釈迦ヶ岳( 釈迦ヶ岳:1,641m ) 2002.01.12 登山

(※:縦走路中の最高峰は 黒岳 1,793m)

  釈迦ヶ岳山頂の地蔵尊と富士山 ( 2002.01.06 )

【釈迦ヶ岳再登山記録】

【釈迦ヶ岳再登山データ】

フォト

初登山


釈迦ヶ岳再登山記録

1月12日からの 3連休、 初日の 12日土曜日が一番天気が良さそうだったことから、 この日に山へ行くことにした。 これで昨年末から 3週連続しての山行となる。

行き先については、この時期、山にかなり雪が積もっていることからいつも迷ってしまうのだが、先週の鷹ノ巣山、雲取山登山における富士山の姿が印象的であったことから、 富士山が良く見える山と考え、 以前登ってほとんど視界を得られなかった釈迦ヶ岳 再度登ることに決めたのだった。
コースとしては、 以前と同じく河口湖湖畔にある大石公園に車を止め、 そこから別荘地の中を通って中沢林道を辿り、 途中から山に取り付いて新道峠に至って、 新道峠からは破風山、黒岳を経て日向坂峠に下り、 峠から府駒山、釈迦ヶ岳に至るというものである。

ただ前回の時は体調が芳しくなかったことから、釈迦ヶ岳から往路を戻って日向坂峠まで下り、日向坂峠からは水沢林道を登って新道峠まで戻って、そのまま往路と同じ 中沢林道を歩いて戻ってきたのであったが、 今回は できたら前回断念した大石峠経由の道を辿ってから戻りたい と考えたのであった。

満天の星空のもと、 中央自動車道大月ICを過ぎてから河口湖方面へと進む。 夜明け間近、 目の前には富士山の大きな姿が薄暗い中にボーッと浮き上がっていて、 少々ギョッとさせられる。
河口湖ICからは河口湖駅方面を避け、 走り慣れた長浜経由で大石公園へと向かう。
この頃になると太陽が登り始め、 薄暗い河口湖の上に立つ、 雪肌がピンク色に輝き始めた富士山の姿が印象的である。

大石公園を出発したのが 7時7分。先週の雲取山とほぼ同じ時刻である。
いつも通り別荘地の間を通って林道を詰めていく。 別荘地の奥に治山工事が行われている場所があって 車が頻繁に往来しているためであろうか、 工事現場までは道に雪もほとんどなかったのだったが、 そこを過ぎてからは雪道となり、 しかも一旦融けた雪が凍っているものだから アイスバーン状態で大変歩きにくい。

登山道入口に着いたのは 7時56分、ここから新道峠に至る山道は日が当たる南向き斜面ということで、林道とは違って雪がほとんどない状態であった。
新道峠に着いたのは 8時49分 やはりここからの富士山、河口湖の眺めは素晴らしく、 左に長く伸びる富士山の裾野と 鏡のような湖が印象的である。

この新道峠からは黒岳までずっと尾根歩きが続くことになる。右手には富士山、河口湖が見えることが多く、また途中の高みで振り返れば悪沢岳赤石岳聖岳 といった 南アルプス南部の主峰がその頂を白く輝かせているのが見えて 大変気持ちが良い。
ただ、尾根道といっても平らではなく、 結構アップダウンがあり、 また下り斜面には雪の量も多いので 快適という訳でもない。 しかも、あまり踏み跡が多くないことから雪が深くなっているところもあって、 先週の雲取山の方が却って歩きやすかったほどである。

また、時々左側の樹林越しに本日の目的地である釈迦ヶ岳の姿を垣間見ることができたのだが、どうも今一パッとしない。こちら側の方が高く、釈迦ヶ岳をやや見下ろす形となって どうも釈迦ヶ岳が貧弱に見えるのである。 やはり山は見上げる方が魅力的であり、 そういった意味では、 先般の釈迦ヶ岳登山の際に帰路に辿った 水沢林道が釈迦ヶ岳の一番のビューポイントと思われる。

暗い樹林の中の雪道を黙々と辿り、目の前の高みの先に青空を見ながら雪の斜面を登り切ると、そこだけ樹林が刈られた黒岳頂上であった。時間を見れば 9時47分 一番乗りを期待していたのだが、 残念ながら先客が 1人いた。
頂上は一面雪に覆われていたものの、 前々回の時のように三角点が雪に埋もれていることもなく、 赤く塗られた標石が 15センチほど雪の上に出ていた。

この黒岳頂上は樹林に囲まれて視界がほとんどないことから、すぐに南側の展望台の方へと進み、そこで食事を兼ねた大休憩を取ることにした。ここは頂上付近の樹林帯が終わり、 河口湖へと下る斜面の始まりになっている場所であることから 展望は素晴らしく、 富士山や河口湖の姿は無論のこと、 先程の聖岳、赤石岳、悪沢岳に加えて 農鳥岳、間ノ岳北岳 といった南アルプス北部の山々も一望できるのであった。

再度 黒岳頂上に戻って釈迦ヶ岳に向かったのが 10時12分
少し下ったところで左に 90度折れ、 黒岳の北側斜面を一気に下る。 今まで明るかった南側に比べ、 こちらは一面雪の斜面で日も当たらずに暗く、 モノ寂しさを覚える。 何日か前に踏まれた雪の上の足跡を辿りながら グリセードの真似事をして一気に下る。 これが結構楽しい。

調子よく斜面を下っていたところ、やがて、左 上芦川の標識が現れた。これは林道に通じる道に違いないのだが、何とここで今まで私を導いてくれた足跡は そのままその道を下ってしまい、 釈迦ヶ岳方面への足跡は全く無くなってしまったのである。 これにはやや焦ったのだったが、 幸い雪は多いところで 20センチくらいしか無く、 自分でラッセルするような必要も無い状態だったので、 そのまま未踏の雪の上を進むことにしたのであった。 所々にテープなどがあり、 また微妙に雪が凹んでいるので、 何とかなりそうである。

前回ここを通った時は、一面に落ち葉が敷き詰められ、さらに数人の男女が落ち葉を掛け合いながら遊んでいたのに驚かされたが、今回は一面の雪と動物の足跡しかない。
登り着いたところに すずらんノ頭 と書かれた標識があり、 こうなれば日向坂峠はもう少しのはずである (10時38分)
やがて樹林の間から林道が見えだすとすぐに日向坂峠で、 時刻は 10時42分であった。 この日向坂峠は 「どんべい峠」 という名もあるらしく、 そう書かれた標識も掲げられている。 しかしもっと面白かったのは、 釈迦ヶ岳のことを 「甲州槍ヶ岳 (と思う)」 と書いた標識で、 その標識によればこれから辿る尾根道は 表銀座 ということになるのだそうである。

その表銀座を少し登ると、今まで見えなかった北側の景色がいきなり飛び込んできた。真っ先に目につくのが 金峰山国師ヶ岳といった奥秩父の山々である。 また縦走路左手には先程まで頂上にいた黒岳の姿が大きい。

この表銀座は日当たりも良く、雪が少なくて歩きやすい。道自体もかなり整備されているようで、所々にある標識も真新しい。途中の府駒山も、前回来た時は壊れかけた標識しかなかったのだが、 今回は芦川村の立てた立派な標識に替わっていた。
やがて、 目の先の枯れ木の向こうに釈迦ヶ岳のピラミダルな山頂が見え隠れし始めるのだが、 意外とそこまでの距離があることに驚かされる。 また結構アップダウンもあり、 前回の印象とは全く違ったことから、 人間の記憶のいい加減さを思い知ったのであった。

そして、府駒山を過ぎてから 30分ほど経った 11時43分、暗い樹林の急坂を登り切ると、釈迦ヶ岳の山頂の一角に飛び出したのであった。目の前にはお馴染みの 2体の地蔵尊が岩の上に鎮座しており、 冬仕度であろうか、 橙色の服を着せられたその姿は まるで頂上で休む登山者のようであった。

さて、時刻はお昼近いことから、頂上に何人かの人がいることを覚悟していたのであったが、ありがたいことに誰もおらず、頂上に居た約 30分の間、 頂上は私の独り占め状態であった。
また、展望の方も 前回はガスのために全く何も見えない状態で どの方向にどんな山があるのかサッパリ分からなかったのだが、 快晴の本日は 360度満遍なく見え、 さすがは 槍ヶ岳 と感心したのであった。 また、頂上には前回なかった方位盤が置かれており、 数々の山を同定できるようになっていたのがありがたい。

真南には、逆光ではあるが富士山がその姿を大きく見せており、また東の方には黒岳、三ツ峠山などが良く見える。また西方を見やれば、左側の笊ヶ岳、聖岳を初めとして、 赤石岳、悪沢岳塩見岳、農鳥岳、間ノ岳、北岳仙丈岳鳳凰山甲斐駒ヶ岳 と続く 南アルプスの主峰を余すことなく見ることができるし、 さらにその右手には金峰山、国師ヶ岳、甲武信岳破風山などの奥秩父の山々、 そして雁ヶ腹摺山、本社ヶ丸といった山々を見ることができ、 山好きにとっては堪らない一時を過ごすことができたのであった。

さて、山頂での至福の時を味わった後はいよいよ下山であるが、今回は往路を戻らずにそのまま山頂を西に進んで山頂直下にある林道へと下り、その後 上芦川まで林道を歩いて、 そこから大石峠に登り返すつもりである。 ただ、大石峠の方を見やれば、 黒岳から新道峠、中藤山 (なかっとうやま) 大石峠、節刀ヶ岳へと続く山並みが壁のように黒々とした姿を見せており、 そこまでの登りのことを考えるとやや気が滅入る。

山頂を出発したのが 12時10分。15分ほど下ったところで左への分岐があり、そちらに方向を変えて一気に下る。途中で登ってくる 10人前後の団体と擦れ違ったが、 タイミングがずれていたら山頂を独占できなかった訳で、 この幸運に感謝したのであった。
なお、 この下りは南斜面のためか全くと言って雪が無く、 ロングスパッツをつけている自分が恥ずかしい位である。

林道に着いたのが 12時34分。芦川村へと続く広い林道に合流したのが 12時50分であった。
この広い林道は 芦川方面から来て先程の日向坂峠へと続いている道なのだが、 融けかけた雪が再び凍ってアイスバーンとなっている場所が何ヶ所もあり、 この時点では軽アイゼンを着けていなかったことから、 状態のひどいところでは ガードレールに掴まりながらの歩行を余儀なくされた程であった。

林道を西へ進み、上芦川の集落を見てからは、道を左にとって大石峠の入口へと進む。そこには清水があったので喉を潤すとともに、これからの行程を考えて 軽アイゼンを装着したのであった (13時20分発)
ただ、軽アイゼンといっても 白馬岳の大雪渓を登るために白馬尻の小屋で買った 900円の安物で、 装着するには紐で足にグルグル巻きつけるというお粗末なものである。 しかし、それでもアイゼンの威力は十分で、 凍った林道の登りで大いに力を発揮してくれたのであった。

凍りついた道を暫く登り、沢を 2つ続けて越えてからは完全な雪道となり、お陰でスピードが上がる。
雪の上に足跡が残っているが、 下りのものばかりで登りのものはない。 確かにこちら側から大石峠に登ることなど滅多にないのであろう。

13時41分、林道は終点となって、大石峠入口と書かれた立派な標識の所から山に取り付くことになった。この道は北側の斜面を登ることになるので完全に雪道である。 雪の上に足跡はいくつかあるが、 皆 昨日以前のものであり、 また、山の陰になっていて日も当たらないことから、 些か寂しい。 しかも 「熊に注意」 の看板まであって心細さが増す。
それでも黙々と雪を踏みしめて登っていくと、 やがて、谷を行く道と尾根を行く道に分かれることになった。 早く高度を上げて日の当たる場所に出たいという気持ちがあったので、 尾根筋を行く。 登りがやや苦しいが、 確かに高度はドンドン上がっていき、 やがて樹林の間から先程登った釈迦ヶ岳の姿も見えるようになってきた。
雪の上の足跡は、ジグザグの道をショートカットしており、 急な斜面をまっすぐに下っているのだが、 登る我が身としてはやはり正規の道の上を確実に辿るしかなく、 ほとんど足跡のない雪道を、 アイゼンの歯と歯の間に 雪が溜まって歩きにくくなることに多少イライラしながら 足を進めていったのであった。

この頃になると疲れも大分出てきて、上を見上げては暫し休憩という例のスタイルが続き、こんな馬鹿なコースを辿ろうとした自分を罵りながらの登りであった。 それでも何回もジグザグの登りを繰り返すうちに結果は出てくるもので、 やがて稜線もハッキリと近くなり、 14時40分 樹林を抜けて明るいカヤトの大石峠に飛び出したのであった。
ここからの展望も素晴らしく、 富士山は逆光の中で霞んでいたものの、 河口湖と河口湖町、富士吉田市方面が良く見えるし、 日差しは暖かく気持ちが良い。

さて、ここから河口湖へと下っても駐車場には帰り着けるし、また尾根筋を進んで新道峠経由で戻る手もある訳である。当然、まっすぐ下山するのが楽であるが、 それでは当初の計画を取り止めることになり、 何か負けたことになるような気がするという訳で、 結局 疲れていたにも拘わらず、 愚かにも尾根筋を進んでしまったのであった (14時50分発)
しかし、この尾根筋が長く、 そして結構アップダウンがきつかったのである。 すぐに不逢山頂上を通過したのは良かったのだが、 中藤山までのアップダウンが結構あり、 大した登りではないものの、 目の前に大きな高みが現れる度にため息をつく状況であった。

中藤山に着いたのが 15時40分。しかしその 5分後に再び中藤山の標識が現れて、少しガックリである。前者は芦川村の立てた立派な標識で、後者は 個人が木にくくりつけたものであったが、 どちらかというと後者の方が本当の頂上らしい気がする。
中藤山からは 雪も結構多い道を新道峠はまだか、まだかと思いながら進むこと 15分。 ようやく 16時2分に懐かしい新道峠の標識に辿り着いたのであった。 しかし、もうここは山の陰で日は当たらず、 休憩するのも寒そうだったために、 すぐに道を下ることにした。
そして、中沢林道に戻ったのが 16時30分 夕焼けに染まる富士山を見ながら道を下り、 大石公園の駐車場に着いたのはもう辺りが暗くなった 17時8分であった。
何と鷹ノ巣山、雲取山に登った時よりも時間がかかってしまった訳で、 低い山でも侮れないということを実感した山行であった。


釈迦ヶ岳再登山データ

上記登山のデータ登山日:2002.01.12 天候:快晴単独行日帰り
登山路:大石公園−別荘地−新道峠−破風山−すずらん峠−黒岳−日向坂峠− 府駒山−釈迦ヶ岳−林道−上芦川−大石峠登山口−大石峠−不逢山−中藤山−新道峠−別荘地−大石公園
交通往路:瀬谷−(国道16号線)−八王子IC−(中央自動車道)−河口湖IC−長浜−大石公園 (車にて)
交通復路:大石公園−長浜−河口湖駅−山中湖−平野−道志−橋本−(国道16号線)−瀬谷 (車にて)


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