労災に関する補償や通勤災害保障は派遣労働者もすべての労働者に適用されます。
通勤(出勤と退勤)途上の交通事故などいわゆる通勤災害のなかでも、会社の通勤用のマイクロバスが事故にあったような特別な場合は従来から「業務災害」として労災保険の対象となっており、現在でもこの点は変わりません。
それ以外の一般の通勤途上の災害は救済の対象から除外されていましたが、1973年の法改正で労災保険法のなかに特別の「通勤災害」制度が新たに設けられることになりました。
「通勤」とは「労働者が、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものとする」とされ(労災保険法第7条)、「業務災害」とは別の制度となっています。
通勤災害とは、労働者が、住居から就業の場所への通勤の途上で、交通事故などの災害にあって、負傷することなどを言います。ただし、合理的な通勤経路を「逸脱」または「中断」したときには通勤災害として認定されません。
「通勤」、「通勤災害」と考えるためにポイントになるのは、次のような点です。
この「通勤災害」は、ごく限られた範囲で「業務災害」よりも給付内容が不利な場合がありますが、ほとんど同じ内容の給付(療養、休業、障害、遺族、葬祭の各給付と傷病年金)となっています。
この通勤災害制度は労災保険が適用される労働者に適用されますので、派遣労働者も当然にその適用対象となります。
派遣労働者については、一般の労働者と異なり、使用者が派遣元と派遣先の二カ所に分かれます。
この点について労働省の通達(基発383号)では、派遣労働者の派遣元事業場と派遣先事業場との間の往復の行為は、それが派遣元事業主または派遣先事業主の業務命令によるものであれば一般に業務遂行性が認められ、業務災害になるとしています。
そして派遣労働者の場合には、派遣元事業主または派遣先事業主の指揮命令により業務を開始し、または終了する場所が「就業の場所」となり、一般に派遣労働者の住居と派遣元事業場または派遣先事業場との間の往復の行為が通勤災害の対象となる通勤であるとしています。
したがって、派遣先事業所へいく朝の通勤途上での交通事故は当然に通勤災害となりますので、労災保険から通勤災害の給付を受けることができます。
なお、通勤の途上で喫茶店に立ち寄るような場合には、経路からの中断または逸脱としてその間とそれ以降は通勤と扱われなくなりますが、日用品の購入や、クリーニング店への立ち寄り、保育所への送り迎え、投票などの一定の中断または逸脱に限り、それ以降も通勤として扱われることになっています(労災保険法第七条三項)。
〔脇田滋・監修 民主法律協会編『派遣労働者110番の悩み』学習の友社、1987年、105頁−107頁〕
通勤災害制度は、労災保険制度の一部です。この労災保険は政府(労働省)が管掌しています。書類提出などの実際の窓口は、使用者(派遣会社)ではなく、労働基準監督署ですので、注意して下さい。
労働基準監督署は、労災保険の手続の身近な窓口で、全国に配置され、それぞれ一定の区域を担当しています。派遣会社を管轄する最寄りの労働基準監督署がどこか、確かめて、手続などについて問い合わせして下さい。