木曽駒ヶ岳の項より続く。
5時半に小屋を出発、宝剣岳中腹よりご来光を仰いだ。
赤く染まり始めた東の空に富士山や甲斐駒ヶ岳のシルエットが映え、 なかなかの光景であった。目を木曽駒ヶ岳に転じれば、 なだらかな山容が赤く染まり始めたところで、またその左方に見える御嶽は暗闇にライトが徐々に当たるように上から赤く染まり出しており、 その様子は神秘さ・荘厳さを感じさせるものがあった。
宝剣岳頂上は、尖った岩の上の部分を水平に切ったように平になっており、 その上に登るには1人の力ではちょっと無理で、そばにいた私と同宿だった年輩の方が手を貸そうかとは言ってくれたものの、 起床したばかりで完全に身体が起きていない状態では少々危険とあきらめ、記念写真だけを撮ってもらった。
宝剣岳からは鎖やボルトの打ち込んであるところを通過することになったが、 朝早かったこともあって人がほとんどおらず、ゆっくり焦ることなく進むことが出来た。
この鎖場を過ぎると、後は素晴らしい稜線歩きが待っており、そのスタートとも言うべき極楽平からは、 これから登る空木岳とそこまでの縦走路をはっきりと見ることができ、また左下には朝日が徐々に当たり始めた千畳敷カール、 そして振り返ると宝剣岳のズングリした姿が見え、その右奥後方には浅間山をも見ることができた。
この日は雲一つない快晴で、青い空の下を進む縦走路は、 笠ヶ岳への縦走路を思い出させてくれ、 大変気持ちよく、道ばたに咲くトウヤクリンドウやコマウスユキソウなども目を楽しませてくれた。
島田娘から一旦下って登り返すと、大きな岩が並ぶ濁沢岳 (地図では濁沢大峰) に着き、 そこから鎖場、ロープなどを使ってまた大きく下ると、今度は檜尾岳への長い登りが待っていた。
伊那側ではハクサンフウロなどの小さな花畑の中を進み、途中から木曽側に道が変わると展望も開けて広いハイマツの斜面をジグザグに登っていくことになり、 やがて立派な標識のある檜尾岳頂上に着いた。
ここまで来ると前方に空木岳の全容が見えるようになり、辿ってきた道を振り返れば、 伊那前岳の平らな稜線の左横に宝剣岳が押しボタンのように飛び出しているのが見え、 さらにその左には木曽駒ヶ岳を見ることができた。
檜尾岳からはあまり大きな起伏もなく、楽に熊沢岳頂上に着くことができた。
熊沢岳の頂上には大きな石がゴロゴロしており、親切で書いたのだろうが標識横の大岩に木曽殿山荘への矢印が赤ペンキで書かれていたが、 これはやや余計で、景観を損ねるだけのような気がした。熊沢岳の大岩の上で宝剣山荘にて作ってもらった弁当を広げ、周囲の景色を眺めながらの食事・休息は最高の気分であった。
熊沢岳からは小さなピークの上り下りとなり、最後に着いた平坦地が東川岳の頂上であったが、 頂上からはこれから登る空木岳の登路が鋭角な尾根の上につけられているのが見え、 その傾斜角度の急なことも併せて、とっても登れるものではないような感じを抱かずにはいられなかった。
東川岳からは、赤い屋根の上に石の重石を載っけた木曽殿山荘を目がけて一気に下り、 山荘でポカリを買って喉を潤した後、空木岳の登りにかかった。
この登りは、先ほど東川岳から見た時に感じた程は急ではなかったものの、ここまでの縦走の疲れがでて、 10分進んでは休むといったペースでのゆっくりした登りしか出来なかった。
やがて大きな岩が現れだし、岩の間を登ったり、大きな岩を飛び越えていくと、 白い砂と岩が美しい空木岳頂上となり、青い空に秋の気配を感じさせる鱗雲が浮かんでいるのを背景にしたその景観は、 海岸の砂浜にいるような錯覚を起こさせるほど美しいものであった。
頂上からは、昨日登った木曽駒ヶ岳は無論のこと、 その後方に槍穂高連峰を認めることができ、また、南側に見える南駒ヶ岳の、少しガスに包まれて高山らしさが一層引き立っている姿がとても印象的であった。
暫し山頂からの展望を堪能した後、白い砂の上を下り、左上に駒石を見ながら空木岳避難小屋まで進んだ。
そこには水場もあったので、コンロで湯を沸かし、再度食事をとることにした。避難小屋からは池山尾根の長い下りとなり、小地獄、大地獄の難所を通り、 樹林帯の中をひたすら下っていくことになったが、 疲れ果ててようやくたどり着いた池山小屋の水場で一息入れてやや生き返ったものの、 そこからもまだまだ下りは続いており、本当に疲労困憊という感じであった。
ようやく駒ヶ根グランドホテル前に着いた時には足が棒の様になっていたが、 幸いホテルで入浴させてくれたので、汗と埃を流し、湯船に浸かってようやくのんびりすることができた。
贅沢にもタクシーで駒ヶ根へと向かい、新宿行きの高速バスの発車時刻まで大分時間があったので、 駒ヶ根の食堂で冷や奴をつまみにビールを飲み、今回の山行の無事を1人祝した。
余談であるが、ここでは冷や奴の薬味に西洋辛子が付いてきたのでビックリさせられた。最後にカツ丼を食べた後、前もって予約しておいた高速バスにて新宿に向かい、 その日の内に自宅にたどり着くことができた。
この夏は、北アルプス縦走、 八ヶ岳、そしてこの木曽駒ヶ岳・空木岳縦走と、 Aクラスの山旅を実行することができたが、間の八ヶ岳を除いては天候にも恵まれ、 これまでの山登りの中でも最高の満足を味わうことができた。
空 木 岳 登 山 デ ー タ
上記登山のデータ 登山日:1990.8.25 天候:快晴 単独行 前日泊 登山路:宝剣山荘(泊)−宝剣岳 −極楽平−濁沢大峰−檜尾岳−熊沢岳−東川岳−木曽殿越−空木岳−空木岳避難小屋−小地獄−大地獄−池山小屋− 駒ヶ根グランドホテル 交通往路:木曽駒ヶ岳の項参照 交通復路:駒ヶ根グランドホテル−(タクシー)−駒ヶ根− (高速バス)−新宿−(小田急小田原線)−相模大野−(小田急江ノ島線)−大和−(相鉄線)−瀬谷 温 泉:駒ヶ根グランドホテル その他:8月24日は宝剣山荘泊。翌25日空木岳登山。その後帰宅。 その他の
空木岳
登山林道駐車場−林道終点−池山小屋分岐・水場−鷹打場−池山小屋分岐−マセナギ−大地獄−小地獄−空木岳(往路を戻る) ( 2010.10.2:快晴 )
    ここをクリックあかつきの塔手前 磐田の森駐車場用ロータリー−林道終点−池山小屋分岐・水場−鷹打場−池山小屋分岐−マセナギ−大地獄−小地獄−空木岳(往路を戻る) ( 2011.05.21:晴れ )
    ここをクリック伊奈川ダム駐車場−金沢土場−うさぎ平−仙人の泉−八合目−木曽殿越−第一ピーク−空木岳(往路を戻る) ( 2012.10.27:曇り )
    ここをクリック伊奈川ダム駐車場−南駒ヶ岳登山口(四合目)−北沢尾根三角点−南駒ヶ岳−赤梛岳−空木岳−第一ピーク−木曽殿越−八合目−仙人の泉−北沢− うさぎ平−金沢土場−伊奈川ダム駐車場  ( 2013.9.21:快晴 )
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