危ない弁護士は、所属する弁護士会へ苦情申立
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Last update 2024.8.28 mf
弁護士との間でトラブルが発生した場合、あるいは、弁護士の行動に疑問を持った場合、依頼人(依頼者)は次の方法で対処できます。
1.
依頼した弁護士の場合
相手から入金したお金を弁護士が渡してくれない、請求された弁護士費用が過大であるなど、依頼した「弁護士が変だ」と思ったら、まず、自分自身で弁護士に対して説明を求めてください。弁護士は依頼者に対して事件処理につき十分説明する義務( 弁護士職務基本規定 29条1項)があります。
弁護士の説明に納得できない場合は、その弁護士が所属する
弁護士会 に対して苦情を申出ることができます(必ず事前に電話で予約する)。費用はかかりません。無料です。
苦情申立
第二東京弁護士会の場合を例にとりますと、弁護士会では、まず、会の事務職員が苦情の受付けをします。次に期日を決めて、(苦情処理委員の弁護士2名が)申出をした方と面談し(電話で事情を聴く場合もあります)、申出の内容をチェックし、どのような手続きをすべきかを説明します。
金銭の返還を求めるとか、書類の返還を求める内容なら、紛議調停の申立手続の説明をします。手続きに必要な用紙ももらえます。
弁護士に対し懲戒を求める内容なら、懲戒の申立の手続きの説明をします。
苦情理由で最も多いのが、弁護士の態度、対応です。依頼人に対して丁寧な対応が求められています。
苦情原因が依頼者と弁護士間で意思の疎通を欠いたことによる単なる誤解であり、かつ、依頼者が希望するならば、苦情相談委員から弁護士に対し、依頼者の要望を伝えます。依頼者が希望するなら依頼人の名前を明かさずに、弁護士に対し苦情が出ている旨を伝えることもあります。
妥当でない苦情(この種の苦情は多い)の場合は、苦情相談委員はその旨説明し、依頼者に対し担当弁護士とよく話し合うよう伝えます。
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苦情の実状
ある弁護士会における統計ですが、苦情の内容で、一番多いのは、下記の通り、「対応、態度」です。弁護士としては、気をつけるべきでしょう。
ある弁護士会における苦情内容の統計 | 結果への不満 | 処理の仕方 | 処理の遅滞 | 対応・態度 | 報酬 | 預り金処理 | その他 | 苦情の合計 |
2012年 | 13 | 298 | 125 | 604 | 88 | 17 | 145 | 1290 |
2013年 | 32 | 316 | 89 | 496 | 115 | 36 | 185 | 1269 |
2014年 | 20 | 417 | 179 | 662 | 113 | 28 | 233 | 1652 |
2015年 | 32 | 362 | 170 | 558 | 114 | 29 | 336 | 1601 |
2016年 | 27 | 334 | 247 | 609 | 77 | 33 | 331 | 1658 |
2021年 | 48 | 291 | 179 | 602 | 147 | 19 | 447 | 1733 |
2022年 | 34 | 322 | 118 | 502 | 98 | 18 | 521 | 1613 |
2023年 | 31 | 334 | 322 | 501 | 150 | 37 | 729 | 1947 |
苦情の実状を見ますと、依頼者と弁護士間のちょっとした感情のもつれに、金銭欲が絡み、トラブルに発展するケースが多いです。特に、少額事件は、気をつけて処理すべきです。
事件着手前に、苦情になると予想できる(面倒な)依頼者もいます。そのようなケースは、弁護士は、依頼を断るとか、報酬を時間制にして月払いにするとか、面倒ですが、節目ごとに依頼者の意思についての確認書を取るなどの予防策が必要です。
依頼者には、
事件を依頼する前は弁護士報酬を払う意思がありますが、事件が解決すると支払う意思がなくなるのは人情なのでしょう
(例、弁護士報酬支払いを回避する依頼者)。
重要なことは次のことです。
- 普段から依頼者と弁護士間で連絡を密にし信頼関係を築くこと。それでも精神障害者の中には、信頼関係の構築が難しい場合があります。できれば、信頼できる紹介者がいて、調整してくれるといいですね。
- 事件着手前に、依頼者と弁護士間で報酬契約を文書で締結すること。現在では、文書化は弁護士の義務となっています
(弁護士の報酬に関する規程5条2項)。
- 紛争の相手方との間で和解契約を締結する際には、依頼者に立ち会ってもらう。
しかし、
依頼者が裁判上の和解に立ち会ったが、和解に不満であるとの紛議の申立てをするケースがあります。苦情が予想される場合は、さらに、事前に、依頼者から、和解内容を書いた書面に捺印してもらい、承諾した旨の意思を確認する必要があります。
希にですが、弁護士が依頼者からの預り金を横領し、刑事事件になるケースがあり、依頼者が大きな損害を受けることがあります。これは立派な犯罪です。このような弁護士は日頃の態度、事件処理にもその兆候(処理がいいかげん、常に話が大きい、連絡がない、説明がない、嘘をつく)は出ていますから、気を付ければわかるはずです。弁護士の仕事は地味で、時間と労力を要するものです。
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紛議調停(弁護士法41条に基づいています)
紛議調停を申立てられた弁護士に
は、毎回の期日に出頭義務があります(ただし、具体例ですが、呼出しを受けた8回のうち7回不出頭、4回のうち4回不出頭で、戒告ですから、軽いです
、「自由と正義」、2015-9-100)。
弁護士は、普通、紛議調停の申立をされることは不名誉と考え、解決に努力するでしょう。事件処理の不手際があったことでなく、そのような依頼者を持ったことを不名誉と考えるでしょう。さらに、弁護士は、月1回くらいの紛議調停期日に、出頭する義務があるのです。弁護士にとって負担です。この点でも、弁護士は、報酬を、若干、減額してトラブルを解決する努力する可能性があります。
依頼人が弁護士の責任を追及する場合は、まず、紛議調停の申立て、次に、懲戒請求の順序が良いです。初めから、懲戒請求だと次がないです。
紛議調停委員会では委員3人がチームを組み、弁護士と依頼者の要求を調整し、金銭の清算をするように努めます。これは、話合いですから強制力はありません。しかし、弁護士と依頼者間の金銭上のもめごとの紛議調停は 3 回ないし 4 回程度の期日でまとまる例が多いです。
問題は、紛議調停にかかる常連の弁護士がいることです。弁護士費用を受け取っても仕事をしない弁護士、高い弁護士費用を取り、苦情があったら返す(苦情がなければ返さない)ことを繰り返している弁護士が、少数ですが、います。
解決率は、弁護士会によって違いますが、2割前後です。
懲戒請求(弁護士法56条以下に基づいています)
手続きを執る順序は、まず、紛議調停の申立、次に、懲戒請求です。紛議調停の申立を先にして下さい。
懲戒請求があると、綱紀委員会では申立て理由があるか審査し、懲戒請求が相当で考えるときは、懲戒委員会に審査を求めます(2012年では178件)。
懲戒委員会では、内容を審査し、処分を決めます。懲戒処分には、戒告、2年以内の業務停止、退会命令、除名があります(弁護士法57条)。
懲戒事由発生後 3 年を経過すると懲戒委員会の審査にかけることはできませんので、ご注意下さい(弁護士法64条)。
以上の手続きには費用はいりません。
最近、弁護士会は、被害拡大防止のため、綱紀委員会での議決後、懲戒処分前でも、弁護士の氏名、非行などを公表し、同時に救済のための法律相談を始めました(懲戒処分の公告及び公表等に関する規程8条)。画期的なことです。具体例が、
懲戒手続に付された事案の事前公表(一弁)、
同(東京弁護士会)、
同(山梨県弁護士会)、
同(静岡県弁護士会)、
同(福岡県弁護士会)など
です。
2.交渉や裁判をしている相手の弁護士の場合
- 紛争の相手方の弁護士に対し、紛議調停申立や、懲戒請求をする人がいます。ある弁護士会の平成28年の苦情申立の統計では、依頼した弁護士に対する苦情が695件に対し、相手方弁護士への苦情が331件もありました。多くは、嫌がらせ目的であり、濫訴です。意味がありません。
この場合は、
上記手続きでは、解決できません。至急、自分で弁護士を依頼し、対抗する必要があります。それが正攻法です。ただし、この場合も、苦情の内容が、「対応、態度」ですので、弁護士も気をつけるべきでしょう。 -
なお、相手方弁護士に違法行為がある場合は、積極的に懲戒請求をしてください。私の依頼者も、弁護士の違法行為により被害をうけ、裁判中に故意の違法行為であることが判明し、私のアドバイスの下、裁判中に、相手側弁護士を懲戒請求し、成功しました。
May 7,1997
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