天狗岳( 西天狗:2,646m ) 2001.05.20 登山


  スリバチ池と東天狗・西天狗 ( 2001.05.20 )

【天狗岳登山記録】

【天狗岳登山データ】

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天狗岳登山記録

今回北八ヶ岳に位置する天狗岳に登ってきた。 何と 1月4日の黒川鶏冠山以来 4ヶ月半ぶりの登山である。
このように自ら驚いているような書き方をするのもおかしいが、山に関するホームページを開いている私としては、 このブランクはやはり特筆すべき大事件 (ちょっと大げさ) である。
これだけのブランクを作った理由は 山の雑記帳 に書いた通りだが、 過去を振り返ってみるに、これ程長い間山に登らなかったのは宮崎の単身赴任から帰ってきた 1995年以来のことである。
その時も 3月25日に四国の剣山に登ってから 8月12日に草津白根山に登るまで、 やはり 4ヶ月半ほどのブランクを生じさせたのであった。
そしてブランクの理由も、宮崎から帰任後の仕事環境の変化とともに、台湾出張などが数回あって忙しい日が続き、山に行けない状況が長引いているうちに山に対するテンションが段々下がっていったことが理由であることから、 今回のケースと大変よく似ている。
まあ、今後はもう 2度とこういうことがないようにしたいものである。

さて、久々の登山に選んだ天狗岳であるが、標高が高い割には登山コースが 「一般向け」 となっていることが大きな決め手になっている。
無論、これはブランクによる体力低下が心配だったからであるが、体力に自信がないならもっと低い山を選べば良いものを、 一応 2,600mを越す山を選んで格好をつけるところが 如何にも私らしい (自嘲気味に笑っております)
とは言うものの、先に述べた山の雑記帳の中でも書いた通り、実は当日は 雁ヶ腹摺山 に登るつもりで家を出たのである。 クルマがあまりに調子よく進むものだからつい行き先を変更してしまったのだが、やはり深層心理として 2,000m以上の山に登りたいという見栄も働いたのは確かであろう。

前置きが長くなったが、途中での道探しに若干苦労したものの、登山基地である唐沢鉱泉に着いたのが 7時30分過ぎ。
身支度をして駐車場を出発したのが 7時38分 であった。
先日のゴールデンウィーク最終日、横浜マリノス VS 柏レイソル のサッカー試合を観戦していて その日差しの強さに夏を感じたものだから、 晴天が約束されたこの日も半袖のポロシャツという服装で出発したのだが、結構風が冷たい。
まあ、考えたらこの唐沢鉱泉はすでに標高 1,800mを超えているのだから当たり前である。
それにしても、当初登ろうと思っていた雁ヶ腹摺山の高さが 1,857mであるのだから、この出発点が当初の目的地の高さと既に同じであるというのが 何となく面白い。

林道を進んで行き、鉱泉の立派な建物の前を通り過ぎると、すぐに右手に鉱泉の駐車場への道があり、 その横に天狗岳への登山道を示す標識が見えた。これは帰りに下る予定の西天狗尾根の道である。
今回は体力も考えて、まずは黒百合平を目指すため、そのまままっすぐ林道を進んでいくと、やがて林道も行き止まりとなり、 その手前右に唐沢にかかる橋が見えてきた。橋の横には黒百合平を示す標識が立っている。いよいよ久しぶりの山登りである。
橋を渡ってすぐに山に取り付くことになるのだが、いきなりの急登を予想したにもかかわらず道は緩やかで、足慣らしにはもってこいであった。
息もあまり切れず、順調に足が進む。

唐沢の支流を何回か渡ると、やがて道に残雪が現れ出した。凍っているとまずいと思ったが、 幸いなことに軽アイゼン無しでも十分に登れる柔らかさである。
登るにつれて残雪の量は増え、暫くしてからは完全に雪に覆われた樹林帯の中の登りとなる。
道は先人の足跡が明瞭につけられているので迷うことはなかったが、所々にかなり雪の中にもぐり込んでしまった足跡が残っている。 雪が腐り始めている訳で、私も気を付けてはいたものの、何回か足にかかった体重がそのまま雪を深く押し込んで、 ひどい時には太股近くまでもぐってしまうことあったのだった。
また、足下には水が流れる音がしているのだが、それは雪の下であることが多く、道を間違えてしまえば、雪を踏み抜いて流れにはまってしまう危険がある訳で、 結構恐ろしい。
時々雪の下に鉄製の赤い網が見え、その網が流れの上を覆っているようであったが、雪がない時はこの道はどうなっているのだろう。

登り始めてから小1時間ほど経った 8時31分、標識が目の前に現れ、 渋ノ湯からの道と合流した。腐った雪の中で苦労している割には良いペースである。
この合流地点からも唐沢源流の間を登っていくようであったが、やはり雪の中、流れはあまり見えず水音だけがうるさい。
ガイドブックによれば、道は美しい苔の絨毯に敷き詰められた原生林の中を行くということであるが、 周囲は雪に覆われて全くそういうことは分からない。

やがて、ハイマツが現れるとすぐに周囲は明るくなり出し、林は終わって目の前に建物が見えてきた。 黒百合平に立つ黒百合ヒュッテである (9時ジャスト)
明るい日差しのもと、誰もいないヒュッテ前のベンチで 5分ほど休んでからスリバチ池を目指す (ヒュッテ内には人の気配はあった)

道はヒュッテ前の斜面を登ることになるのだが、斜面は木もなく一面雪に覆われており、また足跡も古いものがいくつかバラバラにつけられているだけなので、 どれが正しい道か分からない。適当に斜面左側に付けられた足跡をたどっていったのだが、足跡が古いために足場にならず、 キックステップもどきで斜面を蹴りながらの登りである。
斜面はそれほどきつくないので大丈夫とは思ったが、やはり雪に覆われているのだから足を滑らせたら滑落の危険はある訳で、 ヒュッテ前での滑落は格好悪いことこの上ないと、結構 慎重に登ったのであった。

長く続くかと思ったこの雪の斜面もすぐに終わることとなり、目の前に雪の中から顔を出している岩とハイマツが現れた。
ここから先の道が分からないので岩の上に立ってみると、少し先の岩場に緑のロープが見える。どうやらそのロープの内側が正しい道だったようである。
雪があったから良いものの、私の登ったルートは本来なら道ではなかったようである。
本来のルートに戻り、岩の道を進むと、目の前にスリバチ池とその後ろ聳える東天狗、西天狗の双耳峰が現れ、 その美しさに思わず息を飲んだのであった。
眼下には透明な水をたたえたスリバチ池が広がり、その向こうには、高かった山がその中腹から吹っ飛んでしまったような感じのする東天狗の姿と、 その右手に綺麗な曲線の鞍部を経て乳房を思わせる優美な形をした西天狗が立っているのであった。
魅力的なのはやはり形の整った西天狗のほうで、特に雪を斜面にたくさん残しているだけに、その姿が一段と栄えているのであった。

そして、これら双耳峰とスリバチ池との間には、シラビソやコメツガであろうか、 北八ヶ岳を象徴するような樹林の波があって、これらの組み合わせが醸し出すのびやかな雰囲気は、 暫く忘れていた山の素晴らしさを再認識させてくれるものであった。
この辺りは天狗ノ奥庭と言われているようであるが、昔の人は自然が作り出した素晴らしい景色を天狗の仕業だとしていることが多いらしく、 結構 天狗の ○○ という呼び名を付けられた場所がある。
すぐに頭に浮かぶのが火打山直下の 「天狗の庭」 である。

このように景色は素晴らしかったものの、ここを吹き抜ける風は冷たく、 とても半袖では耐えられる状態ではない。慌ててザックからウィンドブレーカーを引っ張りだした次第である。
溶岩台地状の岩がゴツゴツしている道を進み、スリバチ池を巻くように進んでいくと、道はやがて岩とハイマツの中の登りとなった。
岩に付けられたペンキ印をたどっていきながら、時々振り返れば、蓼科山や北横岳が霞んだように見える。
小さなコブを越えると東天狗の山腹で、ここからはこれまでの緩やかな登りとは違って、結構きつそうな登りが始まった。
ここでも岩場をペンキ印頼りに登っていくことになる。時々ペンキ印の間隔が空いて道を探さねばならないことがあったが、 着実に高度は稼いでいるようで、いつの間にか黒百合平−中山峠経由の道と合流することになったのだった。右手には西天狗が大きい。

少々バテ始めたかな と思う頃にちょっとした鎖場が現れた。ここは天狗の鼻と言われる岩場で、 鎖を使ってそこを乗り越えると、後は楽な道となり、ほんの一踏ん張りで東天狗頂上であった (10時5分)

東天狗頂上は大きな岩が重なっている岩稜地帯で、東側、南側はストンと切れ落ちている。
展望は抜群で、南側は根石岳、硫黄岳が目の前に大きく、 その向こうにお馴染みの赤岳阿弥陀岳の連なりが見え、さらに右奥にはうっすらとではあるが南アルプスの山々も見える。
西側は西天狗が大きく、その斜面にはまだかなりの雪が残っている。
北側は北八ヶ岳、蓼科山の連なりで、その広々と伸びやかな風景は、南側の荒々しく、 無骨にも思えるそれとは好対照である。

簡単な昼飯を済ませ、今度は目の前の西天狗に向かう (10時28分発)
ガレた道を慎重に下り、少々雪解けでぬかるんだ鞍部を越えると赤くザレた道の登りとなる。
勾配は見た目程はきつくはなく、あっという間に西天狗頂上であった (10時40分)
ここからの展望も東天狗に負けず劣らず素晴らしいものであったが、頂上の様子は全く違い、東天狗が狭く大きな岩が重なっているのに対し、 こちらは小広く、ハイマツなども生えていて心が和む。
また、西天狗と書いた標識はなかったものの、石仏などが置かれていたのが面白い。

下山はそのまま頂上を突っ切り、西天狗尾根を下ることになる (10時55分発)
ここはかなりの急勾配で、しかも残雪の量も多かったものだからかなり苦労を強いられた。滑らないように周囲の木々につかまりながらの下降であるが、 ここでも雪が腐っていてズボッと足をとられることが多く、結構難儀である。
この尾根は総じて展望は良くないが、2カ所ほど展望台と呼ばれるところがあり、そこからは八ヶ岳の山々がよく見える。
この展望台を含め、3つ程ピークを越えるとやがて残雪の量もぐっと減り、足も快調に進むようになる。
少し緩やかになってきたかな と思うとやがて枯れ尾ノ峰分岐で、右に下れば唐沢鉱泉である。
しかし、時計を見ると 11時58分。まだまだ余裕があったため、さらに先に進んで枯れ尾ノ峰経由の道をとることにする。
この分岐から枯れ尾ノ峰までの道はほとんど起伏もない道で、途中カヤトの原もあってそこには咲きかけの桜もあり、 今までとは全く違うのんびりムードの道である。
やがて唐沢鉱泉への道を右に見てから 3分ほど進むと、標柱の立っている枯れ尾の峰で、そこからは峰の松目 (だと思う) が大きい (12時19分)
暫し休息した後、先ほどの唐沢鉱泉への道に戻り、後は一気の下りである。樹林帯をひたすら下り、唐沢を渡るとすぐに今朝程の林道で、 道を右にとればクルマを置いた駐車場であった (12時49分)

久々の登山には大変手頃な登り応えと距離であり、しかも素晴らしい景色に触れることができて大変満足のいく山行であった。
山へのテンションを上げることには大いにプラスとなった1日であった。


天狗岳登山データ

上記登山のデータ登山日:2001.05.20 天候:快晴単独行日帰り
登山路:唐沢鉱泉−黒百合平−スリバチ池−天狗の鼻−東天狗−西天狗−展望台−枯れ尾ノ峰分岐−枯れ尾ノ峰 −唐沢鉱泉
交通往路:瀬谷−八王子IC−(中央高速道)−諏訪南IC−三井の森−唐沢鉱泉 (車にて)
交通復路唐沢鉱泉−三井の森−諏訪南IC−(中央高速道)−相模湖IC−三ヶ木−半原−厚木−(国道246号線)−瀬谷 (車にて)
その他の
天狗岳
登山
唐沢鉱泉−黒百合平スリバチ池−東天狗−西天狗−第二展望台−第一展望台−枯尾ノ峰分岐 −枯尾ノ峰−唐沢鉱泉  ( 2009.5.9 快晴 )
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ミドリ池入口−ミドリ池−本沢温泉−夏沢峠−箕冠山−根石岳−白砂新道分岐(天狗岳敗退)−本沢温泉− ミドリ池−ミドリ池入口  ( 2015.10.13 晴れ。但し山はガス。 )
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桜平−夏沢鉱泉−オーレン小屋−箕冠山−根石岳−天狗岳(東、西)−根石岳−箕冠山− 夏沢峠−硫黄岳−赤岩ノ頭−峰の松目−オーレン小屋−夏沢鉱泉−桜平  ( 2015.10.24 快晴。 )
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渋御殿湯−黒百合平−中山峠−東天狗岳−西天狗岳−天狗の庭分岐−天狗の庭−黒百合平−渋御殿湯  ( 2016.4.6 晴れ。 )
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本沢入口−本沢温泉−夏沢峠−箕冠山−根石岳−白砂新道分岐−東天狗岳−西天狗岳−東天狗岳−白砂新道分岐−本沢温泉−本沢入口  ( 2017.11.7 快晴。 )
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唐沢鉱泉−唐沢鉱泉分岐−第一展望台−第二展望台−西天狗岳−東天狗岳−天狗の奥庭−スリバチ池−黒百合平−唐沢鉱泉・渋ノ湯分岐−唐沢鉱泉  ( 2018.3.28 快晴。 )
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