弁護士報酬が少額な事件

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2015.5.30mf

相談:弁護士と打ち合わせができない

私は、部屋を家賃9万円で借りました。ところが、階下(私の部屋は2階)の住人が、変人で、「音がうるさい」と言い続け、私は、半年ほどで、引っ越しました。 階下の住人が変人であることは、大家も、仲介業者も知っていたはずであり、私は、大家に支払い済の権利金18万円、仲介手数料9万円の返還を求めましたが、大家は返しません。
そこで、私は、権利金18万円、手数料9万円、慰謝料50万円の合計77万円の支払いを求めて、自分で、支払い督促の申立 をしました。でも、相手が異議を出し、通常訴訟になりました。
私は、弁護士会の法律相談で知り合った弁護士(大学の教授でもありました)に事件を依頼しました。着手金としては、10万円を支払いました。
ところが、弁護士との打合せが中々できません。前の裁判の後、次の裁判の前に、「打合せをしたい」と弁護士に連絡をしたのですが、弁護士は、「不在」とか、「来客中」とかで、話ができません。事務員に、「電話を下さい」と伝言をお願いしても、電話は来ず、打合せができません。
どうしたら、よいでしょうか。

お答え:依頼人も、弁護士も共存できる方法を模索すべき

安すぎる着手金

弁護士会の旧報酬規定では、訴訟事件の着手金の最低額は10万円です。しかし、着手金10万円で裁判することには、相当無理があります。裁判では、着手金は、最低30万円が適正でしょう。10万円の着手金は安すぎます。
この弁護士は、経済合理的思考から、訴訟を引き受けたのではなく、何らかの特別な理由から(例えば、自分は、教員であるから、弁護士業務から、収入を得る必要はない。事件を引き受けると、教員として、法律実務の勉強になる)、着手金10万円で引き受けたかもしれません。

苦情を言えば、弁護士に逃げられる

しかし、弁護士報酬が安い事件でも、弁護士は、通常と同じように誠実に事件を処理する義務があります。弁護士費用が少額、あるいは、ゼロの事件でも、弁護士は手を抜いてはいけないのです。その意味では、この弁護士の事件処理はまずいです。
そこで、依頼者が弁護士を責めることはできます。でも、依頼者が弁護士を責めた場合、弁護士は、(安い費用で引き受けたのに、これでは、やっていられないと)面倒なので、辞任する可能性があります。委任契約では、当事者はいつでも解除できるからです(民法651条1項) 。 弁護士に辞任されたら、困りますね。

弁護士と共存する方法を探る

10万円の着手金は安すぎます。そこで、安い着手金でも事件処理をしてもらえる方法を考えるべきです。例えば、依頼人としては、弁護士と話し合い、弁護士の労力を省くため、弁護士の仕事を手伝ってみたら、いかがですか。準備書面の下書きを書く、証拠の作成(正本、副本、控えを作る)を手伝うなど、作業に協力してみたらいかがですか。要は、気持ちの問題でもありますから、依頼人が協力する姿勢を持ち、弁護士も共存できる方法を模索すべきですね。

無理に着手金を安くさせる方法はまずい

契約の際に、弁護士費用をできるだけ叩いて安くさせ、契約後に、面倒なことを次々に要求する依頼人がいます。これでは、弁護士に逃げられます。

結論:弁護士は安易に事件を引き受けている様子

あなたの事件は勝訴できるか、問題があります。特に慰謝料は問題があります。
そうすると、弁護士費用を支払って訴訟をする依頼者に経済的にメリットがあるか、わかりません。弁護士は、問題がある事件を安易に引き受けてはいけないでしょう。引き受ける場合は、「敗訴する可能性がある、その場合、弁護士費用などがマイナスになる」ことを依頼者に十分説明する必要があったでしょうね。
少額事件は、依頼人にとっても、弁護士にとっても、後で、トラブルに発展する可能性を含んでいます。
2007.1.31
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