ギャラリーに載っている浅嶋様より、AZ−1のジムカーナー向けのセッティングを寄稿して頂いた。ここに紹介したい。また皆さんからの情報も広く募集しているので、ここに紹介したもの以外のセッティング等の情報をお持ちの方は、連絡いただきたい。

速いAZ−1を作る

1)はじめる前に読んでください
注意
 ここでは足回りの改造について以下述べますが、97年時点のJAF公認競技に参加できる(俗にいうジムカーナA車輌)範囲での改造です。98年以降レギュレーショ ンの改定で規定がやや緩和されており、現在では多少事情が異なります。

 AZ−1というのは後ろの方が重い車であり、そういった車は珍しい存在であることを認識してください。また一般にアンダーステアとかオーバーステアという言葉が誤解されているようなので、簡単に説明します。車が大きな円を描き旋回しながら少しずつ速度を上げていきます。このとき曲がりきれずにフロントから滑り出し円が大きくなるのがアンダーステアです。逆にリアから滑り出しスピンとなるのがオーバーステアと思ってください。いっぱんにフロントヘビーの車はアンダーが強くリアヘビ ーならばオーバーステア気味になります。ではなぜAZ−1は曲がらない、アンダーが強いといわれるのでしょうか?
 ウイリーしたバイクをイメージしてください。フロントが浮いているのでハンドルは全く効きません。物理の法則で(摩擦力)=(摩擦係数)*(垂直抗力)というのがあったのを思い出して下さい。摩擦係数をタイヤのグリップ性能、垂直抗力をタイヤにかかる荷重と思ってください。AZ−1は後ろの方が重い車なので駆動力を路面に伝える能力に優れています。(トラクションが良いなどといいます。)逆に前は軽いのでタイヤのくいつきが不十分になります。加速時には一層この傾向が強調され、ハンドルをきっても曲がりにくくなります。プッシングアンダーなどといいます。また急減速の時は前のめりになって荷重が前にかかりますが、やはりもともと軽いために充分な制動力が得られません。(路面への押し付けが不足)このためフロントのロックが起こりやすくなります。ブレーキングアンダーなどと言う人もいます。以上のようにAZ−1を運転する上での注意点として荷重移動とブレーキングが重要と思われます.アクセルコントロールやデリケートなブレーキングで軽いフロントにうまく荷重をのせフロントが沈んだ状態でハンドルをきり始めます。そうすればノーズがインにはいるはずです。うまくいかないときはスペアタイヤをフロントに積んで走ってみてください.(重量配分を変える)これは雨の日も有効。ただし衝突の際は危険だ そうです。また固定は確実に。
 さて前に述べたようにAZ−1というのは後ろの方が重たい車ですので限界付近ではオーバーステア傾向にあります。(多分メーカーでは弱アンダーに味付けしているでしょうが)リアが滑り始めるのが唐突で止まりにくい傾向があります。挙動変化が激しくかつ速いのでスピンに至ることもあります。ですから事故には充分気をつけてください。峠道3速全開コーナーで突然リアが出たらあなたはたてなおせますか? 貴重な車です。練習はくれぐれも広い場所でしてください。
追記('96.6.19) スプリングを変えてもタイムは良くなるだけでやはりインリフトは起こるようです。気を付けてください。

2)どこからはじめるか
 ストリートならば調整式のショックとタイヤ(中の上程度)だけでかなり楽しめます。タイヤは175/60がおさまりますが若干ドタドタしてよくないです。パワーロスを感じます。ホイールは5.5Jー13オフセット38がおすすめですがこの組み合わせではフロントがフルロックでわずかに干渉しますので注意.ショックはエナペタル(ビルシュタイン)が良いらしいが高価なのがつらいところ.私のはマツダスピード製です.(ここでは前2,後3が良いとおもいます。)ノーマルスプリングならノンスリなしでもかなりイケます。ごちゃごちゃいじらずこれで充分です。

3)ジムカーナをしたい
 私はかねてからダンロップD98Jというタイヤをいっぺんはいてみたかったのでまずこれを購入しました。じつに良い眺めで気分はストラトス?それにノンスリ。エンジンマウントを強化しました。エンジンマウントはアクセルオン、オフでのエンジンのぶれを抑える目的で替えます。どうせエンジンをおろすならノンスリ装着時に一緒に替えましょう。ここまでで一段落。乗りやすいセッティングですが(6)を必ず読んでください。

4)ブレーキパッド
 ジムカーナならまずフロントは換えないか少し効かないものにします。(換えるとよけいにフロントがロックします。)リアはおもいきって良く効くものを。サイドターンをやりやすくするためです。プロジェクトミューの3000というものが良いらしい。私のは特注品です。雨の日の街乗りでスピンに注意。

5)スタビとストラットバー
意外にもタイムを削るにはあまり関係ないといわれてしまいました。ブッシュも同様。ただドライブフィールが良くなるかも。誰か教えてください。(ここまではショップの意見を参考にしました。)

6)競技参加での注意点
 ノーマルスプリングにセミレーシングタイヤの組み合わせでは旋回中Gがたまってインリフトから横転の危険があります。これは軽自動車の宿命、トレッドが制限されるからです。AZ−1は低重心ですが相対的にはかなり腰高だと思ってください。横転は実際はよほど無理しないと起こりませんが私がこれを強調するのは一度でも経験すると修理が大変なのと、ケガをするからです。絶対避けるべきです。タイヤの温度の上がる夏期の連続走行時の左コーナーに注意。もし横転したら回りに人がいないときは自分でガラスを割って脱出します。競技では回りの人に助けてもらいます。このとき車を起こしてもらいますが起こす方向に注意!! みんな気が動転していますが起こし方で修理代が変わってきます。潰れたほうを下にしてもどします。これは経験者から聞いた笑えない話です。
AW11とPG6Sの比較
横から見るとPG6Sのコンパクトなのがよくわかる。(写真1)

写真1

後ろから見るとエンジンルームは意外に高く、車の幅はかなり狭い。コースを広く使える反面、やはり腰高と言わざるを得ない。(写真2)

写真2


7)スプリング
 ロールを抑えてインリフトを防止するにはスプリングを固めます。マツダスピード製 (前3.0K,後3.5K)はかなり硬く街乗りはつらいです。また挙動も速くなり腕を要求されます。リアのくいつきは明らかに低下し、(だから浮かない)いくぶんオーバーステア気味になります。ブレーキングはさらに難しくなり雨の日は要注意。(なおこのスプリングではショックの硬さは前3,後4が良いとおもいます。)ところで最近マツダスピードから新製品が出たらしい。これにすれば良かった。使用レポートを送ってください。

8)さらに
 競技の場合レギュレーションの問題はありますが、車高を落とす、トレッドを広げる(ホイールを換える)、トー調整で挙動を変えるなどがあります。私は(7)のセッティングの後ややアンダー気味にするためリアだけ左右6ミリずつトレッドを広げました。明らかに挙動が変わります。ちなみにリアホイールはオフセット32ミリまでならはけそうです。(必ず現物で確認を。スペーサーを用意してミリ単位で広げてみて注文します。)競技当日の天気やコースによってタイヤ空気圧、ショックの固さ、スペアタイヤの位置、ホイルのオフセット等で前後のバランスを変えると挙動は大きく変化します。試してみてください。なお初代MR2のセッティングと乗りこなしかたについては多くの本が出ていましたので古本屋でさがしてください。参考になります。またAZ−1のような軽量車は一名乗車で左右の重量配分が悪くなり右コーナー、左コーナーで挙動が変わります。これを補正する裏技もあるようですが、私はまだやってません。誰か教えてください。
フロント5.5−J13 OFFSET 38.リア5.5−J13 OFFSET 32. タイア175/60ー13。もうギリギリである。(写真3)

写真3

9)究極のセッティング
 ジムカーナJAFカップに出場した車のセッティングについてはスプリングレート等が某誌に載りましたが本人の許可がないのでここでは書きません。特注品を使っていること、あくまで上級者向けであり街乗りはかなりつらいだろうと思われます。(某全日本ドライバーのコメント)

10)おわりに
 これを読んでここが違う、もっと良い方法があると言う方はぜひ公開してください。ミドシップ車というのはセッティングの自由度が大きい反面、速く走るにはそれなりの腕と度胸が必要だとおもいます。改造して速さを追求すると危険で乗れないということが起こり得ます。その点にご注意を。また競技会では私より速いAZ−1乗りもたくさんいましたが皆良い人ばかりでした。みんな仲間です。きっと親切に教えてくれるはずです。

(1997年4月25日  浅嶋)


速いAZ−1をつくる。その2

 97年4月現在のセッティングで3戦走ってみました。この時点でのインプレッションをまとめます。
1)ほぼニュートラルステアである。ただし右コーナーでは4輪同時に滑り出すのに対し、左コーナーではどこまでもグリップし限界が不明。突然のインリフトあり。転倒の危険大。(実際に危機一髪をまた経験しました。)
2)スプリングは堅すぎ。日常の使用には限界。
3)ショックは耐久性にやや難ありか?
4)書いていませんでしたがメタルクラッチはやめたほうが無難。ついでに2点ばかり補足します。
 ロールバーについてはイベント主催者によって必要かどうか解釈がまちまちです。自分の出たいイベントの主催者に事前に問い合わせしてください。取付けるならマツダスピードからパーツが出ています。
 夏の競技はAZ−1にとって地獄です。走行中天井の熱で頭の思考がにぶりそうです。私はゼッケンをはるとき、ついでに天井にクッキングホイルをはります。これでいくぶん涼しくなります。

これからの予定
 さてやはり重要なのはインリフト対策でしょう。これはグリップの悪いタイヤをはくことで簡単に解決できますがそれでは他の車に対しハンデを負うことになります。そこで禁断のセッティングである左右非対称に挑戦することを検討中です。ここからは(ここまでもだが)一切責任はもてませんので簡単に真似しないように。
(1)まず考えたのはオーバーステアにしてリアを逃がすこと。スピンのほうが転倒よりましということです。ただし運転は非常に難しくなります。 私はタイヤはダンロップ98J(S)を使っていますが右リアのみコンパウンドをハードにすること。これで限界付近の挙動を分かりやすくできないものか?
(2)次に車高をできるだけ下げること。ついでに一名乗車での左右のアンバランス を補正すること。これについてはまず四輪荷重分布を計ってみます。

7月13日4輪荷重測定(マツダスピードファクトリーにて)
私の車の現在の仕様(ロールバー付き競技状態、ガソリン残10L、スペアなし、荷物なし)
条件/右前/左前/右後ろ/左後ろの順(kg)
空車時 / 148/150.5/210.5/207.5
スペアタイヤを前に積んだ状態 / 154/154/209/208
 この状態で最もバランスが良い点に注目。設計初期ではやはりタイヤは前に積むことを想定していたと思われる。またこの状態での前後の荷重比は約3:4。ノーマルス プリングレシオは前1、8:後2、4であり、やはり3:4。どうもこのあたりにミドシップのセッティングの鍵がありそうだ。 次に体重80kgを越える筆者一名乗車では 一名 / 182.5/163.5/240/218、 一名と前スペア / 188/167/239/217.5と大きく左右のバランスを崩す(10%程度)。参考に体重60kg程度一名乗車で スペアタイヤを前に積んだ状態では参考とスペア/ 178.5/165/232/214.5でありました。
注意)ここでガソリン残量が少ないのは車を軽くするためでジムカーナではこのぐらいではしります。AZ−1では構造上満タンでは左が重くなります。 結果として私一名乗車では前で19、後ろで22kgの左右差となり、それぞれを前後のばね係数(前3.0、後3.5)で割るとそれぞれ6.3ミリとなります。つまり空車で右側を6ミリ上げておくと競技時にほぼ水平になります。

まとめ
空車で6ミリ右上がりでなおかつ最低地上高90ミリ以上をめざして車高を落とせばいいわけです。でもそんなことが果たしてできるでしょうか? 私はアマチェアですので改造とテスト期間に半年ぐらいください。それとみなさんからのご意見、ご感想おまちしています。
(つづく1997年7月18日)

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