蓼科山( 蓼科山:2,530m ) 2002.10.27 登山


  まさに白黒写真の世界、蓼科山頂蓼科山神社奥宮 ( 2002.10.27 )

【蓼科山再登山記録】

【蓼科山再登山データ】

フォト

初回登山


蓼科山再登山記録

10月初めの 月山鳥海山、そしてその翌週の 至仏山 と、 少しずつ山行のペースが上がってきたところだったのだが、 その翌週末 (10月19日、20日) は残念ながら空模様が芳しくなかったため 山登りは断念せざるを得ない状況であった。
そして、 これまたその翌週の 10月26日の土曜日も雨となって、 折角盛り上がってきた気運が萎えかけ始めていたところ、 ありがたいことに翌日 27日の日曜日は快晴になるとの予報があり、 喜び勇んで山に出かけたのであった。

行き先は、蓼科山。 尾瀬の 燧ヶ岳 とどちらにするか散々迷ったあげく、快晴の確率が高そうな方を選んだ次第である(蓼科山、燧ヶ岳を選んだ理由の詳細は 山の雑記帳 参照)
しかし、絶対快晴との確信も、 中央高速道を諏訪ICで下りて蓼科方面に向かい始めてから徐々に怪しくなり始め、 ビーナスラインを進むにつれて見えてきた蓼科山方面は、 完全に雲に覆われているという状態であった。

鳥海山、至仏山と快晴のもとでの登山が続いており、この日の蓼科山登山も明るい日差しの下での登山を信じていただけに、少々ショックである。それでも、 天気予報は快晴と言っており、 また、事実上空には青い空が広がっているので、 山の方もいずれ雲がなくなるという望みがない訳ではない。

出発はビーナスラインの途中、女神茶屋の先にある駐車場である。前回この蓼科山に登った時は、茅野駅からタクシーだったこともあり、もっと下の親湯から登り始めたのであったが、 今回は車を止める場所を考え、 少し後ろめたさを覚えながも、はるか上の女神茶屋にしたのである。
しかし、 下山後プール平にある浴場に入る際に、 プール平の駐車場に車を止められることを知った次第で、 やはりもう少し事前の下調べが必要と反省したのであった。

駐車場から車道を少し戻ると、左側に蓼科山登山口の標柱があり、そこからササ原の中に入り込むこととなった (6時50分発)。左に傾斜する斜面を埋め尽くしているササ原はなかなか見事で、 その緑色は左奥の黄色く紅葉した木々と美しいコントラストを作り出している。 道はしっかりと整備されており、 昨日の雨でササは濡れているものの、 ズボンが濡れることはない。

暫く緩やかな道が続いた後、道が左に折れたところから急登が始まった。前回登った時には、体調が悪かったこともあって (少々下痢気味)、この登りの急さに息を切らし、 途中の岩で数回休んだ覚えがあるが、 今回はここのところの山登りで身体にキレもあり、 また前回と違って親湯から女神茶屋までをカットしたこともあって 快調に足が進んだのであった。
ただ、 この斜面に取り付いてからは周囲が薄暗いのが気にかかる。 上方を見ても、恐らく蓼科山があるであろう方向はガスに覆われて何も見えない。 空を見上げれば樹林の間に雲がかなりのスピードで流れている。 あの風で、山にかかる雲も吹き飛んでくれればよいのだが・・・。
と思っていたら、 サワサワと何かが降ってきた。 周囲が薄暗いので、すは、雪か雨か と心配させられたのだったが、 何のことはない、 カラマツの葉が風に吹かれて雪のように落ちてきているのであった。 これはこれでなかなか風情がある。

急登で高度を稼ぎ、やがて少し傾斜が楽になると、道は右の方へと回り込み、そこから今度はずっと直線の登りが続くこととなった。ひたすら登り続けるだけであるが、 高度が上がるに連れて背後の景色が開け、 茅野の市街の広がりとその向こうには 仙丈ヶ岳 甲斐駒ヶ岳 などの南アルプスの山々が見えるようになってきた。 南アルプスの方は、こちらと違ってその頂上に雲がかかっておらず 羨ましい。

さらに高度を上げると、右下には一面黄色に染まった八子ヶ峰なども見えるようになってきた。
この頃になると上空の雲もかなり増えてきており、 八子ヶ峰には明るい日差しともに、 所々雲の影が映っている。

急登に息を切らせつつ、ただ黙々と登り続けると、やがて 2,100m付近の平坦地で、振り返れば今度は 八ヶ岳 の姿もはっきり見えるようになってきた。ただ、 一番右端の 編笠山 そしてその左上の 富士山 はどうにかそのシルエットが見えたものの、 それより左にある権現岳、赤岳は完全に雲が覆っており、 これを見て今日の蓼科山からの展望は半ば諦めたのであった。

再び登りが始まる頃にはもう周囲もガスに覆われ始め、展望は全く利かなくなり、登山道に横たわる岩もガスのためかその表面が濡れているのが分かるようになってきた。
そして、強い風が吹く中、 高度を上げるに連れて周囲の木々には霧氷が付いているのが目立ち始め、 途中から周囲は真っ白い世界へと変わってしまったのであった。 これには本当にビックリである。
こうなると相当気温は下がってきているはずであるが、 登り詰めの身体はまだ汗ばんでおり、 さほど寒く感じないのがありがたい。 しかし、さすがに手の方は冷たくなってきており、 慌てて軍手をはめたのだったが、 もはや軍手では寒さを完全には防げない状況であった。

風はますます強くなり、ダケカンバの葉に付く霧氷も、その厚みと白さを増してきており、この先、頂上付近はどうなっているのかと少々不安が増してくる。 しかし、一度登った道だけに先の行程がある程度予測できるのがありがたい。
そして、前回の記憶通り、 道の岩が徐々に大きくなってくると、 一直線の登りを経て、やがて林を抜けだすこととなり、 頂上直下の岩場へと辿り着いたのであった (8時49分)

ここからは、累々と積み上げられた岩場の上をペンキ印に導かれて登ることになるのだが、樹林帯ではただ濡れていただけの岩が、ここからはその岩自身についた水分が凍りつき、 真っ白なツルツル滑る状態になっている。 そして、上を見上げてもガスで先が見えず、 ロープやペンキ印だけを頼りに登るしかない状況である。
しかも、ここからは露岩帯であるから吹きさらしとなっており、 滑りやすい足場に加えて、 風が強く身体に当たってバランスを崩しやすくなっており、 加えてその風がもの凄く冷たいので 大変厳しい状況であった。 眼鏡はあっという間に曇ったり、濡れてしまうし、 また帽子は吹き飛ばされそうになるし、 さらに軍手をはめた手も凍えそうになるはで 散々な状況であった。

前回登った時は、途中からまっすぐ岩を直登し、頂上にたどり着いた覚えがあるが、今回は視界が全く利かないこともあって忠実にペンキ印を辿って 露岩帯を右手へと回っていくしかない。 あまりの風の強さ、 寒さに泣きたい気持ちになりながら、 いつまでこの状況が続くのか と悪態をつきながら山腹を回るように進むと、 あら不思議、 途中の大岩を過ぎて進む方向が少し先程より山の東側に入ったら、 風もそれほどではなくなり、 周囲に土や草も見え始め、 すぐにガスの中に小屋が浮かび上がってきたのであった。
あとは V字に左に向きを変え、 真っ白になった岩の上を、ペンキ印に頼りながら暫く進むと、 三角点と小さな標柱がある蓼科山山頂であった(9時8分着)

前回登った時には、測量用なのか、ここに木の櫓が立っていたが、今はそれはない。
周囲はガスに覆われて真っ白な状態で、 お目当ての蓼科山神社奥宮の祠も見えない。 時々風が弱まり、一瞬ではあるが広い山頂の一角が見えたりもしたのだが、 それも束の間、 すぐに真っ白なカーテンに覆われてしまうという状態であった。
それでも辛抱強く祠が視界に現れるのを待って、 5分ほど山頂に立っていたのだが、 一向に視界が良くなる様子もなく、 今回は神社を諦めて下山することにしたのであった。

ところがである、小屋まで引き返す途中、三角点へと導く矢印とは別に、広い岩原の中央へと続いて矢印があるのを見つけたのである。これはもしやと思って辿っていくと、 案の定、目の前に突如として蓼科山神社奥宮の鳥居と祠が現れたであった。
何のことはない、 神社は先の三角点からほんの目と鼻の先にあったのである。 これだからガスというのは恐ろしい。 本当にすぐそばにあるものも見えなくさせてしまうのである。

ようやく巡り会えた蓼科山神社奥宮は霧氷がついて真っ白な状態で、バックはガスで真っ白、神社の鳥居、祠は黒っぽいところに白い霧氷が付いていることから、 そこはまるで白黒写真の世界であった。
ところで、 神社にも巡り会えて後は下山だけということで安心してしまったのか、 少し顔を上げた途端に帽子を強風に持って行かれてしまったのであった。 帽子は アッという間に白いカーテンの中に消え、 もはや追うこともできない状況で、 先日の白山に続いてまたもや帽子を山に献上することになってしまったのである。 悔しい。(9時18分発)

さて、下山は一旦小屋まで戻った後、先ほどの樹林帯まで往路と同様山腹を巻くようにして進む。
途中から風がもろに正面から当たるようになり、 あまりの冷たさに頬の筋肉が硬直していくのが分かる。 早く下山して温泉に浸かり身体を暖めたいという気持ちが強く湧いてくる。
身体中真っ白となりながら、 這々の体でようやく戻り着いた樹林帯入口には、 数人の人たちが待機していた。 聞けば、あまりの状況の厳しさに、 凍りついた岩場を進んで頂上に至るのを躊躇っているとのことである。 中には、自信がないのでこのまま下山するという人たちもいた。 これはある意味では驚きであった。 私の場合、 危険だから撤退しようなどという気持ちを微塵も抱かずに、 頂上に進んでしまったからだが、 考えてみればもう少し思慮が必要だった気がする。
幸いにも無事に戻って来られたからよかったものの、 強風と凍った岩場に足を取られて転落する可能性だってあったはずである。 頂上を目前にして、自分の技量、装備と相談し、 戻ろうと決めた人の勇気を称えたい。

さて、後は一気に下るだけであったが、この日の天気の良さを当てにしてであろう (下界は天気予報通りとても良い天気)、途中、多くの老若男女が登ってくるに出会った。 頂上が私が登った時の状況のままであったら、 一体何人の人が頂上までたどり着けたのであろうか・・・。
しかし、駐車場が近づくに連れ蓼科山方面上空にも青空が広がりだし、 太陽も強い光を照らし始めたことから、 頂上付近の状況はその後急速に改善されたのかもしれない(10時25分着)
そうなると、 ゆっくりとした遅い時間に登ったことが幸いして快晴の頂上に立てることとなった訳であり、 そういう人たちに少々嫉妬を感じてしまう。 でも、 先の月山といい、今回の蓼科山といい、 山で貴重な体験ができたのを喜ぶべきかもしれない。 今回はまさにゲーム感覚の登山であった。 帰りの車の中で暖かいというか暑いような秋の日差しを受けていると、 先ほどまで氷の世界で苦闘させられ、 下山後の温泉で冷たくなった身体を暖めることばかり考えていたことが嘘のようであった。


蓼科山再登山データ

上記登山のデータ登山日:2002.10.27 天候:晴れ後曇り単独行日帰り
登山路:女神茶屋駐車場−2,100m平坦地−蓼科山頂ヒュッテ−蓼科山−蓼科山神社奥宮−蓼科山頂ヒュッテ−2,100m平坦地−女神茶屋駐車場
交通往路:瀬谷−八王子IC−(中央高速道路)−諏訪IC−(ビーナスライン)−女神茶屋駐車場(車にて)
交通復路女神茶屋駐車場−(ビーナスライン)−プール平−(ビーナスライン)−諏訪IC−(中央自動車道)−八王子IC−瀬谷 (車にて)


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