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オーウェル作品、その概要


比較的入手しやすいオーウェル作品のリストです。小説は著作時代順。


「一杯のおいしい紅茶」


オーウェル逝って半世紀。「1984年」「動物農場」「カタロニア讃歌」の作家・批評家がのこしたエッセイと手紙の数々は、今なお新鮮に私たちに語りかける。紅茶のいれ方から書くことまで、ジュラ島での生活、流行歌、子供の本についてなど、くつろいだ楽しいエッセイを中心に収めた。
初訳6篇を含む。

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「オーウェル評論集」


オーウェル評論集

オーウェル(1930-50)といえば、まっさきに人は『動物農場』『1984年』を想いうかべるだろう。だが30年代から戦後にかけて展開された活発な評論活動を忘れてはならない。文学・政治・社会現象・植民地体験など多岐にわたる対象に鋭く深く切り込む彼のエッセイを貫くのは、自律的知識人に固有の、精神の強靭さと心の優しさだ。12編を精選。

(岩波文庫 小野寺健編訳 赤262-1 表紙の文章)例えば以下の様なエッセイが。

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「パリ・ロンドン放浪記」


パリ・ロンドン放浪記

インド帝国の警察官としてビルマに勤務したあとオーウェルは1927年から3年にわたって自らに窮乏生活を課す。その体験をもとにパリ貧民街のさまざまな人間模様やロンドンの浮浪者の世界を描いたのがこのデビュー作である。人間らしさとは何かと生涯問いつづけた作家の出発にふさわしいルポルタージュ文学の傑作。

(岩波文庫 小野寺健訳 赤262-2 表紙の文章 残念ながら品切れ中?)

amazon.co.jp晶文社刊 オーウェル小説コレクション・1 パリ・ロンドンどん底生活

amazon.co.jp岩波文庫

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「ビルマの日々」


Burmese Days
1933刊

大石健太郎訳
1988年10月31日
彩流社刊

53ページから

「ねえ、フローリしゃん、あなたは東洋人の性格というものをお忘れになっておいででしゅ。何事にも無頓着で迷信深い東洋人が、どうして進歩などしゅることが出来ましょう。少なくとも、あなた方は法と秩序を私どもに齎して下しゃいましたよ。揺ぎなき『イギリスの正義』と『イギリスの平和』(パックス・ブリタニカ)を」
「『イギリスの業病(ポックス・ブリタニカ)』ですよ、先生。『イギリスの業病』とでも言った方がいいんです。いずれにしたって、誰のための平和だと言うんです。高利貸と弁護士のためじゃありませんか。もちろん我々は自分たちの利益のため、インドの平和を守っていますが、この法と秩序って奴は究極どういうことになると思います?銀行と監獄が殖える‥‥‥それだけのことじゃありませんか」
「しょれは大間違いでしゅ!」医師は大声を上げた。「監獄が不必要だと仰言るのでしゅか。あなた方が監獄以外は持って来て下さらなかったとでも‥‥‥。

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ミヤンマーという国への旅

オーウェル、本書以外では、奇妙なほどビルマ経験について沈黙しているようです。Emma Larkinが書いたSecret Histories 、現代ビルマにオーウェルの足跡を辿っています。まさに「1984年」的な戒厳体制にあるビルマで、オーウェルは予言者として知られているということです。社会主義革命がおかしな方向に進んだ様子を描く「動物農場」然り。そこでビルマでは、オーウェルはビルマについて三部作を書いた、「ビルマの日々」「動物農場」「1984年」だ、というのがジョークだとか。

邦題「ミャンマーという国への旅」で 晶文社より、大石健太郎訳で05/08邦訳刊行。3000円+税

訳者解説に加え、訳者撮影の現地の写真まで見られます。原書に写真はないのですが。

New York Times の書評 The Road to 'Animal Farm,' through Burmaの翻訳

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「牧師の娘」


「葉蘭をそよがせよ」


「ウィガン波止場への道 」


ジョージ・オーウェル「ウィガン波止場への道」第九章のごく一部の翻訳(訳本が絶版?なのは残念)

私はインド警察に五年間いたが、終わり頃には、自分が従事している帝国主義を説明のつかない苦々しい思いで嫌悪していた。イギリスの自由な雰囲気の中ではそうしたことは、はっきりとはわからない。帝国主義を嫌悪するには、その一部になる必要があるのだ。外から見ると、イギリスによるインド統治は、慈悲深く、必要にすら見え、事実そうなのだ。フランスによるモロッコ統治も、オランダによるボルネオ統治も、もちろんそうだ。人は、自分たちを統治するよりも、外国を統治するほうがたいていうまいものだから。だが、筋の通らない圧制であることを認めずに、そうした制度の一部となることはできない。ひどく面の皮が厚いインド在住イギリス人ですら、それは分かっている。通りでみかける現地人の顔どれもが、自分が極悪非道に侵入していることを自覚させるのだ。インドに在住するイギリス人の大半は、少なくとも時折は、イギリスで思われているほど、自分たちの立場に自己満足しているわけではない。よもやそんなことは言うまいと思うような連中、つまりジンに酔った悪辣な高官たちが、こう言うのを聞いたことがある。「もちろん、俺達がこんないまいましい国にいる権利などないさ。まあ来てしまった以上、居ようじゃないか。」本当の所、心底で、外国を侵略し、その国民を武力で押さえつけることが正しいと信じている現代人などいない。外国による抑圧は、経済的抑圧よりも、ずっと明白で、分かりやすい悪だ。そこで、イギリスでは、50万人の役立たずの怠け者どもを贅沢に暮らさせるために自分たちが搾取されるのをすなおに許しているが、中国人にされるようなら我々は最後の一人まで戦うだろう。同様に、良心の痛みなど全く感じないで不労所得の配当で暮らしている連中でさえ、頼まれもせずに外国にでかけて、君臨するのが悪いということぐらいは良く分かっている。 結果的に、インド在住イギリス人は罪悪感にさいなまれているが、言論の自由が無く、不穏な発言をしたことを漏れ聞かれただけでも将来の差し障りになるので、通常はできるだけそれを隠している。自分がその一部である体制を密かに嫌悪しているイギリス人はインド中にいる。そして、折々、気の置けない仲間であることが確実な場合にだけ、この隠された嫌悪感が溢れ出る。
教育分野で働いている、名前も聞かなかった見知らぬ男と、列車の中で過ごした夜のことを覚えている。夜暑くて眠れなかったため、話して夜を明かしたのだ。三十分ほど慎重に探りをいれあって、お互いに相手が安全であることを確認した。それから何時間も、列車が夜の闇の中を揺れながらゆっくり進む間、ビールを手元に大英帝国をこきおろした。内部から、知的に、詳細にこきおろしたのだ。それは二人には役に立った。だが禁じられていることを話していたので、やつれた朝の光の中、列車がゆっくりとマンダレーに辿り着いた時、二人はまるで姦通した男女のような罪悪感を抱きながら別れたのだ。

"The Road to Wigan Pier" George Orwell ,1937

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「カタロニア讃歌」


カタロニア讃歌ちくま学芸文庫カバー カタロニア讃歌岩波版カバー
ちくま学芸文庫 岩波文庫

ファシズムの暗雲に覆われた1930年代のスペイン、これに抵抗した労働者の自発的な革命として市民戦争は始まった。その報道記事を書くためにバルセロナにやってきたオーウェルは、燃えさかる革命的状況に魅せられ、共和国政府軍兵士として銃を取り最前線へ赴く。人間の生命と理想を悲劇的に蕩尽してしまう戦争という日常-残酷、欠乏、虚偽。しかし、それでも捨て切れぬ人間への希望を、自らの体験をとおして、作家の透徹な視線が描ききる。二十世紀という時代のなかで人間の現実を見つめた傑作ノンフィクション。共和国政府の敗北という形で戦争が終結した後に書かれた回想録「スペイン戦争を振り返って」を併録。

(ちくま学芸文庫 橋口稔訳 裏表紙の文章)

個人的には、一カ所だけどうしても納得できない部分があるのですが...。

バルセロナや、喉に貫通銃創をうけたシエタモの場所は、下記地図で。
甲斐弦著『オーウェル紀行・スペイン編』(絶版?)を参考に作成。

Orwell関連スペイン地名

岩波文庫 ちくま学芸文庫
都築忠七訳 橋口稔訳
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「空気を求めて」


オーウェル小説コレクション5
「空気を求めて」
小林歳雄訳
晶文社

訳書巻末にある、奥山康治早稲田大学教授の解題の一部を引用させていただきます。

(317-318ページ)
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ジョージ・ボウリングが見ているこの未来のすがたは『一九八四年』の世界そのままではないでしょうか。
(オーウェルは第二次大戦中の日記のなかに、「私は一九三一年ころから未来は破滅的になるに違いないことを知っていた」と書いています。)
『空気を求めて』と『一九八四年』のあいだに多くの共通点があることは注目に値すると思います。主人公はともに風采のあがらない孤独な中年男で、ともに現実に幻滅しており、閉ざされた未来しか持てない二人にとっては(黄金郷)は過去にしかありません。しかしその過去も現在の冷酷な手によって否定され、改変されつづけていきます。また二人はともに監視されています。『一九八四年』の(二分間増悪)に対して『空気を求めて』のレフト・ブック・クラブの演説会があり、ともにキャベツを煮るにおいがただよっています。ともに都会対田舎の設定があります。このように、『空気を求めて』は作者の最後の作品『一九八四年』に直結しているともいえるほど多くの類似点をもっています。
 この作品では、ものの(におい)が重要な役割を果たしています。(におい)が人を作動させ、過去をよみがえらせる、と主人公がいうところがありますが、教会堂の甘ったるいようなにおい、マーケット・プレイスのほこりっぱいにおい、いが豆の、アラセイトウの花の、ロースト・ポークの、飼犬の、魚釣りのえさのミミズの、恋人のいる店の布地の、そして彼女自身のにおいを主人公は思い出し、そこから当時のさまざまなことを思い出していきます。
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数えてみたところ「におい」は、翻訳文中61箇所ありました。(余り多いので例は省略)
また漢字「臭」では、以下11箇所ほどありました。(数字は該当ページ)

わが家の裏庭にはしじゅうごみ箱から悪臭がした。74
ごみ箱のにおい、そしてまた老犬ネーラーの臭気をもかぐようであるが 74
こういうものよりひどい臭気とか音もこの世にないとは断言できな 74
臭気を発するスレート盤二十四、五台 75
一種の強烈な、臭気のつよい感情だ、87
すえた悪臭、あわだつレモネードの味とげっぷをを出させるガス、87
ダラゲィットの裏庭は戦場の臭気がした。94
しまみみずという別種の虫もいる、しまがあって、はさみ虫のような臭いがし 95
そこの湿気と泥沼らしい腐臭を賞味した、少年らしいやり方 104
中隊から離れ、騒音と悪臭と、軍服と、将校と、敬礼と、111
陽気が暑くなると、耐えがたい悪臭を放った、143

合計で72箇所。
英語原文テキスト・ファイルで、smellを検索すると、やはり72箇所。
他の本に比べ「におい」の表現はかなり多いようです。
ついでながら他の本を調べると、
「におい」は
「パリ・ロンドンどん底生活」で十箇所、「ビルマの日々」「牧師の娘」「葉蘭をそよがせよ」では、いずれも0。
「ウイガン波止場への道」では二箇所。「カタロニア讃歌」では四カ所。
「動物農場」九箇所。「1984年」では0。

ただし「臭い」で見ると、
「パリ・ロンドンどん底生活」で六箇所。「ビルマの日々」では、43箇所
「牧師の娘」で三箇所、
「葉蘭をそよがせよ」で二箇所。「ウイガン波止場への道」で24箇所、「カタロニア讃歌」で八箇所。「1984年」で、八箇所あります。
英語原文では、smellでみると、たとえば
「パリ・ロンドンどん底生活」では、17箇所
「カタロニア讃歌」では、12箇所
「1984年」では、ずっと増えて、35箇所あるようです。

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「動物農場」


Animal Farm cover

人間たちにいいようにされている農場の動物たちが反乱をおこした。老豚をリーダーにした動物たちは、人間を追放し、「すべての動物が平等な」理想社会を建設する。しかし、指導者となった豚たちは権力を欲しいままにし、動物たちは前よりもひどい生活に苦しむことになる......。
ロシア革命を風刺し、社会主義的ファシズムを痛撃する二十世紀のイソップ物語。

(角川文庫 裏表紙の文章)

そとの動物たちは、豚から人間へ、また、人間から豚へ目を移し、もう一度、豚から人間へ目を移した。しかし、もう、どちらがどちらか、さっぱり見分けがつかなくなっていたのだった。

(高畠文夫訳 角川文庫 ─ 結末部分)

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パロディ、Snowball's Chance(ジョン・リード著)が2002年に刊行されています。概要はこちら

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「1984年」


1984cover

1984年、世界は三つの超大国に分割されていた。その一つ、オセアニア国では<偉大な兄弟>に指導される政府が全体主義体制を確立し、思想や言語からセックスにいたるすべての人間性を完全な管理下に置いていた。この非人間的な体制に反発した真理省の役人ウインストンは、思想警察の厳重な監視をかいくぐり、禁止されていた日記を密かにつけはじめるが......
社会における個人の自由と人間性の尊厳の問題を鋭くえぐる問題作

(早川書房 ハヤカワ文庫 裏表紙の文章)

 ある点では彼女の方がウィンストンよりもずっと鋭敏だし、党の宣伝に対してもあまり動じなかった。何時だか彼がある問題に関連して対ユーラシア戦争に触れた際、彼女は自分の意見によれば、対ユーラシア戦争なぞ起こっていないわとさりげなく言って彼を驚かせたものだ。連日ロンドン市内に落下しているロケット弾は、恐らく「民衆に恐怖心を植え付けて置くために」オセアニア政府自身が発射しているのではないかというのである。これは文字通り彼が夢にも考えなかったことだ。

ハヤカワ文庫 新庄哲夫訳 200ページ 

上記文章、マドリードの鉄道やらロンドンの地下鉄やら、いろいろ連想させられてしてしまいます。

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続編? America 2014: Orwellian Taleが2004年に刊行されました。Dawn Blair著
フラッシュ・ムービーのEpic:2014が話題になっています。でも、こちらのミステリー方もスリリング。翻訳を待ちたいものです。

映画「華氏911」中で引用されている「1984年」の文章

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WAR IS PEACE
FREEDOM IS SLAVERY
IGNORANCE IS STRENGTH

戦争は平和だ
自由は屈従だ
無知は力だ
ВОЙНА - ЭТО МИР.
СВОБОДА - ЭТО РАБСТВО.
НЕЗНАНИЕ - СИЛА.
Nineteen Eighty-Four

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