄積,モニタリング体制を含めた対応システムの整備が,一部の地域を除いてまだまだ不十分のためです。今回の一連の出没についても,全国的な規模での情報収集とその解析のためのシステムは存在しません。
 残念ながら,我々クマ研究者の側も,全体的な状況の把握には至っていません。マスコミからの取材や問い合わせが殺到していますが,出没要因について明快かつ科学的に答えることはできずにいます。全国的なスケールで考えれば,クマの個体数や,またその増減のトレンド,分布域の各縮についても正確な情報を持ち合わせていない現実があるからです。
 従って,推測の域を出ませんが,今回の軋轢発生の原因は複合的なものと考えられます。また今年になって突然始まったということではなく,数年前からこうした状況が起こり得るべき兆候はあり,クマ関係者は警鐘を鳴らしてきました。
 一部の人たちは,本来のクマの生息環境でのエサ食物の不足をその原因として推測し,その結果,クマたちが人間生活空間に出没していると考えています。日本の多くのクマの生息環境は,1970年代からの拡大造林政策により,本来の広葉樹林からすでに半分以上がスギやヒノキなどの人工的な針葉樹林に転換されています。また近年は,ナラ枯病によるナラ類の枯損,また特に今年は,日本をいくつもの台風が通過し,その結果堅果類などが地上に落下してしまったと言うことがその説明理由です。
 確かに,上記の説明も複合的な出没理由のひとつでしょう。
 しかし今回の出没は,長期的に見れば,本来クマの生息環境と人里を分ける中山間地帯が緩衝地帯としての役割を失ったことと,またその結果人の怖さを知らない新世代グマが出現したことだと考えられないでしょうか。
 日本の国土は狭い上に多くの人口を抱えるため,もともと人とクマの生活空間は非常に接近し,ある場合は重複しています。この重複空間(中山間地帯)では,歴史的に人とクマのせめぎ合いが繰り返されてきました。人間の側は,ある時はクマを捕り,また人家周辺の環境を薪炭林などとして積極的に利用整備することにより,クマの侵入を遠ざけてきました。そのことが,中山間地帯に,結果的に山と里を隔てる緩衝地帯としての役割を与えてきました。
 しかし近年,山村の過疎化と高齢化は極めて急速に進んでおり,そうした担い手達の活気を奪ってしまいました。山の手入れは忘れられ,クマのエサ植物量が相対的に増加し,人家周辺に植栽された果樹も利用されることはなくなり,クマたちを誘引する要因になっています。クマたちにとって,美味しいくて簡単に手に入る食べ物が見つかる場所として捉えられるようになったのです。
 1992年からは,大日本猟友会の自粛措置として,日本各地でのクマ猟は禁止または削減されました。また同じ時期から,世論の高まりを受け,それまでは盛んに行われていたクマの有害捕獲も減少傾向に入りました。このことはとても評価されるべき大きな転換であったといえます。しかし,ただ単に「捕らない」という対応では,クマの科学的な管理に直結するとは言い難い面があります。山村の低活性化と,こうしたクマへの対応策の転換が,残念な結果として,人の怖さを知らずに,人家周辺に日中でも姿を表す新世代グマの誕生を後押しした可能性があるからです。
 つまり,山でのエサ不足も要因のひとつでしょうが,中山間地帯での構造変化と,また科学的なモニタリングが欠落している現在のクマ管理体制が,今年に入ってのクマ出没の主因となっている可能性があります。この仮説が当っていれば,今年に限らず今後も同様の軋轢が繰り返されることになるでしょう。
 最後の表は,日本でのここ数年の狩猟によるツキノワグマの捕獲数と,また有害捕獲数を示しています。確かに狩猟による捕獲数は減少傾向にありますが,反比例するように有害捕獲による捕獲数は上昇しています。今年のクマの出没は,有害捕獲数をさらに高い値にする可能性があります。そしてこのことは,現在のクマの管理体制が機能していないことを示しています。
 クマが出没してからの対応システムを構築することも大事ですが,クマの出没を未然に防ぐための管理案の策定が今一番望まれるのではないでしょうか。そしてそのためには,現在起こっている一連のクマ出没のそれぞれの事例についての丁寧な情報収集と,その状況の解析は必ず行わなければならない仕事といえるでしょう!

年度 1998 1999 2000 2001
狩猟による捕獲数 493 549 676 388
有害捕獲による捕獲数 725 1473 980 1725

2005年

●1月28日の一言

 昨年は,HPの更新がほとんど出来ませんでした。今年こそはもっと頻繁にと考えていますが,果たしてどうなることやら。今回は,更新履歴箇所以外にも,細かい点をいくつかアップしたり直したりしました。今年もよろしくお願いいたします。
 当方も役員を務める日本クマネットワークの公式ホームページが公開されましたので,ぜひご覧になって下さい。2006年国際クマ会議(IBA2006)の公式ホームページも現在試験版を作製中で,今春には一般公開予定です!

●7月27日の一言

 ウェッブの更新が今年もほとんどできないままで本当に申し訳ありません。特に,目撃情報をお寄せいただいた方については,改めてお詫び申し上げます。現在,この8月に開催されるIMC9(第9回国際哺乳類学会)と,またIBA2006関係の準備に忙殺されてることに加え,奥多摩と足尾でのクマ調査も多忙を極めています。
 まずIBA2006については,PDF版の開催趣意書を掲載しましたので,ぜひご覧になって下さい。趣意書中にもありますように,アジア各国からの関係者の招聘旅費と,また広く日本の方々に会議に参加して貰うための同時通訳費用について,まだ十分な資金が確保できていません。ご協力頂ける方は,ぜひご連絡いただければと思います。
 またIBA2006の公式ウェッブサイトも立ち上がりました。10月1日より会議参加の受付を開始いたしますので,興味にある方はぜひ参加申込みをお願いいたします。
 奥多摩では,詳細はまだ確認していませんが,レクリエーション中の女性がクマにアタックされ負傷したとのことです。詳しいことが分かりましたらまたご報告します。

●10月5日の一言

 一昨日,イタリア・リバデルガルダで開催されていた,第17回国際クマ会議から帰ってきました。
 今回の会議には,世界約30ヶ国から,400名弱の参加者があり,口頭発表57演題,またポスター発表183演題が持たれました。人間とクマの関わりや,間接的試料採取による分子生物に関する各種ワークショップが開かれたほか,一般向けパブリックイベントも開催されました。また,国際自然保護連盟種の保存委員会(IUCN BSG)も同時に開催され,今後のクマ類の保護管理にどのような具体的アクションが優先されるべきかについての協議も行われています。
 発表内容では,今回はヨーロッパでの開催と言うこともあり,ヨーロッパ各地でのヒグマの個体群動態や,またヒグマの絶滅危惧地域への再導入に関する話題提供が多く見受けられました。特にスカンジナビア半島でのヒグマに関するノルウェーグループの発表は質,量共に他を凌駕していたことが記憶に残ります。
 今回の会議は,ホストであったイタリア側スタッフの尽力により,会議自体の運営も極めてスムースであったほか,受付案内から懇親会,各種ミーティングに至るまで,隅々にホスピタリティーが感じられるものでした。こうした会議運営のティップは,来年日本で我々が開催する第17回国際クマ会議運営のための大きな参考になるものといえました。


2006年

●3月7日の一言

 年明けからしばらく,仕事でアフリカに出ておりました。
 さて,国際クマ会議の会期がいよいよ近づいてきました。現在,会議参加の登録を受け付けておりますので,ぜひ参加をお考えの皆さんは,この機会に登録していただければと思います。3月31日までは,早期割引で一般19,000円,学生10,000円とお得になっています。ウェブサイトよりオンライン登録が可能です。
 また前回大好評だったWWFジャパン「助っ人ベア 第二弾」が4月から開始されます。前回とは異なるデザインのクマ縫いぐるみが,限定400体です。こちらもお早めに!
 寄付も引き続き受け付けています。ご寄付いただいた方には,特性ワッペン(紫外線対策コート仕様)とクマのポストカードセットをお送りしています。まだ目標の予算に達していませんので,よろしくお願いいたします。

お知らせ!

 2006年10月2日から6日の期間,長野県軽井沢町において,第17回国際クマ会議(Internationa Association for Bear Reseacrh and Management)が開催されます。世界各国から,数百名の参加者が集う,クマ関係では世界最大(唯一?)の会議です。トピックスは,クマの生態だけではなく,生理,管理,教育など幅広い分野をカバーしており,研究者からクマ好きのふつうの人まで参加する賑やかなものです。同時通訳システムの導入も予定しておりますので,ぜひ多くの方の参加をお待ちします。また寄付の方もぜひよろしくお願いいたします!

郵便振替口座: IBA2006日本開催実行委員会  00110-5-778478

IBA2006の公式ウェッブサイト

2006年国際クマ会議開催趣意書 PDF版
A面(約1.1MB)
B面(約0.9MB)

※本趣意書は,2004年度WWF・日興グリーンインベスターズ基金の助成を得て作成されました

おかげさまで,500体あっという間に完売しました! ありがとうございました!
4月から写真とは異なるデザインのベビーベア限定400体を販売します!

詳細は4月にまたアナウンスいたします。

助っ人ベビーベア”を手に,クマと人との共存をめざす「国際クマ会議」を応援しよう!

 WWFジャパン・プレスリリースのお知らせです。上の写真のぬいぐるみ,なかなか良い出来だと思いませんか? 現在,限定でWWFジャパン・パンダショップで発売中です。ぜひ購入いただければと思います。価格は3,600円ですが,売り上げの内,製作にかかる費用を除いた2,000円が,国際クマ会議開催のために寄付されます。ぜひお早めに!詳しくはWWFジャパンのホームページへ!

●10月17日の一言

あっという間の10月です。このホームページでも何度がご案内した,第17回国際クマ会議が今月1日から6日の日程で開かれ,無事終了いたしましたのでご報告いたします。併せて,7日には国際自然保護連合(IUCN)のクマ専門家委員会によるアジアのクマ分布図づくりのためのワークショップも開かれました。。今回の会議では,会議事務局長として準備に足かけ5年という年月を費やしています。もちろんすべての期間で準備にかかりきりだったということではありませんが,少なくともこの1年は,膨大な時間を準備のために費やしてきました。そのため,今年は奥多摩などフィールドにも学術捕獲した個体へのGPS首輪装着の時以外は入れない有様でしたし,本ウェッブサイトの更新もほったらかしになっていました。この間,目撃情報などをお寄せいただいた方には本当に申し訳ありませんでした。
 さて会議には約350人(40ヶ国弱)が出席しましたが,特にアジア約20ヶ国からの参加者を見たことが最大の喜びで,情報発信が遅れがちなアジアのクマ関係者間でのネットワーク構築の第一歩となったのではないかと自負しています。
 会議に併せ,アジアのクマ類国別レポートも出版されました(Understanding Asian Bears to Secure Their Future, Compiled by Japan Bear Network, 145pp., ISBN4-9903230-0-9)。レポートは,近々日本クマネットワークのウェッブサイトを通じてPDF版も配布される予定ですでの,また改めてご案内したいと思います。

シベリアのヒグマについての発表を行うロシアのバイスフィールド博士

●12月16日の一言

 テレビや新聞などでも度々報じられていますが,都内のこれまであまり出没がなかった場所でのクマの目撃や保護が相次ぎました。
1. 11月29日: 八王子の恩方地域でクマの目撃があり,八王子市は捕獲用の檻を設置。
2. 12月6日: 八王子の高尾山自然観察4号路の吊り橋付近で遠足のグループが目撃。
3. 12月10日夕方: 日の出町平井の人家で今年生まれの子グマが保護される。
 恩方地区はクマ分布の辺縁にあたり,クマの密度は低いと考えられる地域です。古くは1954年に,恩方村案下,醍醐,浅川小下沢部落付近にクマが頻繁に出没したため,地元猟友会が捕獲申請を行った記録があります(毎日新聞1954年6月9日付)。
 また高尾地域は,所謂裏高尾と呼ばれる小下沢や小仏トンネルのあたりまでは,これまでもクマの目撃や痕跡が確認されていましたが,中央高速以南の高尾地域でクマが確認されたのは,実に久しいことです。記録に残っているものとしては,終戦後の1940年代後半に「高尾山中でクマ仕留める!」という新聞記事がありますが(切り抜きが見あたらず正確な日付が記せませんが),確実な記録としてはおそらくそれ以来ということになります。
 日の出町もやはりクマ分布の辺縁にあたり,密度はごく低い地域と想像されます。保護された子グマは地元の大物猟グループの宅で一時的に飼育されていましたが,その後死亡しました。遺体は現在剖検用に冷凍保存されています。
 これらの事例が,本当に分布域の恒常的な拡大を示すものなのかは注意深くモニタリングする必要がありますが,じわりじわりと広がってきている気配は確かにあります。
 こうした過去に分布があった場所やこれまで分布しなかった場所などに,今後クマが定着してくる事例が,東京都に限らず本州の各地で増えてくることが予想されます(実際に環境省が行ったクマの分布調査を1978年と2004年で比較してみると,5.5ポイント増となっています)。クマとのつきあいがあまりない住民にとって,クマの出現はあたかも黒船来襲のような心理的脅威になる場合も予測できます。
 クマの管理の今後を考える上で,今我々は大きなターニングポイントに来ています。人とクマの生活空間のゾーニング案も含めた将来的なクマ管理のゴールを,誰もが納得(少なくとも議論に参加できる形で)できるよう早急に策定していく必要があるかと思います。ゴール設定無くしての対処療法的な捕殺や学習放獣を繰り返すだけでは,根本的な管理像は浮かび上がってこないでしょう。
 捕数十年前の「大物クマ成敗」「悪党仕留める」といった新聞記事見出しに象徴されるクマ像への逆戻りはぜひ回避しなくてはなりません。こうした事態に対し,社会から納得を得られる管理のための先手を打っていかないと,これまで築いてきたクマの科学的管理の芽が折り取られてしまうでしょう。


2007年

●9月19日の一言

 更新が長らくできず申し訳ありませんでした。
 さて,昨年10月に開催された第17回国際クマ会議を契機に出版された「Understanding Asian Bears to Secure Their Future」の日本語版「アジアのクマたちの −その現状と未来−,日本クマネットワーク編 146pp.」が出版されました。日本を含むアジアのクマ類に関する最新情報を網羅した一冊です。残念ながら一般の図書としては流通していませんが,日本クマネットワークの会員には配布しております。少し宣伝になってしまいますが,レポートをご希望の方は,この機会に日本クマネットワークにご入会いただければと思います。なお,英語版についてはPDF版のダウンロードが可能になっております。


2008年

●2月15日の一言

 2006年10月に開催された第17回国際クマ会議を契機に出版された「Understanding Asian Bears to Secure Their Future」の日本語版「アジアのクマたちの −その現状と未来−,日本クマネットワーク編 146pp.」が出版されました。日本を含むアジアのクマ類に関する最新情報を網羅した一冊です。残念ながら一般の図書としては流通していませんが,日本クマネットワークの会員には配布しております。少し宣伝になってしまいますが,レポートをご希望の方は,この機会に日本クマネットワークにご入会いただければと思います。なお,英語版についてはPDF版のダウンロードが可能になっております。

●4月22日の一言

 今年の春は,クマたちの越冬明けが通常年よりも少し早いようだという声が聞かれます。今回HP追加した檜原村での目撃情報は3月16日のことですので,こうした傾向を支持している可能性がありました。また子ども連れを見かけたという情報も入ってきていますが,昨秋はドングリなどの実りが比較的良かったために,出産に成功したメスグマが多かったことも予測されます。このあたりについて,今後どの程度検証していけるのか楽しみなところです。

●7月8日の一言

 茨城県自然博物館で第43回企画展「熊・森のアンブレラ種」が,7月12日から9月21日の会期で開催されます。
 関連イベントとして,下記講演会とワークショップが開催されます。ぜひご参加いただければと思います。
 お申し込みは博物館イベント申込ウェッブサイト,もしくは当方(yamako_at_j.email.ne.jp)に直接ご連絡いただいても結構です(お名前,ご所属,ご住所,e-mailアドレスをお知らせ下さい)。事前お申し込みの方は入館が無料になり,企画展の見学も出来ます。
 会場: 茨城県自然博物館 茨城県坂東市大崎700 (つくばエクスプレス守谷駅からバス,あるいは常磐道谷和原ICから15分)


講演会 【クマと人との関わり】
◇ 日 時: 2008年 7月12日(土) 13:30〜15:30
◇ 講 師 : 田口洋美(東北芸術工科大学芸術学部歴史遺産学科教授)
        横田 博(野生動物写真家)
◇ 対 象 : 一般(中学生以上)
◇ 定 員 : 300名(先着順)


ワークショップ 【クマの研究最前線・ツキノワグマで分かっていること,分かっていないこと】
 ツキノワグマ研究の最新の結果を,気鋭の若手研究者が分かりやすく解説し,今後必要とされるの研究の方向性などについても議論します。

◇ 日 時: 2008年8月9日(土)13:00〜16:30
◇ パネラー(演題は一部仮)
  小池伸介(東京農工大学) 「森林とクマ」
  後藤優介(立山カルデラ砂防博物館) 「どこまでのぞける?!クマの生活−GPS首輪にできること−」
  中下留美子(首都大学東京) 「体毛から読み取るツキノワグマの食性履歴―炭素・窒素安定同位体を用いて」
  下稲葉さやか(京都大学) 「ツキノワグマの形態的特徴(仮)」
  安河内彦輝(九州大学) 「日本のツキノワグマにおける母系遺伝のミトコンドリアDNAからみた集団の歴史」
  中村さち子(岐阜大学) 「クマの不思議な生態生理 ?秋の脂肪蓄積は何のため?」
◇ コーディネーター
  山崎晃司(茨城県自然博物館)
◇ 対 象: 一般(高校生以上)

●7月26日の一言

 先にご案内した,茨城県自然博物館での第43回企画展「熊・森のアンブレラ種」が,7月12日に無事オープンいたしました。
 関連イベントとして,下記ワークショップが開催されます。ぜひご参加いただければと思います。
 お申し込みは博物館イベント申込ウェッブサイト,もしくは当方(yamako_at_j.email.ne.jp)に直接ご連絡いただいても結構です(お名前,ご所属,ご住所,e-mailアドレスをお知らせ下さい)。事前お申し込みの方は入館が無料になり,企画展の見学も出来ます。
 会場: 茨城県自然博物館 茨城県坂東市大崎700 (つくばエクスプレス守谷駅からバス,あるいは常磐道谷和原ICから15分)


ワークショップ 【クマの研究最前線・ツキノワグマで分かっていること,分かっていないこと】
 ツキノワグマ研究の最新の結果を,気鋭の若手研究者が分かりやすく解説し,今後必要とされるの研究の方向性などについても議論します。

◇ 日 時: 2008年8月9日(土)13:00〜16:30
◇ パネラー(演題は一部仮)
  小池伸介(東京農工大学) 「森林とクマ」
  後藤優介(立山カルデラ砂防博物館) 「どこまでのぞける?!クマの生活−GPS首輪にできること−」
  中下留美子(首都大学東京) 「体毛から読み取るツキノワグマの食性履歴―炭素・窒素安定同位体を用いて」
  下稲葉さやか(京都大学) 「ツキノワグマの形態的特徴(仮)」
  安河内彦輝(九州大学) 「日本のツキノワグマにおける母系遺伝のミトコンドリアDNAからみた集団の歴史」
  中村さち子(岐阜大学) 「クマの不思議な生態生理 ?秋の脂肪蓄積は何のため?」
◇ コーディネーター
  山崎晃司(茨城県自然博物館)
◇ 対 象: 一般(高校生以上)




知床財団設立20周年記念事業 【ヒグマと共に生きる未来を考える】

(財)知床財団と日本クマネットワークの共催による,知床財団設立20周年記念事業「ヒグマと共に生きる未来を考える」が,2008年10月11日から13日にかけて北海道斜里町の知床国立公園ウトロで開催されます。こちらもぜひご参加下さい。


 2006年10月に開催された第17回国際クマ会議を契機に出版された「Understanding Asian Bears to Secure Their Future」の日本語版「アジアのクマたちの −その現状と未来−,日本クマネットワーク編 146pp.」が出版されました。日本を含むアジアのクマ類に関する最新情報を網羅した一冊です。残念ながら一般の図書としては流通していませんが,日本クマネットワークの会員には配布しております。少し宣伝になってしまいますが,レポートをご希望の方は,この機会に日本クマネットワークにご入会いただければと思います。なお,英語版についてはPDF版のダウンロードが可能になっております。


2009年

●4月21日の一言

更新が遅れに遅れてしまい申し訳ありません。「クマにあったらどうするか」の一部改訂を行いました。

●5月23日の一言

 今年の春の目撃情報2件の追加を行いました。これから釣りなどで入渓の機会が増えることと思いますが,沢沿いの遡行の際は,川音などでクマも人間も互いの存在に気付きにくくなると思いますので,ぜひ十分な注意をお願いいたします。

●8月29日の一言

 そろそろクマたちが秋の行動に移る時期です。今年は,堅果類の結実はそう悪くなさそうですが,しばらくは今後の動きについての注意が必要です。今年,奥多摩では新たなメンバーを加えて,ツキノワグマの行動と食物の分布と量の関係についての研究に取り組んでいます。外国製と国内製の2タイプの脱落式GPS首輪の装着を試みています。進捗や結果についてはまた機会を見てこの場でご報告したいと思います。

●10月29日の一言

クマとの遭遇を回避するためのティップが下記にありますので,ご参考に下さい。

◇クマに注意・思わぬ事故を避けよう
◇クマ類出没対応マニュアル

●10月7日の一言

 岐阜県乗鞍スカイラインでの,ツキノワグマによる人身事故のニュースをご覧になった方も多いかと思います。9人の方が被害に遭われ,重傷の方4名も含まれています。まずは被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げると同時に,一刻も早いご回復を祈念いたします。さて,現場は標高2,700mと高く,通常この地域のクマたちは,秋にはいると冬眠に備えた飽食のために,標高1,500m以下の落葉広葉樹林帯に下がることが報告されています。そのため,事故当時,現場にクマがいた理由について,あるいはレストハウスなどの残飯の可能性について考えました。しかし,その後の地元で研究をされている方による現地調査などで,現場にはハイマツやコケモモがあったことが確認でき,あるいはそうした食物に付いていた可能性もありました。射殺個体は,一旦埋められた後,掘り返されて岐阜大学の研究室によって現在剖検が行われています。クマが人を襲うきっかけとなったのは何だったのかを含めて,今後の調査結果が待たれるところです。
 いずれにせよ,これからの時期,クマと人との遭遇の機会は今しばらく続くことと思います。「まずクマに会わないようにすること」,この点を第一に心がけて,楽しい秋の山行きを楽しんで下さい。


2010年

●9月29日の一言 今年の秋はクマの動きにぜひ注意を!

 今年の奥多摩の秋は,堅果(ドングリ類)の実りが非常に悪い状況です。ブナ,イヌブナ,ミズナラといった堅果はすべて凶作,コナラも局所的にまばらに実っているに過ぎません。クリはそこそこ実っていますが,人家付近に多いため,今後クマと人間との遭遇の機会や,またその結果の事故などが,2006年当時と同様に増える可能性があります。すでに,人家周辺のまだ青いカキの実にクマが付いているという情報も寄せられています。
 冬眠前に十分な脂肪蓄積が必要なクマは,このような堅果の不作年にはいつもよりも広い範囲をあちらこちらと食物を探して動き回ることがあります。そうしたクマたちを,人家周辺に立ち止まらせないように,残飯などのゴミの処理や,飼い犬のドッグフードの管理,庭先の不必要な果樹のつみ取りなどにぜひご留意下さい。

◇クマに注意・思わぬ事故を避けよう
◇クマ類出没対応マニュアル


なお,10月2日に下記のイベントが開催されます。ぜひご来場下さい!

COP10パートナーシップ事業  「クマの保全から生物多様性を考える」

主催:日本クマネットワーク
後援:日本野生動物医学会、日本哺乳類学会、野生生物保護学会、WWFジャパン、地球環境基金

開催日時:2010年10月2日(土)13:30〜16:50
場所:東京大学弥生講堂一条ホール(〒113-8657 東京都文京区弥生1-1-1 東京大学農学部内)
*会場アクセス(次のURLをご覧ください) http://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/map.html
参加者:一般の方、300名程度(無料)

趣旨:
ツキノワグマやパンダでおなじみのクマ類は全世界で八種類生息していますが、アジア、北米、南米の
三大陸において熱帯から極地域まで多様な生息環境に分布しています。いずれの種も広い行動圏を持ち、
その中の様々な生息環境を利用して生活しています。そして、それぞれの種が存続できるかどうかは、
生息地で生物多様性が保たれているかどうかにかかっています。また、種子散布者として森林更新に
役立つなど地域の生物多様性維持に貢献をしているとも考えられます。
現在、これらのクマ類は、過剰捕獲、生息地環境破壊、気候変動の大きな影響下にあり、ほとんどの種が
絶滅危惧種として位置付けられています。その一方で、クマ類の引き起こす農林業被害や人身被害が世界
的にも問題になっており、共存をいかに果たすかは、私たちが解決しなければならない大きな課題です。
私たち日本クマネットワークは、クマ類は地球の生物多様性の重要な要素であり、その保全は、生物多
様性保全の重要性を深く理解することによってしか果たされないと考えます。クマ類の生態、生息状況、
保全の問題を通じて、生物多様性について、一緒に考えてみましょう。

プログラム
1)世界のクマ、日本のクマ‐現状と未来 山崎晃司(JBN代表、茨城県自然博物館)
2)種蒔くクマ−森林更新に果たすクマの役割 小池伸介(東京農工大学)
3)絶滅寸前、四国のツキノワグマを守れ‐保全プログラムの提案 金澤文吾(四国自然史科学研究センター)
4)地域は立ちあがった!官民学でクマ対策―岩手県の事例− 伊藤春奈・青井俊樹・岩手大学ツキノワグマ研究会(岩手大学)
5)ウェンカムイを減らせ!−ヒグマを科学的に保護管理する− 釣賀一二三(北海道立総合研究機構・環境科学研究センター)
6)Disappearing Ice and Shrinking Polar Bears 氷山もホッキョクグマも融けて縮んじゃうって?
‐地球温暖化のホッキョクグマへの影響- Andrew E. Derocher(カナダ・アルバータ大学)、英語講演、和文字幕を用意
*Andrew E. Derocher博士については、下記ホームページをご覧ください
http://www.biology.ualberta.ca/faculty/andrew_derocher/

*このシンポジウムは地球環境基金からの助成を受けて行います。

●12月2日の一言

 仕事に忙殺され,更新が遅れております。特に目撃情報をお寄せいただいた方には,情報の掲載が今のタイミングとなってしまい本当に申し訳ありませんでした。
 さて今年の奥多摩の秋は,堅果(ドングリ類)の実りが非常に悪い状況です。ブナ,イヌブナ,ミズナラといった堅果はすべて凶作,コナラも局所的にまばらに実っているに過ぎません。クリはそこそこ実っていますが,人家付近に多いため,クマと人間との遭遇の機会が増えています。
 冬眠前に十分な脂肪蓄積が必要なクマは,このような堅果の不作年にはいつもよりも広い範囲をあちらこちらと食物を探して動き回ることがあります。そうしたクマたちを,人家周辺に立ち止まらせないように,残飯などのゴミの処理や,飼い犬のドッグフードの管理,庭先の不必要な果樹のつみ取りなどにぜひご留意下さい。
 また奥多摩に限らず,今年の本州でのクマの出没についての状況や,その状況に対する考え方は,日本クマネットワークのHPに掲載しましたのでご参考に下さい。

以下のような一般の方向けのイベントが,日本クマネットワークの主催により開催されます。ぜひご参加下さい。詳しくは日本クマネットワーク・ウェッブサイトをご覧下さい。

タイトル:クマとの共生のために私たちができること
 〜クマに出会わない、おそわれない方法を知ろう〜

日時:12月11日(土)13:00〜16:45
場所:東京大学農学部(弥生キャンパス) 2号館 2階 第一講義室
(東京都文京区弥生1−1−1)
参加費:無料(予約不要)
アクセス:
東京メトロ 南北線 「東大前」駅下車、1番出口から徒歩1分程度

内容:
1.開会挨拶
2.こんなところにもクマがすんでいる
    〜国内や関東のクマの生息状況〜
3.クマってどんな生きもの?
    クマ・トランクキットを使った子供向けプログラムの紹介
4.クマとの事故ってあるの?
    〜関東の人身事故の傾向、登山道での事故事例紹介〜
5.クマと出会ったときの対処法(中?上級者編)
    〜こんなときどうする?専門家に聞いてみよう〜
6.閉会挨拶

主催:日本クマネットワーク 


JBN地球環境基金助成事業「人里に出没するクマ対策の普及啓発および地域支援事業」
地域支援プログラム・ワークショップ

日 時:2010年12月10日(金)13:00〜17:00
場 所:東京大学弥生講堂アネックス セイホクギャラリー
    東京都文京区弥生1−1−1(東大農学部正門入ってすぐ左手)
    アクセスについてはhttp://www.a.u-tokyo.ac.jp/yayoi/map.htmlを参照
対 象:都道府県および市町村の鳥獣(とくにクマ)業務担当者、JBN会員
趣 旨:本事業の地域支援プログラムでは、この3年間に北海道浦幌地域、岩手県、山梨県、長野県および兵庫県において、各地域でのクマ対策、例えば、電気牧柵の設置、民家に生っている不要な柿の除去(柿もぎ)、地域クマ監視員の育成、環境教育指導者の育成、薮や草の刈り払いなどの活動を支援した。そこで、その支援活動の内容を紹介するとともに、何が成功の鍵になったのか、あるいはどうすれば地域におけるクマ対策を進めることができるのか、を検証する。さらに、このようなプログラムを他地域に拡大させるための方策について参加者全員で考える機会を提供する。
内 容:1)趣旨説明
    2)各地域における地域支援プログラム紹介
    3)6地域の発表者をコアとするグループディスカッション
    4)全体討論:クマ被害対策を他地域に拡大するための方策
参加費:無料
ファックスまたはメールでお申し込みください。
申込先:〒183-8509 東京都府中市幸町3-5-8 
    東京農工大学農学部地域生態システム学科内
    日本クマネットワーク(JBN)事務局(小池伸介)
    ファックス:042-364-7812(代表)
    メール:e-mail:koikes@cc.tuat.ac.jp

主 催:日本クマネットワーク(JBN)
*このシンポジウムは地球環境基金からの助成を受けて行います。


2011年

●1月19日の一言 

 年が明けてはじめてのクマの目撃情報をお寄せいただきました。通常この時期には冬眠に入っているはずのクマですが,何らかの刺激で一時的に冬眠から目覚めていた可能性もあります。クマの冬眠生理は独特で,人間であれば1ヶ月以上も寝たきりの状態が続けば筋肉が衰えて立って歩くことは困難になりますが,クマの場合には覚醒後直ぐに動き回ることが出来ます。いずれにせよ,冬期であってもクマに会う可能性はゼロではありませんので,常にクマの生息する環境に入っていることを念頭に置いて活動していただければと思います。

☆以下のような一般の方向けのイベントが,日本クマネットワークの主催により開催されます。ぜひご参加下さい。詳しくは日本クマネットワーク・ウェッブサイトをご覧下さい。

※お陰様で定員に達しましたので,受付を終了させていただきました(2011年1月23日 )

日本のクマを考える
繰り返されるクマの出没・私たちは何を学んできたのか?
―2010年の出没と対策の現状―

期  日: 2011年2月12日(土)13:00-16:30
場  所: 東京都恩賜上野動物園 動物ホール

主  催: 日本クマネットワーク,(財)東京動物園協会
後  援: WWFジャパン(予定)
定  員: 150名

申込方法
メールによる事前申込/先着150名/メールで受付証(入園証を兼ねる)送付

申し込み先
kuma2011@tokyo-zoo.net(@を半角に変更して送信して下さい)

※メールの申し込みタイトルを「クマシンポ2011応募」として,参加希望者全員のお名前,年齢,ご所属,メールアドレス,電話番号を記入してメールkuma2011@tokyo-zoo.netで申し込み下さい。
メール添付により参加証をお送りします。

開催内容
2010年秋には本州の各地でツキノワグマの出没が報じられた。人との軋轢回避目的のために捕殺された頭数をみると,2006年に次ぐ規模の大量出没年と いえた。そして,これまでの出没と同様,地域によって状況は大きく異なった。シンポジウムでは、2010年の全国でのクマの出没状況を要約すると同時に, 今回の出没に際し,過去の2004年,2006年の出没時の教訓はどう活かされていたかについて検証する。また今後ツキノワグマ管理に求められる課題の整 理を行う。

プログラム

1. 開会挨拶(13:00〜13:10)東動協理事長,JBN代表

2. 話題提供(13:10〜14:55)※1演題15分

講演1 2010年秋の日本各地でのクマ類の出没状況の概況1
『クマの出没は全国で一律に起こっていた訳ではない』 
山ア晃司(茨城県自然博物館)

講演2 2010年秋の日本各地でのクマ類の出没状況の概況2
『近畿地方での未曾有の大量出没』 
片山敦司(野生動物保護管理事務所)

講演3  2010年秋の日本各地でのクマ類の出没状況の概況3
『福井県での出没と堅果豊凶の関係』 
水谷瑞希(福井県自然保護センター)

講演4 ツキノワグマ管理へのチャレンジ1
『長野県における地域的な大量出没とその対応』 
岸元良輔(長野県自然保護研究所)

講演5 ツキノワグマ管理へのチャレンジ2
『クマ出没情報の地域住民との共有』 
野崎英吉(石川県自然保護課)

講演6 ツキノワグマ管理へのチャレンジ3
『放獣と報道(マスコミ)への情報提供』
西 信介(鳥取県公園自然課)

講演7 ツキノワグマ管理へのチャレンジ4
『長野県におけるツキノワグマの保護管理システム』 
佐藤 繁(長野県下伊那地方事務所)

3. 休憩(14:55〜15:10)

4. 総合討論(15:10〜16:30) 
司会:大井徹(森林総合研究所)
『クマ地域集団ごとでの広域管理に向けて』 
キーワード:モニタリング,分布域拡大,人身事故,放獣,錯誤捕獲,報道の在り方

5. 閉会挨拶

●8月13日の一言

 今年はこれまでに,計5個体のツキノワグマにGPS首輪を装着してその行動を追跡しているところですが,非常に痩せている個体が見受けられます。昨年秋の堅果の不作もその原因のひとつかも知れません。今年の秋にコンディションが回復できると良いのですが。
 さて,日本クマネットワークでは,ヒグマとツキノワグマによる人身事故事例を取りまとめた報告書を刊行いたしました。ホームページからPDFにてダウンロードが可能です。奥多摩での事例も,皆さんからいただいた目撃記録を集計して掲載してあります。ぜひご覧いただければと思います。

●10月10日の一言

 奥多摩での今秋の結実状況は,昨年の2010年ほどではありませんが,あまり良くありません。暫定的な報告ですが,ブナとイヌブナはほぼ結実なし,ミズナラとコナラも結実個体が若干あったものの,全体としては不作です。ただし,オニグルミ,ナナカマド,アオハダ,サルナシは比較的多めです。このような状況のためかは断定出来ませんが,奥多摩湖北岸の集落では,9月にクマの出没が相次ぎ,民家庭先のウサギやニワトリが食害される事件が相次ぎました。町でも対応に苦慮されているところです。
 ところで,奥多摩で写真やビデオの自動撮影を試みている,本グループ員の小川さんが,ツキノワグマの「背擦り行動」をビデオ撮影に成功しました。北米や北海道のヒグマでは報告事例があるものの,ツキノワグマではあまり知られていない行動で珍しいものです。他のクマに自分の存在を知らせる,マーキングの一種と考えられています。ぜひ小川さんのHPでビデオクリップをご覧になって下さい。
 奥多摩でのクマの目撃情報を3件追加いたしました。情報をお寄せいただいた方々にお礼を申し上げると同時に,掲載がこの時期になってしまったことをお詫びいたします。


2012年

●1月15日の一言

目撃情報1件を追加いたしました。
宣伝になりますが,以下のように茨城県自然博物館にて,パンダの自然講座があります。対象は小学生4年生以上になっております。ぜひ起こしいただければと思います。

●8月28日の一言 

 今年は,東北南部を中心に,ツキノワグマの人家周辺への出没が増えているようです。奥多摩でも,峰谷などで民家で飼われているウサギやニワトリへの食害が目立っており,地域の方々を悩ませています。2006年や2010年の時のような大量出没に発展するかについては,今後の動向を見守る必要がありますが,十分な注意が必要です。
 当たり前の話ですが,こうしたクマたちを誘引したり,立ち止まらせないために,ゴミ,残飯,取り残した果樹などの管理にぜひお気を付け下さい。
 別件ですが,「奥多摩けもの道」のサイトで,とても興味深いツキノワグマの動画がアップロードされております。ぜひ一度ご覧になって下さい!

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