FAQ:qa3250 派遣社員は何時から社会保険に加入するのか

updated Dec. 20 2002 　派遣１１０番によく寄せられる質問と回答例(ＦＡＱ)

　質　問　と　回　答　例　（Ｆ　Ａ　Ｑ）

3250. 　派遣社員は何時から社会保険に加入するのか

派遣社員として働くことになりましたが、これまで国民年金、国民健康保険に加入してきました。何時から社会保険に加入するのでしょうか？　国民年金・国民健康保険から社会保険に変わる手続が厄介です。
　また、月の途中（１５日）から派遣で働くことになりますが、来月の１日からにしてもらえるでしょうか？

９９年の労働者派遣法改正によって派遣労働者と社会保険の扱いが明確化されました。

　（１）新労働者派遣法と社会保険加入の促進

　１９９９年１２月に施行された労働者派遣法（新労働者派遣法）では、派遣労働者の社会保険加入を促進めることが確認され、法律の規定に次の条項が設けられることになりました。

　☆労働者派遣法の規定（第３５条）

　（派遣元から派遣先への社会保険・雇用保険の加入の有無の通知）
　第３５条　派遣元事業主は、労働者派遣をするときは、労働省令で定めるところにより、次に掲げる事項を派遣先に通知しなければならない。
　　一　当該労働者派遣に係る派遣労働者の氏名
　　二　当該労働者派遣に係る派遣労働者に関する健康保険法第２１条ノ２第１項の規定による被保険者の資格の取得の確認、厚生年金保険法第１８条第１項の規定による被保険者の資格の取得の確認及び雇用保険法第９条第１項の規定による被保険者となったことの確認の有無に関する事項であって労働省令で定めるもの
　　三　その他労働省令で定める事項

　この第３５条２号に基づいて、派遣元は派遣先に労働者が健康保険、厚生年金保険、雇用保険の被保険者の被保険者になったことについて、労働省令（労働者派遣法施行規則）に基づいて通知する義務を負うことになりました。

　☆労働者派遣法施行規則改正（平成１１・１１・１７労令４４号）

　（法第３５条第２号の労働省令で定める事項）
　第２７条の２　法第３５条第２号の労働省令で定める事項は、当該労働者派遣に係る派遣労働者に関して、次の各号に掲げる書類がそれぞれ当該各号に掲げる省令により当該書類を届け出るべきこととされている行政機関に提出されていることの有無とする。
　一　健康保険法施行規則（大正１５年内務省令第３６号）第１０条ノ２に規定する健康保険被保険者資格取得届
　二　厚生年金保険法施行規則（昭和２９年厚生省令第３７号）第１５条に規定する厚生年金保険被保険者資格取得届
　三　雇用保険法施行規則（昭和５０年労働省令第３号）第６条に規定する雇用保険被保険者資格取得届
　２　派遣元事業主は、前項の規定により前項各号に掲げる書類が提出されていないことを派遣先に通知するときは、当該書類が提出されていない理由を付さなければならない。

　さらに、改正労働者派遣法施行のために、派遣元への指針が労働省から示されました。そこでは、派遣労働者の労働・社会保険適用促進について、次のような内容の指針が含まれています。

　☆派遣元事業主が講すべき措置に関する指針（労働省告示第１３７号）

　四　労働・社会保険の適用の促進

　派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の就業の状況等を踏まえ、労働・社会保険の適用手続を適切に進め、労働・社会保険に加入する必要がある派遣労働者については、加入させてから労働者派遣を行うこと。
　ただし、新規に雇用する派遣労働者について労働者派遣を行う場合であって、当該労働者派遣の開始後速やかに労働・社会保険の加入手続を行うときは、この限りでないこと。

　この指針では、派遣する労働者は「加入させてから労働者派遣を行うこと」が基本とされています。つまり、実際に２ヶ月を超えた時点ではなく、就労前であっても、長期（２ヶ月を超えて）派遣することが予定されているときには社会保険加入をさせる必要があることになります。

　（２）派遣会社の実務とその問題点

　派遣会社の多くは、健康保険・厚生年金保険の加入を「おおむね２ヶ月後から」としているのが平均だと指摘されています。〔派遣ワーク２０００春号　１８頁〕

　これは、（１）では明確になっていない点のすき間を突いた労働者に不利な扱いです。

　たしかに、健康保険法では、被保険者の資格については、次のような規定になっています。

　☆健康保険法第１３条ノ２〔適用除外〕

　前条ノ規定ニ拘ラズ左ノ各号ノ一ニ該当スル者ハ健康保険ノ被保険者トセズ
　一　船員保険ノ被保険者但シ船員保険法（昭和十四年法律第七十三号）第十九条ノ三ノ規定ニ依ル被保険者ヲ除ク
　二　臨時ニ使用セラルル者ニシテ左ニ掲グルモノ但シ（イ）ニ掲グル者ニシテ所定ノ期間ヲ超エ引続キ使用セラルルニ至リタルトキ又ハ（ロ）ニ掲グル者ニシテ一月ヲ超エ引続キ使用セラルルニ至リタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
　　（イ）　二月以内ノ期間ヲ定メテ使用セラルル者
　　（ロ）　日日雇入レラルル者
　三　季節的業務ニ使用セラルル者但シ継続シテ四月ヲ超エ使用セラルベキ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
　四　臨時的事業ノ事業所ニ使用セラルル者但シ継続シテ六月ヲ超エ使用セラルベキ場合ハ此ノ限ニ在ラズ
　五　事業所ノ所在地ノ一定セザル事業ニ使用セラルル者
　六　国民健康保険組合ノ事業所ニ使用セラルルモノ
　２　前条ノ規定ニ依リ健康保険ノ被保険者タルベキ者ニシテ保険者又ハ第十二条ノ規定ニ依ル共済組合ノ承認ヲ受ケタルモノハ健康保険ノ被保険者トセズ但シ健康保険ノ被保険者タラザルニ依リ国民健康保険ノ被保険者タルベキ期間ニ限ル

　このうち、第１項２号は、次のように２ヶ月以内の期間を定めての雇用の場合には、不適用にしています。しかし、２ヶ月を超えたときには適用するとなっています。

　二　臨時ニ使用セラルル者ニシテ左ニ掲グルモノ但シ（イ）ニ掲グル者ニシテ所定ノ期間ヲ超エ引続キ使用セラルルニ至リタルトキ又ハ（ロ）ニ掲グル者ニシテ一月ヲ超エ引続キ使用セラルルニ至リタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
　　（イ）　二月以内ノ期間ヲ定メテ使用セラルル者
　　（ロ）　日日雇入レラルル者

→（臨時に使用された者であって、（イ）２ヶ月以内の期間を定めて使用された者と（ロ）日々雇い入れられた者は、健康保険の被保険者とならない。ただし、（イ）に挙げた者で、所定の期間を超えて引き続いて使用されたとき、または、（ロ）に挙げた者で１ヶ月を超えて引き続いて使用されたときは、〔例外の例外として〕健康保険の被保険者となる。）

　つまり、登録型の派遣労働者の場合、契約期間（＝派遣期間）が当初は、２ヶ月以内であるとしても、それを超えたときには加入の必要があります。

　とくに問題になるのは、契約期間は２ヶ月以内であっても、口約束で、「長期の派遣をお願いします」として、契約の更新が前提になっている場合にまで、２ヶ月以降にならないと健康保険加入の手続をしない事例が多いことです。

　これは、（２）の派遣元指針の考え方に反するものと言えます。
　派遣元指針は、できるだけ派遣労働者の社会保険加入を促進する意図があります。
　本来は、長期の派遣を予定している場合には、最初から社会保険加入をするのが筋です。

　短期の契約期間でも、実際の派遣期間を長期に予定している場合だけでなく、短期の派遣期間が終わっても、次の派遣先が１ヶ月以内に見つかれば、継続しての健康保険加入を進めるのが望ましいと考えられます。

	派遣就労	空白期間派遣元で雇用継続とみなす	派遣就労
◇◇◇◇◇◇◇	○－－－－－－－	○＝＝＝＝＝＝＝＝＝＞	○－－－－－－－－＞
国民健康保険	健康保険加入強制被保険者保険料労使負担	強制被保険者保険料労使負担	強制被保険者保険料労使負担

　（３）任意継続被保険者による空白期間の連続

　以上は、登録型派遣労働者という雇用形態と社会保険の被保険者の関係が制度的に整理されていないことから生ずる制度的な欠陥です。

　こうした状況のなかで、次善の対策として考えられるのは、任意継続の手続を活用することです。

	派遣就労	空白期間	派遣就労
◇◇◇◇◇◇◇	○－－－－－－－	○＝＝＝＝＝＝＝＝＝＞	○－－－－－－－－＞
国民健康保険	健康保険加入強制被保険者保険料労使負担	任意継続被保険者保険料労働者のみ負担	健康保険加入強制被保険者保険料労使負担

　労働者にとっては保険料の負担がありますが、健康保険の給付を引き続いて受けられますし、退職後の出産手当金などについても受ける可能性が拡大することになります。

　（４）「派遣スタッフ向け健保組合が正式発足」毎日新聞 2002年5月10日

　毎日新聞 2002年5月10日は、「派遣スタッフ向け健保組合が正式発足」と題して、次のように報じています。
　「新しい健保組合では、派遣と派遣の間の空白期間も継続して加入できるよう工夫を凝らしているのが大きな特徴だ。これには①使用関係が継続しているとみなして保険適用を行う方法と、②任意継続被保険者制度を活用して保険適用を行う方法―の２通りがある。

　まず、①の使用関係継続による方法は、雇用契約終了後、最長１カ月以内に、同一の派遣元事業主のもとで次の仕事が確実に見込まれる場合、事業主の判断で使用関係が継続していると見なして加入を続けることができるというものだ。

　一方、②の任意継続被保険者制度の活用による方法は、雇用契約の終了時点で次の仕事が確定していない場合、最初の１カ月間に限り保険料を減額し、加入の継続を図ろうとするものである。例えば、次の仕事を見つけるまでの期間が１カ月以内であれば、保険料の減額措置が受けられるため、国民健康保険と同程度の負担で既に加入している健保で継続加入することが可能である。

　また２カ月目以降は通常の任意継続制度として加入を継続させることができるので、仮に次の仕事が見つからず、空白期間が長期にわたるような場合でも、使用者負担分を被保険者本人が負担することで最長２３カ月間は加入が継続できる。医療保障を受けながら時間をかけて自分の適職を探したい人にはメリットがある。」

　要するに、上の（２）と（３）の表を選択肢として、派遣社員の社会保険をめぐる弊害を少なくしようとするものです。抜本的な解決ではなく、既に現行制度でも可能なものをようやく導入しようとするものに過ぎません。派遣１１０番では、こうした方向での現行制度の枠内での解決は当然だと思いますが、法律で空白期間も派遣元での社会保険加入を明確にするべきだと考えます。むしろ、近い将来には、こうした空白期間の問題を生み出す「登録型派遣制度」を廃止するべきでしょう。

　最後に、保険料ですが、社会保険の保険料は月単位で計算されることになっています。採用されたのが月末であっても１ヶ月分の保険料を納めますが、資格喪失の日（退職日の翌日となります）の属する月は保険料を納める必要はありません。保険料については月の途中の入退社があっても、日割り計算はなく、月単位です。もし、１２月に社会保険加入をしたら、国民健康保険の保険料は１１月まで支払うことになり、１２月からは社会保険の保険料を支払うことになります。

3250. 派遣社員は何時から社会保険に加入するのか

3250. 　派遣社員は何時から社会保険に加入するのか