民法抜粋:90条-174条ノ2

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last updated 2006.7.17

第5章 法律行為

第1節 総則
第90条(公序良俗) 
公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

第91条(任意規定と異なる意思表示)
法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、そ
の意思に従う。

第92条(任意規定と異なる慣習)
法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者が
その慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

第2節 意思表示
第93条(心裡留保) 
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにそ
の効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたと
きは、その意思表示は、無効とする。

第94条(虚偽表示)
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

第95条(錯誤)
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大
な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

第96条(詐欺又は強迫)
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその
事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することがで
きない。

第97条(隔地者に対する意思表示)
隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

2 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失し
たときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

第98条(公示による意思表示)
意思表示は、表意者が相手方を知ることができず、又はその所在を知ることができないと
きは、公示の方法によってすることができる。

2 前項の公示は、公示送達に関する民事訴訟法(平成八年法律第百九号)の規定に従い、
裁判所の掲示場に掲示し、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載して
行う。ただし、裁判所は、相当と認めるときは、官報への掲載に代えて、市役所、区役所
、町村役場又はこれらに準ずる施設の掲示場に掲示すべきことを命ずることができる。

3 公示による意思表示は、最後に官報に掲載した日又はその掲載に代わる掲示を始めた日
から二週間を経過した時に、相手方に到達したものとみなす。ただし、表意者が相手方を
知らないこと又はその所在を知らないことについて過失があったときは、到達の効力を生
じない。
4 公示に関する手続は、相手方を知ることができない場合には表意者の住所地の、相手方
の所在を知ることができない場合には相手方の最後の住所地の簡易裁判所の管轄に属する
。
5 裁判所は、表意者に、公示に関する費用を予納させなければならない。

第98条の2(意思表示の受領能力)
意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは
、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、その法定代理人
がその意思表示を知った後は、この限りでない。

第3節 代理
第99条(代理行為の要件及び効果) 
代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対し
て直接にその効力を生ずる。
2 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

第100条(本人のためにすることを示さない意思表示)
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみ
なす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができた
ときは、前条第一項の規定を準用する。

第101条(代理行為の瑕疵)
意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知ら
なかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有
無は、代理人について決するものとする。

2 特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってそ
の行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを
主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする
。
第102条(代理人の行為能力)
代理人は、行為能力者であることを要しない。

第103条(権限の定めのない代理人の権限)
権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。

一 保存行為

二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を
目的とする行為

第104条(任意代理人による復代理人の選任)
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなけれ
ば、復代理人を選任することができない。

第105条(復代理人を選任した代理人の責任)
代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本
人に対してその責任を負う。
2 代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。た
だし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本
人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。

第106条(法定代理人による復代理人の選任)
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第一項の責任のみを負う。

第107条(復代理人の権限等)
復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。

2 復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。
第108条(自己契約及び双方代理)
同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となること
はできない。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限
りでない。

第109条(代理権授与の表示による表見代理)
第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてそ
の他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他
人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この
限りでない。

第110条(権限外の行為の表見代理)
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権
限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。

第111条(代理権の消滅事由)
代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。

一 本人の死亡

二 代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは後見開始の審判を受けたこと。
2 委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。

第112条(代理権消滅後の表見代理)
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によっ
てその事実を知らなかったときは、この限りでない。

第113条(無権代理)
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本
人に対してその効力を生じない。

2 追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができな
い。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない。

第114条(無権代理の相手方の催告権)
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認を
するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその
期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。

第115条(無権代理の相手方の取消権)
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことがで
きる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、こ
の限りでない。

第116条(無権代理行為の追認)
追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただ
し、第三者の権利を害することはできない。

第117条(無権代理人の責任)
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人
の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は
損害賠償の責任を負う。

2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知
っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約を
した者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

第118条(単独行為の無権代理)
単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有
しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第百十三
条から前条までの規定を準用する。代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為を
したときも、同様とする。

第4節 無効及び取消し
第119条(無効な行為の追認)
無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効
であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。

第120条(取消権者)
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、
承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。

2 詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はそ
の代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。

第121条(取消しの効果)
取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、
その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。

第122条(取り消すことができる行為の追認)
取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消
すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。

第123条(取消し及び追認の方法)
取り消すことができる行為の相手方が確定している場合には、その取消し又は追認は、相
手方に対する意思表示によってする。

第124条(追認の要件)
追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。

2 成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした
後でなければ、追認をすることができない。

3 前二項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする
場合には、適用しない。

第125条(法定追認)
前条の規定により追認をすることができる時以後に、取り消すことができる行為について
次に掲げる事実があったときは、追認をしたものとみなす。ただし、異議をとどめたとき
は、この限りでない。

一 全部又は一部の履行

二 履行の請求

三 更改

四 担保の供与

五 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部又は一部の譲渡

六 強制執行

第126条(取消権の期間の制限)
取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅す
る。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

第5節 条件及び期限
第127条(条件が成就した場合の効果) 
停止条件付法律行為は、停止条件が成就した時からその効力を生ずる。

2 解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う。

3 当事者が条件が成就した場合の効果をその成就した時以前にさかのぼらせる意思を表示
したときは、その意思に従う。

第128条(条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止)
条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその
法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない。

第129条(条件の成否未定の間における権利の処分等)

条件の成否が未定である間における当事者の権利義務は、一般の規定に従い、処分し、相
続し、若しくは保存し、又はそのために担保を供することができる。

第130条(条件の成就の妨害)
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたとき
は、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。

第131条(既成条件)
条件が法律行為の時に既に成就していた場合において、その条件が停止条件であるときは
その法律行為は無条件とし、その条件が解除条件であるときはその法律行為は無効とする
。
2 条件が成就しないことが法律行為の時に既に確定していた場合において、その条件が停止条件であるときはその法律行為は無効とし、その条件が解除条件であるときはその法律
行為は無条件とする。

3 前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったこと
を知らない間は、第百二十八条及び第百二十九条の規定を準用する。

第132条(不法条件)
不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするもの
も、同様とする。

第133条(不能条件)
不能の停止条件を付した法律行為は、無効とする。

2 不能の解除条件を付した法律行為は、無条件とする。

第134条(随意条件)
停止条件付法律行為は、その条件が単に債務者の意思のみに係るときは、無効とする。

第135条(期限の到来の効果)
法律行為に始期を付したときは、その法律行為の履行は、期限が到来するまで、これを請
求することができない。

2 法律行為に終期を付したときは、その法律行為の効力は、期限が到来した時に消滅する。

第136条(期限の利益及びその放棄)
期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。
2 期限の利益は、放棄することができる。ただし、これによって相手方の利益を害するこ
とはできない。
第137条(期限の利益の喪失)
次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。

一 債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

二 債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。

三 債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。

第6章 期間の計算

第138条(期間の計算の通則) 
期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別
段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。

第139条(期間の起算)
時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。

第140条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、そ
の期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。

第141条(期間の満了)
前条の場合には、期間は、その末日の終了をもって満了する。

第142条
期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定
する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期
間は、その翌日に満了する。

第143条(暦による期間の計算)
週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年に
おいてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定め
た場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

第7章 時効
第1節 総則
第144条(時効の効力) 
時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

第145条(時効の援用)
時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。

第146条(時効の利益の放棄)
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

第147条(時効の中断事由)
時効は、次に掲げる事由によって中断する。

一 請求

二 差押え、仮差押え又は仮処分

三 承認

第148条(時効の中断の効力が及ぶ者の範囲)
前条の規定による時効の中断は、その中断の事由が生じた当事者及びその承継人の間にお
いてのみ、その効力を有する。

第149条(裁判上の請求)
裁判上の請求は、訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。

第150条(支払督促)
支払督促は、債権者が民事訴訟法第三百九十二条に規定する期間内に仮執行の宣言の申立
てをしないことによりその効力を失うときは、時効の中断の効力を生じない。

第151条(和解及び調停の申立て)
和解の申立て又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事審判法(
昭和二十二年法律第百五十二号)による調停の申立ては、相手方が出頭せず、又は和解若
しくは調停が調わないときは、一箇月以内に訴えを提起しなければ、時効の中断の効力を
生じない。

第152条(破産手続参加等)
破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、債権者がその届出を取り下げ、又はそ
の届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じない。

第153条(催告)
催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法若
しくは家事審判法による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差
押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

第154条(差押え、仮差押え及び仮処分)
差押え、仮差押え及び仮処分は、権利者の請求により又は法律の規定に従わないことによ
り取り消されたときは、時効の中断の効力を生じない

第155条
差押え、仮差押え及び仮処分は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に
通知をした後でなければ、時効の中断の効力を生じない。

第156条(承認)
時効の中断の効力を生ずべき承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能
力又は権限があることを要しない。

第157条(中断後の時効の進行)
中断した時効は、その中断の事由が終了した時から、新たにその進行を始める。
2 裁判上の請求によって中断した時効は、裁判が確定した時から、新たにその進行を始め
る。

第158条(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)
時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないとき
は、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職し
た時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は
、完成しない。

2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有す
るときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代
理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成し
ない。

第159条(夫婦間の権利の時効の停止)
夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過
するまでの間は、時効は、完成しない。

第160条(相続財産に関する時効の停止)
相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決
定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

第161条(天災等による時効の停止)
時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため時効を中断
することができないときは、その障害が消滅した時から二週間を経過するまでの間は、時
効は、完成しない。

第2節 取得時効
第162条(所有権の取得時効) 
二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所
有権を取得する。

2 十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占
有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する。

第163条(所有権以外の財産権の取得時効)
所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって、平穏に、かつ、公然と行使する
者は、前条の区別に従い二十年又は十年を経過した後、その権利を取得する。

第164条(占有の中止等による取得時効の中断)
第百六十二条の規定による時効は、占有者が任意にその占有を中止し、又は他人によって
その占有を奪われたときは、中断する。

第165条
前条の規定は、第百六十三条の場合について準用する。

第3節 消滅時効

第166条(消滅時効の進行等) 
消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。

2 前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、そ
の占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効
を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

第167条(債権等の消滅時効)
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
2 債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

第168条(定期金債権の消滅時効)
定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済
期から十年間行使しないときも、同様とする。

2 定期金の債権者は、時効の中断の証拠を得るため、いつでも、その債務者に対して承認
書の交付を求めることができる。

第169条(定期給付債権の短期消滅時効)
年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年
間行使しないときは、消滅する。

第170条(三年の短期消滅時効)
次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の
時効は、同号の工事が終了した時から起算する。

一 医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権

二 工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権

第171条
弁護士又は弁護士法人は事件が終了した時から、公証人はその職務を執行した時から三年
を経過したときは、その職務に関して受け取った書類について、その責任を免れる。

第172条(二年の短期消滅時効)
弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権は、その原因となった事件が終了した
時から二年間行使しないときは、消滅する。

2 前項の規定にかかわらず、同項の事件中の各事項が終了した時から五年を経過したとき
は、同項の期間内であっても、その事項に関する債権は、消滅する。

第173条
次に掲げる債権は、二年間行使しないときは、消滅する。
一 生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権

二 自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事
をすることを業とする者の仕事に関する債権

三 学芸又は技能の教育を行う者が生徒の教育、衣食又は寄宿の代価について有する債権

第174条(一年の短期消滅時効)

次に掲げる債権は、一年間行使しないときは、消滅する。
一 月又はこれより短い時期によって定めた使用人の給料に係る債権

二 自己の労力の提供又は演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権

三 運送賃に係る債権

四 旅館、料理店、飲食店、貸席又は娯楽場の宿泊料、飲食料、席料、入場料、消費物の
代価又は立替金に係る債権

五 動産の損料に係る債権

第174条の2(判決で確定した権利の消滅時効)
確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであ
っても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力
を有するものによって確定した権利についても、同様とする。

2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。


1997.6.12