高原山(鶏頂山)( 釈迦ヶ岳:1,794.9m ) 2005.5.16 登山


  釈迦ヶ岳への登りにて鶏頂山方面 ( 2005.5.16 )

【高原山登山記録】

【高原山登山データ】

フォト


高原山登山記録

5月4日の 雲取山に続く登山である。
登ったのは栃木県の日塩道路 (日光−塩原) 沿いにある鶏頂山であるが、当日の本来の目的地は 那須岳で、そのコンディションのあまりの悪さに急遽変更した結果であった。

ということで 那須岳のことは本登山記録には無関係であるものの、 少しスペースを割いて書かせてもらう。
東北自動車道を飛ばして、那須湯本の温泉神社向かいにある無料駐車場に車を止めたのが 7時。上空には青い空が広がっているものの、 那須岳方面は雲に覆われており、また吹く風がかなり強く寒い。
そして驚いたことに、この風が山の残雪を巻き上げて吹き下ろしているのか、あるいは山を覆う雲自体が降らせているのか、 小雪が舞っているのである。

本日、那須近辺は快晴と聞いていただけに、この状況に気持ちが大きく萎えてしまったのだったが、 それでも折角来たのだからと意を決して出発することにした。
なお、今回この那須湯本から出発したのは、前回の那須岳登山がロープウェイ駅前からの登山であり、 登山自体の時間があまりに短かったために少々後ろめたさを感じていたためである。
立派な佇まいの温泉神社でお参りをし、神社横手から山に取り付く。といっても道は不明瞭で、木に記された赤いペンキ印だけが頼りである。
天候の状況が状況だけに、このような不明瞭な登山道は不安をかき立てる。
と思ったら何のことはない、急な斜面を一登りしたところで車道に飛び出したのであった。
標識等全くないので、この車道を登っていくことが正しいのか分からず、若干不安ではあったが、登っていく途中で地図上に記載されている十石荘が見えてきたので、 道が正しいことが証明され一安心であった。

この延々と続く車道は、やがて高雄温泉おおるり山荘の建物前で終わることとなり、 そこから林道のような道に入ることとなった。
林道ではいきなり 「熊に注意」 の標識が目に入り不安が募る。風はもの凄く強く、また体温を奪って寒い。
見上げても上の方は雲の中であり、時折 小雪のようなものが流れてくる。
どうしようか迷い始めた途端、強い風が吹いて帽子を吹き飛ばしてしまい、慌てて帽子を追いかけ林道を数十メートル戻ることとなってしまった。
こうなると最早 那須岳に登る意欲は完全に失せてしまい、結局 本日の 那須岳登山は止めることにしたのであった (なお、後日の那須岳再登山で知ったのだが、この道は那須岳に通じる道ではなかった。引き返して正解であった。)

とは言え、那須岳への登山は止めるにしても、折角ここまで高い高速代を支払って来たのだから山に登らずに帰るのは納得しかねる。
車道を下りながらこの後どうしようか考え、
(1) ロープウェイ駅まで車で行き、そこから 那須岳に登る、 (2) 男体山などの日光の山に登る、 (3) 筑波山に登る 
などの案が頭に浮かんだのだったが、結局 登ることを決めたのは鶏頂山であった。
その理由だが、何のことはない、私の持っている 那須岳の地図の左下に鶏頂山が書かれていたからという理由によるものである。

那須IC方面に戻り、途中から右 塩原の標識を見て右折。順調に進んで、やがて懐かしい塩原温泉への道 燧ヶ岳会津駒ヶ岳平ヶ岳 でおなじみ) と合流したのであった。
クネクネした懐かしい道を進み、塩原温泉街に入ったところで左 日光・今市の標識を見て道路を左折、日塩道路を進むことになった。
ほとんど車の通らない道を順調に進み、料金所 (ここでは支払う必要なし) を過ぎるとやがてスキー場が見えてきた。
スキー場を過ぎ、登山口はこの辺かなと思いつつ進んでいくと、やがて左側の斜面に登る道を通り越したところで、 大きな鳥居がその道の上方にあるのがバックミラーに映ったのだった。
車の中で斜め読みしたガイドブックに、確か鳥居があるところが鶏頂山登山口と書いてあったのを思い出したので、 この鳥居が登山口に違いないと 慌てて車を Uターンして戻り、斜めの道に入って鳥居前に車を止めたのだった (9時16分)

鳥居は石でできた大きく立派なもので、鳥居の横には鶏頂山縁起が書かれた札も立っている。
ところで、実際はこの鳥居はガイドブックに書かれていたものではなく、登山口となる鳥居はもっと日光よりにあったのであった (下山後、日光に向かう途中で赤い木の鳥居があることに気が付いた)
ただ、この石の鳥居のある場所も登山口として間違いではなく、実はつぶれてしまった鶏頂山スキー場入口からのコースであった。

私は鳥居下に書かれていた車進入禁止の標識に従って、馬鹿正直に鳥居前に車を止め、 鳥居をくぐって道路を登っていったのだったが、暫く進むとスキー場の広い駐車場があり、車が 1台止まっていたのであった。
何となくだまされた気になったが、まあそれほど距離があった訳ではないので良しとしたい。
この鳥居のところで目に入ってきたのが日光連山の姿であった。特に 女峰山の姿が素晴らしく、 その右には 太郎山、そしてその後ろ手には未だ山頂の雪が白く輝く 奥白根山 がデンとしている。

車道の終点、廃墟となったスキー関連の施設前から山に取り付く。
登山道はリフトのある所を通らず、リフトから離れて左手のゲレンデを登ることとなる。 ずっと上の方まで続く四駆の轍の跡がやや興ざめではあるものの、それだけ斜面は緩い斜面ということで、足も進む。
ただ、左右は杉林で薄暗く、いきなり熊が出てくるのではないかと思って、どうもあまり良い気持ちはしない。
ゲレンデを登り着いたところの右手にリフト乗り場があり、ここから平らな道を少し進んだところが、 木道のある枯木沼であった (9時35分)
沼と言ってもほとんど水はなく、僅かに残る水の中に大きな卵らしきものがたくさん見えた。蛙かサンショウウオの卵であろうか。

この枯木沼入口からはこれから登る鶏頂山の姿が樹林越しに見える。ピラミッド型のなかなか美しい姿である。
標識に従って木道を右に進むと、またまたゲレンデらしき登りとなり、登り着いたところに またまたリフト乗り場があった (9時51分)。ここからの日光連山の眺めは素晴らしい。

リフト終点のこの場所から登山道はようやくゲレンデを離れて杉林の中を進むことになった。
言い忘れたが上空には青空があるものの、風によって雲が多く運ばれてきており、日を隠してしまうことが多く、日が差すのは時々といった状況である。
従って、杉林の中は薄暗く、時々差す日にホッとするといった具合であった。
このように薄気味が悪い上に、今日は月曜日、人と出会う確率も少なく、気が滅入る。

やがて、道は大沼への分岐を右に見ると、林も切れ、暫く下ったところが弁天沼であった (10時4分)
この辺はかなり広い平らな場所になっており、静かな沼の周りには鳥居や石碑が多く建っている。平家の落人伝説について書かれた標識もあり、 雰囲気的には 滝子山直下にある鎮西ヶ池を彷彿とさせる (もっとも規模的にはこちらの方が断然スケールが大きいが・・・)

鶏頂山は目の前に壁のように高くそびえており、これからの登りのきつさが想像される。
右手に道を進み、やがて樹相が自然林となってくると、勾配がきつくなり始め、濡れた岩の滑りやすい道となった。
少しではあるが登山道横には雪が残っているところもあり、昨冬の雪の多さを物語っている。
木の根や岩に足を滑らせないように慎重に足を進めると、所々に小さなアルミ梯子が出てくる。つまりそれなりの勾配、急斜面ということだが、 実際は思ったほどのアルバイトでもない。
途中、3人ほど登山者を抜くことになり、そして抜いたからには追いつかれまいとペースを上げたので、少々息が切れる。
でも誰もいないと思っていた山に人がいたので一安心である。

静かな山の中、黙々と登っていくと、道はやがて釈迦ヶ岳、鶏頂山との分岐へと着いた。
鶏頂山への道は右で、少し登るともう尾根道である。ここからもやや勾配のキツい登りが続く。
途中に樹木が切れて釈迦ヶ岳方面が見える場所があったが、尾根道の内側の斜面はかなり崩れているのに少々驚く。
さすがに一気に登ってきたため、些かくたびれたなあと思っていると、タイミング良く目の前に鳥居が見えてきて、さらにその先には立派な祠 (祠というよりちゃんとした神社) が現れた。
ここが鶏頂山頂上である (10時34分)

頂上は神社の向こう側が開けており、ベンチもいくつかあって、座れば対峙する釈迦ヶ岳方面がゆっくり眺められるようになっている。
反対側はやや灌木に覆われているものの、男体山、女峰山、奥白根山などの姿が素晴らしい。
この鶏頂山から見る釈迦ヶ岳の姿は、オムスビ型のずんぐりした姿で、位置としては前述したように丁度鶏頂山の向かい側となる。
丁度馬蹄型に山が連なった形で、従って釈迦ヶ岳に行くにはその馬蹄型の円弧の部分を歩いていくことになるのである。
そして釈迦ヶ岳の右手にもいくつかの山が連なり、その山が切れた先には広い関東平野が広がっていて、やや霞んではいるものの遠くには 筑波山の双耳峰も見えている。
雲が低くたれ込め、平野と空の間がほとんどないの形となってなかなか面白い。
ただ、飽きない風景ではあるものの、頂上はただ風が強く、体感温度を奪っていくので、なかなかジッとしてはいられない。
それでも 20分ほど頂上からの景色を堪能した後、往路を分岐まで戻り、今度は釈迦ヶ岳へと向かった (10時57分発)
なお、頂上では登山道途中で抜かした単独登山の方と話をする機会があったが、驚いたことに、その方も 那須岳登山をあきらめてこちらに回ってきたとのことであった。
世間は広いようで狭い。

鶏頂山から見た釈迦ヶ岳への道筋は、途中の御嶽を登り越え、 一旦下って大きな釈迦ヶ岳へと登るという形である。
鶏頂山から見た際にはかなりきつそうに見えたものの、実際はそれほど大変でもなく、黙々と登り続けること 50分。 結構 すんなり釈迦ヶ岳頂上に立つことが登頂できたのであった (11時48分)
この鶏頂山から釈迦ヶ岳に至る途中、登山道脇に小さな祠が 1つあったが、あれが御嶽の頂上を現すものだったのであろうか。
周囲には一切標識がなかったので不明である。
釈迦ヶ岳頂上は低いササや灌木が生えているだけの言わば丸坊主の状態で、小広いスペースには一等三角点と小さな石の祠が置かれている。
また、やや頂上より下ったところには釈迦如来の立派な石像が南を向いて置かれている。 祠の向きなどと違うので、些か違和感を感じたが何か意味があるのだろうか。

丸坊主の山頂だけにここからの眺めは抜群で、関東平野が足下に広がりを見せ、 また振り返れば日光連山の連なりが一望できる。
また先ほどまで頂上にいた鶏頂山の姿も大きく、その頂上の神社もよく見えるのであった。
ただ、遮るものがないだけに鶏頂山に居たときよりも風が強く、写真を撮ろうにも身体がブレてしまい、一苦労であった。
その上、風に体感温度を奪われ寒いので、10分足らずで頂上を後にした次第であった (11時57分)
ところで、鶏頂山に続いてこの山も一番乗りかと思ったら先客がいた。恐らく林業関係の方か高原神社関係の方ではないかと思うが、 山頂でせっせと植樹をされていた。風が強い中、本当にご苦労様である。

同じ道を戻り、途中から弁天沼への近道を下る。
ここは斜面一杯雪が残っており、結構滑りやすく苦労する。ただ、残雪の上に足跡が残っているだけに迷わずに下ることができた次第で、 もし雪がなかったらササ藪の中、結構苦労したに違いない。
雪の急斜面を下りきると、今度は涸れた沢筋のような道となり、ゴロゴロする岩の上を辿ることとなる。 やがて勾配がなくなり、周囲が平らになってくると、先の方に弁天沼の石碑群が見えてきたのであった (12時39分)

ここからは往路を戻るだけだが、少し余裕があるので途中登山道をはずれて大沼に立ち寄った (12時51分)
大沼は木立に囲まれた静かな池で、風情がいかにも火山活動でできた池という感じである。 水は澄んでいるものの、あまり生き物の気配はしない。
池の周りや池に浮かぶ岩が黒々としていてかつて火山活動があったことを彷彿とさせる。
また、池の正面には鶏頂山の形の良い姿が見え、水面にその姿をに映している光景はなかなか趣がある。
ただ、あまりに静かな状況は却って不安をかき立てるもので、何となくここでゆっくり休憩をする気になれず、すぐに引き返したのであった。

往路をゆっくり戻って車を止めてある鳥居前に着いたのが 13時26分、 4時間と少しの短い山旅ではあったが、なかなか趣があって良かったと思う。
この山は私の自宅からは遠いため、今回のような機会がなければ恐らく登ることはなかったと思われる。 そういう意味ではこういうチャンスを与えてくれた那須岳の天候に感謝をせねばなるまい。
なお、後で知ったのであるが、この釈迦ヶ岳、鶏頂山を中心とする山域を総称して高原山と言い (確かに標識にはさかんに高原山と出てきた)、 三百名山のリスト入りをしているのだそうである。
それならいつか登る機会もあったかもしれないなどと勝手なことを思ったのであった。


高原山登山データ

上記登山のデータ登山日:2005.5.16 天候:くもり単独行日帰り
登山路:鶏頂山一の鳥居−スキー場跡−枯木沼−弁天沼−鶏頂山−御岳山−釈迦ヶ岳−御岳山−弁天沼−大沼−枯木沼−スキー場跡−鶏頂山一の鳥居
交通往路:瀬谷−横浜IC−(東名高速道路)−(首都高速)−(東北自動車道路)−那須IC−湯本温泉駐車場−塩原温泉−鶏頂山スキー場 (車にて)
交通復路:鶏頂山スキー場−今市−宇都宮−(東北自動車道路)−(首都高速)−(東名自動車道路)−横浜IC−瀬谷 (車にて)



百名山以外の山のページに戻る    ホームページに戻る