updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)
質 問 と 回 答 例 (F A Q)
3274. 社会保険加入を理由に保険料を遡って払えと言うが?
登録型派遣で働いています。時給が高いので国民健康保険・国民年金に加入していましたが、突然、派遣会社から遡って健康保険・厚生年金保険への切り換え言われました。急にいまになって、変更するなんて、おかしいと思いますが?
派遣会社の多くは、勝手に派遣労働者の社会保険加入を選択できるように運用してきました。これが社会保険への強制加入を定める法律の規定に反していることが会計検査院から指摘され、1997年初め以降、大きな社会問題になっています。
関連した相談が、殺到しています。
今回の社会保険未加入問題については、基本的に次のように考えられます。
(1)派遣労働者も、法律の要件を満たせば、健康保険や厚生年金保険に加入するのが当然です。
(2)派遣会社が、本来、加入させなければならない派遣労働者を加入させることなしに、国民健康保険や国民年金加入としてきたことは、法の趣旨に反する勝手な解釈です。
(3)(2)については、すべて、派遣会社の責任です。法律的には、派遣会社には、国に対して労働者から社会保険料を徴収しそれを納付する義務を負っていますし、労働契約上の義務として、労働者に対しても社会保険に加入させる義務があります。この義務に反していた訳ですから、その義務を果さなければなりません。
(4)(1)〜(3)から、今回の未加入についての是正については、派遣会社が保険料を労働者負担の分も含めて、遡って払う責任を負っています。
(5)派遣労働者は、今回の措置で、何らの不利益も受けるべきではありません。とくに、賃金を、社会保険保険料相当額分引き下げることはできません。
ただし、種別変更によって還付金があることが確実で、予告して合理的な期間(1〜2ヵ月程度)について、遡って賃金から保険料徴収をすることは、本来の法律を守るための手続きとしてやむを得ないと思います。
それ以外は、法違反をしてきた責任から、派遣会社は、労働者から遡って請求することはできません。また、種別変更について、労働者が市役所に出かけるなどして賃金を失ったり、交通費を負担したなどがあるとき、その賃金や費用は休業補償として派遣会社が支払う義務があります。
派遣業界は今回の問題を逆に捉らえて、派遣労働者には通常の労働者と違う形の社会保険適用を要望しているようです。社会的に尊敬される業界になる方向とは逆向きの、本末転倒した議論です。社会保険の費用を負担せず、安上がりに労働者を使ってきた点では、「利用者」である派遣先にも責任があります。派遣先が、一定の負担をすることは当然だと考えます。
要するに、ご相談の内容については、次のように考えることができます。
-
〈1〉厚生年金保険法や健康保険法では、派遣労働者も社会保険に加入することになっている。派遣会社も、法律の不知ということで責任を逃れることはできない。
-
〈2〉このことは1996年の労働者派遣法改正などのときに、派遣元に対して労働行政からガイドラインが示されていますので、使用者として、社会保険加入をしなかったことの法的責任は重大です。
遡って、厚生年金保険法違反、健康保険法違反で処罰を求めることも可能です(刑事告発)。
-
〈3〉労働契約上の社会保険についての使用者の義務を果してこなかった派遣元は、その契約上の義務不履行について責任を負います。
〈4〉国(保険者)に対する保険料納付義務は、使用者(派遣元)だけが負担する。厚生年金保険法や健康保険法では、保険料を納める直接的な義務は使用者にあります。使用者は、労働者に支払う賃金から労働者分を天引きできるだけです。今後は、たしかに、天引きができますが、過去に払った賃金から意図的に保険料を天引きしなかった分を遡って支払わせる法的根拠はありません。過去の分を次の月の賃金(給与)から天引きしたときには、労働基準法第24条の賃金全額払いの原則に違反します。
〈5〉労働者は、使用者の公法的義務違反、労働契約上の義務違反によって、抽象的、具体的な被害(不利益)を受けていますので、損害賠償などの請求も十分に可能です。
FAQの目次に戻る
110番の書き込み欄へ