NO.006 入 笠 山( 入笠山:1,955m ) 1992.1.20登山


  入笠山頂上からの展望( 1992.1.20 )
【入笠山について】

【入笠山登山データ】

再登山


入笠山について

入笠山は夏期には山頂直下までバスが運行されていて、ファミリー向けの山というイメージが強く、 その頂上の展望の素晴らしさは有名であるものの、何となく登山の対象とするには気が引ける感のある山である。
しかし、こういう山の狙い目はシーズンをはずれた時期であり、私も 1月半ば、雪が積もりほとんど誰もいない中を登って、 この山の魅力を存分に味わうことができたので、ここで紹介する。

登山口となる駅は、中央本線の富士見駅、すずらんの里駅、青柳駅などがあるが、 富士見駅から頂上までの間は車道歩きが長いことから、 青柳駅から登ることをお薦めしたい (すずらんの里駅からのコースは歩いていないので分からない)
今もそうであろうが、当時 青柳駅は無人駅で、私が何もない駅前に立った時には目の前は一面雪の原であった。
恐らく雪の下は畑で、6年近く経った今もそれは変わっていないのではないだろうか。

目を上に転ずれば、いくつかの山々が目にとまり、中には形が良く魅力的に見える山もあったのだが、 残念ながらどれが入笠山なのか判断することはできなかった。
当然 地元の人に聞けば良いのだが、朝の 9時半だというのに周囲には誰一人おらず、仕方なしにそれらしい山に目星をつけて写真に収めてはみたものの、 未だにそれが入笠山なのか判別できずにいる。
駅の前の道を進んで国道20号線を横切り、集落の中を進んでいくと Y字路が 2回程出てきたが、いずれも右に道をとった。
やがて森が現れたが、私が行った時は森林を切り開いていてペンション風の建物を造成中であったためであろうか、ハッキリした道標もなくて、 何となく不安になりながら道を左に折れて、森の中に入っていった。
しかし、今はキチンと整備されて標識があるものと思う。

辿った道は全て雪に覆われていたことから判断はつかないものの、 広かったため恐らく林道だったのではなかろうか。
林道歩きは無雪期なら白けてしまうのであるが、雪が積もって全てを隠している場合は、その道の広さが返って不安を吹き飛ばしてくれることになる。
また、幸いにも道に足跡が 1つだけついていたので、初めての山で、なおかつ雪が積もっていたにもかかわらず、 安心して登っていくことができた。
緩やかな傾斜の中、黙々と登っていくとやがて、夫婦岩展望台らしき場所に着いたが、そこからは樹林の切れ間に八ヶ岳が見え、 冬山の美しさを十分に堪能することができた。
また、途中右手の樹林の中に小屋が見えたが、屋根に 40センチくらいの雪を背負い、周囲も完全に雪に覆われており、 無論 小屋までの足跡など皆無で、森の暗さと相まって静寂の中、なかなか風情のある姿であった。この小屋はお花茶屋だったのだろうか。

雪が周囲の音を吸収するためなのであろうか、非常に静かな中を一人雪を踏みしめて黙々と登るのは (登るというよりは歩く)、深田久弥氏と同じように 「山の混雑が大嫌い(伊吹山の項)」 な私にとって、 何よりも山登りを、そして山の自然を堪能できて楽しい時である。
やがて樹林を抜けると大きく銀世界が開ける。そこはスキー場のような場所のようであったが、実際には誰も滑っておらず、 折角の沈思黙考の世界から華やいだ俗世へと引き戻らされずに済み、ホッとさせられた。
しかし、そこを過ぎると道の左右にペンション風の山小屋が建ち並んだ鐘打平となり、徐々に人間臭ささが漂ってくるようになる。 但し、シーズンオフでほとんどの小屋が締まっていたため、静寂が周囲を支配しており、この時期を選んだ幸運に感謝しながら鐘打平を通り過ぎる。

やがて通年営業しているマナスル山荘の前 御所平峠 を通過したが、 夏期にはこの山荘前までバスが来るというのだから、この山は最早純粋な登山の対象ではなかろう。
山頂への登りはかなり急傾斜で、しかも雪のために滑りやすくなっていて登るのに少々苦労させられたが、山頂における 360度遮るもののない展望がその苦労を吹き飛ばしてくれた。
やはりすぐ目に付くのが富士山とその右方の甲斐駒ヶ岳のややひしゃげたピラミダルな姿で、 その間には、鳳凰山が真っ白な姿を見せており、そして甲斐駒ヶ岳の右からは鋸岳、 間ノ岳仙丈岳と南アルプスの山々が連なっている。
また、富士山の左には八ヶ岳がその頂を輝かせており、 蓼科山へと続く起伏のある峰々は、山に登らない者をも魅了させるに違いない。
そして、さらに左奥には北アルプスの山々が見え、さすがに午後にもなれば空気も緩んでややぼやけてはいたものの、 常念岳槍ヶ岳、穂高連峰、 笠ヶ岳、乗鞍岳、御嶽などの名だたる山々を認めることができたのだった。

この素晴らしい展望をもっと長い時間眺めていたかったのであるが、 遮るものがないが故に冷たい風にもろにさらされることになり、頂上にはそれ程長居できず、写真を何枚か撮った後、 一気にマナスル山荘まで駆け下りる。山荘にて暖かいうどんで身体を暖めて、一息つく。
下山路は鐘打平まで戻り、そこから一気に樹林の中を駆け下りたが、こちらは展望もあまり利かなかったので、 登山コースとしてはやや面白くないかもしれない。
やがて駐車場に着き、そこからは半ば凍結した車道歩きが延々と続くことになったが、時折 正面に見える八ヶ岳の姿が夕日に輝いて素晴らしかったのが印象的であった。
富士見駅までの道のりは遠く、雪が凍てついた車道を通っていくつかの部落を抜け、かなりの距離を歩かねばならなかったので、 下山したら途中でタクシーを呼ぶ方が良いかもしれない。
しかしそれにしても、静かな山の魅力を堪能できる良い山行であった。こういう山は冬がベストであろう。


入 笠 山 登 山 デ ー タ

上記登山のデータ 登山日:1992.1.20 天候:晴れ 単独行 日帰り
登山路:青柳−見晴茶屋−夫婦岩展望台−鐘打平−御所平峠 −入笠山−御所平峠−鐘打平−松目−富士見
交通往路:瀬谷−(相鉄線)−横浜−(京浜東北線)−東神奈川 −(横浜線)−八王子−(中央線)−高尾−(中央本線)−青柳
交通復路:富士見−(中央本線)−八王子− (横浜線)−橋本−(相模線)−海老名−(相鉄線)−瀬谷
その他の入笠山登山 沢入駐車場−入笠湿原−入笠山−大阿原湿原入口−釜無山−大阿原湿原−御所平峠−入笠湿原−沢入  (2007.05.04 : 快晴)
    こ こをクリック

百名山以外の山のページに戻る   ホームページに戻る